未成年者

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未成年者(みせいねんしゃ、: minor)とは、まだ成年に達しない者のこと。

概説

成人年齢は各国により異なり、児童の権利条約のほか、親の保護監督義務の期間、若年層の雇用機会、選挙権年齢、徴兵年齢などを考慮して引き上げられた引き下げられたりすることがある[1]。成人年齢のデータがある187の国・地域のうち、141の国・地域で成人年齢が18歳(16歳・17歳も含む)である[2]

※ 世界各国の成年になる年齢については「成年」を参照。


フランスにおける未成年者

フランスにおいては、成年の年齢は1792年から21歳以上とされていたが、1974年7月5日に変更され18歳以上とされた。よって同年以降、18歳未満が「mineur 未成年」に分類されている。

フランス刑法フランス語版の122-8によって、判断能力のある未成年者は、犯罪行為を犯せば刑事責任を問われると定められており、未成年者を対象とした特定の法にもとづいて、保護・支援・監視・教育措置がとられる。したがって、規定上、フランスにおいては刑事責任の下限年齢は無い。未成年者の年齢は重要ではなく、何歳であれ、未成年者に判断能力があれば、刑事責任はある、と判断される。

10歳未満の未成年者のみ、児童を扱う裁判所で児童を扱う裁判官が、教育的措置をとる。10歳以上は教育的制裁を受け、この制裁は犯罪歴として記録される。13歳以上の未成年者は刑事訴追の対象となり、刑事罰を受け、拘留される可能性がある。未成年者に対する緩和措置がとられる場合は、刑事罰は半分(1/2)になる。16歳以上18歳未満という年齢では、犯罪を繰り返す者は、未成年者に対する緩和措置から自動的に除外される。裁判官は、未成年者が起こした事件の状況やその未成年者の性格から判断して、未成年者に対する緩和措置を用いないと決めることもできる[3]

スイスにおける未成年者

スイスでは成年は、1912年以降 20歳とされていたが、1996年1月に Code civil suisse スイス民法典によって 18歳以上と定められた。よってその時から18歳未満が未成年と分類されている。

10歳以上が刑事責任の対象となる。制裁は「保護措置」と「罰」の2つに大別される。

  • 保護措置
    • 観察措置
    • 個人的援助
    • 外来治療
    • 教育的あるいは治療的な施設(または個人)へあずけ入れる措置
    • 叱責
    • 個別の労働。原則として最大10日間ではあるが、15歳以上の未成年者が犯罪や軽犯罪を犯した場合は最大3か月の労働。
    • 15年歳以上の未成年者には最大2000スイスフラン罰金
    • 自由の剥奪。15歳以上で犯罪や軽犯罪を犯した未成年者は最大1年。16歳以上で重大犯罪を犯した未成年者は最大4年の剥奪。

イギリスにおける未成年者

イギリスでは13世紀に騎馬兵隊が一般的になり、防具の重装備を身に着けたまま乗馬した状態で戦うことができる年齢を考慮して21歳が成人年齢となったといわれている[1]

しかし、1960年代の成年年齢に関する審議会(The Latey Committee on the Age of Majority)で、若年層の成熟化が進んでおり成年年齢は歴史的起源とは関係がないとされ、コミュニティにも若年層が積極的に参加する方が利益につながるとして21歳から18歳への引き下げが勧告された[1]。これによって成年年齢は21歳から18歳に引き下げられた[1]

イギリスでは、10歳から刑務所に入れられる可能性がある。ただし14歳までは、原則的に教育的手法がとられる。18歳からは成人として刑事責任が問われる。

アメリカ合衆国における未成年者

アメリカ合衆国では州ごとに成人年齢が異なっている[1]

多くの州では1970年代に成人年齢が21歳から18歳に引き下げられた[1]。その背景にはベトナム戦争の際に徴兵年齢が18歳であるのに対し、選挙権年齢が21歳であるのは不公正で徴兵年齢に達した者は軍隊の在り方を含めて政治的な意見を表明する機会が与えられるべきだ(old enough to fight, old enough to vote)との世論があったためである[1]。そのため連邦政府は合衆国憲法を改正して選挙権年齢を引き下げ、多くの州では成人年齢も引き下げられた[1]

同時にいくつかの州では飲酒や酒類購入年齢も21歳から18歳に引き下げられた[1]。しかし、その影響で若年者の飲酒による死亡件数が増加したため、1984年に各州に対して飲酒や酒類購入年齢を21歳以上とするよう求める連邦法(全米最低飲酒年齢法)が成立した[1]

オーストラリアにおける未成年者

オーストラリアでは州ごとに成人年齢が異なっている[1]

多くの州で1970年から1974年にかけて成人年齢が21歳から18歳に引き下げられた[1]。その背景にはベトナム戦争の際に多くの若者が戦場で命を落としたため、若年層で政治に自分たちの声を反映させたいとの機運が高まり、連邦及び各州にLaw Reform Commissionが設置されて成人年齢について議論し報告書が提出されたことによる[1]。選挙権年齢についても1973年に21歳から18歳に引き下げられた[1]

日本における未成年者

民法は、この節で条数のみ記載する。

日本では、2022年(令和4年)4月1日以降は、満18歳で成年となるため、基本的に民法上の未成年者は満18歳に達しない者(満17歳以下)となる(改正4条)。年齢の計算については年齢計算ニ関スル法律(明治35年12月2日法律第50号)による。

なお、2022年(令和4年)3月31まで満20歳をもって成年とする(4条)ので、未成年者とは満20歳に達しない者(満19歳以下)である。

未成年者は法定代理人親権者あるいは未成年後見人)の親権に服する。また未成年者であることが欠格事由となることがある。例えば未成年者は遺言の証人又は立会人となることができない(975条)。各種の国家資格においても、未成年者であることが欠格事由として定められている(医師歯科医師薬剤師司法書士行政書士社会保険労務士等)。

選挙権年齢は1945年(昭和20年)から20歳以上とされていたが、2015年(平成27年)6月に改正公職選挙法が成立し、2016年(平成28年)6月から18歳以上に引き下げられた(18歳選挙権[4]

なお、皇室典範は第22条で天皇皇太子及び皇太孫の成年を18歳と規定している。

財産行為

  • 一般原則
未成年者は制限行為能力者である(20条1項)。したがって、未成年者が法律行為を行うには法定代理人の同意が必要である(5条1項本文)。法定代理人の同意を得ずに行った法律行為は取消すことができる(5条2項)。取消権者は未成年者本人やその代理人(未成年者の場合には親権者や未成年後見人等)など120条1項に定められる者である。制限行為能力者の取消においては制限行為能力者本人も取消権者とされているので(120条1項)、未成年者本人が単独で取消す場合にも取消は完全に効力を生じるのであって、取り消すことのできる取消となるわけではない[5]。ただし、単に権利を得、または義務を免れる法律行為については法定代理人の同意は不要とされており、取消権者であっても制限行為能力者であることを理由として取消すことはできない(5条1項但書)。単に権利を得、または義務を免れる法律行為とは、未成年者が債権者から債務免除を受ける場合などである。なお、未成年者による貸金の領収は未成年者の債権が失われるので法定代理人の同意が必要となる[6]。取消権者により取り消された行為は初めから無効であったものとみなされるが(121条本文)、未成年者は制限行為能力者であるから、その行為によって現に利益を受けている限度において返還義務を負うことになる(121条但書)。取消権の詳細については取消#民法上の取消参照。
  • 随意財産の処分
民法第5条1項の規定にかかわらず、未成年者は、その法定代理人が目的を定めて処分を許した財産についてはその目的の範囲内において、目的を定めないで処分を許した財産については任意に処分できる(5条3項)。取引の相手方は法定代理人と未成年者の間の約定を覚知できないが、法定代理人と未成年者により、当該許された財産の処分範囲が立証されれば、取引の相手方は事実上反駁不能であり保護されない。お小遣いが毎月500円の子が為した通信販売契約を遡及して無効とした事例がある[7]
  • 未成年者の営業の許可
未成年者の法定代理人は未成年者に対して一種あるいは数種の営業を許可することができ、この場合、許可された未成年者はその営業に関しては成年者と同一の行為能力を有する(6条第1項)。したがって、未成年者が許可された営業について行った法律行為は制限行為能力者であることを理由としては取り消すことができなくなる。
法定代理人は未成年者がその営業に堪えることができない事由があるときは営業の許可を取消・制限することができる(6条第2項)。この取消し・制限は将来に向かって許可の全部あるいは一部の効力を失わせる撤回であるから、その営業が許可されていた間に未成年者がなした営業行為を取り消すことはできない[8]
未成年者の営業の許可及びその取消し・制限につき、営業の内容が商業であるときは商法上・会社法上・商業登記法上の登記を要する(商法第5条など)この登記は、児童相談所ではなく法務局が受け付ける。営業の内容が商業でない場合には、許可や取消し・制限の公示の方法がないので善意第三者にも対抗しうるものと解されている[9]

身分行為

  • 未成年者の婚姻
未成年者でも婚姻は可能であるが、未成年者の婚姻には婚姻の一般的要件(重婚の禁止など)のほかに、婚姻適齢に達していること(731条)及び父母の同意(737条)を要する。
第一に婚姻適齢については男性は18歳以上、女性は16歳以上でなければならない。これに反する婚姻届は受理されず、誤って受理された場合でも各当事者、その親族又は検察官からその取消しを家庭裁判所に請求することができる(744条1項本文)。ただし、検察官は、当事者の一方が死亡した後は、婚姻の取消しを請求することができない(744条1項但書)。婚姻適齢に達していない者の婚姻は不適法な婚姻として民法744条によって取り消されるまでは一応有効なのであって、当然無効となるわけではないので不適齢者が婚姻適齢に達したときには取消しを請求することができなくなる(745条1項)。ただ、婚姻した不適齢者は、適齢に達した後、なお3ヶ月間はその婚姻の取消しを請求できるが(745条2項本文)、適齢に達した後に追認したときは、もはや不適齢を理由として取り消すことはできない(745条2項但書)。なお、2022年(令和4年)4月1日以降は、男女とも18歳以上で婚姻適齢となる(改正民法)。
第二に未成年者で婚姻する場合は、父母の同意が必要である(737条本文)。父母の一方が同意しないとき、父母の一方が知れないとき、父母の一方が意思を表示することができないときは他の一方の同意だけで足りる(737条但書)。ただ、民法737条については実親と養親がいる場合はどうなるのか、離婚や親権喪失の宣告などによって父母の一方あるいは両方が親権を喪失している場合はどうなるのかといった問題点をめぐり学説が複雑に対立しており、父母ではなく親権者あるいは未成年の後見人の同意または家庭裁判所の許可とすべきといった議論もなされている[10]。民法737条に反する婚姻届は受理されないが、誤って受理された場合にはもはや取り消すことはできない(民法744条が不適法な婚姻の取消原因として民法737条(父母の同意)を加えていないことに注意)。なお、2022年(令和4年)4月1日以降は、男女とも満18歳で成年となり、父母の同意は不要となる(改正民法)。
未成年者は婚姻によって成年に達したものと擬制を受ける(753条)。ただし、この成年擬制の効果は民法などの私法領域のみに限られ、公法領域にその効果は及ばない(未成年者喫煙禁止法未成年者飲酒禁止法などの法律には当然適用されない。)[11]2022年(令和4年)4月1日以降は、婚姻適齢と成年が同一年齢となるため、成年擬制は廃止される(改正民法)。
成年擬制を受けた者が年齢20歳に達しないうちに婚姻を解消した場合には、当事者や法律行為の相手方などの社会的影響を考慮して未成年には復帰しないとするのが通説である(2005年(平成17年))[12]
  • 未成年者の認知
未成年者は嫡出でない子の認知をすることができる。法定代理人の同意は不要である(780条)。
  • 未成年者の養子縁組
    • 未成年者を養子とする場合
      • 未成年者を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。ただし、自己又は配偶者直系卑属を養子とする場合は、この限りでない(798条)。
      • 配偶者のある者が未成年者を養子とするには、配偶者とともにしなければならない(795条本文)。ただし、配偶者の嫡出である子を養子とする場合または配偶者がその意思を表示することができない場合はこの限りでない(795条但書)。
      • 養子となる者が15歳未満であるときは、その法定代理人がこれに代わって縁組の承諾をすることができる(797条1項)。法定代理人がこの承諾をするには、養子となる者の父母でその監護をすべき者であるものが他にあるときは、その同意を得なければならない(797条2項)。
    • 未成年者が養親となる場合
民法は「成年に達した者は、養子をすることができる」と規定しており(792条)、この反対解釈から未成年者は養親となることができない。753条により婚姻によって成年に達したものと擬制を受けた者については法律実務上養親となることができることとされているが、この点については議論がある[13]2022年(令和4年)4月1日以降の792条は、満20歳以上の者(実質的に現行のまま)となる(改正民法)。
  • 未成年者の遺言
15歳に達した者は、遺言することができる(961条)。法定代理人の同意は不要である(962条)。

民法以外の法律

各法令における年齢の計算については、民法の場合と同様に、年齢計算ニ関スル法律(明治35年12月2日法律第50号)による。具体的に要件を満たす事となる日または時刻は、原則として、年齢計算ニ関スル法律に基づく。

民事訴訟法
未成年者は法定代理人によらなければ訴訟行為をすることができないが、未成年者が独立して法律行為をすることができる場合には法定代理人によらずに訴訟行為をすることができる(民事訴訟法第31条)。なお、訴訟能力の項目も参照。
刑法
刑事未成年者
14歳に満たない者の行為は罰しない(第41条)。詳しくは、責任能力の項目を参照。なお、少年法の項目も参照。
労働基準法
第6章「年少者」において、未成年者(20歳未満の者)、年少者(18歳未満の者)、児童(満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまでの者)に区分して、それぞれの年齢に対応した法規制を行っている。具体的に「未成年者」について規制したものとして次の2ヶ条がある。

第58条(未成年者の労働契約)

  1. 親権者又は後見人は、未成年者に代って労働契約を締結してはならない。
  2. 親権者若しくは後見人又は行政官庁は、労働契約が未成年者に不利であると認める場合においては、将来に向ってこれを解除することができる。

第59条

未成年者は、独立して賃金を請求することができる。親権者又は後見人は、未成年者の賃金を代って受け取つてはならない。
民法第824条第859条では、未成年者の同意を得れば未成年者に代わって親権者や後見人が契約を締結できるとする旨の規定があるが、労働契約については特別法である労働基準法の定めが民法より優先する。未成年者は労働契約の締結に際しては法定代理人の同意が必要であるが(民法第5条)、自ら賃金を受け取るべき者と位置付けられているので、未成年者は労働契約に関しては法定代理人によらず自ら訴訟行為を行いうる(上述、民事訴訟法第31条)。
使用者は、児童が満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまで、これを使用してはならない(第56条1項、例外として第56条2項)。
職業訓練を受ける未成年者の年次有給休暇に関する特例が定められている(第72条)。
満18才に満たない者について、深夜業の制限(第61条)。危険有害業務及び坑内労働の禁止(第62条、第63条)。帰郷旅費の制度(第64条)。年齢証明書の備え置き(第57条)。
未成年者飲酒禁止法未成年者喫煙禁止法
日本では、満20歳未満の者が飲用・喫煙をするための煙草を購入できない。満20歳未満の者が飲用・喫煙することを知りながらこれらの者に対し販売等を行なうと販売者や親権者が処罰される。このため、満20歳未満の者でなくとも、酒・煙草の購入時に身分証明書の提示を求められることがある。
2022年(令和4年)4月1日民法改正施行後は、それぞれ「二十歳未満ノ者ノ喫煙ノ禁止ニ関スル法律」、「二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律」に改正されるため、実質的範囲は現行のままである。
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)
18歳未満の者に客を接待させたり、18歳未満の者を客として入店させることはできない。

脚注

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n 諸外国における成年年齢等の調査結果(PDFファイル:169KB)”. 法務省. 2020年10月24日閲覧。
  2. ^ 国連人権高等弁務官事務所サイト [リンク切れ] - (同サイト掲載の成人年齢、国により調査年が異なる。)及び在日各国大使館への聞き取り調査等
  3. ^ article 20-2 de l'Ordonnance n° 45-174 du 2 février 1945 relative à l'enfance délinquante (フランス語)
  4. ^ “選挙権年齢「18歳以上」に 改正公選法が成立”. 47NEWS. (2015年6月17日). オリジナルの2015年6月17日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20150617032536/http://www.47news.jp/CN/201506/CN2015061701001110.html 2020年10月24日閲覧。 
  5. ^ 我妻栄著『新訂 民法総則』394頁、岩波書店、1965年(昭和40年)
  6. ^ 我妻栄著『新訂 民法総則』69頁、岩波書店、1965年(昭和40年)
  7. ^ 「相談事例(26)未成年者の契約取消しと配送料」(PDFファイル:194KB)”. (社)日本消費者協会. 2020年10月24日閲覧。
  8. ^ 我妻栄著『新訂 民法総則』71頁、岩波書店、1965年(昭和40年)
  9. ^ 我妻栄著『新訂 民法総則』70頁・71頁、岩波書店、1965年(昭和40年)
  10. ^ 我妻栄・有泉亨・遠藤浩・川井健著『民法3親族法・相続法第二版』65 - 66頁、勁草書房、2005年(平成17年)
  11. ^ 我妻栄・有泉亨・遠藤浩・川井健著『民法3親族法・相続法第二版』80頁、勁草書房、2005年(平成17年)
  12. ^ 我妻栄・有泉亨遠藤浩川井健著『民法3親族法・相続法第二版』79 - 80頁、勁草書房、2005年(平成17年)
  13. ^ 我妻栄・有泉亨・遠藤浩・川井健著『民法3親族法・相続法第二版』151頁、勁草書房、2005年

関連項目