平朝彦
平 朝彦(たいら あさひこ、1946年5月30日[1] - )は日本の地質学者。専門は海洋地質学・地球進化論。Ph.D.。東京大学名誉教授。国立研究開発法人海洋研究開発機構理事長、東海大学海洋研究所長(2020年4月1日より)、日本地質学会会長を務めた。
宮城県生まれ[2]。1970年、東北大学理学部卒業。1976年、テキサス大学大学院博士課程修了。高知大学理学部助教授、東京大学海洋研究所教授、独立行政法人・海洋研究開発機構 地球深部探査センター初代センター長を経て、国立研究開発法人・海洋研究開発機構理事長( - 2019年8月31日、後任は松永是氏[3])。日本学術会議会員。
九州南部から四国、紀伊半島南部、そして赤石山脈にかけてみられる四万十帯という地層は赤道付近から移動してきたプレート上の枕状溶岩、遠洋性堆積物(チャート)が海溝(タービダイト)堆積物と混合、付加したもの(付加体)であることを実証して、プレートテクトニクス理論の確立に貢献した。
また、南海トラフの海洋地質学的研究を推進し、南海トラフに堆積している乱泥流堆積物(タービダイト)が主に富士川l起源であることを突き止めた。すなわち、伊豆・小笠原島弧が本州島弧に衝突し、南アルプスと富士箱根火山帯が形成され、その山岳地帯から供給された大量の土砂が、富士川から海底を乱泥流となって700km流れ、堆積し、それがフィリピン海プレートの運動で南海トラフ付加体を作っていることを明らかにした。
さらに伊豆小笠原島弧の地殻構造について反射法・屈折法地震波探査を駆使して、前例のない精度で測定を行い、青ヶ島の付近を海溝から四国海盆への横切る断面において島弧中心部に地震波速度6km/secの花崗岩質地殻と推定されるものを発見した。地球史の中では、このような島弧地殻が大陸の”種”となって地球表層に残存し、それが集まって小大陸となり、さらにそれらが衝突して山脈を作り、風化侵食が起こり、付加体となる、というグローバルな物質循環が原生代より始まったとする考えを提案した。四万十帯、南海トラフ、伊豆小笠原島弧の研究は、島弧の形成ー衝突テクトニクスー山脈形成と侵食ー乱泥流に運搬ー付加体と新しい地殻の形成という一連のプレートテクトニクスと大陸地殻の進化、地球表層の物質循環の過程と歴史を描き出した。
東京大学海洋研究所の時代より、日仏海溝(KAIKO)計画や国際深海掘削計画の推進に参画してきた。また、地球深部探査船「ちきゅう」の建造・運用計画に参画し、2007年よりJAMSTECにおいて運用の責任者となり、南海トラフ地震発生帯掘削計画を統括し、統合国際深海掘削計画を推進した。
1994年アメリカ地質学会フェロー、2002年日本地質学会会長[4]、2007年度日本学士院賞受賞、2015年王立天文学会名誉フェロー、2017年日本地球惑星科学連合フェロー、2018年フランス・レジオンドヌール勲章シュバリエを受賞した、
著書
- 中村一明と共編『日本列島の形成 - 変動帯としての歴史と現在』 岩波書店、1986、ISBN 4-00-005761-8。
- 『日本列島の誕生』 岩波書店〈岩波新書〉、1990、ISBN 4-00-430148-3。
- 『地質学1 地球のダイナミックス』 岩波書店、2001、ISBN 4-00-006240-9。
- 大竹政和・太田陽子と共編『日本海東縁の活断層と地震テクトニクス』 東京大学出版会、2002、ISBN 4-13-060739-1。
- 『地質学2 地層の解読』 岩波書店、2004、ISBN 4-00-006241-7。
- 徐垣・末廣潔・木下肇と共著『地球の内部で何が起こっているのか?』 光文社〈光文社新書〉、2005、ISBN 4-334-03314-8。
- 『地質学3 地球史の探求』 岩波書店、2007、ISBN 978-4-00-006242-8。
- 海洋研究開発機構と共著『地球科学入門 地球の観察』 講談社、2020、ISBN 978-4-06-521690-3。
脚注
- ^ 『読売年鑑 2016年版』(読売新聞東京本社、2016年)p.193
- ^ “漫画『徳川家康』で学ぶ歴史 事典のように寝床で読む”. NIKKEI STYLE. (2019年5月18日) 2020年1月14日閲覧。
- ^ “文部科学省人事(9月1日付):朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル. 2019年8月3日閲覧。
- ^ 地球のダイナミックス山賀 進のWeb site
関連項目
外部リンク
- 国立研究開発法人海洋研究開発機構
- 平朝彦「地球科学のフロンティア日本列島」(SciencePortal)
- 日本学士院
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