FX型デジタル分光相関器

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FX型デジタル分光相関器(FXがたデジタルぶんこうそうかんき)とは、東京天文台(現:国立天文台)の近田義広らによって開発された電波天文学用の専用解析計算機の名称。電波分光観測データの処理に活用されている。

概説[編集]

FXの名称の由来は、Fがフーリエ変換、Xが相関演算を表す。フーリエ変換後に相関演算を行うのが特徴。逆の順番で演算を行うものはXF型相関器と呼ばれる。

この計算機は、当時の東京天文台が長野県南佐久郡南牧村にて運用を始まったばかりの、野辺山宇宙電波観測所の10m電波望遠鏡(ミリ波電波干渉計)からの観測データ解析を目的として開発を行った。45mミリ波電波望遠鏡には、当時最先端の技術として音響光学型スペクトル分析器を搭載していたが、個体差が大きく観測運用時の調整が必要なので、XF型デジタル分光計の開発も行った。

NMAには、分光専門のFX型とUWBCと呼ばれるXF型が搭載されている。UWBCは、検算を行う装置でもあり、受信した生データと比較を行うためのものである。これらの装置によって、開口合成演算や分光測定の信頼性が高まり、現在に至る。

専用演算器によって、大型コンピュータに負荷をかけることなく、電波望遠鏡のデータを解析し、スペクトル分析を行うことによって一気にデータ処理性能の向上が行われた。

性能[編集]

最初に生まれたデジタル相関分光器の性能は、1MOPS程度であった。分解能は、8bitであり、1MHzのクロックで駆動した。次のモデルは、10MHzで駆動するタイプのもので、10MOPSに達した。回路が簡単なため、LSI内部で並列化を行ったため、10GOPS相当の相関分光器が誕生した。その後、高密度ASIC化とLSIの並列化を行うことで、最終性能は100GOPSに達した。あくまでもフロントエンドにおける理論性能であり、バックエンドの計算機の性能によって異なる。

100GOPSという性能は、Gがギガ(10の9乗=10億)OPSとはオペレーション・パー・セコンドである。オペレーションとは、演算命令のことである。つまり、相関演算を1秒間に1兆回実施できる性能ということである。ここまで性能を上げるためには、ROMパラメータや加算器、減算器、乗算器、除算器による試作機(A4サイズのモックアップ基板、なお電子工学の世界ではディスクリート回路と呼ぶ)を開発してから、半導体(ASIC)化を行ったものである。現在は、低価格かつ高性能なFPGAなどがあるため、そちらを応用した相関演算器が開発され、観測に用いられている。

初期のデジタル分光計は、ADコンバーターを始めとして、入手できる演算回路や演算素子などの性能のため、8bit精度で済ませることにした。現在は、10bit精度のものが野辺山宇宙電波観測所で観測に利用されている。

サイトで、分光計の性能表記で"ch"と記載しているが、このchはchannel数(帯域分解能)のことである。

仕組み[編集]

電波望遠鏡から送られてくるデータを、高速フーリエ変換及び相関演算を全てハードウェアにて行う。まず、電波望遠鏡の受信部で集められた電波は高感度の受信素子にて電気信号へ変換される。この電気信号をアナログ・デジタル変換を行い計算機へ送り込む。計算機では、各望遠鏡から送られてきたデジタルデータを高速フーリエ変換を行い、各エネルギースペクトル毎の正弦波に変換する。観測者は、望遠鏡毎の相関を計算機に指示し、計算機は各望遠鏡毎に計算されたエネルギースペクトルの相関演算を行う。相関演算されたデータは、積分や微分を行うことで、目標となる天体の精密なスペクトルデータが得られる仕組みである。

最近のFX[編集]

ALMA望遠鏡は80台の電波望遠鏡群からなるが、その内訳は広がった天体構造を高感度で観測する16台のACA(Atacama Compact Array)干渉計と、64台の高分解能干渉計という2つの望遠鏡である。このACA干渉計にFX型デジタル分光相関器技術が用いられる予定である(以下、総合科学技術会議評価資料参照)。2008年現在は、信頼性検査などの状態であるが、望遠鏡本体との調整が必要なため、詳細な資料は以下のリンクを参照。

現在、ALMA計画用のデジタル分光計は、大規模FPGA型の製品を用いた相関演算器であるが、相関演算に用いられる部分のことで、デジタル分光計は、その周辺回路としてADコンバータやシステムインターフェイス(パソコンのPCIバスやイーサネットなどに相当)を含む装置のことである。

関連項目[編集]

開発機関[編集]

学術利用分野[編集]

技術開発協力[編集]

外部リンク[編集]

デジタル相関器の解説[編集]