ロレンス・ダレル

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ローレンス・ダレル

ロレンス・ダレル(Lawrence George Durrell、1912年2月27日 - 1990年11月7日)は、イギリス小説家詩人劇作家及び紀行作家。インドジャランダル出身。代表作に『アレクサンドリア四重奏』の長篇小説四部作。弟はナチュラリストで著述家のジェラルド・ダレル

経歴

イギリス植民地のインドで生まれ、教育のために11歳でイングランドに送られた。15歳で詩を書き始めた。彼の最初の本、Pied Piper of Loversは、23歳の1935年に出版された。

1935年1月22日の初婚を含め、4度結婚した。はじめの2人の妻とのあいだに、それぞれ娘を持った。

1935年、妻、母、弟たちとともにギリシャのケルキラ島に移住。ダレルはその後、英国政府の海外でのサービスで長年働いた。さまざまな場所での彼の暮らし(エジプトのアレクサンドリアでの生活など) は、彼の作品の多くにインスピレーションを与えた。1937年、ヘンリー・ミラーに出会う。1938年の『黒い本』にはミラーの影響があるとされる。

1957年から1960年の間に刊行された『アレクサンドリア四重奏』はダレルの代表作となった。1957年刊行の『にがいレモン キプロス島滞在記』でダフ・クーパー賞を受賞。1974年、『ムッシュー あるいは闇の君主』でジェイムズ・テイト・ブラック記念賞を受賞。

娘との関係

1985年に娘サッフォー(二度目の妻との子)が自殺した。残された手記から彼がサッフォーと近親姦を行っていたとされたが、ダレルの伝記を書いたイアン・S・マクナイヴン(Ian S. MacNiven, Lawrence Durrell: A Biography, 1997)もゴードン・ボウカー(Gordon Bowker, Through the Dark Labyrinth: A Biography of Lawrence Durrell, 1997)も近親相姦疑惑を嫌疑不十分としている。その根拠は、サッフォーの手記が「精神的(mental)」あるいは「心理的(psychological)」な近親相姦にしか触れておらず、「肉体的(physical )」な近親相姦に一切言及していないこと、また、サッフォーが「抑圧された記憶[1](repressed memory)」により実際にはありもしない「近親相姦の記憶」を呼び覚まされた可能性が高いことが挙げられる。

主な日本語訳

  • 『黒い本』(河野一郎訳 中央公論社、1961)、のち中公文庫(新版2007)
  • 『ブラック・ブック』福田陸太郎訳 (世界セクシー文学全集 第9 新流社) 1961。抄訳版
    • 『黒い手帖』(福田陸太郎・山田良成訳 二見書房) 1968
  • 『黒の迷路』(沢村灌訳、ハヤカワ文庫)1972、復刊1990
  • 『セルビアの白鷲』(山崎勉訳、晶文社 文学のおくりもの) 1971
  • 『現代詩の鍵』(須原和男訳 牧神社出版) 1973
  • 『逃げるが勝ち』(山崎勉・中村邦生訳、晶文社 文学のおくりもの) 1980 
  • 「アフロディテの反逆」(富士川義之訳、筑摩書房
    • 『第一部 トゥンク』1973 
    • 『第二部 ヌンクァム』1976 
  • 『にがいレモン キプロス島滞在記』(幾野宏訳、筑摩書房)1981 
  • 『予兆の島』(渡辺洋美訳、工作舎)1981 
  • 『海のヴィーナスの思い出 ロドス・太陽神の島 1945-1947』(土井亨訳、新評論)1999
  • 「アレクサンドリア四重奏」(高松雄一訳 河出書房新社)、改訂新版 2007
    • 『1 ジュスティーヌ』1960
    • 『2 バルタザール』1961 
    • 『3 マウントオリーブ』1962 
    • 『4 クレア』1963(改訂版1976、復刊1990)
      • 他に第1・3部が、河出版『世界文学全集 25(第2期) ダレル』に収録
  • 「アヴィニョン五重奏」(藤井光訳 河出書房新社)
    • 『1 ムッシュー あるいは闇の君主』2012 
    • 『2 リヴィア あるいは生きながら埋められて』2013 
    • 『3 コンスタンス あるいは孤独な務め』2013
    • 『4 セバスチャン あるいは情熱の争い』2014
    • 『5 クインクス あるいは暴かれる秘密』 2014
  • 『サッフォー』(川野美智子訳、大阪教育図書)2013。劇作品
  • 『ミラー、ダレル往復書簡集』ヘンリー・ミラーと (中川敏田崎研三訳 筑摩書房) 1973

注釈

  1. ^ 後に「いつわりの記憶症候群; FMS: false memory syndrome)」(他に「虚偽記憶」や「過誤記憶」の訳語も)として世間の糾弾を浴びることになる。