電子レンジ

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電子レンジ。
量販店の棚に並ぶ様々な電子レンジ。

電子レンジ(でんしレンジ、: microwave oven)とは、電磁波電波)により、水分を含んだ食品などを発熱させる調理機器である。

日本における「電子レンジ」という名称は、1961年(昭和36年)12月、急行電車のビュフェ(サハシ153形)で東芝の製品をテスト運用した際に、国鉄の担当者がネーミングしたのが最初とされる[1]。その後市販品にも使われ、一般的な名称となっていった。

英語では microwave oven (マイクロウェーブ・オーブン、直訳すると「マイクロ波オーブン」)で、しばしば microwave と略される[2]electronic ovenとも呼ばれる[3][4]

概要

物の温度とはおおよそ分子の運動量のことであるが、電子レンジはマイクロ波を照射して、極性をもつ水分子に直接エネルギーを与え、分子を振動・回転させて温度を上げる。いわゆるマイクロ波加熱を利用している。

電力を消費して加熱する調理器具としては、他に電気コンロ電磁調理器があるが、電気コンロはジュール熱で発熱体を熱して発生する赤外線で食品を加熱し、熱の発生原理がまず異なる。赤外線とマイクロ波は波長が異なるため、その性質も異なる。赤外線は主に物質の表面を加熱する(内部まで加熱されるのは熱伝導によるものである)。

一方で、マイクロ波を用いた電子レンジでは、赤外線より物質の内部まで放射によって加熱されるものの、水分子を含まず電磁波が透過するガラス陶磁器は加熱されない(同じく、加熱された部分からの熱伝導で間接的に温まることはある)。

電磁波の発生源としては、マグネトロンという真空管の一種が使われている。

高周波出力は家庭用で500 - 700W程度、コンビニエンスストアや厨房機器として用いられる業務用では、1500 - 3000W程度である。電力を電磁波に変換する際のロスがあるため、インバータータイプの出力(温める力)が1000Wならば、電子レンジ自体の消費電力は1450W程度となる。

日本では家庭用品品質表示法の適用の対象で、電気機械器具品質表示規程に定めがある[5]。また、電波法にいう高周波利用設備に該当し、高周波出力50Wを超える機器の為、型式確認制度の対象となる[6]。 電磁波の周波数は、2450MHzでISMバンドのひとつであり、周波数を共用している無線LANWi-Fi、直下の2400MHz帯アマチュア無線などは、電子レンジを動作させると、通信不能になる大影響を受けるが、総務省告示周波数割当計画脚注に「混信を容認しなければならない」と規定している。

世帯普及率は、日本において1970年代中盤に10%を超え[7]1980年代の中盤で40%台[7]から50%強[8]、その後半には60%台中盤[7]から70%台[8]となり、1990年代の中盤は80%台中盤[7]から90%前後[8]で、その後半には90%台中盤[7][8]となり、2000年代の中盤から後半では90%台中後半[7][8]を保っている。世界的には、経済的に発展し電力事情も良く家電製品の普及している先進国の多くの地域でも、安価な廉価版機種から多機能高性能な機種に至るまで幅広く流通し、その利便性が認められて広く使われている。

歴史

原理の発見

1933年のシカゴ万博でのウェスティングハウス社によるデモンストレーション。60 MHzの電磁波でサンドウィッチを温めた。
最初の空洞式マグネトロン(1940年)
ウェスティングハウス製の1956年の電子レンジ

1945年に、アメリカ合衆国レイセオン社で働いていたレーダー設置担当の技師、パーシー・スペンサーによって発明された。

  • マグネトロンの前に立った彼のポケットの中のチョコバーが溶けていたことを偶然発見した
  • 放置していたサンドイッチが勝手に加熱調理されていた

などのような伝説的なエピソードが伝わっているが、実際には複数のスタッフによる入念な観察の結果によって開発された[9]

最初に電子レンジで調理した食物は、慎重に選ばれた結果、ポップコーンであった。スペンサーの電子レンジでは、紙袋を使ったトウモロコシの調理法で特許を取っている[9]。次に選ばれた食材は鶏卵を用いた茹で卵づくりだったが、これは卵の爆発により失敗した。


一方、大日本帝国海軍1944年(昭和19年)頃、海軍技術研究所と島田実験所(現在の島田理化工業の前身)にて、マイクロ波を照射して航空機などを遠隔攻撃するための光線兵器の研究を行っていた[10]。初の実験対象はサツマイモで、ふかし芋のようになったと伝わる[11]。その後、5mの距離からウサギを死に至らしめることにも成功したが、それ以上の大型化が出来ず、兵器としての開発は頓挫していた[12]大和型戦艦から撤去した副砲の旋回部分を利用して、パラボラアンテナを設置する工事も行われたが、島田実験所が空襲被害を受けて兵器として実用化されることなく、第二次世界大戦の終戦を迎えた[11]

開発者の一人であった中島茂は戦後に軍事研究の職を失い、マイクロ波でコーヒー豆を炒る機械を製作して、東京のコーヒー店に納入し糊口をしのいだ[11]。だが、この「電子レンジ」が一般商品化されることはなかった。

製品化

レイセオン社はマイクロ波による調理について1945年特許をとり[13]1947年に最初の製品を発売した。高さ180cm、重量340kg。消費電力は3000Wだった。この製品は非常に売れ行きがよく、他社も相次いで参入した。

日本

  • 1951年(昭和26年)7月19日の新聞記事によると「南氷洋で捕鯨した冷凍鯨肉を鮮度を損ぬまま解凍する技術」として、東京水産大学(現 東京海洋大学)が「冷凍したクジラ肉に超短波を照射し解凍する技術」について研究しているとの記事が掲載された。この記事によれば、鯨肉の解凍技術について既に確立されたので、同年8月29日よりイギリスのロンドンで開催される第八回国際冷凍食品会議で、この「クジラ肉の解凍方法」について発表する旨が記事になっている。この事から、日本ではこの時点で業務用の冷凍肉解凍技術が、ある程度は確立していた事がうかがえる。
  • 1959年(昭和34年)東京芝浦電気(現 東芝)が国産初の電子レンジを開発[14]
  • 1961年(昭和36年)国際電気(現 日立国際電気)が国産初の業務用電子レンジを発売[15]
  • 1962年(昭和37年)早川電機工業(現 シャープ)が日本国内初の量産品電子レンジ「R-10」(54万円)を製造[16]
  • 1963年(昭和38年)松下電器産業(現 パナソニック)が電子レンジ「NE-100F」(115万円)を製造、電子レンジ普及の先駆的商品となった[17]
  • 1964年(昭和39年)開通の東海道新幹線新幹線0系電車ビュッフェ車に電子レンジが備え付けられた。
  • 1965年(昭和40年)一般家庭向けに松下電器産業の「NE-500」[18]が初めて発売された。
  • 1966年(昭和41年)早川電機工業が国産初のターンテーブル方式を採用した電子レンジ「R-600」(198,000円)を発売した[19]
1971年、松下電器産業(現 パナソニック)より「ナショナル」ブランドとして発売された家庭用電子レンジ「エレックさん」NE-6100。温めのみの単機能でタイマーとon/offボタンしかついていない。価格は8万円台と、当時の電子レンジとしては安価だった[20]
  • 1972年(昭和47年)郵政省(現 総務省)の型式指定が制度化[21]された。製造業者又は輸入業者が電波法令の技術的条件に関する内容を郵政大臣(現 総務大臣)に申請し、審査結果が適合しているものについて郵政大臣が型式を告示することで、型式指定の表示は横径3cm、縦径1.5cmの楕円形とされた。
  • 1977年(昭和52年)三菱電機オーブン一体型の電子レンジを発売。
  • 1985年(昭和60年)には型式確認制度に移行[22]した。製造業者又は輸入業者が技術的条件に適合しているかを自己確認した内容を届け出て、郵政大臣が型式を告示することである。
  • 2006年(平成18年)型式確認の表示は横長径が2cm以上の楕円形又は横長辺が5mm以上の長方形[23]とされた。
  • 2017年(平成29年)型式確認の表示は電磁的表示によることもできることなり、型式確認は公示することとなった[24]

市場の反応

火を使わずに加熱調理する電子レンジの出現は1950年代当時の人々を困惑させた。発売当初の電子レンジは高価であり、一般家庭に普及し始めたのは価格が500ドルに抑えられるようになった1970年代後半のことである[9]。1970年には、アメリカで一部製品から許容量を上回るマイクロ波が漏れていることが報道される[25]など、マイクロ波に対する健康不安など電子レンジへの不信感は根強く、1998年に行われたイギリスでの調査では、消費者の10パーセントが「電子レンジは絶対に買わない」と回答している[9]

日本では当初、冷めた料理を温めたり冷凍食品を解凍したりする程度の役にしか立たないとされる調理器に、なぜ高い金銭を支出して購入する必要があるのか全く理解されず、消費者からすんなりと受け入れられたわけではなかった。

そのためメーカーは、電子レンジがあたかも焼き物煮物蒸し物揚げ物炒め物茹で物等、ありとあらゆる機能をこなす万能調理器であるかのように宣伝して売ろうとした。

これに対して雑誌『暮しの手帖』は1975年から1976年にかけて特集を組み、「電子レンジ―この奇妙にして愚劣なる商品」と題した記事を掲載、「メーカーはなにを売ってもよいのか」と酷評した。当時『暮しの手帖』の商品テストは、消費者から高い信頼を得ていたため、「電子レンジは万能調理器ではない」という認識は消費者にも印象付けられた。『暮しの手帖』は同じ号で、蒸し器を使って冷めた料理をおいしく温めるコツについての記事を掲載した。このキャンペーンの影響で、電子レンジに対してのネガティブなイメージは、後年まで一部で残ることとなった。

しかし、ボタン一つの手間で料理を温めることができる便利さは、大きな利点であった。高度経済成長で暮らしが豊かになる半面、核家族化と個食に代表される「家族が食卓を囲み、揃って食事する文化」が過去のものとなっていく過程で、簡単に料理を温められる手段へのニーズが増大していき、普及していった。

メーカー側も性能向上に努力し、食品の重量・温度などをセンサーで読み取って食味を損なわない最適な加熱を行えるようにするなど、今日では十分な性能を持つ調理器具としての製品を発売するに至っている。冷凍食品の普及と品質向上、冷凍食品を保存できる冷凍庫つきの冷蔵庫の普及進展、また電子レンジで調理することを前提とした加工食品が販売されるようになり、利便性の高まりと共に普及率も高まっていった。また、それに伴う大量生産コモディティ化による価格の下落が、さらなる普及を後押しした。

自動販売機への内蔵

1970年日本万国博覧会の会場周辺には、電子レンジを組み込んだハンバーガーの自動販売機が登場して、話題になった。

この自動販売機は紙箱に収められたハンバーガーのみ販売し、購入すると自動的に内蔵の電子レンジに商品が投入、加熱されたうえで提供されるものであったが、「パンは蒸気でふやけ、肉はパサパサ」という、ハンバーガーチェーンの出来立てハンバーガーに比べるといささか味気ないものであった[要出典]。また硬貨投入から商品受け取りまで加熱時間を含め1分程度待たなければならなかった。

しかし自動であるため、深夜でも簡便に暖かい食べ物を提供できることや、食料ストックを冷凍することで、在庫・食品劣化リスクがほとんどなくなるという利点から、無人のドライブイン高速道路サービスエリアなどを中心に設置が進んだ。

こういった電子レンジ内蔵自動販売機は、その後の設置数の増加や冷凍食品の発達にも助けられて着実に社会に浸透し、様々なバリエーションが登場した。現在では焼きおにぎり唐揚げフライドポテトたこ焼きなどを併売する機種もみられる。

2000年代以降の状況

2000年代の日本では、普及率は90%台後半を保ち、温める機能のみの単機能な電子レンジであれば1万円以下で購入可能で、レンジ・ヒーター・スチームを組み合わせて調理する複合型多機能タイプも登場している。

このような状況によって、電子レンジで温めればそのまま食べられる食品が多く店頭に並ぶようになった。コンビニエンスストアを中心に、風味もよく簡便な冷凍食品や、弁当惣菜などが複数種類取り揃えられるようになり、スナックフードコーナーには電子レンジ対応メニューが定番商品として並んでいる。その場で温められたり、持ち帰って温めたりして食べられている。また、スーパーマーケットなどの食品売り場でも弁当や惣菜など電子レンジを利用する商品の扱いが増したことで中食産業の市場も拡大している[26]

2005年4月、シャープは自社電子レンジの世界累計生産台数が世界で初めて1億台を達成したことを発表した[27]

日本企業

業務用はパナソニックの独占状態である。パナソニック以外では、シャープ・ネスターホシザキ子会社。東芝の事業を承継)が、細々と生産しているのみ。

生産より撤退
  • 日本電熱
  • 三洋電機(パナソニック完全子会社化に伴い2011年限りで終了。業務用も生産していた)

種類

ターンテーブル式の内部の一例

庫内の状態は以下の2種がある。

  • マイクロ波の照射・吸収にむらがないように、ターンテーブルを設けた方式
  • 高出力・多機能製品を中心に採用している、庫内がフラットになっている方式

フラットタイプは、照射用アンテナの方が回転している。業務用電子レンジでは出力を上げたり内部で乱反射させることで、入れた食品を回転させずにムラ無く加熱させる製品もある。

電子レンジは基本構造上、商用電源周波数にその能力や出力が影響されうる。このため、より効率的な加熱を行ったり、きめ細かな出力制御をするために、インバータで電源からの影響を回避する機能を持つ製品もある。そのような製品は、交流電源を一旦直流コンバートしてから、商用電源周波数よりも高い、所定の交流の周波数で高圧に変換するため、電源周波数に影響されない(いわゆるヘルツフリー)。

ただ、そういった機能の無い旧来の製品や「温め専用」など安価な製品にあってはその限りではなく、例えば日本国内でも、西日本と東日本地域で、異なる商用電源周波数に影響される製品もあり、利用者の引越しで問題となる。この場合は、有償によるメーカー修理の形で、使用地域にあった部品への交換改修が行われる。また消費者側では「移転先の電源周波数に合わない」理由によって、従来品を破棄して買い替えが行われる。

一般に、50Hz用のものを60Hzで使用すると出力が定格を超えてしまい、逆の場合は内部の変圧器で過電流が発生し、焼損や温度ヒューズの溶断をもたらす。これを逆手に取り、回路を50Hz用で設計し、60Hzで使用されていることを検知した場合には、自動的にマグネトロンを断続運転とすることで「時間平均」での出力の帳尻合わせを行うことで、ヘルツフリーを実現している製品もある。また、従来型回路で出力を可変する(例えば定格500Wの機種で200W出力を行う)ためには、断続運転が一般的な手法であり、瞬時出力は変化しない。このため、ごく短い運転時間では500Wも200Wも同じ結果となる。

電子レンジに、他の機能を付加した製品も多く登場してきている。その代表的な例が、オーブン機能のついた電子レンジ「オーブンレンジ」である。電子レンジには出来ない「焼く」という機能を、電熱線やガス燃焼を使ったオーブン機能で行い、オーブンと電子レンジの双方の利点をミックスしている。スチームを利用して加熱したり、あるいは食品の温度を計測しながら、自動的に加熱時間を調整するなど、多機能化した電子レンジも登場している。

調理方法

電子レンジでの調理は一般に庫内ターンテーブル片側に調理物を置きドアを閉めてスタートする(中央ではマイクロ波が十分に照射されない)。特に調理物の温度を赤外線センサーで確認しながら制御している機種などでは庫内に調理物が置かれていないと正常な調理ができないことがある。

電子レンジの調理方法について、高機能化した電子レンジではなく単機能の電子レンジであっても、「冷めた料理や素材を温める」「冷凍食品を解凍する」といった使い方のほかに、煮る・煮込むといった加熱調理器具としての位置づけもある。多機能レンジにおいて調理法は各食品・料理に適した機能を選択して行う必要がある。

電子レンジであたためを行う場合、通常は器にラップをかけて行う。これにより、食品をあたためた場合に発生する水蒸気を副次的に利用し、水分の蒸発による食材のパサつきも抑え、蒸すのに類似した効果も同時に得ることができる。ただし、水分量が多いとふやけてしまうような食材(パンや揚げ物など)は逆にラップをかけないで、食品の下にクッキングシートを敷いて余計な水蒸気を逃がし食品を皿の上で結露した水によってふやかさせないなどの工夫も行なわれる。

野菜、とくに火が通りづらい根菜類でも、温野菜を作ることができる。これは食材の下拵えとしても行われる。レンジパックなどの、より簡単に温野菜をつくれる調理グッズも出てきている。ケーキのようなものも、電子レンジを用いて作ることができる。食感は蒸しケーキに似る。

加熱はできるが、素材の表面が乾燥し焦げ目はつかないため、焼き料理は作れない。ただし、電子レンジ用調理器具や冷凍食品の中には、電子レンジの調理機能のみで「焦げ目がつくよう工夫されたもの」のような焼き物料理ができる冷凍食品や、焼き魚から揚げの調理ができる包材も商品化されている。

トピック

電子レンジによる調理の表現

「電子レンジで調理する」という意味の俗語が各国に存在する。

  • 日本では調理完了を知らせる合図音として、「チーン」という音が出る仕組み(機械式タイマーとベル)を、一時期は多数の製品に組み込んでいた要因から、日本語で「チンする」[28][29][30]または「レンチンする」[31][32]と表現することもある。

電子レンジが登場した時、調理する行為には特に名前が付けられなかったが、前述の合図音が由来となり、全国的規模で自然発生的に生まれた言い方である[29][30]文化庁による2013年度の「国語に関する世論調査」では、90.4%が「チンする」を使用すると回答している。この調査結果は「チンする」という言い回しが、広く日本語として浸透していることを示すものである[33]

  • 日本の初期型電子レンジには、調理完了を知らせる合図音を出す装置が付いていなかったため、「調理が終わったのに気がつかず、せっかく温めた料理が冷めてしまう」という意見が購入者から出ており、早川電機(現・シャープ)電子レンジ開発チームのメンバーにも届いていた[34]
    • そのメンバーが労働組合主催のサイクリングに参加した時、ベルの音が印象に残っていたことがヒントとなり、電磁石バネで合図音のベルが鳴る仕組みを搭載した改良型が開発された[34]。また、「研究室の近所に自転車店が多かったため、当時の研究者が自ら店に出向いてベルを買い、アルミを絞ったベルでコストダウンし、バネを使って音の強弱を調整して電子レンジに取り付けたのが発端」で「タイマーは当初ゼンマイ式で、ベルを一体化してチーンと音が鳴る構造」といった、シャープ広報室の説明もあった[35]
  • 1970年代後半、松下電器(現 パナソニック)は当時発売していた電子レンジ「エレックさん」にちなみ、調理する行為を「エレックする」と名付け普及・定着を試みたが定着せず、結局極一部の範囲に留まった[29][36]
  • 食品業界から発生した業界用語に「レンジアップ」というのがある。電子レンジで温めるの意であり、例えば「焼く前にレンジアップして解凍する」というように使われる。しかし Range up. とは、英語として全く意味不明であり、完全な和製英語である。
  • 中国語では、類似の擬音語による表現もあるが、「回す」を意味する「転」(ジュアン:繁体字: 簡体字: 拼音: zhuǎn)という動詞が、電子レンジで加熱するという意味にも使われている。
  • 英語では動詞化した microwave を用いて、Let's microwave some ○○(訳:○○をチンしよう)が使用される[37]。電子レンジ調理に対応していることを、可能を意味する接尾辞を付加してmicrowaveableと表現する。

現代において、合図音で「チン」を用いているのは、普及価格帯の単機能タイプが主体で、高出力化・多機能化した製品では、圧電素子を利用した電子音を用いている。

電子レンジに関する事件

  • 2005年8月、アメリカ合衆国オハイオ州デイトンで、25歳の母親が電子レンジに自分の赤ん坊の娘を入れてスイッチを押し、2分以上加熱したと見られる。このため、高温の熱による内臓損傷により死亡。殺人罪で逮捕・起訴され、2008年9月8日、終身刑を言い渡された[38]。また2007年5月、アメリカ合衆国アーカンソー州ジョシュア・モールディンで、19歳の父親が電子レンジに2歳の娘を入れてスイッチを押し、全身熱傷三度の重傷を負わせたとして逮捕された。
  • オウム真理教の死体焼却炉がマイクロ波加熱方式であったことから、電子レンジに例えられていた[39]
  • 製造物責任法に関する都市伝説として「飼いを電子レンジで乾燥」というものがあった(俗称「猫レンジ」)。内容は、アメリカの主婦が飼っている猫を洗った後、毛を乾燥させるために電子レンジを使用したところその猫が死んでしまい、主婦は「電子レンジの取扱説明書に『ネコを乾燥させてはいけません』とは書かれていない」と主張、メーカーの落ち度であると裁判になり、企業側が敗訴し多額の賠償金を支払うことになり、結果として電子レンジの取扱説明書に「ペットを入れないで下さい」という注意書きを書くに至ったという話である。ただし実際にこのような訴訟があったという記録は無く、アメリカの訴訟社会を揶揄した都市伝説である。日本やアメリカの法律においても電子レンジにそのような注意書きを添える義務も無い。

参考文献

  • 中川靖造『海軍技術研究所 エレクトロニクス王国の先駆者たち』講談社、1990年10月。ISBN 4-06-184790-2 
  • 戸高一成『聞き書き・日本海軍史』PHP研究所、2009年8月。ISBN 978-4-569-70418-0 

関連項目

脚注

  1. ^ ビジネス特急こだまを走らせた男たち p.160 福原俊一 JTB 2003年
  2. ^ Microwave oven Dictionary.com
  3. ^ microwave oven Britannica.com
  4. ^ electronic oven - Weblio 辞書
  5. ^ 電気機械器具品質表示規程”. 消費者庁. 2013年5月23日閲覧。
  6. ^ 電波法第100条及び電波法施行規則第46条の7
  7. ^ a b c d e f 消費動向調査(全国月次、平成16年4月調査より) 結果 / 主要耐久消費財等の普及率(全世帯)Microsoft Excel形式〕 - 内閣府
  8. ^ a b c d e 25年前の普及率は? 電子レンジやルームエアコンの普及率推移をグラフ化してみる - Garbagenews.com 2010年8月6日
  9. ^ a b c d ビー・ウィルソン『キッチンの歴史:料理道具が変えた人類の食文化』真田真由子訳 河出書房新社 2014年 ISBN 9784309022604 pp.140-145.
  10. ^ #聞き書き日本海軍史p.70、#海軍技術研究所p.267
  11. ^ a b c #聞き書き日本海軍史p.71
  12. ^ #海軍技術研究所p.268
  13. ^ Bibliographic data: US 2495429 (A) / Method of treating foodstuffs - Espacenet Patent search (英語)
  14. ^ 会社概要(歴史と沿革) - 東芝 企業情報
  15. ^ 沿革 - 日立国際電気 会社情報
  16. ^ 電子レンジ R-10 - 国立科学博物館 産業技術の歴史
  17. ^ 国内量産第1号電子レンジ NE-100F - 国立科学博物館 産業技術の歴史
  18. ^ レンジの歴史 - パナソニック 開発ものがたり
  19. ^ シャープの歩み 年表 1961~1970 - シャープ 会社情報
  20. ^ レンジの歴史(パナソニック)
  21. ^ 昭和47年郵政省令第13号による電波法施行規則改正
  22. ^ 昭和60年郵政省令第81号による電波法施行規則改正
  23. ^ 平成18年総務省令第119号による電波法施行規則改正
  24. ^ 平成29年総務省令第35号による電波法施行規則改正
  25. ^ 「電子レンジから放射線 一部は許容量上回る」『中國新聞』昭和45年1月6日15面
  26. ^ 経営方針「成長の背景」(ロック・フィールド)
    トップインタビュー / 新日本通商 - 寺岡精工・From New Balance 61号 2008/4月1日発行
  27. ^ シャープ ニュースリリース 2005年4月度(「世界初 電子レンジ世界累計生産1億台を達成」 2005.4.20)
  28. ^ チンする - 日本語俗語辞書
  29. ^ a b c ことばのこばこ / 「チン」する - 読売新聞 1999年4月19日
  30. ^ a b チンする - 三省堂 Web Dictionary
  31. ^ 簡単でおいしいが一番♡レンチンだけで作る旨味おかず15連発 LOCARI
  32. ^ 材料全部入れてチンするだけ♪手抜き感ゼロ!電子レンジでできるがっつり肉料理 Nadia
  33. ^ 「チンする」9割に浸透=慣用句は誤用が増加-国語に関する世論調査・文化庁 時事ドットコム 2014年9月24日
  34. ^ a b Vol.19 電子レンジ登場 家庭に「チン」 10万円の壁 昭和36年(1/2) - どらく(朝日新聞)・朝日新聞夕刊 2010年6月26日
  35. ^ 電子レンジの「チーン」を誕生させた意外なモノ”. 夕刊フジ. 産経新聞社ファンコミュニケーションズ (2005年1月10日). 2005年1月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年5月22日閲覧。
  36. ^ ◆ことばの話515「エレックする」・(追伸) - 道浦俊彦読売テレビアナウンサー)の平成ことば事情 2001年12月20日・12月25日
  37. ^ ◆ことばの話515「エレックする」(追記) - 道浦俊彦読売テレビアナウンサー)の平成ことば事情 2003年6月13日
  38. ^ 娘を電子レンジに入れて殺害した母親に終身刑-米国 - livedoorニュース (IANS) 2008年9月9日
  39. ^ 東京キララ社『オウム真理教大辞典』 p.73
  40. ^ スマホ?電子レンジ?野菜? 山手線の新車両がいろんなものに似すぎている件”. Jタウンネット. 2020年7月21日閲覧。

外部リンク