DMF11系エンジン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動

DMF11系エンジンは、JRグループ民鉄第三セクター鉄道などの気動車に広く搭載されるディーゼルエンジンであり、小松製作所(コマツ)の「SA6D125H」モデルの国鉄式の呼称である。

概要[編集]

元はコマツが開発した建設産業機械用の高速エンジン「SA6D125」を鉄道車両用に横型化し改設計したものであり、開発設計に関わるコストが抑えられている。また、基本設計が古いDMH17系DMF15系に比べ、各国へも輸出されている実績のあるディーゼルエンジンをベースとしており、小型高出力・低燃費・良好な始動性・排気ガス規制対応の点で優れたものとなっている。コマツでの機種・商品名である「SA6D125H」をそのまま使用している鉄道会社もある。

国鉄改革によりJR民営化の機運が本エンジンの採用を後押ししたが、大改革の波の中でカミンズ製エンジンや新潟鐵工所製エンジン(現・IHI原動機)などとともに新たに採用された。同系列で出力・排気量の大きいコマツ「SA6D140H」(DMF15HZ系エンジン)もある。

従来の国鉄開発エンジンは非常に高い耐久性を最優先に開発したことから、一般的な産業用エンジンに比べ、非常に高価な鉄道専用エンジンであった。そのため、「オーバホール」と称して繰り返し内部部品のみを交換し、結果的に新品のエンジン以上の費用と手間をかけることになっていた。これには、エンジン全体の交換は多額の予算処置が必要であり、煩雑な承認を得る必要があるのに対して、部品交換は修繕費で実施できるという国鉄の会計上の理由があるほか、新品のエンジンへの交換による人員削減(オーバホールに関わる職員が不要になる)を恐れた組合側の反発が大きかった事情もあった。

それに対し、本エンジンは建設・産業機械に使用された格段に生産数が多い汎用エンジンがベースなので、価格も安く故障も少ないが、仕様上はDMH17系より耐久性が低いことになっている。

近年では排出ガス規制のため、耐久性の低さを逆手にとって10年から15年で最新型に更新する鉄道会社も多い。エンジン交換の費用がかかるものの、性能が向上しオーバーホールが不要になるため、結果的にコストダウンとなる。

開発経緯[編集]

国鉄末期の1987年、国鉄には、従来のエンジンでは出力が低くエンジンが大きく重いこと、独自設計で専用部品が多いため部品の供給体制が悪く、予備品を大量に持たなければならないことなどに対し、他産業の汎用のエンジンを活用したいという機運があった。

それまでは基本的に国鉄設計のエンジンを各エンジンメーカーが製造する形態であったため、汎用エンジンを採用するに当たってコンペを行うこととし、書類審査、単体耐久試験の後、コマツカミンズ新潟鐵工所の3社が選ばれ、1年間の営業運転で評価する形となった。1988年2月から1年間、キハ58系を用い、盛岡客車区で急行陸中南秋田運転所で急行よねしろの2編成で確認が行われた。盛岡のキハ58-628にコマツとカミンズが、キハ58-277に新潟が、秋田ではキハ58-122にコマツと新潟が、キハ58-82にカミンズがそれぞれ1台ずつ搭載された[1]

変速機は従来のものを使用したため入力トルクの制限からエンジン出力は250PSとして使用された。1年間の走行の後、エンジンは1社に絞られるはずであったが、結果的に3社とも採用される形になった[2]

コマツ小山工場の地元栃木県の真岡鐵道モオカ63形気動車が、本機種を採用し営業運転を開始した最初の車両となった。

1989年、この頃JR四国では2000系「TSE」の開発が進められ、小型軽量なエンジンでないと振り子式車両に重要な低重心化が図れないためコマツエンジンが採用された。排気量11Lで330PSと当時の鉄道エンジンと比べて大幅な排気量あたり出力比の向上であった[3][4]。この成功で、智頭急行HOT7000系JR北海道キハ281系(HEAT281)など制御付振り子式車両に展開され、さらに北近畿タンゴ鉄道KTR001形JR九州JR西日本にも一気に採用が広がっていくことになった。ただし、JR東海カミンズ製Nシリーズ(DMF14系エンジン)の採用に一本化したため、DMF11系およびDMF15HZ系の採用例は皆無である。

この系列のエンジンで出力向上型として、デュアルサーキット冷却系を採用し出力を400PSに増強した「SA6D125HD」エンジンがJR四国の一般型車1000形で使用されている。

JR東日本、JR北海道においては国鉄時代のエンジン形式命名ルールに従い「ディーゼル原動機、6気筒、排気量11リットル、過給機および中間冷却器装備」から「DMF11HSZ」の呼称とされているが、JR四国、JR九州、JR西日本および第3セクターなどではメーカー呼称そのままとしている。

諸元[編集]

メーカーによる呼称 S6D125H-1 SA6D125H-1 SA6D125HE-1 SA6D125HD-1 DMF11HZ N-DMF11HZA N-DMF11HZD
方式 直噴式 直噴式 直噴式 直噴式 直噴式 直噴式 直噴式 直噴式
シリンダ形状 横形直列 横形直列 横形直列 横形直列 横形直列 横形直列 横形直列 横形直列
シリンダ数 6 6 6 6 6 6 6 6
シリンダ径×行程 (mm) 125×150 125×150 125×150 125×150 125×150 125×150 125×150 125×150
過給方式 ターボチャージャー ターボチャージャー ターボチャージャー ターボチャージャー ターボチャージャー ターボチャージャー ターボチャージャー ターボチャージャー
インタークーラーの装備 なし あり あり あり あり あり あり あり
排気量 (l) 11.0 11.0 11.0 11.0 11.0 11.0 11.0 11.0
連続定格出力 (ps/rpm) 250/1900 355/2100 355/2100 400/2100 330/2100 355/2100 355/2100
組み合わされる液体変速機 新潟TACNコンバーター DW14
新潟TACNコンバーター
コマツKTF3335変速機
DW14
新潟TACNコンバーター
コマツKTF3335変速機
DW14
新潟TACNコンバーター
DW14
新潟TACNコンバーター
新潟TACNコンバーター 新潟TACNコンバーター -
全長 (mm)
全幅 (mm)
全高 (mm)

主な搭載車種[編集]

JRグループ[編集]

SA6D125H-1
SA6D125HE-1
SA6D125HD-1

私鉄・第三セクター鉄道[編集]

私鉄[編集]

SA6D125HE-2

第三セクター鉄道[編集]

S6D125H-1
SA6D125H-1
SA6D125HE-1
SA6D125HE-2

出典[編集]

  1. ^ 今野和市「更新用機関試験車両を運転して」『月刊ディーゼル』1988年12月号交友社
  2. ^ 尻引郁哉「気動車用の機関更新試験を終えて」『電気車の科学』1989年5月号 pp.34-40
  3. ^ 脇谷等志「振子気動車用の現車試験の概要」『月刊ディーゼル』1988年12月号交友社
  4. ^ 谷操「2000系特急気動車」『車両と電気』1992年2月号