エリック・ゲイル

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エリック・ゲイル
Eric Gale
エリック・ゲイル(1976年7月)
基本情報
出生名 Eric Jerome Gale
生誕 (1938-09-20) 1938年9月20日
ニューヨーク州ブルックリン市
死没 (1994-05-25) 1994年5月25日(55歳没)
メキシコ、バハ・カリフォルニア州
ジャンル フュージョンジャズクロスオーバーポップ
職業 スタジオ・ミュージシャン、ギタリスト
担当楽器 ギター
活動期間 1964年 - 1994年
レーベル CTIレコード
共同作業者 クリード・テイラークインシー・ジョーンズキング・カーティスパティ・オースティンソロモン・バークヴァン・マッコイダニー・ハサウェイロバータ・フラックグローヴァー・ワシントン・ジュニアポール・サイモンスタッフ

エリック・ゲイルEric Gale1938年9月20日 - 1994年5月25日)は、アメリカのジャズ/フュージョンのスタジオ・ミュージシャン、セッション・ギタリストである。フュージョン・グループのスタッフのメンバーとして知られている。

サイドマンとしてアトランティック・レコードCTIレコード、クドゥー、アヴコ、コロムビアなどのレーベルに録音を残し、ジャンルを横断したギタリストとして活動した。多くの有名アーティストと共演している。

バイオグラフィ[編集]

カリブ海バルバドス島出身の祖父母を持つ白人系の父(アイリュシュ、フレンチ、スコットランド。イタリアン、ベネズエラ)とアフリカン・アメリカンの母との間に、1938年9月20日ニューヨーク州ブルックリンに誕生した。幼い頃はカトリック系のスクールに通いヴァイオリンのレッスンを受けながらクラシック音楽を学んだ。彼は12歳のころには、早くもウッド・ベースとギターを演奏していたという[1]。スクールでは成績が優秀だったため小学校から高校へ飛級。ハイスクールへ通いながらブルックリン音楽院で更に音楽を学ぶ。彼が幸運だったのは、知人の紹介でジョン・コルトレーンを紹介され、コルトレーンの家で彼とセッションを行ったことである。

彼は自身の希望で化学を学ぶために、ニューヨークのナイアガラ大学に入学し、学業に専念し化学の修士号を得た。大学卒業後はプロのミュージシャンとして、ブルックリンのライブ・ハウスで音楽活動をスタートする。当初、ウッドベース奏者として活動を始めたが、大きな楽器を抱え地下鉄の乗り降りをするのが大変なため、ギターに変えて仕事をはじめた。 ゲイルはベトナム戦争の徴兵を拒否したため、服役することになってしまった[2]

エリック・ゲイルが参加した最初のビッグ・ヒットは、全米1位になったボビー・ルイスの「トッシン・アンド・ターニン」だった [3]。彼はザ・ドリフターズ、キング・カーティス、ザ・フラミンゴス、マキシン・ブラウン、ソロモン・バーク、ボビー・ティモンズ、ジャッキー・ウィルソンらのセッション・ミュージシャンをつとめた[4]


1966年にクリード・テイラーに認められCTIレコードのサイドマンとして活躍。1972年にクリード・テイラーのプロデュースにより自身のアルバム『フォアキャスト』を発表した。1969年には女性ジャズ・オルガン奏者のシャーリー・スコットのアルバムに参加した[5]。。 彼が参加したクインシー・ジョーンズのアルバム『ウォーキング・イン・スペース』(1973年)『ボディ・ヒート』(1974年)は、ジャズファンの間で人気作となった。

エリック・ゲイルは、ドラッグ中毒から脱出するため保養目的で、1971年からジャマイカのネグリルに移り住み、1972年リーダー・アルバム『ネグリル』をボブ・マーリーが使用していたスタジオで録音し、ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズアストン・バレット(ドラム)、セドリック・ブルックス(ベース)、ピーター・トッシュ(ギター)、リチャード・ティー(ピアノ)らが参加した[6]

1972年に映画『恐怖のメロディ』に使われたロバータ・フラックの「愛は面影の中に (The First Time Ever I Saw Your Face)」が全米1位の大ヒットを記録。また同年のロバータとダニー・ハサウェイとのデュエット曲「恋人は何処に (Where Is the Love)」などのレコーディングに参加しヒットを放った。プロデューサーはラルフ・マクドナルド。1973年続いてロバータは「やさしく歌って (Killing Me Softly with His Song)」で全米1位の大ヒットを記録した[7]。この曲に関しては、エリック・ゲイルのギター参加が確認されている。ロバータ・フラックはグラミー賞の最優秀レコード賞などを受賞した。

1975年にヴァン・マッコイのシングル「ハッスル」を録音。バッキングは、ほぼスタッフのメンバーだった。この曲はディスコ・ブームに便乗したアルバム『ディスコ・ベイビー』からシングルカットされ、全米1位、全世界でレコード売上1000万枚以上の大ヒットを記録した。グラミー賞「最優秀ポップ・インストゥルメンタル賞」を受賞。

1975年にゲイルは、ゴードン・エドワーズらとフュージョン・バンド、スタッフを結成した。ニューヨーク・シティのライブ・ハウス「Mikelle's」(ジャズ・クラブの老舗)を中心にセッション活動をするようになった。スタッフのファースト・アルバムはヴァン・マッコイがプロデュースを務め、グラミー賞にノミネートされた。1976年に当時高視聴率を獲得していたTV番組『サタデー・ナイト・ライブ』に、スタッフのメンバーと共に出演しレギュラーも務めた。

1978年にクインシー・ジョーンズ[8]のアルバム『スタッフ・ライク・ザット』からディスコ曲「スタッフ・ライク・ザット」がアメリカでヒットした。メンバーはスタッフのメンバーを中心に、パティ・オースティン、アシュフォード&シンプソン、チャカ・カーンらが参加している。1979年に、彼はダイアナ・ロスのアルバム『ザ・ボス』に参加した。ダイアナのモータウン作品に参加したのは、1枚だけである。ダイアナ・ロスのアルバムには、1970年代後半から参加している。

1980年には、ポール・サイモンが脚本を手がけた映画『ワン・トリック・ポニー』にゲイルは俳優として出演した。作品はグラミー賞にノミネートされアメリカでは、かなりの評価を受けた映画となったが受賞をのがした。同年にグローバー・ワシントン・ジュニアエレクトラ・レコードからアルバム『ワインライト』を発表、収録曲「Just the Two of Us』が大ヒットし、グラミー賞「ベストR&Bソング賞」を受賞する。このアルバム以外にもワシントンの多くのアルバムに参加している。ゲイルは、渡辺貞夫のアルバムにも、何度も参加している。彼は、マイケル・ジャクソンのアルバム『バッド』(1987)、アル・ジャロウのアルバム『テンダネス』に参加した。 エリック・ゲイルは肺がんのため、1994年にメキシコバハ・カリフォルニア州で死去した。


ディスコグラフィ[編集]

リーダー・アルバム[編集]

  • 『ネグリル』 - Negril (※1972年録音)、後年発表
  • 『フォアキャスト』 - Forecast (1973年、Kudu)
  • 『マルティプリケイション』 - Multiplication (1977年、Columbia)
  • 『ジンセン・ウーマン』 - Ginseng Woman (1977年、Columbia)
  • 『パート・オブ・ユー』 - Part of You (1979年、Columbia)
  • 『タッチ・オブ・シルク』 - Touch of Silk (1980年、Columbia)
  • 『ブルー・ホライズン』 - Blue Horizon (1982年、Elektra Musician)
  • 『イン・ザ・シェイド・オブ・ア・トゥリー』 - In the Shade of a Tree (1982年、JVC)
  • 『アイランド・ブリーズ』 - Island Breeze (1983年、Elektra Musician)
  • 『ジャズ・トラディション』 - In a Jazz Tradition (1988年、EmArcy)
  • 『レッツ・ステイ・トゥゲザー』 - Let's Stay Together (1988年、Artful Balance)
  • 『ユートピア』 - Utopia (1998年、Rooms)

* スタッフ[編集]

  • 『スタッフ!!』 - Stuff (1976年、Warner Bros.)
  • 『モア・スタッフ』 - More Stuff (1977年、Warner Bros.)
  • 『スタッフ・イット』 - Stuff It (1978年、Warner Bros.)
  • 『ライヴ・スタッフ』 - Live Stuff (1978年、Warner Bros.)
  • 『イン・ニューヨーク』 - Live in New York (1980年、Warner Bros.)
  • 『メイド・イン・アメリカ』 - Made in America (1993年、Bridge Gate)
  • 『ライヴ・アット・モントルー 1976』 - Live at Montreux 1976 (2007年、Eagle)

ゲスト参加[編集]

ジャズ/ラテン

ソウル/ロック

日本

脚注[編集]

  1. ^ Eric Gale allaboutjazz 2024年3月16日閲覧
  2. ^ エリック・ゲイル 2024年3月18日閲覧
  3. ^ Eric Gale jazz fusion・・ theseconddisc.com 2024年3月29日閲覧
  4. ^ Yanow, Scott (2013). The Great Jazz Guitarists. San Francisco: Backbeat. p. 78. ISBN 978-1-61713-023-6 
  5. ^ RARE GROOVE p.12 監修・駒形四郎 シンコー・ミュージックE
  6. ^ RARE GROOVE p.166 監修・駒形四郎 シンコー・ミュージックE
  7. ^ Eric Gale allmusic 2024年4月3日閲覧
  8. ^ ドラマ「鬼警部アイアンサイド」や、映画「ゲッタウェイ」などの映画音楽も担当している

関連項目[編集]

外部リンク[編集]