網 (松本清張)
『網』(あみ)は、松本清張の長編推理小説。『日本経済新聞』(1975年3月9日 - 1976年3月17日付)に、「黒の線刻画」第1話として連載され、1984年9月に光文社文庫から刊行された。
概要
戦時中に培われた軍人の信義と戦後社会との葛藤が生んだ連続殺人事件を描くミステリー長編。
あらすじ
小説家の小西康夫は、かつての戦友・沼田貞一が社長をしている中北新聞に小説の連載を始めた。しかし、このことで小西は奇妙な事件に巻き込まれることになった。衆議院解散総選挙ののち、沼田の関係者が姿を消す。さらに小西のもとに続々と不思議な人物が現われ、四国八十八箇所にちなむ巡礼歌が送られてきた。小西はその巡礼歌に不吉な意味を嗅ぎ取るが、事件は小西の予想を上回る形で展開する。小西は現場を踏査し徐々に推理の輪をしぼっていくが…。
主な登場人物
- 小西康夫
- 小説家だが、売れる作家ではない。軍隊では教育召集の二等兵だった。
- 沼田貞一
- 地方紙・中北新聞社の社長。現役志願兵として軍隊に入隊、小西と同じ班に所属していた。
- 小西登代子
- 小西康夫の妻。
- 桑木二郎
- 小西康夫の従弟。地方検察庁の次席検事。選挙違反の取調べに関わる。
- 坂井大助
- 香月町の地酒「雪の峰」醸造元主人。町議会副議長。大入道のように肥えている。62歳。
- 坂井真二
- 坂井大助の次男。25歳。非行が多い。
- 土井謙蔵
- 与党新人候補者の選挙参謀となる。54歳。その過去は…。
- 斉藤久太郎
- 軍隊で小西と同じ班にいた先任上等兵。
- 畑益夫
- 文化通信社の営業部長。