ボルン–オッペンハイマー近似
ボルン–オッペンハイマー近似(ボルン–オッペンハイマーきんじ、英: Born–Oppenheimer approximation)とは、電子と原子核の運動を分離して、それぞれの運動を表す近似法である。この近似は、原子核の質量が電子の質量よりも遥かに大きいために可能となる[1]:10-11[2]:45-47[3]:103[4]:37-40。
まず、電子状態については、原子核が固定されているものとして、電子波動関数とエネルギー固有値を求めることができる。これにより、ポテンシャルエネルギー曲線(曲面)を核の座標の関数として定義することができる。そして、核の波動関数は、核の運動がこのポテンシャルエネルギー曲面上に乗っているものとして求めることができる[1]:10-11[2]:45-47。
この近似により、分子の電子波動関数と振動・回転の波動関数を分離して求めることが可能になる。また、分子の励起に伴う振動状態の分布に関する、フランク=コンドンの原理も説明することができる[4]:179-180。
脚注
- ^ a b Frank Jensen (2007). Introduction to Computational Chemistry. Jonh Wiley & Sons Ltd. ISBN 978-0-470-01187-4
- ^ a b A.ザボ, N.S.オストランド 著、大野公男, 阪井健男, 望月祐志 訳『新しい量子化学 上 電子構造の理論入門』東京大学出版会、1991年。ISBN 978-4-13-062111-3。
- ^ 高塚和夫『化学結合論入門 量子論の基礎から学ぶ』東京大学出版会、2007年。ISBN 978-4-13-062506-7。
- ^ a b 小谷正博, 幸田清一郎, 染田清彦 著、近藤保 編『大学院講義物理化学』東京化学同人、1997年。ISBN 4-8079-0462-0。