有機農業

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有機農業(ゆうきのうぎょう、Organic farming、Organic agriculture)は、農業形態のひとつで、有機農法有機栽培オーガニック農法などとも呼ばれる。

定義

科学術語としての有機は、一般に、有機化合物に帰着する。農業の展開を吟味すべき時代にさかんだった化学肥料が無機的だったこととは幾分異なり、古典的な肥料が、典型的には有機的かつ力動的だったと考察され、象徴的に有機という単語が用いられた。したがって有機農業を省略して有機としてしまうと、意味が通じないので注意が必要である。たとえば、「有機農業で栽培された食品」を「有機食品」と略すことは、食品の大部分は有機質であるため不適切といえる。

海外

IFOAM(国際有機農業運動連盟)による「有機農業の原則」は、予防的管理、伝統的知識、社会的・生態学的公正など幅広い内容を含んでいる。 同連盟によると、有機農業の役割は、生産加工流通消費のいずれにおいても、生態系および、土中の最も小さい生物から人間に至る有機体の、健全性を持続し強化することである。アメリカ合衆国農務省 (USDA) 等による有機農業の基準は、遺伝子組換え品種を禁じているわけではない。多くの国では、特例を除いて家畜への投薬を禁じている。

また、有機農業は、フェアトレードや環境管理 (environmental stewardship) といった文化的実践の上にある原理への賛同とも関係がある[注釈 1]

一方、国際連合食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)が定めた「有機的に生産される食品の生産、加工、表示及び販売に係るガイドライン」(通称:コーデックスガイドライン)も、世界的に共通して採用されている[1]。日本のガイドライン(有機農産物の日本農林規格)はコーデックスガイドラインを基に作成されたため[2]、基本的に有機農業の定義を同じくしている[注釈 2]。ただし、有機農産物の認定は日本では農家の申請によるのに対し、海外では生産時だけでなく収穫時や輸送中も含めて化学肥料・農薬・遺伝子組み換え品種の非混入の客観的な証明を要する[3]

アメリカ合衆国、ブルガリアアイスランドノルウェイルーマニアスイストルコオーストラリアインド日本フィリピン韓国台湾タイアルゼンチンコスタリカチュニジア、そしてEUなど、多くの国々・地域では、有機農業は法律によっても定義されているので、農業や食品製造における「有機」という単語の商用利用は、政府によって統制されている。法律が存在する場合、有機であるという認定は有料で行われる。無認可の農場にとって、自分自身あるいは自分の生産物を有機であると称することは違法ということになる。 カナダにおいては、法律は整備されていないが、任意の認定が可能である。

アメリカ

1990年に「有機食品生産法」が制定され、有機農産物は合成化学物質である農薬化学肥料などを一切使用せずに生産された農産物を指し、さらに過去3年間に合成化学物質を含め禁止物質を使用した農地で生産された農産物ではないことと規定される[4]

日本

「有機農業の推進に関する法律」(平成 18 年法律第 112 号)の第二条において、有機農業は次のように定義される;「化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと並びに遺伝子組換え技術を利用しないことを基本として、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方法を用いて行われる農業」[5]

農林水産省の「有機農産物の日本農林規格」[6]では、有機農業で生産された農産物(有機農産物)は次のように定義されている。

  • 有機農産物
  1. 有機農産物:農薬と化学肥料を3年以上使用しない田畑で、栽培したもの[注釈 2]
  2. 転換期中有機農産物:同6ヶ月以上、栽培したもの
  • 特別栽培農産物
  1. 無農薬栽培農産物:農薬を使用せずに栽培したもの
  2. 無化学肥料栽培農産物:化学肥料を使用せずに栽培したもの
  3. 減農薬栽培農産物:その地域での使用回数の5割以下しか農薬を使わずに栽培したもの
  4. 減化学肥料農産物:同化学肥料を使わずに栽培したもの

有機JAS規格では有機農産物を「生産から消費までの過程を通じて化学肥料農薬等の合成化学物質や生物薬剤、放射性物質遺伝子組換え種子及び生産物等をまったく使用せず、その地域資源をできるだけ活用し、自然が本来有する生産力を尊重した方法で生産されたもの」と定めている。

経緯

20世紀から今日まで、一般的に農業では、化学肥料や化学合成農薬といった農業用化学合成基質(化学工業で生産された、生物(農作物、害虫雑草、病害微生物など)に対する効果を目的とした基質で、化学工業により生産されるもの)が利用されている。このことが有機農業の背景のひとつとなっている。

海外

イギリスの植物学者のアルバート・ハワード英語版が、1905年から1931年までインドで東洋の自然観にもとづく農業の研究をし、インドール方式と呼ばれる堆肥のつくり方を発表する。『農業聖典』[7]などの著作がある。

ドイツでは、ハワードと同時代に、神秘思想家のルドルフ・シュタイナーバイオダイナミック農法の講演を行っていた[8]

1962年、アメリカの自然科学者のレイチェル・カーソンが、DDTなどの毒性と残留性の強い農薬による危険性を訴えた『沈黙の春[9]を出版し反響を呼ぶ。

1972年、国際有機農業運動連盟(IFOAM、アイフォーム、International Federation of Organic Agriculture Movements)ができる。

1989年1月7日、ウェールズ公チャールズは、自分の領地では有機農業を行うと宣言し、また自ら所有する家庭菜園でも有機農法を実践している[10]

1992年、ウェールズ公チャールズは有機農産物のブランド、「ダッチー・オリジナル」を創設する。

キューバでは、都市部の自給的農業を中心に展開している。

日本

日本では1930年代に福岡正信や宗教家の岡田茂吉が、農作業の大部分を自然に任せる自然農法を開始した。また、マクロビオティックの創始者である桜沢如一が、農薬や化学肥料を使った農法に対し問題提起をおこなった[11]

1961年に農業基本法が制定され、化学肥料や化学合成農薬の使用が大きく推進されることとなった。これは、農地の単位面積あたりの収量を大幅に増大させるためである。しかし、後述する理由により化学合成基質の使用が問題視され、化学合成基質を使用しない有機農業が生じる背景となった。

「有機農業」という言葉は、1971年に農協役員の一楽照雄(1906年 - 1994年)が考案したものである[12]。この時すでに、日本の農業政策は化学肥料や化学合成農薬の使用を前提とした食糧増産の路線を進み、日本の農村から有機農業の基盤は失われていた[12]。一楽は、経済合理主義によって推進されていた農業の近代化に対して疑問を持ち、近代農業は農薬や化学肥料の毒性の問題だけでなく、農民の生活基盤を破壊する思想そのものが人間社会や自然生態系の存続を危機に陥れかねないと考えた。経済の領域を超えたあるべき姿の農業、「豊かな地力と多様な生態系に支えられた土壌から生み出された健康的で食味の良い食べ物を通して、自立した生産者と消費者が密接に結び付き、それにより地域の社会や文化の発展と、安定した永続的で幸福な生活の実現を図る」ことを目指し、こうした社会全体の大きな変革の基礎となる農業のあり方を「有機農業」と名付けた。同時にこうした社会運動の母体として1971年に「日本有機農業研究会」を設立し、同研究会を農業者、消費者、研究者や行政が同じテーブルについて対話する核として位置づけた。以降、有機農業という言葉は徐々に日本に広まったが、農薬や化学肥料を支持する人が大多数を占める状況の中で、当初の一楽たちの試みは困難を極めた。有機農業を志す農業者は奇人・変人扱いされ、集落の共同体から排除されることもしばしばあった[12]

1980年代に入ると、経済優先主義による環境破壊が顕著になってきたため、先駆的な有機農業者と消費者たちの努力が徐々に認められるようになっていった[12]1987年に有機米の公認(特別栽培米)、1991年に有機栽培のガイドラインが制定された。

1990年代から有機農業と減農薬農業の研究が本格的に始まった[3]。有機農業に関する研究は、ここまでの時期には、(農薬の未使用なども含めた)有機農業の効果よりも、有機資材の施用の効果、すなわち無機肥料の施用との比較や、無機肥料の施用により生じた土壌浸食の防止[13]、土壌物性の改善[14][15][16][16]等が中心であった。この頃、米国でLISA(Low lnput Sustainable Agriculture)が提唱された[17]。日本でも、1992年に農林水産省が「新しい食料・農業・農村政策の方向(新政策)」の中で、生態系と調和した持続可能な「環境保全型農業」を提唱した[18]

2000年1月、日本農林規格(JAS規格)に、コーデックス委員会に準拠した「有機JAS」の規格ができた。認証されるのは、遺伝子組み換えされておらず、基本的に化学合成された農薬や肥料を避けられた食品である。2002年12月には、農薬取締法に特定農薬指定制度ができた。特定農薬は、安全性の明らかなものと定義されており、通称「特定防除資材」と呼ばれる。しかし、定義が安全性の明らかなものとされているのに農薬という呼称をつけるのはどうかとの批判がある[19]。とはいえ、有機JASにおいては、緊急の際に特定農薬や、許可された天然に存在する物質に由来する農薬が使用されることがある。また、2009年(平成21年)8月27日の改正により、遺伝子組み換え作物に由来する堆肥の使用は当分の間、許可されることとなった。

2006年12月、「有機農業の推進に関する法律[20]が制定・施行された。またそれを受け、2007年4月には「有機農業の推進に関する基本的な方針」が公表された。これにより、日本の法制度のもとでは規制の対象としか見られてこなかった有機農業が、法律によって推進されることとなった。

有機農産物認定事業者の数は、2002年(平成14年)6月時点で3639戸、平成15年5月時点で4273戸、平成16年3月時点で4453戸、平成17年3月で4664戸、平成18年3月時点で4611戸、平成18年9月時点で5104戸と、増加傾向にあるといえる[21]

特徴

有機農業者は、土壌の生産性と耕地を維持し、植物栄養分を供給し、雑草害虫・病気などを抑えるために、できる限り、輪作したり、作物の残余物・動物性肥料を利用したりしている。 その土地や気候環境に強い植物や植物の種を選ぶことでも肥料や農薬の使用を抑えることができる。

一方、後述のように有機農業の単位面積当たりの収量が低い場合には、慣行農法と同様の収量を得るためにはより多くの農地を必要とする。農地自体が人為的なものであり、慣行農法によって高収量で農地を少なくする方がより生態系保護や環境保全に利するという観点も存在する。このように生態系保護や環境保全という観点からだけでも、有機農業に対する評価は多様である。

また、熟成が不十分な有機質肥料は、寄生虫汚染や病原微生物汚染の原因になる。そのため、十分に熟成させた堆肥を利用する必要がある。そのため、かつて、有機質肥料を用いず、化学肥料のみを用いて栽培した野菜を「清浄野菜」と称して尊重したこともあった。また、堆肥の熟成が不十分な場合、ガス障害や高いC/Nによる窒素飢餓が生じる恐れもある。

有機農業というアプローチは共通の到達点と実践を共有しているが、その手法は様々である。たとえば、合成化学肥料を使用しないかあるいは厳しく制限すること、土壌を浸食や貧栄養化、物理的な崩壊から保護すること、生物多様性の保全(例えば、一品種を栽培するのではなく、多品種を栽培するなど)、家畜類を屋外で飼育すること(平飼い)、などが含まれる。これらの枠組みの中で、個々の農業者はそれぞれ自分自身の有機生産システムを発展させる。そういった個々の有機農業のあり方は気候や市況、地域的な農業の基準によって規定されている。

広義には、有機農業は無農薬または低農薬農法までを含む。農薬による薬害や公害も次第に明らかになり、70年代にもDDTなどの毒性の強い農薬が規制されてきた。これらの農薬には生分解されにくいものがあり、環境や人体への蓄積も懸念される。また本来の生態系を破壊することで、新たな害虫の発生や天敵による、害虫抑止力の喪失の弊害を招くことも明らかとなった。この反省から、有機肥料とともに無農薬または低農薬農法を実践する農家がある。

一方、無農薬や低農薬農法を用いた結果、病害虫防除が不十分だと病害虫に抵抗するために、植物自体が作る天然化学物質の方が残留農薬などよりも遙かに毒性が強いという報告が、突然変異原性の検出法エームズ試験の開発で有名な、エームズ博士らによって出されている[22]

有機栽培は慣行栽培に比べ、統計的に単位面積あたりの収量が低い。現在の高度な栽培方法が導入される明治中期までの反収(1=300=10 a辺り)は奈良律令制時代の100 kgからさほど伸びず、せいぜい200 kg(13)程度。これが純粋な伝統的有機栽培での収量と思われる。

有機肥料の多くは、農産廃棄物、畜産廃棄物、林産廃棄物の産業廃棄物を熟成・発酵させたものであり、ゴミの減量や物質循環という意味でも有意義である。原種から食感の向上、収量の増大などを目的として、人の手による改良を経た作物は、原種とは異なる性質を備える。異なる性質の中には、肥料への要求成分・分量の変化も含まれる。

有機肥料は、窒素に関しては緩効性肥料として作用するため、肥効を短時間でコントロールするような栽培法には、速効性窒素肥料に比べて不向きであり、栽培にも習熟が必要とされる。さらに、窒素肥料という観点からしても、温度や水分含量によって微生物による有機肥料の分解速度が異なり、制御が困難である。

めざすもの

特定非営利活動法人日本有機農業研究会は、「有機農業のめざすもの」として、下記の項目を挙げている[23]

有機JAS規格で使用が認められている物質

有機JAS規格では、以下のような天然に存在する物質の使用が許可されている[24]

有機肥料の他に、様々な無機肥料が認められる。それらは、草木灰炭酸カルシウム苦土炭酸カルシウムを含む。)、塩化加里硫酸加里、硫酸加里苦土、天然りん鉱石、硫酸苦土、水酸化苦土、石こう硫黄生石灰(苦土生石灰を含む。)、消石灰、微量要素(マンガンほう素亜鉛モリブデン及び塩素)、岩石を粉砕したもの、塩基性スラグ、鉱さいけい酸質肥料、よう成りん肥、塩化ナトリウム、リン酸アルミニウムカルシウム、塩化カルシウム、などであり、有機肥料しか有機農業に用いられていないということは誤解である。

使用条件のついているものもあるが、使用可能な農薬は、除虫菊乳剤及びピレトリン乳剤、なたね油乳剤、マシン油エアゾル、マシン油乳剤、大豆レシチン・マシン油乳デンプン水和剤脂肪酸グリセリド乳剤、メタアルデヒド粒剤、硫黄くん煙剤、硫黄粉剤、硫黄・銅水和剤、水和硫黄剤、硫黄・大豆レシチン水和剤、石灰硫黄合剤、シイタケ菌糸体抽出物液剤、炭酸水素ナトリウム水溶剤及び重曹、炭酸水素ナトリウム・銅水和剤、銅水和剤、銅粉剤、硫酸銅、生石灰、天敵等生物農薬、性フェロモン剤、クロレラ抽出物液剤、混合生薬抽出物液剤、ワックス水和剤、展着剤二酸化炭素剤、ケイソウ土粉剤、食酢の30種類である。

その他、有機JAS規格によれば、本来は種苗や防除資材や肥料などに組換えDNA技術を用いたものを利用できない。しかし、附則(平成18年10月27日農林水産省告示第1463号)により、特例として遺伝子組換え作物に由来する有機質肥料である堆肥を有機栽培に用いることが許可された(遺伝子組み換え作物の「遺伝子組換え作物と有機栽培」の節を参照)。

有機農産物の品質

下表は、有機資材投入・無農薬栽培および有機資材投入と慣行農法との比較を農作物の品質について行った研究とその結果を作物別に示す。

慣行農法と比較した、有機資材投入・無農薬栽培および有機資材投入による農産物の品質変化の比較
農産品 栽培方法 品質変化
有機資材投入・無農薬栽培 デンプンの粘り、Mg/K比、食味が向上した[25]
無化学肥料・無農薬栽培 収量が10%程度減少した[26]
有機資材投入 食味、アミロース含量、Mg/K比に差がなかった[27]
減化学肥料・減農薬栽培 食味と収量に差がなかった[27][28]
ニンジン 有機資材投入・無農薬栽培 香気成分パターンに差はなかった[29]
カロチノイド含量に差はなかった[30]
微弱振動電磁波による評価に差がなかった[30]
葉中の硫黄ナトリウムが高かった。収量、ビタミンCとE、αおよびβ-カロチン、N・P・K・Na・Ca・Mg・S・Fe・B・Mn・Zn・Cuで差がなかった[31]
官能試験に差があった。ビタミンC、還元糖、アミノ酸含量とその組み合わせに差がなかった[32]
有機資材投入 カロチン含量と日持ち性が向上した。上物収量に差はなかった[27][33]
減化学肥料・減農薬栽培 トウド、ビタミンC、β-カロチン含量に差はなかった[34]
大根 有機資材投入・無農薬栽培 日持ち性、香味で差があった[35]
香気成分パターンに差はなかった[29]
近赤外スペクトルで識別可能[29]
微弱振動電磁波による評価に差がなかった[30]
有機資材投入 辛み成分が低かった[27][33]。上物収量に差がなかった。
有機資材(油粕)投入 外観、肉質、歩留まりが向上した[36][37]
有機資材(バーク)投入 す入りになった[36][37]
収量および土壌の陽イオン交換能が増加した[38]
減化学肥料・減農薬栽培 グリコシレート含量が低かった[30]
トマト 有機資材投入・無農薬栽培 N・P・K・Ca・ビタミンC含量および官能評価に差がなかった[39]
官能試験で慣行農法の評価がより高かった[40]
官能試験で、表面の赤みと旨みとの評価がより高かった。糖度とビタミンC含量がより高かった[41]リコピン含量とアミノ酸含量に差はなかった。
有機資材投入 外観、肉質、歩留まりが向上した[36][37]
食味が良く、貯蔵性が高かった[42][43]
栽培年と着果位置による調査成分の変動が大きかった[43]
果色、糖、酸度、ビタミンCに差がなかった[27]
ホウレンソウ 有機資材投入・無農薬栽培 葉色と硝酸含量に差があった[27]。ビタミンC、シュウ酸、日持ち性、無機成分含量に差がなかった。
官能試験と日持ち性に差があった[44]
水分・ビタミンC・糖分・硝酸・シュウ酸含量、日持ち性に差がなかった[45]
有機資材投入 食味に差がなかった[27]
還元糖含量は高く、硝酸態窒素含量は低かった[46]
キャベツ 有機資材投入・無農薬栽培 収量、ビタミンCとE、αおよびβ-カロチン、N・P・K・Na・Ca・Mg・S・Fe・B・Mn・Zn・Cuで差がなかった[31]
腫瘍壊死因子(TNF-α)産生誘導とキノンレダクターゼ(肝解毒酵素)活性と関連は認められなかった[47]
有機資材投入 収量と土壌の陽イオン濃度が増加[38]
還元糖含量は高く、硝酸態窒素含量は低かった[46]
外観、肉質、歩留まりが向上した[36][37]
レタス 有機資材投入・無農薬栽培 N・P・K・Ca・ビタミンC含量と官能的評価に差がなかった[39]
有機資材投入 糖含量と貯蔵性が高かった[48]
外観、肉質、歩留まりが向上[36][37]
還元糖含量は高く、硝酸態窒素含量は低かった[46]
ジャガイモ 有機資材投入・無農薬栽培 N・P・K・Ca・ビタミンC含量と官能的評価に差がなかった[39]
有機資材投入 内部品質(ビタミンC・タンパク質・遊離アミノ酸含量、デンプン価、乾物率)に差がなかった[49]
白菜 有機資材投入・無農薬栽培 香気成分パターンに差はなかった[29]
近赤外スペクトルで識別可能[29]
微弱振動電磁波による評価に差がなかった[30]
紫外線の蛍光写真で差がなかった
葉ネギ 有機資材投入・無農薬栽培 葉色と硝酸含量に差があった[27]。ビタミンC、シュウ酸、日持ち性、無機成分含量に差がなかった。
タマネギ 有機資材投入・無農薬栽培 フラボノイド含量に差がなかった[30]
N・P・K・Ca・ビタミンC含量と官能評価に差がなかった[39]
微弱振動電磁波による評価に差がなかった[30]
サツマイモ 有機資材投入・無農薬栽培 香気成分パターンに差はなかった[29]
クロロゲン含量に差はなかった[30]
微弱振動電磁波による評価に差がなかった[30]
近赤外スペクトルで識別可能[29]
メイズ 有機資材投入・無農薬栽培 収量が10%減少したが、タンパク質含量が低下し、アミノ酸組成は変化しなかった[50]
タイム 有機資材投入・無農薬栽培 活性成分含量は作物ごとのばらつきが大きかった[51]。乾燥重量は慣行農法のほうが高かった。
カモミール 有機資材投入・無農薬栽培 活性成分含量は作物ごとのばらつきが大きかった[51]。乾燥重量は慣行農法のほうが高かった。
エンドウ 有機資材投入・無農薬栽培 N・P・K・Ca・ビタミンC含量と官能評価に差がなかった[39]
ペッパー 有機資材投入・無農薬栽培 N・P・K・Ca・ビタミンC含量と官能評価に差がなかった[39]
イチゴ 有機資材投入・無農薬栽培 日持ち性と香味で差があった[35]
ブロッコリー 有機資材投入・無農薬栽培 微弱振動電磁波による評価に差がなかった[30]
ナス 有機資材投入 外観、肉質、歩留まりが向上[36][37]
チンゲンサイ 有機資材投入 還元糖含量は高く、硝酸態窒素含量は低かった[46]
温州みかん 有機資材投入 収量と糖度が高かった[13][52][53]。ただし、病害虫により品質が低下した。酸度、果実重、果実比重、果皮色に差はなかった。土壌物性の改善効果は認められなかった。
有機資材投入 官能評価、収量、全窒素含量に差がなかった[54][55][56]
小麦 有機資材投入 タンパク質含量が低かった[57]
収量と土壌物性が向上した[14][15]
大豆 有機資材投入 収量と土壌物性が向上した[14][15]
ネットメロン 有機資材投入 遊離アミノ酸含量が低かった[27]
キュウリ 有機資材(油粕)投入 外観、肉質、歩留まりが向上[36][37]
有機資材(バーク堆肥)投入 形状不良[36][37]

脚注

注釈

  1. ^ これは全ての有機農場・有機農業者に当てはまるわけではない。
  2. ^ a b 日本の「有機農産物の日本農林規格」と海外の「コーデックスガイドライン」のどちらも有機農産物の条件に、化学肥料と化学合成農薬を「3年間」使用しないことをあげているが、なぜ3年なのかという科学的根拠はない。西尾道徳:農業および園芸、73、845(1998).

出典

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関連項目

外部リンク