自治医科大学
自治医科大学 | |
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大学設置/創立 | 1972年 |
学校種別 | 私立 |
設置者 | 学校法人自治医科大学 |
本部所在地 |
栃木県下野市薬師寺3311-1 北緯36度23分59.1秒 東経139度51分37.9秒 / 北緯36.399750度 東経139.860528度座標: 北緯36度23分59.1秒 東経139度51分37.9秒 / 北緯36.399750度 東経139.860528度 |
キャンパス | 栃木県下野市(自治医科大学附属病院含む) |
学部 |
医学部 看護学部 |
研究科 |
医学研究科 看護学研究科 |
ウェブサイト | https://www.jichi.ac.jp/ |
自治医科大学(じちいかだいがく、英語: Jichi Medical University)は、栃木県下野市薬師寺3311-1に本部を置く日本の私立大学。1972年創立、1972年大学設置。
概要
設立の背景
1972年(昭和47年)、僻地医療と地域医療の充実を目的に設立された[1]。全寮制で密度の高い教育を行い、近年の医師国家試験の合格率は、全国公私立の医学部・医科大学において1位(2013年から2020年現在まで)を重ねている。
運営形態
名目上は学校法人自治医科大学が設置する私立大学となっているが、実際は旧自治省行政局(現・総務省自治行政局)が主導して設置された事実上の公設民営大学である。総務省の自治系職員が大学に出向し事務局を統括し、元総務事務次官が理事長を務める。なお同様の形態を取る大学として旧厚生省社会局(現・厚生労働省社会・援護局)の息がかかった日本社会事業大学がある。
入試面では私立大学らしく大学入試センター試験には参加しない大学独自の方法で行うが、医学部ではその設置趣旨[1]のためか各都道府県の定員枠(2名ないし3名)により選抜するという異色の方法をとる。
また、栃木県が発売元となって地域医療等振興自治宝くじ(地域医療等振興分。旧・へき地医療振興自治宝くじ)が売られており、その収益金は補助金の形で本学に交付されている。
教育制度
医学部は全寮制であり、地域医療に従事する総合医養成という観点から、臨床実習に重点を置いた教育が特徴である。臨床実習のための共用試験(CBT・OSCE)を日本の医学部で唯一3年次に行い、4年次から病棟実習を行うというスタンスを取っている。
卒業後は採用枠都道府県の定めにより、公立病院を中心に9年間地域医療に従事することが求められている。9年間には、採用枠都道府県に所在する臨床研修病院・大学病院で行う2年間の臨床研修、2年間の後期研修、4年半の僻地診療所・病院での勤務を含む。6年間の学費は2,200万円程度だが在学中は貸与され、卒業後9年間、指定公立病院等に勤務した場合その返還は免除される。類似した制度を持つ省(庁)所管の医師養成機関として防衛医科大学校(防衛省所管)がある。
看護学部は、前身の自治医科大学看護短期大学を改組して2002年(平成14年)に開設。医学部とは異なり通常の入試選抜方法をとる。
なお、栃木県は国立又は公立大学の医学部・看護学部を持たない都道府県であり、自治医科大学がその役割を担っている。このため、医学部においては、他の都道府県の合格枠が2名または3名で毎年変動するのに対して栃木県枠は2008年(平成20年)度など一部を除き常に3名の合格を出したり、看護学部においては指定校推薦入学制度で栃木県内高校枠を確保したり等、両学部とも定員や入試制度上の地元枠配慮がなされている。但し2008年度の医学部入学試験においては栃木県の合格者が2名となり、東京都においても2008年にはそれまでの合格枠3名が2名になるなど、受け入れ方針の転換がなされているとみられる。
入試制度
入学定員を各都道府県に振り分けて合格者を決定する。そのため、入試成績上位の者が必ずしも合格するとは限らない。特に、有名進学校が存在する都道府県は激戦で、その分、合格が難しくなる。
医師国家試験合格率
過去10年間(平成23年〜令和2年)では全国順位第1位を9回、第2位を1回、記録しており、総合順位では1位を保っている。
出身地の定義
かつて自治医科大学では、出生場所に関わらず、「受験者の出身高校の所在地」を本人の出身地と定義していた。従って、受験者本人の出身地(居住地)が出身高校と同一ならば問題がないが、寮生・下宿生・自宅が都道府県境に近いなど出身地(居住地)とは異なる都道府県の高校に進学した場合、出身高校の所在地が「出身地」として登録されるため、卒業後9年間を生まれ故郷の僻地医療に貢献したとしても返済免除の要件を満たさないという問題が生じていた。
この問題を解決するため、2010年(平成22年)度入試より医学部ではこの条件が拡大され、「入学志願者の出身高校の所在地」に加え、「入学志願者の現住所の所在地」および「入学志望者の保護者の現住所の所在地」となった[2]。
義務年限後の出身地定着率
1986年(昭和61年)度以降に義務年限を終えた計1,782人の卒業生について、厚生労働省の要請を受けた総務省の2005年(平成17年)7月時点の調査によると、自治医大の卒業生が出身地に留まる定着率は、都道府県によって最高90%から最低50%までと大きな格差がある(全国平均は70.9%)[3]。地元への定着率が最も高かったのは新潟県の90%で、岩手県、沖縄県、奈良県など11県が80%を超えた[3]。逆に、定着率が最低だったのは福島県および熊本県の50%で、東京都や佐賀県などの6都県も50%台であった[3]。
沿革
徳島県出身で(旧制)高知高等学校卒の秋田大助自治大臣出席のもと高知県で開催された「一日自治省」において、過疎地の医師不足解消のために医科大学(6年制)よりも短期間で医師を養成することが出来ないかとの話になった。かつての(旧制)医学専門学校のようなものでは医師の質の問題があるということで6年制での医科大学となり、1972年(昭和47年)に創立した[4]。
1968年(昭和43年)から始まる東京大学医学部の東大紛争(全学共闘会議)は1969年(昭和44年)1月の東大安田講堂事件によって一応の収束をみるが、この過程で東京大学の医師が新設される当大学に流れてきた[4]。
年表
- 1970年(昭和45年)7月 僻地医療の充実を目指し、当時の秋田大助自治大臣(在任期間:1970年1月14日 - 1971年7月5日)が「医学高等専門学校設立構想」を表明。
- 1972年(昭和47年)4月 - 自治医科大学開学、医学部設置。
- 1974年(昭和49年)4月 - 自治医科大学附属病院開院。
- 1987年(昭和62年)4月 - 自治医科大学看護短期大学開学。
- 1989年(平成元年)11月 - 自治医科大学附属大宮医療センター開設。
- 2002年(平成14年)4月 - 自治医科大学看護学部設置。
- 2006年(平成18年)9月 - とちぎ子ども医療センター開設。
- 2007年(平成19年)7月 - 自治医科大学附属大宮医療センターを自治医科大学附属さいたま医療センターに名称変更。
- 2014年(平成26年)5月 - 遺伝子治療分野の自治医大発ベンチャー企業[5]「遺伝子治療研究所」(神奈川県川崎市)発足[6]。
- 2017年(平成29年)3月 - 古河赤十字病院に古河地域臨床教育センター開設[7]。
基礎データ
所在地
- 栃木県下野市薬師寺3311-1(医学部・大学院医学研究科・自治医科大学附属病院)
- 栃木県下野市薬師寺3311-159(看護学部・大学院看護学研究科)
- 埼玉県さいたま市大宮区天沼町1-847(附属さいたま医療センター)
- 学校法人自治医科大学の登記上の事務所所在地は、東京都千代田区平河町2丁目6番3号(都道府県会館)である[8]。
教育および研究
組織
学部
大学院
附属施設
- 自治医科大学附属病院(病床数1082床)
- 自治医科大学附属さいたま医療センター(埼玉県さいたま市大宮区)
- 自治医科大学とちぎ子ども医療センター
- 自治医科大学附属病院臨床感染症センター
- 古河地域臨床教育センター(茨城県古河市古河赤十字病院[7])
交通アクセス
関連人物
卒業者
- 赤星隆幸 - 医師
- 尾身茂 - 世界保健機関西太平洋事務局長、慶應義塾大学法学部中退
- 菅野武 - 医師
- 北村邦夫 - 医師・作家
- 五島高資 - 俳人
- 舘有紀 - 医師・小説家
- 塚原太郎 - 厚生労働省近畿厚生局長、防衛省衛生監
- 山田浩 - 静岡県立大学薬学部教授
教員
- 永井良三 - 現学長・東京大学名誉教授
- 高久史麿 - 前学長
- 長野敬 - 名誉教授
- 宮本忠雄 - 初代精神医学教授・名誉教授
- 鴨下重彦 - 元小児科学教授
- 森岡恭彦 - 元外科学教授
- 柏井昭良 - 元消化器一般外科教授、元自治医科大学看護短期大学学長
- 楡木満生 - 元心理学教授
- 笠原忠 - 元薬理学教授
- 松田たみ子 - 元看護学部教授
- 大久保利晃 - 元衛生学助教授
- 花村誠一 - 元精神医学講師
- 澁木克栄 - 元神経内科講師
- 間野博行 - 分子病態治療研究センターゲノム機能研究部教授
- 大槻マミ太郎 - 皮膚科学教授
- 平井義一 - 感染・免疫学主任教授
- 渡辺英寿 - 脳神経外科学教授
- 草間幹夫 - 日本口腔内科学会理事長
- 力山敏樹 - 消化器外科教授
その他
出典
- ^ a b “設立の趣旨|大学紹介|自治医科大学”. 自治医科大学. 2017年6月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年6月23日閲覧。
- ^ “自治医科大学医学部 出願地の条件拡大―ふるさと受験の実現”. 自治医科大学. 2012年1月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年11月1日閲覧。
- ^ a b c “自治医大卒業生の出身地定着率に格差 最低は50%”. 『朝日新聞』. (2006年7月23日) [リンク切れ]
- ^ a b 医療の再生に向けて,全体で支援を. (PDF) 『月刊地域医学』Vol.25 No.7 2011年
- ^ 「自治医大発VB、米バイオと合弁設立 遺伝子治療薬を製造」『日本経済新聞』電子版(2016年9月19日)2020年2月11日閲覧
- ^ 企業情報 遺伝子治療研究所(2020年2月11日閲覧)
- ^ a b 吉江宣幸 (2017年3月22日). “古河赤十字病院に臨床教育センター 自治医大が設置、県内で初”. 『朝日新聞』 (朝日新聞社): p. 朝刊 茨城版
- ^ 国税庁法人番号公表サイト 学校法人自治医科大学の情報
- ^ 放送大学 平成28年度 単位互換案内