FRONTIER LINE

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FRONTIER LINE』(フロンティア ライン)は、たがみよしひさによる日本漫画作品。植民惑星を舞台に重装騎と呼ばれる搭乗型ロボット兵器を主体とした架空戦記漫画である。コミックス全1巻。

概要[編集]

月刊コミックNORA』(学習研究社)にて、1987年7月号から1988年5月号に連載された。描き下ろし1話を加えてNORAコミックス(学習研究社)から全1巻でコミックスが1988年に発売された。

コミックス後書きや、たがみがよく行う枠線外の書き込みに拠れば、松本零士の『戦場まんがシリーズ』のような作品を目指して企画されたが、連載1話の執筆時点でたがみ自身に「ロボットが描けない」ことが判明。「コミックス1巻分の連載が溜まったら止める」などの愚痴が枠線外に書き込まれることになった。

世界観は星間国家によって開拓された植民惑星で繰り広げられる内戦を題材としているが、これが果たして地球人類文明なのかどうかは曖昧にぼかされている。 その一方で用語や町並み、人々の衣服や装備などは全体的に西部劇をモチーフとしている。

あらすじ[編集]

第12太陽系に所属する植民惑星ソ・ドムは、植民開始されてから25年が経つが、その内の半分の期間以上を戦争で費やしていた。

植民開始から6年、独自にソ・ドム開拓を進める惑星ルーア軍と利権を巡る連邦軍の対立は深まり、ルーア戦争が勃発。

連邦はかつてソ・ドムを訪れていた異星文明が残した二足歩行の建設機械野装騎を解析し、武装を施した重装騎と呼ばれるロボット兵器を開発する。

ソ・ドム15年、重装騎兵はルーア軍に勝利し、戦乱を終結させることに成功した。

しかし重装騎を手にした原住民レンディアンを討伐して回る内に、重装騎隊はより過激な行動を取るようになっていく。

ソ・ドム22年、連邦重装騎隊の無法集団ぶりへ反発した一部地域が新国家サウツを名乗り、独立を宣言して軍事国家を樹立。

サウツ側は、特務攻撃隊によって大統領を暗殺すると共に北部へ侵攻、宣戦布告。北部側もノーシツとして国家を再編し、新総統の元で迎撃の体勢を整える。

そしてソ・ドム23年より、南北戦争が繰り広げられる事になる。

PROLOGUE 開戦
描き下ろし。南北戦争開戦に至るまでの前史(上述の内容)を文章主体で記す。
EPISODE II 錆びた角
ソ・ドム25年8月。南軍の重装騎隊によって損害を被るのは軍だけではなかった。民間の町もいくつも全滅させられていた。
帰還兵チレンは野装騎が大量にあるという「処女の谷」を目指して旅を続けていた。装騎隊1つを全滅させたという一本角の黒い巨大な野装騎を手に入れ、故郷を滅ぼした南軍第16装騎隊へ復讐するために。
EPISODE III 赤の装騎兵(ドラゴーン)
ソ・ドム25年末。南軍の猛攻を食い止めていた北軍第10,25,33重装騎隊であったが、部隊の損耗は大きく、やがて決死の作戦が命じられる。
第10装騎隊を率いるのは赤い旧式重装騎に乗り、南軍から「赤の装騎兵」と恐れられる歴戦のエースパイロット、バーグ中尉。しかし彼は決して愛機から降りた姿を人に見せたことはなかった。
EPISODE IV 独立特務軽装騎隊 R・A・T
ソ・ドム24年11月。サウツではまだ本格的な重装騎の量産体勢が整っていなかった。ノーシツの新型装騎兵開発工場を破壊するため、軽装騎による特務戦隊が命を賭けて奮闘する。
次々に仲間を失いながら工場へ迫る特務戦隊。しかし隊員の中では不和が広がっていた。かつて部隊長のRAT-1は窮地に陥る仲間を見捨て、ただ一人戦場から逃亡したというのだ。
EPISODE V ハーヴ・カッツの熱い風
ソ・ドム27年1月。南軍の進撃路上に存在するハーヴ・カッツの村は、南軍への反抗で士気が上がっていたが、市民兵への志願を拒否したバドーは村の住人から迫害を受けていた。先のルーア戦争で将軍の位を持っていたハンスじいさんだけは、そんなバドーに理解を示した。
いよいよ南軍が攻めてくると知ると、村長や村人の士気はいよいよ盛り上がり、手始めに「裏切り者」のバドーへの制裁を決める。そこへ南軍の重装騎が現れ、村人たちを一蹴。ハンスじいさんが隠し持っていた旧式の重装騎にバドーとハンスは乗り込み、村人や村の子供たちが逃げる時間を稼ぐために、南軍の前に立ちふさがる。
EPISODE VI ヘル・エルデスの魔女
ソ・ドム26年12月。北軍第3重装騎隊「白熊」の突然の反転により、進攻中だった南軍重装騎隊は次々と後方から撃破されていった。最後に残された南軍第45重装騎隊第6分隊は、ヘル・エルデス東端の渓谷で「白熊」を迎え撃つ。しかしそこは猛烈な吹雪により過去幾度となく探検隊を全滅させた、「魔女の渓谷」と呼ばれる難所だった。
39対6の絶望的な戦いで奮闘する第6分隊の面々だったが、彼らは吹雪の中に浮かび上がる魔女の幻影を目撃する。
EPILOGUE 終戦
ソ・ドム29年9月。ノーシツの首都へと帰ってきた復員兵ジレム。かつて彼は幼馴染の少女フォリノに頼まれ、先に入隊した親友でフォリノの恋人であるエリオンを探すために軍に志願した。
街でフォリノが持っていたロボットが売りに出されているのを見たジレムは、戦局を左右する新型重装空騎のテストパイロットとして経験した、自分の戦争について語りだす。

時系列について[編集]

本作は時系列がシャッフルされており、時系列順に並べればPROLOGUE→EPISODE4→EPISODE2→EPISODE3→EPISODE6→EPISODE5→EPILOGUEの順番になる。
各エピソードで語られる戦況から、南北戦争の状況推移は以下の通りとなる。
ルーア戦争終結から八年を経てなおサウツは重装騎開発技術が著しく劣っており、南北戦争開戦当初は軽装騎特殊部隊による様々な工作によって時間を稼いでいた。
そしてサウツが重装騎量産体制を整えた事によりノーシツは猛攻を受け、北軍各部隊の迎撃も虚しく多くの市町村が蹂躙され、破壊されていった。
やがて両軍とも首都近郊まで攻め込んだことで戦線は膠着、重装空騎の開発に成功したサウスが優勢になるかと思われていた。
しかしノーシツの新型重装空騎マドゥの投入により戦況は一変。か2ヶ月後のソドム歴29年末にサウツが敗北し、南北戦争は終結した。

用語[編集]

野装騎
「ムスタング」とルビが振られている。
惑星ソ・ドムの原住人類レンディアンが搭乗し開拓団と戦闘を行っていた二足歩行機械。調査の結果、以前にソ・ドムを訪れていた異星文明人が残した建設機械であることが判明。
重装騎
野装騎を元に武装を施した二足歩行機械。先のルーア戦争末期に導入され、その有効性から戦争を終結に導いた。旧式騎は二人乗りのものも存在している。
軽装騎
重装騎が本格採用される前に使用されていた一種のパワードスーツ
S.F.3.D.をイメージしたことが後書きなどで書かれている。
自空騎
「ポニー」とルビが振られている。
原動機付き自転車自動二輪車に相当する個人用移動機械。軽装騎が搭乗できるサイズのものもある。
重装空騎
「ペガサス」とルビが振られている。
南北戦争末期に開発された音速飛行も可能な重装騎。焼夷弾を投下する。

書籍情報[編集]

関連[編集]

作中に登場する重装騎のデザインで作者自ら似ていることが後書きなどで言及されているものを以下に挙げる。