Aqua (コンピュータ)
Aqua(アクア)とは、AppleがMac OS X v10.0で採用した一連のGUIのデザイン(ビジュアルテーマ)の名称である。
概要
[編集]水や滴(しずく)をイメージした、白と水色が基調の立体的なGUIが特徴である。流れるようなアニメーションが用いられ、動的な操作性を提供する。スコット・フォーストールが開発を主導した[1]。
Aquaは2D部分をQuartzと呼ばれるグラフィックライブラリによって、PDFベースで実現され、レンダリング、アンチエイリアス、合成といった機能が備わっている。また、3D部分はOpenGLをベースにしている[2]。
初期のMac OS XではGUI全体の動作速度について批判されていたが、アップデートのたびに、Quartz ExtremeやCore ImageによりGPUに処理を渡すことで改善された。
導入の背景
[編集]1990年代、Appleは長年 Pink、Taligent、Coplandといったコードネームのプロジェクトを含む次世代のMac OSの開発に取り組んできたが失敗していた。Mac OS Xは最終的にはNeXTSTEP上に構築されたが、これはAppleがNeXTを買収し、同社のCEOであるスティーブ・ジョブズがAppleに復帰した後のことである[3]。
Rhapsodyの開発コードネームで知られる次世代のオペレーティングシステムは、通常のデスクトップユーザーの利用は想定されないサーバー向けのリリースであった。そのため、GUIもMacOS 8の「Platinum」とOpenStepの外観を融合した暫定的なユーザーインターフェイスに留まった。しかしながら、一般ユーザーにとって分かりやすいGUIの必要性があったため、スコット・フォーストールを中心としたチームによって[4]新たなGUIの開発は進行し、2000年1月のMacworld Expoで発表された[5][6]。その発表時、ジョブズは「見たときに舐めたくなるようなデザインが目標の1つであった」と語った[7]。
変遷
[編集]OSのメジャーアップデートのたびに、デザインにも手を加えられ、初期の姿からは大きく変貌している。またMac OS X v10.2以降、2xAGP以上のバスに接続されたGPUが搭載されたマシンでは、Quartz Extremeにより高速な描画が可能である。Mac OS X v10.3からMac OS X v10.4までは金属表面のヘアライン処理を意識した “Brushed Metal” と呼ばれるユーザーインタフェースデザイン[8]も併用され、Mac OS X v10.5以降は従来のAquaと統合された。
Mac OS X v10.3までのAquaウインドウのタイトルバーやプルダウンメニューは、半透明で淡い横縞模様が入った特徴的なデザインであったが、Mac OS X v10.4でAquaウインドウのタイトルバーが灰色無地で不透明になり、メニューの透明度も下げられた。
Mac OS X v10.5では、“Brushed Metal” デザインがAquaデザインに加わり、タイトルバーがグレーになった。プッシュボタンから水色の影がなくなった。プルダウンメニューの背景は不透明になり、コンテキストメニューは低い透明度の白無地になった。
Mac OS X Lionでは従来の水色のスクロールバーが操作時にのみ表示されるグレーのオーバーレイ・スクロールバーに変えられた。プッシュボタンが角の丸い長方形となった。タブ、プルダウンメニューから水色が排された。
アプリケーションやツールバーのアイコンは、ガラスやステンレスやプラスチックを思わせる、透明感や光沢を強調した写実的なものが用いられていたが、Mac OS X v10.3あたりからアルミや不透明なプラスチックを意識した、ソリッドなアイコンも使われるようになった。
iOSのデザインにも多大な影響を与えていたが、ジョナサン・アイブがソフトウェア含めたApple製品全般のデザインを統括するようになり、一気にソフトウェアの方向性が変わった。それにより、iOS 7を皮切りにApple製品のOSがフラットデザインに徐々に移行し、MacのOSもOS X Yosemiteでフラットデザインに移行[9]となり、一部の古いソフト以外で従来のAqua/Metalデザインは使われなくなった。
脚注
[編集]- ^ Bonnington, Christina. “Why Apple (and You) Might Miss Scott Forstall” (英語). Wired. ISSN 1059-1028 2024年9月16日閲覧。
- ^ “アップル、「Mac OS X」を発表”. Apple Newsroom (日本). 2024年9月16日閲覧。
- ^ 『Aqua and Bondi: The Road to OS X & The Computer That Saved Apple』Hackett Technical Media、2016年。ISBN 978-0-9979937-0-7。
- ^ Bonnington, Christina. “Why Apple (and You) Might Miss Scott Forstall” (英語). Wired. ISSN 1059-1028 2024年9月16日閲覧。
- ^ “アップル、「Mac OS X」を発表”. Apple Newsroom (日本). 2024年9月16日閲覧。
- ^ ASCII. “【MACWORLD Expo/SFレポートVol.4】MacOS Xで採用された新インターフェース“AQUA””. ASCII.jp. 2024年9月16日閲覧。
- ^ “Macworld San Francisco 2000”. YouTube. 2021年12月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年9月16日閲覧。
- ^ Mac OS X 10.0〜10.12の歴史を振り返ってみる | IT Strike
- ^ YosemiteのUIから考察:OS Xのデザインはどこへ向かうのか?|Mac - 週刊アスキー