サイバーストーカー

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サイバーストーカー: Cyberstalker)またはネットストーカーは、インターネットを利用して特定の人物にしつこく付きまとうストーカーの総称。彼らの行為は、サイバーストーキングネットストーキングと呼ばれ、サイバー犯罪の一種であるとされる[1]

特徴

サイバーストーカー[2]がサイバーストーキングを始めるきっかけは、電子掲示板ブログSNSウィキなど、インターネットコミュニティでの揉め事によって激しい憎悪を抱いたりすることや、インターネット上で公開されている他者のプロフィールを見て、その人物に恋愛感情を抱いたりすることが挙げられる。

コミュニティで得た断片的な情報を基に、インターネット上の検索エンジンを利用し、詳細な個人情報などを取得するケースがある。ブログに記載されている記述に不満を持つ者が、ブログの記載内容などから勤務先や所属学校名を割り出し、匿名で電話などで嫌がらせをするケースも多く、特にこの場合自分が嫌がらせをするだけでなく、匿名掲示板に「こんなことを書いている奴がいる」などと紹介し、他人を扇動することで、加害者が膨大な数に膨れ上がることもある[1]

上記のうち、前者の様に明確に対立軸が存在する個人または団体間で発生した揉め事や、恋愛感情などに起因するサイバーストーカー、あるいは関係者がごく限られた人数のコミュニティ内から発生する事が多いネットいじめと比較して、後者の様にブログやSNSの炎上などの騒動が発端となるサイバーストーカーは、実行グループの首謀者の実像や背後関係が明確に把握しにくい傾向がある。

後者のパターンの場合、前述のように匿名掲示板を介して攻撃参加者が膨大な人数に膨れ上がる事が多く、個人情報漏洩などのサイバー攻撃の担当はTor等の匿名ネットワーク上を拠点とするハッカーが分担する事もままある事や、最終段階の物理的ストーキング(俗にリア凸、けんまと呼ばれるもの)についても、実行グループの首謀者が直接手を出す事は稀で、多くは匿名掲示板やまとめWikiなどに集まった不特定多数の人物に、虚実を綯交ぜにした巧妙なデマゴーグアジテーションを仕掛け、義憤や好奇心、功名心を駆り立てる事で、ストーキング対象者とは直接的な接点が無い者を実行者に仕立て上げる(俗にラジコン化とも呼ばれる)事が多い為である。

従って、加害者側がIPアドレスの開示などを元にした民事訴訟や、物理的な刑事事件の発生により検挙されるなどして民事的・刑事的・社会的制裁を受けても、仮想空間のみならず物理的にも姿を消すまで攻撃が続く危険性があるなど、被害者(ストーキング対象者)への影響が長く続く。 スマイリーキクチ中傷被害事件のように被害状況が緩和するケースは少なく、被害者(ストーキング対象者)のネットあるいは仕事からの撤退や、転居などを迫られ、最悪の場合は自殺に追いやられる危険性がある。

総務省が発表している「平成27年版 情報通信白書」によると、SNS利用者の15.4%が、過去にSNSで何らかのトラブルに遭ったことがあると回答している。30代以上になると、その割合は10%前後にとどまるが、20代以下では26%がトラブルを経験しているという[3]

被害の種類

一部の事例はネットいじめの種類と重複している。

  • ウェブサイト内での嫌がらせ
    • SNSでストーキング対象者のデマ(悪い嘘の噂)を流す。名誉毀損、信用毀損等。
    • ストーキング対象者が書き込んでいるウェブサイトを検索エンジンで根こそぎ探し出し、そこに誹謗中傷などを書き回る。
    • 匿名掲示板などにストーキング対象者の誹謗中傷を書き込んだり[4]、同掲示板の住人に嫌がらせを実施するように仕向ける。
    • ストーキング対象者の過ぎ去ったことに対しいつまでも追求し、延々と嫌がらせを続ける。
    • サイバーストーカーがストーキング対象者に成りすまし、ウェブサイトに第三者の反感を買うような発言を書く。
  • スパムの大量送信。
  • 個人情報の暴露。また、それによる勤務先や学校などへの嫌がらせ。
  • 性的嗜好などの個人の秘密事項に当たる事柄を集積・暴露する事で晒し物とする。
  • ウイルス技術などを活用してストーキング対象者のパソコンに侵入したり、インターネットサービスのアカウントを乗っ取る事で、更なる個人情報の収集や金銭・サービスポイント類の奪取、各種データの持ち出しや消去などによりストーキング対象者の情報資産の毀損を行う。
  • 住所などを割り出して物理的なストーキングを行う。覗き・監視、汚物の撒き散らし、住宅の破壊や器物の損壊・窃盗、宅配ピザなど出前ものの大量注文など。
    • 住所特定まで至っている事例のうち、騒動の規模が大型化したものについてはYouTuberニコニコ生放送の放送主(生主)が公開放送を前提にストーキング対象者への突撃取材を敢行する場合もある。多くは放送主側の単純な売名が動機であるが、一部には囲いと呼ばれる資金援助者が介在してドローンなどの高額な機材を用いた盗撮を行う場合もある。
  • 本人や家族に直接的に接触して嫌がらせを行う。不特定多数の者が繰り返し接触してストーキング対象者を憔悴させる事で、(最終的には示談金の詐取を目的とした)直接的な暴力沙汰をストーキング対象者の側から起こすよう仕向けるなど。
  • 上記に関連して、コミュニケーション上のトラブル、誹謗中傷、またそれらを「拡散したうえで忖度を行う」という囲い込み遊戯に不特定多数の者が関与する場合が確認される。

法規制

日本では、法改正以前では単にネット上で付きまとうだけでは犯罪を構成しないためストーカー規制法の適用が困難な状況であった。平成28年12月6日に「ストーカー行為等の規制等に関する法律」の一部を改正する法律案が成立し、改正ストーカー規制法が平成29年1月3日に施行された。

以前のストーカー規制法では以下のように規制されていたが、SNSによるストーカー行為は該当していなかった。

  • 恋愛・好意・怨恨の情の充足目的があり、かつ、同法第2条1項各号に掲げる行為がある場合。
  • つきまとい行為(1号)・監視していることを告げる(2号)・交際面会の要求(3号)・危害を加える言動(4号)・しつこい電話やメール送信(5号)・名誉を害すること(7号)・性的羞恥心を害すること(8号)

今回の法改正により、拒否されているのにもかかわらずSNSでメッセージを連続送信する行為、ブログに執拗な書き込みをする行為が規制対象に追加された。さらに、非親告罪に変更し、ストーカー行為をする恐れのある人物と知りながら、被害者の個人情報を提供することを禁止した。禁止命令の仕組みも見直し、事前の警告がなされていない場合であっても被害者に危険が差し迫っている時には、公安委員会が加害者に禁止命令(平成29年6月14日施行)を出すことができるようにした。罰則も「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」に引き上げられた[5]

対策

オンラインコミュニティにおいては自らの個人情報を掲載しないなどの自衛策のほか、インターネットコミュニティで他人の反感を買わないように心がけることが必要である。また、不用意に掲示板などに自らの識別情報(氏名、email、固定ハンドルネーム)を書き込まないようにすることが重要である[6]

一度、インターネット上に流出した個人情報は中々消えない性質があるので、学校や各種団体のホームページ管理者は個人名や写真を本人に無断で掲載しないように気をつけたり、学校新聞など氏名が掲載されているものをアップロードする必要がある場合も画像データとして掲載し、検索エンジンで個人名により検索されないよう心がける必要がある。しかし、現実にはこのような対策を行っている組織は少ないのが現状である。

このような状態に対し、「個人の氏名・写真などを無断でインターネット上へ掲載しない」といった法的規制・対策は今のところなされておらず、各政党も積極的に動いていない野放しの状況にある。

関連作品

脚注

関連項目

外部リンク