AH-X

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AH-X(エーエイチエックス)は、"Attack Helicopter-X"の略称で陸上自衛隊次期攻撃ヘリコプター導入計画を示す。

AH-1S後継機[編集]

現在の陸上自衛隊攻撃ヘリコプターとしてAH-1Sを採用している。原型となったAH-1 コブラは、ベル・エアクラフト1960年代に開発した世界初の攻撃ヘリコプターであり、陸上自衛隊のAH-1Sも運用開始から30年が経とうとしており、老朽化が進んでいる。

そのため、防衛庁(現防衛省)は、2005年(平成17年)からAH-64D アパッチ・ロングボウを後継機として導入する事を決定した。AH-Xの選定には、他にAH-1Z ヴァイパーAH-1W スーパーコブラの能力向上型)なども参加していたが、これらの機種は開発時期や性能などから採用されなかった[注 1]。こうして、AH-64Dを60機導入する事が決定した。

AH-64調達停止[編集]

AH-64Dの取得は、ボーイング2007年(平成19年)にブロックIIの生産終了を発表したため、部品供給を前提とした富士重工業ライセンス生産が不可能となり、中期防衛力整備計画(平成17年度~平成21年度)中に調達機数13機で打ち切られることになった。

このため、平成20年度での調達では富士に開設した生産ラインの設備投資額(約400億円)が加算され(本来なら長期間にわたって分割加算されるもの)、1機あたり約212億円(航空自衛隊F-15J戦闘機2機分に相当)の超高額機となった。この調達予算は財務省に認められずに終わった。翌21年度も調達条件が同じであったため残り3機の調達を取りやめ2007年(平成19年)度予算までの10機で調達を停止することとした。しかし、結局中期防衛力整備計画(平成23年度~平成27年度)で残り3機の調達が決定され、2011年(平成23年)から2013年(平成25年)度までの予算で3機の予算が計上された。

この結果として、当初調達予定数の60機に遥かに満たないため、新たに別機種の導入を含めてAH-Xを見直しする方向で検討に入った。

候補[編集]

この新たなAH-1S後継機の候補機については、防衛省は正式な候補機を挙げなかった。しかし、現在までにAH-1Z ヴァイパーAH-64D アパッチ・ロングボウOH-1重武装型、ティーガーなどが有力候補としてマスコミなどで報じられた。

AH-64Dについては、ボーイング社が平成19年度まで調達したブロックIIではなくブロックIII(現:AH-64E アパッチ・ガーディアン)を提案している。

OH-1の重武装型については川崎重工業が提案していたが、UH-Xの白紙化に伴い消えたとされる[3]

また、UH-Xをベースとした武装偵察型を開発し、並行して13機が調達されたAH-64D戦闘ヘリコプターをAH-64E仕様へと改修、AH-64Eを1個飛行隊分新規導入するという計画もあるとされる[3]

無人機への移行[編集]

2022年、防衛省は方針を転換しAH-64D、AH-1S、OH-1などを廃止、任務を無人航空機に移行する計画であると報道された[4]。同年12月16日に政府が閣議決定した防衛力整備計画でこの方針が明記された[5]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ これに先立ち、国産開発の選択肢について1997年(平成9年)頃から2000年(平成12年)初めにかけてOH-1をベースとして開発する案も検討されていたが[1]、こちらも時期尚早であるとして見送られていた[2]

出典[編集]

  1. ^ 石橋一弘 (2021). “国産AH-X案の技術的側面(その1)”. 防衛技術ジャーナル 489: 28. 
  2. ^ 石橋一弘 (2022). “国産AH-X案の技術的側面(その3)”. 防衛技術ジャーナル 491: 28. 
  3. ^ a b 『Jウィング』、イカロス出版、2014年4月、95頁。 
  4. ^ 空自捜索機や陸自戦闘ヘリを廃止、無人機で代替へ…防衛予算効率化”. 読売新聞オンライン (2022年12月9日). 2022年12月9日閲覧。
  5. ^ “AH-64DアパッチにU-125Aも…陸自戦闘ヘリや空自捜索機など廃止決定、無人機の時代へ”. FlyTeam. (2022年12月21日). https://flyteam.jp/news/amp/138141 2022年12月27日閲覧。 

参考項目[編集]

外部リンク[編集]