DOC あすへのカルテ

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DOC あすへのカルテ
ジャンル 医療ドラマ
脚本
  • フランチェスコ・アーランチ
  • ヴィオラ・リスポリ
出演者
国・地域 イタリアの旗 イタリア
言語 イタリア語
シーズン数 3
話数 32
各話の長さ 50分 - 60分
製作
製作
  • Rai Fiction
  • Lux Vide
放送
放送チャンネルRai 1
放送期間2020年3月26日 (2020-03-26) -  ()
公式サイト
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DOC あすへのカルテ』(ドック あすへのかるて、Doc - Nelle tue mani)は、2020年からイタリア放送協会 Rai 1で放送されているイタリア医療ドラマシリーズ。

第1シーズンは2020年3月26日から11月19日まで放送され、第2シーズンは2022年1月13日から2022年3月17日まで放送された。現在、第3シーズンが制作中である[1]

日本では、第1シーズンが2022年10月9日から2023年2月19日まで、NHK総合の海外ドラマ枠(毎週日曜日23時台)で放送された[2]。第2シーズンも2023年9月ごろ放送予定。

概要[編集]

本作は、パヴィア大学の教授であり保健省のコンサルタントや救急救命室の室長でもあった医師ピエルダンテ・ピッチョーニが、交通事故大脳皮質を損傷し昏睡状態から回復したものの記憶喪失に陥り、過去12年間の出来事を思い出せないという実話を基にした小説から着想を得て制作された[3][4]

なお、ピッチョーニ医師は、第2話に患者役でゲスト出演している[5]

このシリーズは、アンブロジアーノ総合病院という架空の病院を舞台に、内科で働く医療従事者のエピソードを中心に展開していく。イタリアで過去13年間に放送されたテレビシリーズの中で最高の視聴数を獲得した[6]

ポルトガルスペインでも若者層を中心に支持を得ており、放送されたAXNでは、ポルトガルでプライムタイム平均視聴率を89%上回り、スペインでは106%上回った[2]

主人公のアンドレア・ファンティを演じるのは、2010年に公開されたアメリカロマンティック・コメディ映画食べて、祈って、恋をして』に出演したルカ・アルジェンテーロ[7]

あらすじ[編集]

ミラノにあるアンブロジアーノ総合病院の内科医長アンドレア・ファンティは、類稀なる観察力で患者に対し的確な診断を下す名医である。しかし、その卓越した手腕が、自信過剰で傲慢な態度に表れ「決して患者を信用するな」というモットーが口癖になっている。その才能は皆の認めるところで、彼の医療チームは医師としてのアンドレアを信頼し、同僚の女医ジュリア・ジョルダーノとは愛し合っている。一方で、その高圧的な言動により同僚や患者との間に摩擦が生じることもしばしばであった。

ある日、この病院で治療中に死亡した少年の父親が、アンドレアの医療ミスによって息子が殺されたと信じ込み、帰宅しようとしていたアンドレアを待ち伏せ拳銃で襲う。はアンドレアの頭部の左側に当たり、集中治療室に運ばれた。一命をとりとめたものの、の一部である前頭前野を損傷したため、彼は過去12年間の記憶を失ってしまう。

権威ある医長の座を失い、自分の勤務していた病棟の患者となったアンドレアは、同僚たちのことを思い出せず、病院長で元妻のアニェーゼ・ティベリ離婚したことも覚えていない。だが、アニェーゼと二人の子供に恵まれ幸せな家庭生活を送っていた記憶だけは鮮明に残っていた。

2008年で記憶が止まっているアンドレアは、その間に進化した科学技術を理解できず、スマートフォンタブレット端末の使い方も全く分からなかった。そして、記憶の抜け落ちたアンドレアは、未だアニェーゼのことを愛し続けており、彼女を取り戻すため様々な障害に立ち向かうことになる。

登場人物[編集]

病院関係者[編集]

  • アンドレア・ファンティ
演 - ルカ・アルジェンテーロ、日本語吹替:安元洋貴
主人公の内科医長。鋭い観察眼で患者の症状を見抜き、的確な診断を下す才能は、他の医療従事者から名医として信頼され敬意を払われている。一方、高圧的な言動が周囲との摩擦を引き起こし、時として患者とも衝突する。妻アニェーゼとは離婚し、同僚のジュリアと密かに交際している。医療ミスで亡くなった患者の父親に恨まれ、頭を拳銃で撃たれて過去12年間の記憶を失う。医長の地位も失ったが、医師としての能力は健在で、決定権のない助手として病院に残る。
  • ジュリア・ジョルダーノ
演 - マティルデ・ジョリ、日本語吹替:沢城みゆき
アンドレアの下で働く医師。アンドレアを医師として尊敬し、彼の医療方針に従いながら秘密裏に交際している。しかし、アンドレアが記憶喪失となったため恋愛関係にあったことを忘れられ苦悩する。
  • アニェーゼ・ティベリ
演 - サラ・ラッザーロ、日本語吹替:日髙のり子
アンドレアの元妻で病院長。娘カロリーナと息子マッティアの二児の母で、子供思いのアンドレアとは仲睦まじい夫婦だった。10年前に子宮筋腫で全摘出術を受け、その日に幼いマッティアを亡くしている。マッティアの死を境に冷淡な性格に変貌したアンドレアとの関係は悪化し離婚した。
  • マルコ・サルドーニ
演 - ラファエレ・エスポジト、日本語吹替:星野貴紀
アンドレアの同僚医師。アンドレア殺害未遂事件の発端となる医療ミスを起こした張本人。WPW症候群の患者に、本来の治療薬と似た名称のサトナルというカルシウム拮抗薬を誤って投与し死亡させた。アンドレアが隠蔽工作を発見した直後に撃たれて露見せず、アンドレアの代わりに内科医長に就いた。
  • ロレンツォ・ラッザリーニ
演 - ジャンマルコ・サウリーノ、日本語吹替:佐藤拓也
アンドレアの同僚医師で、画像診断のエキスパート。二卵性双生児ダウン症の妹がいる。端正な顔立ちのプレイボーイだが、ジュリアに特別な想いを寄せる。しかし失恋し、その痛みから逃れるため、昔の交際相手キアラからもらった合成オピオイドを使用し副作用が現れる。
  • エンリコ・サンドリ
演 - ジョヴァンニ・シフォーニ、日本語吹替:関俊彦
精神神経科医長。アンドレアの同僚であり長年の親友として、記憶障害の治療を行う。
  • ガブリエル・キダーネ
演 - アルベルト・ブバカル・マランキーノ、日本語吹替:野澤英義
内科の研修医で、エチオピア出身。過去に密入国斡旋業者から暴行され、金を強請り取られる被害に遭っている。イタリアの植民地時代に祖父がイタリア人大佐の執事で、軍が撤退した後に残していったオペラレコードを聴いてイタリア語を覚えた。故郷に許婚がおり、帰国して故郷に貢献するかイタリアに残るかの選択を迫られる。
  • エリーザ・ルッソ
演 - シモーナ・タバスコ、日本語吹替:葉山那奈
内科の研修医。勝気な性格で、ロレンツォとは肉体関係があった。人知れず孤独を抱えており、プライベートでは保護犬とのふれあいを大切にしている。次第にガブリエルに惹かれ、恋愛関係となる。
  • リッカルド・ボンヴェーニャ
演 - ピエルパオロ・スポッロン、日本語吹替:大河元気
内科の研修医。10年前、隠れてスキューバダイビングをした直後、飛行機に乗ったため減圧症を発症し、原因解明が遅れたことで右足が壊死し切断する。その際、診療してくれたアンドレアに勇気づけられ医師となった。
  • アルバ・パトリツィ
演 - シルヴィア・マッツィエリ、日本語吹替:上杉華子
内科の研修医。外科志望だったが、外科医長の母から同じ科で働くのは不適切だと判断され、内科に配属された。ロレンツォの元交際相手で肝硬変を患っているキアラが、薬物依存症のため肝臓移植が許可されずにいたところ、ドナーがキアラと同じB型肝炎陽性者だと気付く。その注意力に感心した母から認められ、移植手術に参加する。
  • ダリオ・コロッラ
演 - アレッサンドロ・バンディーニ、日本語吹替:木内太郎
元内科の研修医。不注意をアンドレアに叱責され内科から外される。その恨みを、不良医薬品サトナルの治験データを隠蔽しようとしているマルコに利用され、アンドレアにデータの改ざんを命じられたと虚偽の告発をする。しかし、髄膜炎菌感染症による播種性血管内凝固症候群突然死する。

その他の登場人物[編集]

  • カロリーナ・ファンティ
演 - ベアトリス・グランノ、日本語吹替:廣田悠美
アンドレアの娘。医学生で、父との関係を修復しようとするが、アンドレアとアニェーゼのすれ違いに巻き込まれ悩む。弟マッティアの死の真相を隠し続けていた罪悪感から、過食症を患っている。
  • ダヴィデ
演 - シモーネ・ガンドルフォ、日本語吹替:宮島岳史
アニェーゼの新しいパートナー。アンドレアと別れた後のアニェーゼを献身的に支え、子宮を摘出し不妊となった彼女との間に里子を迎えることにする。
  • キアラ・マラビーニ
演 - ベネデッタ・チマッティ、日本語吹替:坂本悠里
ロレンツォの元交際相手。かつて共に医学の道を志していたが挫折し、現在はアパートの一室でB&Bを営んでいる。薬物依存症でコカインの密売に手を染めてしまう。中毒症状を起こし病院に搬送され、検査によってウィルソン病であることが判明し、さらに肝硬変と診断される。
  • マリア・ダミーコ
演 - ビアンカ・パンコーニ、日本語吹替:遠藤生野
リッカルドの母親の新しいパートナーの連れ子。10年前、リッカルドと恋仲になるが、彼が右足を失ったことで重荷を感じ、留学のため一人ベルリンに旅立つ。現在はジャーナリストとして働いており、医療ミスを起こした病院の内情をスクープしようと再び接近する。
  • ファビオ・ジョルダーノ
演 - ジュリオ・クリスティーニ、日本語吹替:沢城千春
ジュリアの弟。シーズン1第4話に登場。ロッククライミング中に異変が起き、検査の結果、多発性硬化症と診断される。吹替は沢城みゆきの実弟、千春が担当し、役と同じく姉弟共演となった[8]
  • ティルデ・ラヴェッリ
演 - ヴァレリア・ファブリッツィ、日本語吹替:磯辺万沙子
昔の女優。シーズン1第5話に登場。老いて現在は忘れられた存在だが、気位は高い。肺線維症と診断され家族に連絡しようとするが、ロンドンにいる娘とは長らく疎遠になっている。
  • セレーナ・ルッソ
演 - イラリア・スパーダ、日本語吹替:本田貴子
エリーザの母。シーズン1第13話に登場。女優として活躍しており、周囲にはエリーザの姉と伝えている。しかし、14歳でエリーザを出産しており、養育能力がないという理由でセレーナの母が代わりに育てた。
  • ニコラ・フォルティ
演 - フランチェスコ・ヴィラーノ、日本語吹替:稲田徹
ガーナスラム街で働く医師。シーズン1第15話に登場。世界的な地雷禁止キャンペーンも行っている。意識を失い搬送され、敵対勢力からを盛られたと主張するが、体にガイガーカウンターをかざすと反応があり、電子機器廃棄物処理場から出る放射線に長期間さらされていたことによる骨髄異形成症候群であると判明する。骨髄移植に成功し、治療を継続しながら再びガーナの病院へ戻る。

制作[編集]

2019年9月16日、第1シリーズの撮影が始まったが、2020年3月、新型コロナウイルス感染症世界的流行により一時的に制作が中断された[9]。2020年7月上旬に制作は再開され[10]、あらゆる感染対策を講じて撮影を完了した[11]

イタリアで起きたパンデミックの際は、アンドレアのモデルとなったピッチョーニ医師も患者たちの治療に尽力した[12][13]

2020年10月8日、記者会見で第2シーズンの制作が公式に発表された[14]

第2シーズンの撮影は2021年5月17日に開始された[15][16]。放送直前の2022年1月6日に撮影が終了し、エピソードは全16話で、2022年1月13日から放送された[17][18]

エピソード一覧[編集]

第1シーズン[編集]

話数 タイトル 日本語版タイトル イタリア放送日
1 Amnesia 記憶喪失 2020年3月26日
2 Selfie 踏み出す勇気 2020年3月26日
3 Niente di personale 夫婦 2020年4月2日
4 Una cosa buona che fa male いいけど悪いもの 2020年4月2日
5 L'errore 間違い 2020年4月9日
6 Come eravamo 岐路 2020年4月9日
7 Like 秘密 2020年4月16日
8 Il giuramento di Ippocrate ヒポクラテスの誓い 2020年4月16日
9 In salute e in malattia 病める時も健やかなる時も 2020年10月15日
10 Quello che siamo ふたり 2020年10月15日
11 Cause ed effetti すれ違い 2020年10月22日
12 L'imprevisto 二度目のチャンス 2020年10月22日
13 Egoismi エゴイズム 2020年10月29日
14 Perdonare e perdonarsi 許すこと許されること 2020年11月5日
15 Veleni 陰謀 2020年11月12日
16 Io ci sono 居場所 2020年11月19日

第2シーズン[編集]

話数 タイトル イタリア放送日
1 Una vita nuova 2022年1月13日
2 La guerra è finita 2022年1月13日
3 Sfide 2022年1月20日
4 Quello che sei 2022年1月20日
5 L'attenzione 2022年1月27日
6 Il gusto di vivere 2022年1月27日
7 Fare una scelta 2022年2月10日
8 Cane blu 2022年2月10日
9 Streghe 2022年2月17日
10 Padri 2022年2月17日
11 Ragioni e conseguenze 2022年3月3日
12 Gold standard 2022年3月3日
13 Così lontani, così vicini 2022年3月10日
14 Senza nome 2022年3月10日
15 Stigma 2022年3月17日
16 Mutazioni 2022年3月17日

脚注[編集]

  1. ^ Doc 3, trama, cast e quando andrà in onda la terza stagione. Sceneggiatori:“Nuovo inizio per Fanti””. Fanpage Italy (2022年3月17日). 2022年10月22日閲覧。
  2. ^ a b イタリアで過去13年間に放送されたテレビシリーズでNo.1の視聴数獲得!イタリア発!12年間の記憶を失ったエリート医師の愛と再生の物語”. ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント (2022年8月26日). 2022年10月28日閲覧。
  3. ^ Pierdante Piccioni, storia vera di“Doc nelle tue mani”/ L’impegno coi malati cronici”. ilsussidiario.net (2020年4月2日). 2022年11月6日閲覧。
  4. ^ Pierdante Piccioni: “Sono io il vero ‘Doc’. Anzi, siamo tutti noi””. Rai News (2022年1月27日). 2022年11月1日閲覧。
  5. ^ Pierdante Piccioni è il medico che ha ispirato “Doc. Nelle tue mani””. TV Sorrisi e Canzoni (2020年3月26日). 2022年11月6日閲覧。
  6. ^ DOC あすへのカルテ”. NHK. 2022年10月22日閲覧。
  7. ^ 実話に基づくイタリア発ドラマ「DOC」初放送 記憶喪失の医師を描く”. シネマカフェ (2022年8月26日). 2022年11月8日閲覧。
  8. ^ DOC あすへのカルテ”. NHK公式Twitter (2022年10月30日). 2022年11月1日閲覧。
  9. ^ DOC – Nelle tue mani, Luca Argentero: "Abbiamo interrotto le riprese della fiction"”. Movie Player (2020年3月23日). 2022年10月22日閲覧。
  10. ^ Riapre il set di 'Doc-Nelle tue mani'. Il dottor Argentero torna in corsia”. Repubblica (2020年7月6日). 2022年10月22日閲覧。
  11. ^ Luca Argentero: «Per “Doc – Nelle tue mani” abbiamo girato un finale straordinario»”. TV Sorrisi e Canzoni (2020年10月8日). 2023年1月9日閲覧。
  12. ^ Coronavirus, il primario che ha perso 12 anni di memoria: «A Lodi aiuto chi esce dalla rianimazione»”. Corriere della Sera (2020年3月12日). 2022年11月6日閲覧。
  13. ^ Il dottor Piccioni: "In coma persi 12 anni di memoria, oggi assisto chi esce dalla rianimazione a Lodi"”. HuffPost (2020年3月13日). 2022年10月22日閲覧。
  14. ^ Doc–Nelle tue mani, seconda stagione confermata”. TV Blogo (2020年10月8日). 2022年10月22日閲覧。
  15. ^ Doc–Nelle Tue Mani 2:al via le riprese”. Media Mai Srl (2021年5月17日). 2022年10月22日閲覧。
  16. ^ “Doc–Nelle tue mani”,sono partite le riprese della seconda stagione”. Mondadori Media S.p.A. (2021年5月25日). 2022年10月22日閲覧。
  17. ^ DOC - Nelle tue mani 2, Luca Argentero finisce le riprese della Fiction: "Ci ha reso persone migliori"”. MEDIASET (2022年1月9日). 2022年11月8日閲覧。
  18. ^ Doc - Nelle tue Mani, seconda stagione: quando va in onda, trama, cast e anticipazioni”. TODAY (2022年3月17日). 2022年11月8日閲覧。

外部リンク[編集]

NHK 総合 日曜23時台枠
前番組 番組名 次番組
DOC あすへのカルテ
<全16回>
(2022.10.9 - 2023.2.19)
レジデント・エイリアン
<全10回>
(2023.2.26 - )