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BMW・N55エンジン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

BMW・N55エンジンとは、BMW直列6気筒ガソリンターボエンジン。2009年に5シリーズグランツーリスモに搭載され、N54エンジンが順次このエンジンに置き換えられた。本項では、N55をベースにして開発されたS55エンジンについても解説する。

特徴

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BMW N55エンジン

前身となるN54エンジンからの変更点は、タービンの種類、 バルブトロニック(可変バルブリフト)の採用、インジェクターの種類の3つが主なものである。

タービンは、N54エンジンがツインターボだったのに対して、N55エンジンではシングルターボ(ツインスクロールターボ)となっている[1][2]。ツインスクロールターボはBMWではN55エンジンが初であった。可変バルブタイミング機構(ダブルVANOS)に加えてバルブトロニックを搭載することにより低燃費化や排ガス浄化などのメリットが得られた。バルブトロニック自体は、自然吸気エンジンのBMW・N52エンジンでも搭載されていたが、直噴化によりヘッド周辺の空間的余裕がなくなったため、N53エンジンやN54エンジンでは搭載できなかった。N55エンジンでは、バルブトロニックシステムの小型化により直噴エンジンでも搭載が可能になった。インジェクターは、N54エンジンが高価なピエゾタイプのインジェクターを使用したが、故障が頻発して大きな問題となっていた。N55エンジンでは安価なソレノイドタイプのインジェクターでも運用を可能とした[3]ヨーロッパ以外の地域では入手できるガソリンのオクタン価の関係でピエゾタイプのインジェクターの価値が発揮されず無駄と判断されたのも理由の1つである[3]。N54エンジンで同じく頻発した高圧燃料ポンプの故障の問題も対策された。インタークーラーは空冷式を採用する[3]

ツインスクロールターボチャージャーは、2つの排気ポートを活用して、片側のポートにシリンダー1-2-3、もう片方に4-5-6の排気ガスが導入されるように接続されている[4]。シングルターボになったにもかかわらず、ピークブーストに到達するエンジン回転数は100回転低くなった。またシングルターボ化によって、エンジンルーム内への排気熱の放射が減り、周辺のゴムパーツやプラスチックパーツの劣化が抑制された。N54エンジンでは空気圧によってウエストゲートがコントロールされていたが、N55では電気駆動に変更され、より精密で高度なブースト圧の制御を可能とした。

N54エンジンが既に存在するのに、大して出力が変わらないN55エンジンを開発した理由は、タービンや触媒を1個に統合にすることで、エンジン始動後の触媒の加熱を早めることが出来、排気ガス規制への対応に有利であるのと、低燃費化による温室ガス排出規制への対応が主な目的であった(N54エンジンはタービンも触媒も2つ存在する)[3]無段階可変バルブ制御テクノロジーのバルブトロニックを組み合わせにより、BMW・N54エンジンと比較して同等の最高出力と最大トルクをより幅広い回転域において発生させながら、他の省エネ技術も併用することにより搭載モデルによっては従来比で約15%もの燃料消費率向上を実現した[5]。N54と比較して低速領域でのトルク特性も改善しているほか[3]、シングルタービン化によりフロントパイプの不等長に基因する排気の不快な干渉音が解消されている。

2018年にB58エンジンが登場し、N55エンジンはそれに徐々に置き換えられた[6]。B58エンジンはN55エンジンと比較してロングストロークとなっており、低速トルクに勝りオートマチックトランスミッションとの相性が良いとされる一方、昔ながらのBMW直6ならではの繊細な感触は薄く、V8エンジンに似たフィーリングだとされる[7]

バージョン

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  • N55B30M0はN55の最初のバージョンで、クランクシャフトが鍛造ではなく鋳造で製造された。またウエストゲートのコントロールはN54と同じ空気圧駆動が採用されている。2014年以降に製造されたN55B30M0はウエストゲートが電気式に変更され、高圧燃料ポンプも改良されたものが採用された。
  • N55B30O0は、F22 235iに搭載されたエンジンで、クランクシャフトが鍛造となっている。インタークーラーとオイルクーラーがN55B30M0と比較して拡大され、タービンやECU制御も改善されている。
  • N55B30T0は、M2用に開発された。低抵抗のトップリングを使用したピストンが使用され、M4クーペで使用されたクランクシャフトのメインベアリングや点火プラグが採用され、オイルサンプカバーやサクションオイルポンプもM2の専用品が使用され[8]、強い横Gがかかった状態でもオイルパン内部のオイルが偏在しにくい構造になっている。タービンもN55B30O0と比較して大型化されている。また5秒間のオーバーブースト機能も搭載された。
名称最高出力トルク最高回転数製造年
N55B30M0225 kW (302 bhp)
at 5,700–5,800 rpm
400 N⋅m (295 lb⋅ft)
at 1,200–5,000 rpm
7,000 rpm2009–2019
N55B30235 kW (315 bhp)
at 4,505–6,000 rpm
450 N⋅m (332 lb⋅ft)
at 1,300–4,500 rpm
2011–present
N55B30O0240 kW (322 bhp)
at 4,505–6,000 rpm
2014–2016
N55HP250 kW (335 bhp)
at 4,505–6,000 rpm
2013–2015
N55B30T0265 kW (355 bhp)
at 5,255–6,000 rpm
465 N⋅m (343 lb⋅ft)
at 1,350–5,250 rpm
2015–present
272 kW (365 bhp)
at 6,500 rpm
500 N⋅m (369 lb⋅ft)
at 1,450–4750 rpm
Alpina301 kW (404 bhp)
at 5,500–6,250 rpm
600 N⋅m (443 lb⋅ft) at
3,000–4,000 rpm
2013–2017
324 kW (434 bhp)
at 5,500–6250 rpm
660 N⋅m (487 lb⋅ft) at
3,000–4,000 rpm
2017–present
332 kW (445 bhp)
at 5,500–6,250 rpm
680 N⋅m (502 lb⋅ft) at
3,000–4,500 rpm
2018–present

搭載車種

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N55B30

BMW・S55エンジン

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BMW・S55エンジンは、N55エンジンをベースに開発された高出力エンジンである。主な違いは、N55がオープンデッキであるのに対して、S55はクローズドデッキとなっており、シリンダーブロックの剛性が向上していることである。またN55がシングルターボであるのに対して、S55はツインターボとなりエアクリーナーも2基装備されている。インタークーラーは水冷となった。クランクシャフトは軽量化され、異型サイズのベアリングが使用された。強化ピストン、強化コンロッド、強化バルブスプリングが採用され、バルブの素材も変更された。冷却システムや燃料供給システムも強化されている。最高回転数も7000回転から7600回転に向上している。ツインタービン化により、マフラーのダウンパイプ、センターパイプも2本になっている。BMW S65自然吸気V8エンジンに代わってF80 M3とF82 M4に導入され、後にF87 M2 Competition/CSにも搭載された。設定出力によって使用されるパーツは異なり、N55と同じカムシャフトやコンロッド、オイルパンを使用するモデルもある。

205 kW (275 bhp)268 kW (359 bhp) version

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  • 2020–2021 F87 M2 CS Racing[9]

302 kW (405 bhp), 550 N⋅m (410 lb⋅ft) version

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317 kW (425 bhp) version

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331 kW (444 bhp) version

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  • 2016–2018 F80 M3 with Competition package[12]
  • 2016–2020 F82/F83 M4 with Competition package[13]
  • 2020–2021 F87 M2 CS[14]

338 kW (453 bhp) version

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368 kW (493 hp) version

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このバージョンは、 368 kW (493 hp)600 N⋅m (443 lb⋅ft)を発揮する[15]。インテークマニホールド内に水噴射システムを搭載している。エンジンの回転数が5000回転以上になると、インテークマニホールドに装着された3つのインジェクターから水が噴射される。噴射された水はインマニ内で瞬時に気化し、インタークーラーを通過した後の加給気を更に最大25度冷却することができる。それにより加給圧を17.2 psi (1.19 bar) から 21.6 psi (1.49 bar)[16][17]に高めることが出来た。

  • 2015–2016 F82 M4 GTS
  • 2017 F82 M4 DTM Champion Edition[18]

参照

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参考文献

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  1. Ryan ZumMallen. Pop The Hood: Inside the Innovative N55 Engine in the BMW 335i”. Automedia.com. 2012年8月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年3月6日閲覧。
  2. BMW unveils single turbo N55 six-cylinder engine for new 5-series GT”. Motorauthority.com (2009年5月26日). 2025年3月6日閲覧。
  3. 1 2 3 4 5 BMW's Newest I-6 Better, Not Bigger”. Wardsauto.com. 2025年3月6日閲覧。
  4. Turbocharging Technology (F30)”. Kneb.net. 2015年6月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年3月6日閲覧。
  5. BMW JAPAN : BMW 1 シリーズ全車の燃費を大幅に改善”. 2025年3月6日閲覧。
  6. BMW University Technical Training- B58 Engine”. Bimmerfile.com. 2025年3月6日閲覧。
  7. BMW M2クーペ(FR/6MT)【試乗記】 webCG 2017年8月30日閲覧
  8. BMW M2 クーペに試乗|BMW 2025年4月8日閲覧
  9. “BMW M2 CS Racing makes its North American debut”. autodevot.com (英語). 2020年2月2日閲覧.
  10. “BMW M2 Competition specs leaked”. MotorMag.com.au (英語). 2018年4月10日閲覧.
  11. 1 2 2013 BMW M3 F80 specifications”. Carfolio.com. 2017年7月21日閲覧。
  12. BMW M3 Sedan – BMW Australia”. Bmw.com.au. 2018年5月30日閲覧。
  13. BMW M4 Coupé – BMW Australia”. Bmw.com.au. 2018年5月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年5月30日閲覧。
  14. 444-Horsepower M2 CS Can Be Had With 3 Pedals (英語). BimmerLife (2019年11月6日). 2019年12月31日閲覧。
  15. 2015 BMW M4 GTS specifications”. Carfolio.com. 2017年12月30日閲覧。
  16. First Drive Review – 2016 BMW M4 GTS”. Caranddriver.com. 2017年12月30日閲覧。
  17. The 2016 BMW M4 GTS is a street-legal water-injected track monster, and it's coming to the US”. Autoweek.com. 2017年12月30日閲覧。
  18. BMW M4 DTM Champion Edition marking Marco Wittmann's 2016 DTM championship title.”. BMW PressClub Global. 2019年10月31日閲覧。