高等研究実習院
高等研究実習院(フランス語 :École pratique des hautes études、略称 :EPHE)は、フランスのパリ14区にあるPSL研究大学の一校であり、文献学・歴史学及び宗教学を専門とする世界有数の研究機関のひとつである。宗教学、歴史学、生命・地球科学を専門にした大学卒業者、あるいは大学院修士課程(博士前期課程)修了者を対象とした大学院である[1]。
1868年に設立された、グランゼコールの一つ。なお、この機関の名称の日本語訳はまだ定訳がないようであるが、本項目では比較的よく用いられる「高等研究実習院」という訳語を採用する。公教育相ヴィクトル・デュリュイの認可により発足した。現在では教育担当大臣の管轄下にある高等教育機関である。
沿革
フランス第二帝政下で公教育相ヴィクトル・デュリュイの起草によって出された1868年7月31日の帝令により創設。大学世界だけでなく万人のための教育機関になることを理念とした。創立当初は4部門に分かれていた。
- 第1部門 - 数学
- 第2部門 - 物理学・化学
- 第3部門 - 自然科学・生理学
- 第4部門 - 歴史学・文献学
その後1886年に第5部門(宗教学)、さらに1947年には第6部門(経済・社会科学)を拡充した。その後第1部門を大学機関に、第2部門をフランス国立科学研究センター(CNRS)に委譲した。また、1975年には第6部門が独立し、社会科学高等研究院となった。
今日では以下の3部門と1研究所から構成される。
- 生命科学・地球科学 - かつての第3部門
- 歴史学・文献学 - かつての第4部門
- 宗教学 - かつての第5部門
- 宗教学ヨーロッパ研究所(Institut Européen en Sciences des Religions)
研究・教育
高等研究実習院は国際的に名声ある研究機関であり、実習を通じて、生命科学・地球科学・歴史学・文献学・宗教学の基礎的および応用的研究を行っている。全体で240人の研究者がいる。うち170人は教授(正確には研究ディレクターDirecteurs d'études)、70人は助教授(Maîtres de conférences)である。この他に30人程の専門研究員がいる。パリ大学の大学院に相当する機関として、学生・聴講者数は3200人(2006年新学期)。その32 %を留学生が占める。教育の水準は高いが、資格が発行されない自由聴講生としても聴講できるという特徴をもつ。
主な出身者
- ロジェ・カイヨワ - 哲学者、社会思想家、文芸批評家
主な関係者
- モニック・アドルフ - 細胞生物学
- アンドレ・マルティネ - 言語学
- ロラン・バルト - 記号学
- ジャン・ボベロ - 宗教社会学
- エミール・バンヴェニスト - 言語学
- ミシェル・ブレアル - 比較文法学
- イヴ・コペンス - 古生物学
- ルイ・デュシェーヌ - 文献学
- ジョルジュ・デュメジル - 文献学
- アレクサンドル・コジェーヴ - 哲学
- クロード・レヴィ=ストロース - 人類学
- ガストン・マスペロ - エジプト学
- アンリ・モアッサン - 化学。1906年ノーベル化学賞
- ブリュノ・ヌヴー - 歴史学
- エリザベト・ルディネスコ - 精神分析学
- ジェルメーヌ・ティリオン - 民族学
- ピエール・ルジャンドル - 宗教学
- アルベール・メンミ - 社会心理学
歴代院長
- 1990年-1994年 モニック・アドルフ
- 1994年-1998年 ブリュノ・ヌヴー
- 1998年-2002年 ジャン・ボベロ
- 2002年-2006年 マリ=フランソワーズ・クーレル
- 2006年-2010年 ジャン=クロード・ワケ
脚注
- ^ “École Pratique des Hautes Études”. www.ephe.fr. 2019年7月11日閲覧。