生島治郎
誕生 |
1933年1月25日 中華民国 上海市 |
---|---|
死没 |
2003年3月2日(70歳没) 日本 |
職業 | 小説家、翻訳家 |
活動期間 | 1964年 - 2001年 |
ジャンル | ハードボイルド、冒険小説 |
代表作 |
『傷痕の街』(1964年) 『黄土の奔流』(1965年) 『追いつめる』(1967年) 『片翼だけの天使』(1984年) 『上海カサブランカ』(2001年) |
主な受賞歴 | 直木三十五賞(1967年) |
ウィキポータル 文学 |
1933年1月25日 - 2003年3月2日)は、日本の小説家。本名は (こいずみ たろう)。早川書房の編集者から作家に転じ、『追いつめる』で直木賞を受賞した。日本に正統派ハードボイルドを移植した功労者の一人。
(いくしま じろう、経歴・人物
上海生まれ。敗戦後、1945年に長崎に引き揚げ、母の郷里金沢に移る[1]。その後、父が横浜で職を持ったため横浜に転居した[1]。
中学3年から神奈川県立横浜翠嵐高等学校にかけての同期に青木雨彦と宮原昭夫がいた(ただし宮原は高校在学中に胸を患って数年間休学している)。高校時代から小説を書き始め、初めて書いた小説は魯迅の「阿Q正伝」を真似た「小市民香(シャン)」という小説だったという[2]。早稲田大学第一文学部英文学科在学中は青木雨彦や高井有一や富島健夫と同じ同人誌(早稲田大学現代文学会)に所属。傍ら、港湾関係のアルバイトで肉体労働を経験する。早稲田大学英文学科の同級に小林信彦がいた。1955年卒業。卒論のテーマはジョナサン・スウィフト。
空前の就職難に苦しんだが、大学の友人の紹介で美術評論家植村鷹千代の主宰するデザイン事務所に就職。ここで知り合った画家勝呂忠の紹介により、約1年後に早川書房入社。当時の上司(編集部長)に田村隆一がいた。早川書房時代については『浪漫疾風録』に詳しい。
初代編集長田中潤司のもとで、江戸川乱歩監修による日本語版『エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン』の編集に従事。のち、田中の辞職に伴って新編集長都筑道夫を迎えた[注 1]。
田村の下訳でロアルド・ダールの日本語初訳(『あなたに似た人』)を手がけた後、常盤新平とともに、開高健訳『キス・キス』の下訳を行う。早川書房の俸給の安さに苦しみ、密かに内職として社外の原稿を執筆しなければならなかったことから文筆家の道に入った。
26歳のとき、都筑の退社に伴って『エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン』の編集長に就任。約7年間の在社を経て、1963年、小説執筆を目的に早川書房を退社し、半年を費やして『傷痕の街』を完成。この作品が1964年3月、佐野洋の口利きにより講談社から刊行され、作家としてデビューした[注 2]。1967年、『追いつめる』で第57回直木賞受賞[注 3]。
最初の妻小泉喜美子(旧姓杉山)とは26歳の時に結婚した。離婚後に川崎の堀之内のソープランドで知り合った韓国籍のソープ嬢と再婚し、その体験を自ら小説化(片翼シリーズ)して話題となったが、後に離婚した。
江戸川乱歩賞の選考委員を務めたときの選評には必ず「古い枠にとらわれることなく、自分が書きたいと思ったことを推理小説に仕立て上げてほしい」などと述べている。そのためか本格推理小説が応募されてくるとその作品についての評は辛くなっている。
1989 - 93年、日本推理作家協会の理事長を務めた。
2003年3月2日、肺炎のため、逝去。70歳没。葬儀委員長は作家の大沢在昌が務めた[注 4]。
作家として
高城高、大藪春彦、河野典生らに引き続き日本のハードボイルド小説の基礎を築いた。とりわけ『追いつめる』(1967年)で直木賞を受賞したことは、まだ海のものとも山のものとも知れなかったハードボイルド小説が娯楽小説の一分野として認知された出来事として高く評価されていい[注 5]。
しかし、生島治郎の功績は単に日本のハードボイルド小説の基礎を築いたことに止まらない。冒険小説の分野でも「元祖」ないしは「中興の祖」と位置づけられるのが適当で、『黄土の奔流』(1965年。第54回直木賞候補)で戦前に隆盛をきわめた山中峯太郎に代表される「血湧き肉躍る」タイプの冒険譚を現代に甦らせたばかりではなく、『死ぬときは独り』(1969年)や『汗血流るる果てに』(1972年)など、1980年代以降、船戸与一の登場によって日本でも一大トレンドとなる現代史に即した冒険小説も既に1960年代から書いていた。
また『雄の時代』(1969年)や『運命を蹴る』(1971年)など格闘技をモチーフとした小説も1960年代から書いていた[注 6]。
さらに『ふりかえらずに、走れ!』(1969年)のようなジュブナイル、『あなたに悪夢を』(1975年)のような恐怖小説(あるいは「奇妙な味」の物語)、『透明な牙』(1982年)のようなエロティック・サスペンス、『もっとも安易なスパイ』(1985年)のようなユーモア・ハードボイルドなど、幅広い分野で才能を発揮した。『異端の英雄』(1987年)は自伝的要素もふんだんに盛り込んだ大河小説でありながらハードボイルド小説でもあるという型破りな作品。作中で主人公が「おれの書くものは、今まで日本にはなかった種類の小説なんだ」と語っていることを地で行くかたちとなっている[注 7]。
キャリア終盤には本格ミステリへの志向もうかがわせており、志田司郎シリーズの『人生最後の殺人事件』(1991年)や『世紀末の殺人』(1992年)はハードボイルドと本格ミステリを融合したような作風となっている。
最後の作品となった『上海カサブランカ』(2001年)は脊椎障害のため口述筆記で執筆された。
小説リスト
傷痕シリーズ
紅真吾シリーズ
- 『黄土の奔流』 光文社 (カッパ・ノベルス) 1965 のち講談社文庫、中公文庫、光文社文庫、双葉文庫、角川文庫
- 『夢なきものの掟』 光文社 (カッパ・ノベルス) 1976 のち講談社文庫、光文社文庫、角川文庫
- 『総統奪取』 講談社 1990 のち文庫、角川文庫
- 『上海カサブランカ』 双葉社 2001
志田司郎シリーズ
- 『追いつめる』 光文社 (カッパ・ノベルス) 1967 のち講談社文庫、中公文庫、集英社文庫、光文社文庫、徳間文庫
- 『あの墓を掘れ』 徳間書店 1968 のち春陽文庫、集英社文庫
- 『脅喝者』 双葉ノベルス 1973 のち徳間文庫、双葉文庫
- 『報酬か死か』 桃源社 (ポピュラー・ブックス) 1975 のち春陽文庫、徳間文庫
- 『友よ、背を向けるな』 実業之日本社 1979 のち集英社文庫『友よ、背をむけるな』[注 8]
- 『密室演技』 徳間文庫 1985
- 『ヤクザ刑事』 徳間書店 (トクマ・ノベルズ) 1988 のち文庫
- 『殺人者は夜明けに来る』 徳間書店 (トクマ・ノベルズ) 1989 のち文庫
- 『死に金稼業』 徳間書店 (トクマ・ノベルズ) 1990 のち文庫
- 『人生最後の殺人事件』 光文社文庫 1991 のち徳間文庫
- 『世紀末の殺人』 スコラ 1992 のち講談社文庫
- 『修羅の向う側』 徳間書店 (トクマ・ノベルズ) 1999
兇悪シリーズ
- 『兇悪の門』 講談社 1973 のち文庫(収録作品:兇悪の門、兇悪の土地、兇悪の回路、兇悪な夜の匂い、兇悪の空、兇悪の骨)→表題作及び収録作品同じ(徳間文庫)
- 『兇悪の眼』 講談社 1974 のち文庫(収録作品:兇悪の友、兇悪の眼、兇悪の壁、兇悪の燦めき、兇悪のささやき)→「兇悪の友」を「兇悪の紋章」に改題して、表題作を「兇悪の紋章」に改題(徳間文庫)
- 『兇悪の炎』 講談社 1977 のち文庫(収録作品:兇悪の炎、兇悪の絆、兇悪の夢、兇悪の夕陽、兇悪の涙)→「兇悪のゴールド」を加え表題作を「兇悪のゴールド」に改題(徳間文庫)
- 『兇悪の拳銃』 講談社ノベルス 1983 のち文庫(収録作品:兇悪の報酬、兇悪の教義、兇悪の軌跡、兇悪の血筋、兇悪の情事、兇悪の密告、兇悪のリング、兇悪の花束、兇悪の拳銃)
- 『兇悪の警察』 講談社ノベルス 1988 のち文庫(収録作品:兇悪の警察)
賭けシリーズ
- 『賭けるものなし』 徳間書店 1979 のち文庫、双葉文庫
- 『暗黒指令 賭けるものなしpart2』 徳間書店 1979 のち文庫、双葉文庫
- 『抹殺指令 賭けるものなしpart3』 徳間書店 1981 のち文庫、双葉文庫
- 『国際誘拐』 双葉社 1996 のち文庫
片翼シリーズ
- 『片翼だけの天使』 集英社 1984 のち文庫、講談社文庫、小学館文庫
- 『続・片翼だけの天使』 集英社 1985 のち文庫『片翼だけの恋人』
- 『片翼だけの結婚』 文藝春秋 1985のち集英社文庫
- 『片翼だけの女房どの』 集英社 1988 のち文庫
- 『ホームシック・ベイビー 片翼だけの韓国』 集英社 1992 のち文庫
- 『暗雲 さようならそしてこんにちは「片翼だけの天使」』 小学館 1999 のち角川文庫『天使と悪魔のあいだ』
その他
- 『死者だけが血を流す』 講談社 1965 のち文庫、徳間文庫
- 『東京2065』 早川書房(ハヤカワ・SF・シリーズ)1966
- 『悪人専用』 講談社 1966 のち集英社文庫
- 『愛さずにはいられない』 三一書房 1967 のち旺文社文庫
- 『鉄の棺』 文藝春秋 (ポケット文春) 1967
- 『死者たちの祭り』 東京文芸社 1968 のち旺文社文庫
- 『淋しがりやのキング』 徳間書店 1968
- 『熱い風、乾いた恋』 講談社 1968 のち旺文社文庫
- 『影が動く』 桃源社 (ポピュラー・ブックス) 1969
- 『死ぬときは独り』 文藝春秋 (ポケット文春) 1969 のち集英社文庫、講談社文庫
- 『ふりかえらずに、走れ!』 集英社 (コバルト・ブックス) 1969
- 『雄の時代』 読売新聞社 (新事件小説全集) 1969 のち講談社文庫、徳間文庫『ザ・格闘者(プロレスラー)』、双葉文庫『腐ったヒーロー』
- 『脱落(ドロップアウト)』 東京文芸社 (Tokyo books) 1970
- 『狙われる男』 桃源社 (ポピュラー・ブックス) 1970 のち春陽文庫、徳間文庫『ザ・シャドウ刑事』
- 『男たちのブルース』 文藝春秋 (ポケット文春) 1970 のち中公文庫、集英社文庫
- 『日本ユダヤ教』 東京文芸社 (Tokyo books) 1971
- 『薄倖の街』 中央公論社 1971 のち集英社文庫
- 『運命を蹴る』 毎日新聞社 1971 のち集英社文庫
- 『止めの一撃』 桃源社 (ポピュラー・ブックス) 1971
- 『殺しの前に口笛を』 双葉社 1971 のち集英社文庫
- 『さすらいの狼 竜を狙った罠』 実業之日本社 1972 のち春陽文庫、集英社文庫
- 『さすらいの狼 さすらいの旅は終った』 実業之日本社 1972
- 『さすらいの狼 十文字の竜』 実業之日本社 1972
- 『闇に生きる』 双葉社 (双葉推理小説シリーズ) 1972
- 『汗血流るる果てに』 ベストセラーズ 1972 のち集英社文庫、徳間文庫
- 『裏切りの街角』 桃源社 (ポピュラー・ブックス) 1973 のち旺文社文庫
- 『あなたに悪夢を』 桃源社 1974 のち講談社文庫
- 『火中の栗を拾え』 東京文芸社 (Tokyo books) 1974
- 『背をむける男たち』 平安書店 (Marine books) 1974
- 『燃えつきる男たち』 桃源社 (ポピュラー・ブックス) 1976
- 『白いパスポート』 実業之日本社 (ジョイ・ノベルス) 1976 のち集英社文庫
- 『危険な女に背を向けろ』 桃源社 1977 のち旺文社文庫
- 『砕かれる』 集英社 1979.4 のち文庫
- 『対決 ザ・ゲーム』 桃源社 1979.6
- 『ダイヤモンドはわが墓石』 徳間書店 (トクマ・ノベルズ) 1980 のち文庫
- 『悪意のきれっぱし』 講談社 1980.7 のち文庫、ケイブンシャ文庫
- 『銀座迷宮クラブ』 徳間文庫 1981
- 『暗殺をしてみますか?』 集英社 1981 のち文庫
- 『犯罪ラブコール のんびり刑事未解決事件簿』 実業之日本社 1982 のち集英社文庫
- 『夜明け前に撃て』 集英社 1982.8 のち文庫、ケイブンシャ文庫
- 『透明な牙』 講談社ノベルス 1982 のち文庫
- 『冷たいのがお好き』 旺文社文庫 1983
- 『殺人現場へもう一度』 光風社出版 1983.1
- 『明日を殺せ』 光文社文庫 1984 のちケイブンシャ文庫
- 『死は花の匂い』 旺文社文庫 1984
- 『地獄からの脱走』 三推社 1985 のち講談社文庫
- 『ぎゃんぶるハンター』 講談社ノベルス 1985 のち文庫、集英社文庫
- 『もっとも安易なスパイ』 光風社出版 1985 のちケイブンシャ文庫
- 『犯罪ハネムーン 新婚刑事事件簿』 実業之日本社 (ジョイ・ノベルス) 1985 のち集英社文庫
- 『鉄の棺 自選傑作集』[注 9] ケイブンシャ文庫 1986
- 『ブラック・マネー』 集英社 1986 のち文庫
- 『異端の英雄』 サンケイ出版 1987 のち集英社文庫、角川文庫
- 『君は殺し屋』 集英社 1987 のち文庫、双葉文庫
- 『非紳士協定 5番アイアン殺人ショット』 光文社 (カッパ・ノベルス) 1987 のち文庫
- 『犯罪スイートホーム タフガイ・ベイビイ事件簿』 実業之日本社 (ジョイ・ノベルス) 1987 のち集英社文庫
- 『死んでたまるか』 徳間文庫 1987
- 『死にぞこないの街』 徳間文庫 1988
- 『オペレーション・O』 実業之日本社 1989.4 のち集英社文庫
- 『腹中の敵』 徳間文庫 1989
- 『幕末ガンマン』 講談社 1990.12 のち文庫
- 『乱の王女 1932愛と哀しみの魔都・上海』 集英社 1991.6 のち文庫、中公文庫
- 『女・恐怖物語』 集英社 1991 のち文庫『七つの愛・七つの恐怖』
- 『裏切りへの花束』 実業之日本社 1992.1 のち集英社文庫
- 『最も危険な刑事 女極道警部秋吉真美』 学習研究社 1993 のち双葉文庫
- 『28のショック』 出版芸術社 (ふしぎ文学館) 1993 のち双葉文庫
- 『浪漫疾風録』 講談社 1993.10 のち文庫、中公文庫
- 『星になれるか 浪漫疾風録第2部』 講談社 1994 のち文庫、中公文庫
- 『暗黒街道』 実業之日本社 (ジョイ・ノベルス) 1994.10
- 『上海無宿 A private detective Shanghai 1938』 中央公論社 1995.1 のち文庫
- 『血と絆』 角川書店 1996.10 のち文庫
- 『しんどすぎる殺人』 小学館 1996.6
- 『兇人』 光文社 (カッパ・ノベルス) 1996 のち文庫
- 『暴犬(あばれデカ)』 祥伝社 (ノン・ノベル) 1996 のち文庫
- 『明日なき者たち A private detective Shanghai 1939』 中央公論社 1997.6 のち文庫
- 『女首領 チャイニーズ・ゴッドマザー』 実業之日本社 (ジョイ・ノベルス) 1998
- 『鬼(ゴースト)』 光文社 (カッパ・ノベルス) 1999
- 『老いぼれ刑事』 実業之日本社 (ジョイ・ノベルス) 2001
- 『頭の中の昏い唄』 竹書房文庫 2020 - 日下三蔵編 (『あなたに悪夢を』『東京2065』収録作を収録)
アンソロジー
- 日本推理作家協会編『推理小説ベスト24 推理小説年鑑 1964年版』 東都書房 1964 (収録作品:「チャイナタウン・ブルース」)
- 日本推理作家協会編『推理小説代表作選集 推理小説年鑑 1967年版』 講談社 1967 (収録作品:「やさしい密告者」)
- 日本推理作家協会編『推理小説代表作選集 推理小説年鑑 1968年版』 講談社 1968 (収録作品:「最後の客」)
- 日本推理作家協会編『推理小説代表作選集 推理小説年鑑 1969年版』 講談社 1969 (収録作品:「死者たちの祭り」)
- 日本推理作家協会編『推理小説代表作選集 推理小説年鑑 1970年版』 講談社 1970 (収録作品:「甘い汁」)
- 日本推理作家協会編『推理小説代表作選集 推理小説年鑑 1971年版』 講談社 1971 (収録作品:「男一匹」)
- 日本推理作家協会編『推理小説代表作選集 推理小説年鑑 1981年版』 講談社 1981 (収録作品:「殺しのデイト」)
- 日本文藝家協会編『ザ・エンターテインメント 1985』 角川書店 1985 (収録作品:「遺書」)
- 日本文藝家協会編『代表作時代小説 平成2年度』 光風社出版 1990 (収録作品:「惨侠」)
- 日本文藝家協会編『現代の小説 1993』徳間書店 1993 (収録作品:「養子の修行」)
- 藤田知浩編『外地探偵小説集 上海篇』 せらび書房 2006 (収録作品:「鉄の棺」)
- 逢坂剛・大沢在昌・北方謙三・夢枕獏・船戸与一編『冒険の森へ 傑作小説大全 6』 集英社 2016 (収録作品:「男たちのブルース」)
- 逢坂剛・大沢在昌・北方謙三・夢枕獏・船戸与一編『冒険の森へ 傑作小説大全 15』 集英社 2016 (収録作品:「暗い海暗い声」)
エッセイ他
- 『生島治郎の誘導訊問 眠れる意識を狙撃せよ』[注 10] 双葉社 1974
- 『生島治郎の誘導訊問 反逆の心をとり戻せ』[注 11] 双葉社 1974
- 『ハードボイルド風に生きてみないか』 ベストセラーズ (ワニの本) 1979 のち文庫
- 『女の寸法男の寸法』 サンケイ出版 1981 のち徳間文庫
- 『片翼だけの青春』[注 12] 集英社 1985 のち文庫
- 『名探偵ただいま逃亡中』 集英社 1990 のち文庫
- 『ゴルフ快楽理論 ダブルボギー・マンに捧ぐ』 読売新聞社 1993.11
- 『生島治郎のトラブル・ショット』 実業之日本社 1995.9
翻訳
※以下の他にも、本名名義でミステリー・SFの短編、中編、ショートショートを訳出しており、一部はアンソロジーに収録されている。
- 『時の風』 チャド・オリヴァー著 早川書房 1960 ※本名名義で
- 『みどりの瞳』 エドナ・オブライエン著 集英社 1966 のち文庫
- 『ザ・ファイト』 ノーマン・メイラー著 集英社 1976
映像化作品
映画
- 『勝負は夜つけろ』 大映 1964 (監督:井上昭、脚本:舟橋和郎、出演:田宮二郎、久保菜穂子) ※原作:『傷痕の街』
- 『波止場の鷹』 日活 1967 (監督:西村昭五郎、脚本:小川英、中西隆三、出演:石原裕次郎、丹波哲郎) ※原作:『傷痕の街』
- 『燃える大陸』 日活 1968 (監督:西村昭五郎、脚本:小川英、蘇武道夫、出演:渡哲也、松原智恵子) ※原作:「熱い風、乾いた恋」
- 『日本暴力団 組長くずれ』 東映東京 1970 (監督:高桑信、脚本:神波史男、高桑信、出演:鶴田浩二、池部良)
- 『追いつめる』 松竹 1972 (監督:舛田利雄、脚本:野上龍雄、出演:田宮二郎、渡哲也)
- 『片翼だけの天使』 ヘラルド・エース 1986 (監督:舛田利雄、脚本:田村孟、出演:二谷英明、秋野暢子)
Vシネマ
- 『兇悪の紋章』 東映ビデオ 1990 (監督:成田裕介、脚本:日暮裕一、出演:又野誠治、武田久美子)
- 『悪人専用』 東映ビデオ 1990 (監督:長谷部安春、脚本:藤井鷹史、出演:林隆三、赤井英和、小野みゆき)
- 『兇悪の牙』 東映ビデオ 1991 (監督:成田裕介、脚本:日暮裕一、出演:又野誠治、小野みゆき)
- 『追いつめる』 東映ビデオ 1992 (監督:工藤栄一、脚本:神波史男、奥山耕平、工藤栄一、出演:渡辺裕之、原日出子)
TVドラマ
- 『追いつめる』 フジテレビ 1968 (監督:山本迪夫、脚本:石松愛弘、出演:三橋達也、藤田佳子)
- 『ブラックチェンバー』 フジテレビ 1969 (監督:山田達雄他、脚本:飯田豊一他、出演:中山仁、内田良平) ※原作:『影が動く』
- 『特命捜査室』 フジテレビ 1969 (監督:山田稔他、脚本:押川國秋他、出演:中山仁、桜町弘子)
- 『ゴールドアイ』 日本テレビ 1970 (監督:工藤栄一他、脚本:中島貞夫他、出演:芥川比呂志、高松英郎)
- 『男たちのブルース』 読売テレビ 1970 (監督、井上昭、脚本:倉本聰、出演:芦田伸介、高松英郎)
- 『さすらいの狼』 NET 1972 (監督:松島稔他、脚本:高岩肇他、出演:中村錦之助、芦田伸介)
- 『非情のライセンス(第1シリーズ)』 NET 1973-1974 (監督:永野靖忠他、脚本:橋本忍他、出演:天知茂、山村聡) ※原作:『兇悪の門』
- 『特捜記者』 関西テレビ 1974 (監督:長谷和夫他、脚本:国弘威雄他、出演:近藤正臣、芦田伸介) ※佐野洋、結城昌治など複数作家の原作を元に制作。全26話中、3、6、7、14、15、21、24話が生島治郎原作。
- 『非情のライセンス(第2シリーズ)』 NET 1974-1977 (監督:永野靖忠他、脚本:石松愛弘他、出演:天知茂、山村聡) ※原作:『兇悪の眼』
- 『追いつめる』 フジテレビ 1978 (監督:富永卓二、脚本:隆巴、出演:仲代達矢、いしだあゆみ)
- 『非情のライセンス(第3シリーズ)』 テレビ朝日 1980 (監督:永野靖忠他、脚本:石松愛弘他、出演:天知茂、山村聡) ※原作:『兇悪の炎』
- 『追いつめる』 フジテレビ 1989 (監督:吉田啓一郎、脚本:吉田求、出演:杉良太郎、阿木耀子)
脚注
出典
注釈
- ^ 生島治郎によれば、江戸川乱歩は田中潤司を海外ミステリーの紹介者として「もっともその資質を評価していた人物であった」という。しかし、高木彬光によれば、江戸川乱歩は当の生島についても「海外ミステリーに関しては(略)五本の指に入る」と評価していたという。江戸川乱歩の田中評は『片翼だけの青春』、生島評は『生島治郎の誘導訊問 反逆の心をとり戻せ』参照。
- ^ 佐野洋は同書カバー折り返しに「生島治郎について」という推薦の言葉も寄せている。
- ^ 「受賞のことば」では「心はずみ、嬉しいのは勿論だが、日が経つにつれ小説を書く上での心構えが自分なりに見えてきたように思う。この心構えは将来、形を変えるだろうけれど、今は今なりに納得出来て、これは賞をいただく前にはなかったものだ」と作家としての初心を語っていた。
- ^ 大沢在昌は中学生時代に生島治郎にファンレターを書くなど、生島ファンとして知られており、生島も大沢を周辺に「こいつは俺の息子代わりだ」と紹介していた。詳しくは「大沢在昌×今野敏 作家生活30周年スペシャル対談」、「太田和彦+大沢在昌の居酒屋幼稚園」参照。
- ^ 権田萬治は講談社文庫版『傷痕の街』の解説で「そして、氏は(略)昭和四十二年に「追いつめる」によって、第五十七回の直木賞を受賞することになった。これまで、推理小説の一形式として余り文壇的に評価されなかったハード・ボイルド推理小説が初めて、娯楽小説の一分野としていわば正式に認知されたわけで、この作品の直木賞受賞は推理小説史の上で大きな意味を持っているといわねばならないだろう」と述べている。
- ^ 『雄の時代』はプロレス、『運命を蹴る』はキックボクシングをモチーフとしている。また元ウエルター級世界チャンピオンを主人公とする『殺しの前に口笛を』(1971年)など、ボクシングをモチーフとした作品も多い。
- ^ 作中で主人公が書こうとしている小説のタイトルも『異端の英雄』である。
- ^ ただし、奥付や柱では『友よ、背を向けるな』になっている。それに対し、表紙や扉では『友よ、背をむけるな』になっている。
- ^ 1967年刊行のポケット文春版とは収録作品が異なっており、全く別の短編集。
- ^ 雑誌『小説推理』連載の対談をまとめたもの。対談相手は五木寛之、小松左京、都筑道夫、丸谷才一、田村隆一、高木彬光、結城昌治。
- ^ 雑誌『小説推理』連載の対談をまとめたもの。対談相手は野坂昭如、森村誠一、吉行淳之介、戸川昌子、田中小実昌、井上ひさし、佐野洋。
- ^ 本編は「片翼だけの」とタイトルを付されているものの、越路玄一郎を主人公とする「片翼」シリーズの一編ではなく、上海からの引き揚げから20代後半に至るまでをつづった自伝的エッセイ。雑誌『いんなあとりっぷ』連載時のタイトルは「やさしさだけでは生きていけない」。