備長炭

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備長炭(ウバメガシ)
七輪で燃えている備長炭

備長炭(びんちょうずみ、びんちょうたん、びっちょうずみ、びっちょうたん)は木炭白炭)の一種。

紀伊国田辺の商人備中屋長左衛門(びっちゅうや ちょうざえもん)が、ウバメガシを材料に作り販売を始めたことから、その名をとって「備長炭」の名がついた。狭義にはウバメガシの炭のみを備長炭と呼ぶが、広義において全般、青樫等を使用した炭を指す場合もある。外国産のものを備長炭として販売する業者があるが、広義においてもそれらは外れるので注意が必要である。

用途

製造時に高温で焼成されていることから炭素以外の木質由来の油やガス等の可燃成分の含有量は少なく、かつ長時間燃焼する。また炎や燻煙も出難く調理に向いているとされる。

煙が少ない為、雑味が付きにくく、炭火焼を売り物にする料理屋(屋、焼き鳥屋)などの燃料として使用される。による白炭を備長炭と呼ぶが、製法等が広く伝わって同様の製法を行う白炭に用いられる事もある。

燃料以外に、さまざまな用途に利用されている。備長炭は無数の小さな空洞(細孔)に様々な物質を取り込む(吸着)ことができる。備長炭1g当たり200~300㎡(テニスコート1面強)の表面積があると言われている。

を炊くときに入れてカルキ臭を取り除いたり、下駄箱に入れて靴の臭いを取り除いたり、部屋に置くことで部屋の臭いを除去する為にも使われている。水道水など飲み水や風呂水の浄化などの用途にも使われる。

また、備長炭は普通の黒炭よりもかたくて叩くと金属音がするため、風鈴や炭琴(たんきん、木琴のように楽器として使う)に加工される。

産地

紀州備長炭、土佐備長炭、日向備長炭などが存在し、また偽物も存在する。

産地については、見分けがつきにくいことから外国製かつ樫以外の材料を用いているにもかかわらず備長炭と名乗る事例が見受けられる。こうしたことは、2004年中国森林保護を名目に炭の対日輸出を取りやめたところ、日本国内の備長炭の流通量が減ったことからも裏付けられる。また、最近では東南アジア産のウバメガシでも青樫でもない木材を使用していながら「◯◯備長炭」と称している場合があるが、それらも歴とした詐称であり注意が必要である。

上記の通り、心ない者が備長炭の定義を広げてしまい、偽物の流通もあるため、和歌山県産の備長炭は紀州備長炭と呼んで区別する事がある。紀州備長炭の製炭技術は和歌山県指定の無形民俗文化財[1]である。

着火方法

備長炭は非常に着火が難しく、また爆跳もおこりやすいため、着火するには、黒炭などに着火してから火を移す方法が一般的である。

1. 種火となる木炭(黒炭など)を熾す。着火剤の塗られた加工ヤシガラ炭などがあれば便利である。
2. 種火となる木炭が熾ったら、火が移らない程度の距離に備長炭を並べて予熱する。角形の長七輪の場合は七輪のふちの上に備長炭を並べて置いて予熱すると良い。
3. 15〜20分ほど備長炭を予熱したら、熾っている黒炭の中へ備長炭を入れる。それでも爆跳の危険性があるため、金網などをコンロに被せる。備長炭への着火を開始したら、念のため、コンロから1m以内程度には近づかない方が良い。なお、製造工場直販で製造されたばかりで湿気を吸わないようビニールで密封された備長炭の場合は爆跳の発生も少ない(もしくは発生しない)。
4. 備長炭表面が全体的に灼熱し白く灰が出て来た感じになれば、調理可能である。

保存

備長炭を始め、白炭は黒炭よりも水分やにおいの吸収率が大きく一月も置いておくと比重が変わってしまう。 そのため、保存状態が悪いと爆跳や煙が発生しやすくなり、危険かつ食材がおいしく焼けないなどの難点がある。白炭はなるべくなら製造所から直接購入し、短期間で使い切るのが好ましい。保管する場合は湿気が入らないよう厚手のビニール袋に密封し、場合によっては乾燥剤を添えるのが適切である。

脚注

  1. ^ 県指定文化財・民俗文化財”. 和歌山県教育委員会. 2018年3月12日閲覧。

関連項目

外部リンク