Die Energie 5.2☆11.8

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Die Energie 5.2☆11.8 』(でぃ えねるぎー)は三原順漫画作品原子力発電に伴う環境問題を取り上げた三原順の作品の中でも特に社会性の高い80ページ程度の中編である。初出は1982年の「LaLa」であり、単行本「夕暮れの旅」に併載。現在は三原順 傑作選80'sに収められている。


概要[編集]

本作品の位置づけ[編集]

はみだしっ子」「ルーとソロモン」によって作者が10代の少女に熱狂的な支持を受けた直後に発表された。作品の発表がスリーマイル島原子力発電所事故(TMI)の3年後、チェルノブイリ原子力発電所の事故の4年前と原子力発電のはらむリスクを大衆が認識し始めた時期であり、テーマはエネルギー問題(「5.2☆11.8」とは消費者が使用するエネルギー5.2に対し、送電ロスなどで失われるエネルギーが11.8という1970年におけるエネルギーフロー。参考:エネルギー効率)、原子力発電に伴う低濃縮ウラン等の放射性物質などの環境問題と過激な環境保護主義者、資本主義などを基にした社会的なものであり、「はみだしっ子」「ルーとソロモン」で効果的に使用されたデフォルメなどは用いない写実的で線の太い画風となった。

世界観はこの作品の後に発表された『踊りたいのに』『X Day』と同じ設定であり、時系列順では『踊りたいのに』(ルドルフ、ダドリーの学生時代)⇒『Die Energie』⇒『X Day』(『Die Energie』の直後)になる。

あらすじ[編集]

舞台は1979年のTMI事故の3年後のアメリカである。

土曜日、ルドルフは電力会社の下請けであるソレンセンの会社に融資引き上げを通告して彼の会社の動産等を電力会社の倉庫に回収した。週明けにソレンセンの手形についての問い合わせが電力会社に殺到している中、ルドルフは支店長から低濃縮ウランの盗難と原発(ザグ)II号炉の停止を要求する脅迫状について知らされる。ルドルフは原発の技師をいっぱい食わせ、原発に対する信頼性を損なう記事を新聞に載せII号炉の停止に持ち込む。

しかし、脅迫の内容はII号炉の停止だけではなく主配水管の破壊も含んでいること、電力会社内部に手引きをしている者がいるらしいことをルドルフは原発の技師から聞く。ルドルフが執念的にソレンセンの曖昧な伝票処理の書類と格闘している中、I号炉の冷却水取入口が何者かによって爆破される。脅迫犯は爆破との関係を否定し、要求をII号炉破壊から金銭に変更し、金の受け渡しにルドルフを指名した。移動中のルドルフの車を横からトラックが海に突き落とし、引き上げたところ金は無くなっていた。電力会社内部の共犯者とは…


登場人物[編集]

ルドルフ
ルドルフ・ロッシュ。電力会社の幹部職員(支店長補佐)。原発には否定的であるが、入社の動機は原発に揚水発電所を併設することによって定格出力を継続しエネルギー効率をあげる計画を公聴会で聞いたためであったが、その計画は住民の反対のため8年の間、許可が下りないままである。マーフィーの法則を信じていると言い、また「気にも入らない味方を頭数だけ増やすより敵をつくった方が増し」と考えている。また、自らが犠牲者・被害者であることを理由に自己の行動を正当化する考え方を嫌悪している。
ロザリン
ロザリン・ブラッシュ。ルドルフの隣人で看護婦。ダドリーを含めて3人で友人関係であったが、ルドルフの勤務する電力会社の原発(ザグ)の近所の13歳の女の子が白血病で死んだことにショックを受け、環境保護団体に入会。ルドルフに好意を抱いていながら、そのことによりルドルフとの関係が悪化する。
支店長
カデルという名がセリフ中で一度言及されているが、ほとんど「支店長」と呼ばれている。ルドルフの上司。アジソン病を患っているのではという噂が立てられている。ソレンセンとは学生時代からの友人。増殖炉の商用利用について不安を抱いている。低濃縮ウランの盗難による脅迫に心労を重ねる様子を見せていたが、実際には首謀者の一員である。参加した動機は「たっぷりと電気を使って生活しながら発電所を非難する連中に電気の足りない生活をさせたかった」ため。
ソレンセン
ケネス・ソレンセン。電力会社の下請け会社の社長。排水設備のバルブメーカーを、70年代に公害防止ブームに乗って大きくしたものの負債を抱えた。電力会社との取引を再開することで手形による取引が可能になり、順調に再建を図っていたところで電力会社の融資引き上げ、不動産・動産・債券による回収をルドルフから通告される。
ダドリー
ダドリー・デヴィット・トレヴァー。ルドルフの元同僚。父親の農場を継ぐために先日退社したが、有能なプログラマクラッキングの技術にも長けている。ルドルフによるソレンセンの伝票の調査に協力し、盗まれた放射性物質の行方の見当をつけた。
ティップ
ティップ・ペイン。使用済み核燃料輸送業社"N運輸”に勤務する運転手。妻は再処理工場の洗い場に勤めて居た。雪の日に飲酒運転で禁止されていた放射性廃棄物輸送を行い、レイクの事故を招き、ルドルフとの喧嘩を起こした。妻との間に生まれた子供は奇形児で間もなく死亡した。ルドルフに対して憎悪を抱き、金の引渡しに勝手にルドルフを指名。計画を崩したこの行動のため、N運輸の爆破に巻き込まれて死亡。
テッド
ルドルフの部下。スポーツ代わりに議論をふっかける趣味を持っている。しかし、ルドルフの考え方についていけず、能力を発揮できない自分に苛立っている。低濃縮ウランの盗難のことを知り、被害者であるはずの電力会社が事実を公表しないことによって加害者になることに心理的に耐えられず退職を決意する。
レイク
ルドルフの同僚であった。ティップの飲酒運転を知りそれを止めるため雪の日に車で飛び出し、事故死。

出版:詳細情報[編集]

単行本[編集]

文庫版[編集]