BMW・i3

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i3(アイスリー)は、ドイツ自動車メーカー・BMWが製造・販売していた電気自動車あるいはPHEVである。

Bセグメントのハイルーフ・ハッチバックで、シングル・スピード・トランスミッションを介した後輪駆動で走行する。動力源は床下のリチウムイオン・バッテリー・パックを使用した電気パワートレインであり、オプションでレンジ・エクステンダー・ガソリン・エンジンを搭載している。i3は、BMW初の量産型ゼロ・エミッション車で、BMWの電気自動車サブブランド「BMW i」の一環として発売された。[1]

2013年の発売開始から2022年の発売終了まで、PHEVとして世界トップの全電気航続距離(203km、EPA基準)を有していた。

歴史[編集]

2000年代後半、CEOだったノルベルト・ライトホーファーが、シニアエンジニアのウルリッヒ・クランツに対し、モビリティを専門とする新しいシンクタンクの立ち上げを命じていた。グループの使命は、スポーツカーと巨大都市の移動手段としてのクルマに主眼を置いたBMWの電動モビリティプロジェクトを、何もない状態から構築するというものだった。[2]

2011年、i3はフランクフルトモーターショーでコンセプトモデルとしてデビューし[1]、2013年9月にi8とともにライプツィヒで生産が開始された[3]

2014年から2016年までに世界で販売された電気自動車の中で3位にランクインし、2020年10月に20万台目が生産されている[4]。アメリカは、2019年12月までに約42,000台が納入された、最も売れている市場になる。

i3は、「ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー」を2回受賞しており、「2014ワールド・グリーン・カー・オブ・ザ・イヤー」に選ばれたほか、「2014ワールド・カー・デザイン・オブ・ザ・イヤー」にも選ばれている[5]。さらに、iFプロダクトデザイン金賞を受賞し、第1回UKカー・オブ・ザ・イヤーでは、UKカー・オブ・ザ・イヤー2014とベスト・スーパーミニ・オブ・ザ・2014の両方を受賞した。

2022年6月30日、EV『i3』の最終モデル、「ホームラン・エディション」の10台がラインオフし、同車の生産を終了した。BMW初の本格量産EVのi3が、発売から約8年半を経て約25万台を生産し、その歴史に幕を下ろした[6]

初代 (2014年 - 2022年)[編集]

BMW・i3
I01
BMW i3 01.jpg
2014年販売型
BMW i3 – Heckansicht, 14. September 2013, Frankfurt.jpg
2018 BMW i3 facelift (1).jpg
2018年改良型
概要
製造国 ドイツの旗 ドイツ ライプツィヒ[7]
販売期間 2014年 - 2022年
ボディ
乗車定員 4
駆動方式 後輪駆動
パワートレイン
エンジン 直列2気筒DOHC4バルブ(発電用)
モーター 永久磁石同期電動機
最高出力 125kW (170PS)/5200rpm
最大トルク 250Nm (25.5kgm)/100-4,800rpm
変速機 シングル・スピード
サスペンション
(前)マクファーソンストラット
(後)マルチリンク式
車両寸法
ホイールベース 2,570 mm
全長 3,999 mm
全幅 1,775 mm
全高 1,578 mm
車両重量 1,260kg
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2013年7月30日に発表、欧州市場では2013年11月より発売開始された[8]。製造はドイツ・ライプツィヒ工場。

2022年6月30日、最終モデルの10台がラインオフし、同車の生産を終了した[6]

車体[編集]

軽量化のため車体の大部分に炭素繊維強化樹脂(CFRP)が採用された初の量産車である[9]

前方に内燃機関がないことを利用して、スポーツライクな外観を持つ「クリーンシート・デザイン」を与えられた。また、持続可能性というコンセプトを具体化すべく、シート素材はペットボトルなどリサイクル材を100%使用し、インパネにはユーカリの木材、ダッシュボードには天然のケナフ麻の繊維が採用された[10][11]。 これらは車内のデザイン要素となるほか、軽量化にも一役買っている。さらに、オプションのシートレザーにはオリーブの葉のエキスでなめしたものを、ダッシュボードトリムにはヨーロッパで認証栽培された環境に配慮した木材を使用するなど、環境への配慮も重視されている[12][13]

5ドア、4人乗りで、リアはスーサイドドアを装備している。

動力系[編集]

最高出力125kW(170hp)/最大トルク250Nmを発揮するモーターや、制御系などのパワーエレクトロニクスは、後輪の車軸上にコンパクトにまとめて搭載された。BMWの身上である前50:後50の重量配分を貫くため、このような設計となっている。この構造は重心を低めることにもつながり、操縦性能も高められているという。時速0~100kmの加速は7.2秒。

バッテリーは、デビュー当時は22kWh(60Ah)を搭載。その後、2016年から33kWh(94Ah)に大容量化された。充電はフロントフードを開けて行い、32A対応電源ならAC急速充電で80%まで3時間。50kWDC充電なら30分もかからない。普通充電だと満充電まで8時間かかる。バッテリー増量後は、それに応じて所要時間も伸びた。[14][15]

発電用エンジン(台湾キムコ製)を搭載したレンジエクステンダー仕様も用意される。エンジンは647ccの2気筒であり、モーターへの電気を発電する。タンク容量は9lで、燃費は19km/l(WLTCモード)。[16]

操作[編集]

アクセルペダルの操作のみで速度調節が可能なワン・ペダルドライビングを採用している[14]

一般的なAT車と同様に、2つのペダルがある。アクセル・ペダルは、アクセルとエンジン・ブレーキの両方の役割を果たし、ドライバーがペダルを離すと、車両の運動エネルギーが車両のドライブトレインによって回生され、バッテリーが充電される。これにより、車の速度が低下する。BMWの実験では、このようなシステムを搭載する車では、多くの運転手がエンジン・ブレーキを多用し、都市交通圏では減速操作の約75%がブレーキペダルなしで走行された。[17]

日本市場での歴史[編集]

日本市場では2014年4月に発売された[18]

参考文献[編集]

  1. ^ a b “Will Plug-In BMWs Turn Enthusiasts On?”. The New York Times. (2011年7月29日). https://www.nytimes.com/2011/07/31/automobiles/will-plug-in-bmws-turn-enthusiasts-on.html 2021年12月12日閲覧。 
  2. ^ さらば「BMW i3」。“変化する未来”を先取りしたEVのレガシーは、こうして受け継がれる”. WIRED.jp. 2022年8月7日閲覧。
  3. ^ BMW Unveils i3 Electric Car”. The New York Times. 2021年12月12日閲覧。
  4. ^ “BMW Has Fallen Behind in the Electric Vehicle Race. Can It Catch Up?”. The New York Times. (2021年8月10日). https://www.nytimes.com/2021/08/10/business/bmw-electric-car.html 
  5. ^ New York Auto Show: BMWi3 Is The 2014 World Green Car Of The Year”. Forbes. 2021年12月12日閲覧。
  6. ^ a b BMW『i3』生産終了、最終モデル「ホームラン・エディション」”. レスポンス. 2022年8月7日閲覧。
  7. ^ SUSTAINABLE MANUFACTURING. BMW iの生産 -持続可能なモノづくり- 24ページ目
  8. ^ “独BMW、同社初の量産EV「i3」を発表、日本市場では2014年上半期に発売予定”. http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20130730_609645.html 2013年11月11日閲覧。 
  9. ^ CFRPがクルマづくりを一変、「i3」で大勝負に出たBMW”. 日経クロステック(xTECH). 2021年12月21日閲覧。
  10. ^ BMW「i3」が示す"本当のエコカー"”. 東洋経済オンライン (2013年11月18日). 2021年12月21日閲覧。
  11. ^ エコなのはパワートレインだけじゃない。BMWの電気自動車・新型i3の魅力をチェック!”. clicccar.com. 2021年12月21日閲覧。
  12. ^ The BMW i3 Is Officially Much Greener Than Almost Every Other Car”. Jalopnik. 2021年12月21日閲覧。
  13. ^ BMWの「i3」は電気自動車だからエコってわけじゃない、作り方までエコだった!”. MONOist. 2021年12月21日閲覧。
  14. ^ a b BMW i3はクルマ好きをも虜にするEV”. All About. 2021年12月21日閲覧。
  15. ^ BMW i3 Charging: The Ultimate Guide”. Plugless Power. 2021年12月21日閲覧。
  16. ^ BMWの電気自動車「i3」は軽量化を突き詰めたクルマだった!”. MONOist. 2021年12月21日閲覧。
  17. ^ Mini E Only Beginning of BMW EV Strategy”. waybackmachine. 2021年12月22日閲覧。
  18. ^ BMW i3の自動車カタログ・価格比較”. カカクコム. 2014年8月21日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]