小型自動車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。59.135.158.95 (会話) による 2021年2月11日 (木) 23:56個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (→‎概要)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

小型自動車(こがたじどうしゃ)とは、日本における自動車の区分のひとつ。市場においてはナンバープレートの分類番号から「4ナンバー車(貨物)」/「5ナンバー車(乗用)」と呼ばれる。

概要

道路運送車両法における区分であり、道路運送車両法施行規則において規定されている定義は以下の通り。

四輪以上の自動車及び被けん引自動車で自動車の大きさが長さ4.70メートル以下、幅1.70メートル以下、高さ2.00メートル以下であるもののうち軽自動車、大型特殊自動車及び小型特殊自動車以外のもの(内燃機関を原動機とする自動車(軽油を燃料とする自動車及び天然ガスのみを燃料とする自動車を除く。)にあつては、その総排気量が2000cc以下のものに限る。)、および二輪自動車(側車付二輪自動車を含む。)及び三輪自動車軽自動車大型特殊自動車及び小型特殊自動車以外のもの。

ナンバープレートで地名の横に書かれている2桁もしくは3桁の分類番号の上1ケタ目が、5もしくは7である小型乗用自動車のことを「5ナンバー」、4もしくは6である小型貨物自動車のことを「4ナンバー」と呼ぶことが多い。貨客兼用車で貨物重視の4ナンバー車をライトバンやルートバン、乗用重視の5ナンバー車をミニバンステーションワゴンやワゴンなどと呼ぶことが多い。

一般的に、四輪および三輪の小型自動車は普通自動車運転免許、準中型自動車運転免許、中型自動車運転免許または大型自動車運転免許、二輪の小型自動車に関しては排気量に応じた普通自動二輪車大型自動二輪車免許で運転できる。乗車定員・最大積載量・車両総重量にそれぞれ条件があるため詳細は日本の運転免許を参照のこと。

1989年平成元年)以前は毎年の税金が普通自動車の半額以下に設定されていたため[1]クラウンセドリック/グロリアデボネアといった高級車、ランドクルーザーパジェロといった上級SUVを含む当時の国産乗用車の多くが小型車規格に合わせて製造されていた。しかしそれ以降は排気量によってのみ税額が決まるようになった為メーカーにとっての「5ナンバー縛り」の意義は薄れ、89年当時がバブル期であったことによる高級化志向からDセグメント[2]が、更にその後の不況(特に2000年代以降)においては輸出市場における大型化の要求の影響(企業規模によっては国内市場だけの為に5ナンバー車を作る余裕がない)からそれまで5ナンバーだったDセグメント以下の車種[3]3ナンバー化するケースが相次いだ。そして2020年前後になってくるとヤリスクロスヴェゼルRVRKICKSなどのようにクロスオーバーSUVを中心に国産コンパクトクラスでありながらもDセグメントのマークXにすら迫る(時に超える)全幅の車種まで登場するに至っている。
しかし2020年(令和2年)現在も未だに5ナンバー全盛期のインフラが残っている関係でこれらの車種は日本の道路・交通事情ではとりたてて扱いにくい存在であり、特に大衆車クラスの実用車では致命的な問題となる。そのため、トヨタ・カローラアクシオトヨタ・アリオン/プレミオホンダ・グレイス(現在すでに絶版)、日産・ラティオ(現在すでに絶版)などのセダン系乗用車、トヨタ・カローラフィールダーホンダ・シャトル日産・ウィングロード(現在すでに絶版)などのワゴン系乗用車、トヨタ・シエンタトヨタ・エスクァイアホンダ・フリードなどのミニバン系乗用車、果てはトヨタ・ジャパンタクシーに見られる小型タクシー専用車やマツダ教習車、およびトヨタ教習車などに見られる小型車規格に収められたセダン型教習車などのように明確に5ナンバー車であることを売り文句にするケースもまま見られる。

区分の歴史

  • 1933年11月1日 - 自動車取締令改定で小型自動車の規格が明示される。(同年8月18日公布)
    • 長さ:2.8m以下、幅1.2m以下、高さ:1.8m以下
    • 内燃機関を原動機とするものは四サイクルが750cc以下、二サイクルが500cc以下
    • 電動機を原動機とするものは定格出力4.5kW以下
    • 運転免許は小型免許。(普通免許、特殊免許所持者も運転可能)、学科試験、技能試験なし。
  • 1948年1月1日 - 道路交通取締法施行に伴い、道路交通取締令が施行される。(1947年12月13日公布。道路交通取締法は同年11月8日公布)第一種から第四種まで細分化される。
    • 第一種:四輪車の類(前二輪により操行する四輪車、三輪車の類)
      • 長さ:4.3m以下、幅1.6m以下、高さ:2.0m以下
      • 内燃機関を原動機とするものは四サイクルが1,500cc以下、二サイクルが1,000cc以下(ディーゼル機関は四サイクルが1,800cc、二サイクルが1,200cc)
      • 電動機を原動機とするものは定格出力12kW
    • 第二種:三輪車の類(前一輪により操行する三輪車、後者付自動自動車の類)
      • 長さ:4.3m以下、幅1.6m以下、高さ:2.0m以下
      • 内燃機関を原動機とするものは四サイクルが1,500cc以下、二サイクルが1,000cc以下
      • 電動機を原動機とするものは定格出力8kW以下
    • 第三種:二輪車の類(前一輪により操行する自動二輪車、側車付自動二輪車、スクーターの類で第四類に属しないもの)
      • 長さ:4.3m以下、幅1.6m以下、高さ:2.0m以下
      • 内燃機関を原動機とするものは四サイクルが1,500cc以下、二サイクルが1,000cc以下
      • 電動機を原動機とするものは定格出力6kW
    • 第四種:軽二輪車の類(前一輪により操行走行する自動二輪車、スクーターの類で下記の制限以下のもの)
      • 長さ:2.8m以下、幅0.9m以下、高さ:2.0m以下
      • 内燃機関を原動機とするものは四サイクルが150cc以下、二サイクルが100cc以下
      • 電動機を原動機とするものは定格出力1.2kW以下
    • 運転免許は小型免許(各種類に該当する自動車と第四種の自動車。ただし、第四種の自動車は第四種のみ)または普通免許(第一種、第四種)、特殊免許(第一種は第一種と第四種。第二種と第三種は第四種のみ)
  • 1949年11月1日 - 道路交通取締令の一部改正に伴い小型免許を小型自動四輪車免許、自動三輪車免許、側車付自動二輪免許、自動二輪車免許に区分改正。
    • 小型自動四輪車(前二輪により操行する四輪車、三輪車の類)
      • 長さ:4.3m以下、幅1.6m以下、高さ:2.0m以下
      • 内燃機関を原動機とするものは四サイクルが1,500cc以下、二サイクルが1,000cc以下(ディーゼル機関は四サイクルが1,800cc、二サイクルが1,200cc)
      • 電動機を原動機とするものは定格出力12kW以下
    • 自動三輪車:前一輪により操行する三輪車、後者付自動自動車の類)
    • 側車付自動二輪車:前一輪により走行する側車付自動二輪車
    • 自動二輪車:前一輪により操行する自動二輪車、側車付自動二輪車、スクーターの類で軽自動二輪車に属しないもの)
      • 長さ:4.3m以下、幅1.6m以下、高さ:2.0m以下
      • 内燃機関を原動機とするものは四サイクルが1,500cc以下、二サイクルが1,000cc以下
      • 電動機を原動機とするものは定格出力6kW以下
    • 軽自動二輪車(前一輪により操行走行する自動二輪車、スクーターの類で下記の制限以下のもの)
      • 長さ:2.8m以下、幅0.9m以下、高さ:2.0m以下
      • 内燃機関を原動機とするものは四サイクルが150cc以下、二サイクルが100cc以下
      • 電動機を原動機とするものは定格出力1.2kW以下
  • 1952年8月1日 - 道路交通取締法改正に伴い、道路交通取締令を改正。(同年7月17日公布)
    • 軽免許新設により軽自動二輪車は軽自動車免許に区分変更。
      • 1968年まで存在し、16歳で取得可能だった。
    • 小型自動四輪車のガソリン、ディーゼルの区分を廃止し四サイクルが1,500cc以下、二サイクルが1,000cc以下に統一
  • 1954年10月1日 - 小型自動四輪車の内燃機関を原動機とするものの規格を1,500ccに統一
  • 1960年9月1日 - 道路運送車両法の小型自動車の規格を改める。(同年7月20日公布)
    • 四輪以上の自動車及び被牽引自動車で下記の規格に該当するもの(軽自動車、特殊自動車を除く)
    • 長さ:4.7m以下、幅1.7m以下、高さ:2.0m以下(1958年昭和33年4月1日改正が抜けて居る[疑問点])
    • 内燃機関を原動機とするものは2,000cc以下(ディーゼル機関は排気量無制限[疑問点]
  • 1960年12月20日 - 道路交通法施行に伴い小型自動四輪免許は普通自動車免許に統合。(ただし、審査を受けなければ「普通車は小型自動四輪車に限る」の条件付)
  • 1982年10月1日 - 道路交通取締法改正に伴い、小型自動車の寸法要件を改める。
    • 前端オーバーハング0.8m以下 + 軸距2.7m以下+後端オーバーハング:1.2m以下 → 長さ:4.7m以下

自動車重量税を基準とした小型自動車

自動車重量税は、一般的に、自動車購入時や車検の時に同時に納付する。自動車重量税は、同じ乗用車(ナンバープレートの分類番号の上1ケタ目が3・5・7)でも、500kg毎に納付額が異なるため、車検の料金表などでは、車両重量が1,000kg以下の乗用車のことを、小型自動車、小型乗用車、または、コンパクトカーなどと表記されていることが多い。車検の料金表などで小型貨物車と表記されている場合は4ナンバー車(分類番号の上1ケタ目が4・6)のことをさし、さらに重量で細分化されている。

その他

  • 現在の小型自動車はAセグメントクラスの車種を除き、ほぼ寸法ぎりぎりのサイズ(特に車幅(全幅)を1,695mmとするケース)で製造している車種が多い。エアロパーツやフェンダーアーチモール等の装着で車幅(全幅)が増加するため、同じ車種であってもエアロパーツやフェンダーアーチモール等の装着の有無で3ナンバーと5ナンバーの両方に分かれるケースが見られる[4][5]
  • 2018年4月19日に一部改良、および仕様変更を実施した軽自動車ベースの電気自動車である三菱・i-MiEVのように道路運送車両の保安基準の改正に伴う対歩行者安全強化の理由のため、フロントバンパーの変更によって全長が若干拡大(3,395mm→3,480mm)した[6]ことでこれまでの軽自動車から小型自動車に区分変更となるケースも存在する。
  • 日本における自動車販売台数の統計は小型自動車と普通車で別項目で統計を取っていることが多いため、売上台数の統計使用時は注意を要する。(日本自動車販売協会連合会の統計)

関連項目

脚注

  1. ^ 自動車税について”. 2016年11月22日閲覧。
  2. ^ 1990年代前半に車体サイズが3ナンバー化したDセグメント以下の車種の例:トヨタ・JZX90(マークII/チェイサー/クレスタ)、トヨタ・ST202(セリカ/カリーナED/コロナEXiV)、日産・スカイラインR33、ホンダ・アコード三菱・ギャラン
  3. ^ 具体例:トヨタ・プリウストヨタ・カローラランクス/アレックスオーリスを経てカローラスポーツ(欧州名・カローラ(ハッチバック)、米国/豪州名・カローラハッチバック、台湾名・オーリス)、日本市場専用車として開発されたカローラアクシオを除くトヨタ・カローラ(セダン)(中国市場専売車のレビン、およびシリーズ12代目以降の日本市場仕様車含む。欧州名・カローラサルーン、東南アジア名・カローラアルティス)、トヨタ・カローラフィールダー(欧州名・カローラコンビ)→オーリスツーリングスポーツを経てカローラツーリングスポーツ(日本名・カローラツーリング)日産・ブルーバードブルーバードシルフィ→シルフィ日産・プリメーラホンダ・シビックホンダ・インサイトマツダ・ファミリアアクセラMAZDA3マツダ・カペラアテンザMAZDA6三菱・ランサー(最終型は日本ではギャランフォルティス名義として販売)、スバル・インプレッサ(日本名・インプレッサスポーツ/インプレッサG4)、スバル・レガシィ(日本名・レガシィツーリングワゴン/レガシィB4)…といった具合に全てのメーカーで見られる現象である。
  4. ^ 例その1:ホンダ・ステップワゴンの5代目は5ナンバーだが、同世代のホンダ・ステップワゴン・スパーダは3ナンバーとなる。
  5. ^ 例その2:トヨタ・アクアは基本的に5ナンバーで設計されているが2017年改良型以降に登場した「Crossover」(2020年8月を以って廃止)のみ幅広フェンダーアーチモールが装着され全幅が1,695mmから1,715mmに若干拡大され3ナンバー車扱いとなる。
  6. ^ そこにはどんなメリットが?「三菱i-MiEV」が軽自動車を"卒業"した理由 (2頁) - webCG 2018年4月25日(2018年4月27日閲覧)

外部リンク