ハウクスボーク

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ハウクスボーク古ノルド語: Hauksbók、「ハウクルの本」の意)[注 1]とは、現在その制作者が知られているものとしては数少ない、中世北欧写本の1つである。「AM 371 4to[2]」「AM 544 4to[3]」「AM 675 4to[4]」の3つの写本から成る。

制作者はハウクル・エルレンズソン(? - 1334年アイスランド法官英語版)であると考えられている。これは写本の出所を可能な限り遡って突き止められたものであり、この著者にちなんで『ハウクスボーク』と呼ばれている。この写本は一部は彼自身によって、一部は助手によって書かれたものであると考えられている。

『ハウクスボーク』は、時にそれが唯一の現存している版でもある、多くの古アイスランド語テキストを含んでいる。それは例えば『植民の書』であり、『義兄弟のサガ英語版』であり、『赤毛のエイリークのサガ』であり、『ヘルヴォルとヘイズレク王のサガ』であり、そして『巫女の予言』である。

また『ハウクスボーク』には、「アルゴリスムス」(Algorismus) と呼ばれている、数学に関するページから成る節が含まれている。これはスカンディナヴィア語で書かれた、数学に関する最古のテキストである。おそらく、より古い時期の本に含まれていた数ページの、ラテン語から北欧語へ翻訳されたものであるだろう。そうした本とは、例えば1200年アレクサンドル・ドゥ・ヴィルデュ英語版(フランス人の作家・数学者)により書かれた『Carmen de Algorismo』であり、1202年フィボナッチ (Fibonacci) による『算術の書 (Liber Abaci)』であり、1230年サクロボスコ (De Sacrobosco) による『Algorismus Vulgaris』である。

収録作品[編集]

ハウクスボークの既知の収録作品は以下[5][6][7]

AM 371 4to[編集]

  1. (1r-14v): 『植民の書
  2. (15r-18v): 『キリスト教のサガ英語版

AM 544 4to[編集]

  1. (1r-14v): 地理・自然現象・聖書物語に関する、様々な情報源から取り出された百科事典的な情報
  2. (15r-19v): 哲学・神学に関する、様々な情報源から取り出された百科事典的な情報
  3. (20r-21r): 『巫女の予言
  4. (22r-33v): Trójumanna saga  (en
  5. (34r): 「七つの貴重な石とその自然」(Seven Precious Stones And Their Nature) と呼ばれるテクスト
  6. (35v): Cisiojanus  (de (年間の教会の祭事を記憶するための韻文調のラテン語の列挙)
  7. (36r-59r): 『ブリトン人のサガ英語版』(『メルリーヌースの予言英語版』を含む)
  8. (60r-68v): 魂と体の間の対話2篇
  9. (69r-72v:9): Hemings þáttr Áslákssonar  (es
  10. (72v:9-76v): 『ヘルヴォルとヘイズレク王のサガ
  11. (77r-89v:35): 『義兄弟のサガ英語版
  12. (89v:35-93r:17): 『アルゴリスムス英語版
  13. (93r:17-101v:24): 『赤毛のエイリークのサガ
  14. (101v:25-104v:17): Skálda saga Haralds konungs hárfagra  (es
  15. (104v:18-105r:21): Af Upplendinga konungum  (en
  16. (105r:21-107v): 『ラグナルの息子たちの話英語版
  17. (107v): Prognostica Temporum

AM 675 4to[編集]

  1. エルキダリウス英語版』(Elucidarius)

刊本[編集]

ハウクスボークは、写本に含まれていた個々のサガの刊本において、証拠として含まれていることがある。写本全体として編集されているものは以下:

  • Hauksbók, udg. efter de Arnamagnæanske håndskrifter no. 371, 544 og 675, 4̊, samt forskellige papirshåndskrifter af det Kongelige nordiske oldskrift-selskab, ed. by Finnur Jónsson and Eiríkur Jónsson (København: Thiele, 1892–96)[8]
  • Hauksbók: The Arna-Magnæan Manuscripts, 371, 4to, 544, 4to, and 675, 4to., ed. by Jón Helgason, Manuscripta Islandica, 5 (Copenhagen: Munksgaard, 1960) [facsimile]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 日本語表記としては他に、ハウク本ホイクルの書[1]などがみられる。

出典[編集]

  1. ^ 「ホイクルの書」の表記は以下の出典にみられる:林, 邦彦 著「『ブリタニア列王史』のアイスランド語翻案『ブリトン人のサガ』の二ヴァージョン アーサー王をめぐる部分を中心に」、渡邉浩司 編『アーサー王伝説研究 中世から現代まで』中央大学出版部〈中央大学人文科学研究所研究叢書71〉、2019年12月15日、209-238頁。ISBN 978-4-8057-5355-2  p. 211.
  2. ^ skaldic - AM 371 4to (Hauksbók)
  3. ^ skaldic - AM 544 4to (Hauksbók)
  4. ^ skaldic - AM 675 4to (Hauksbók)
  5. ^ Landnámabók og Kristnisaga - Manuscript - Handrit.is”. Handrit.is. 2017年11月2日閲覧。
  6. ^ Hauksbók - Manuscript - Handrit.is”. Handrit.is. 2017年11月2日閲覧。
  7. ^ Hauksbók: Elucidarius - Manuscript - Handrit.is”. Handrit.is. 2017年11月2日閲覧。
  8. ^ Hauksbók” (PDF). Septentrionalia.net. 2017年11月2日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]