エシュロン

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エシュロンに関する施設だといわれているイギリス空軍メンウィズヒル基地にあるレドーム(レーダーアンテナ保護用のドーム)。
北緯54度00分29秒 西経1度41分24秒 / 北緯54.00806度 西経1.69000度 / 54.00806; -1.69000
イギリス空軍メンウィズヒル基地

エシュロン (ECHELON) は、アメリカ合衆国を中心に構築された軍事目的の通信傍受(シギント)システム。

同国の国家安全保障局 (NSA) 主体で運営されていると欧州連合などが指摘し[1]エドワード・スノーデンの告発により、PRISMで有線データ通信さえも盗聴されていることが明らかになった一方、アメリカ合衆国連邦政府が認めたことはない。

名称は(梯子の)「段」を意味するフランス語 échelon に由来する。

概説

収集

エシュロンはほとんどの情報を電子情報の形で入手しており、その多くが敵や仮想敵の放つ電波傍受によって行われている。1分間に300万の通信を傍受できる史上最強の盗聴機関といわれている。

電波には軍事無線、固定電話携帯電話ファクシミリ電子メールデータ通信などが含まれており、同盟国にあるアメリカ軍電波通信基地や大使館領事館偵察衛星、電子偵察機、電子情報収集艦、潜水艦を使って敵性国家や敵性団体から漏れる電波を傍受したり、時には直接通信線を盗聴することで多量の情報を収集していると言われている。

現代においては、データ通信の大部分は、光ファイバーを利用した有線通信によって行われており、傍受することは極めて困難である。それでも例えば、20世紀末までは海底ケーブルの中継器に傍受装置を取り付けることで光ファイバでも盗聴が可能であったが、1997年以降からは電気アンプから光学的に増幅するアンプに変わったために不可能になったと思われた[2][3]。ところが2013年には、エドワード・スノーデンの告発により、PRISMで有線データ通信さえも盗聴されていることが明らかになった。

電気通信事業者の協力を得てデータ収集を行っている可能性も指摘されている。電子フロンティア財団は、NSAがサンフランシスコのSBCコミュニケーションズ(現AT&T)施設 (Room 641A) に傍受装置を設置してインターネット基幹網から大量のデータを収集・分析していたとし[4]、アメリカ合衆国政連邦府およびAT&Tに対し訴訟をおこしている(アメリカの連邦法はNSAやCIAが国内で盗聴はもちろんのこと、一切の諜報活動を為すことを禁じている。これは活動即ち、政府が主権者たる国民を敵視している事を意味するからである)。

この情報収集活動には、米国のみならずエシュロンに加盟している各国もアンテナ施設の設置を認めるなど、さまざまな形で協力していると言われている。

分析

ここから先のほとんどの作業が、NSAの施設内で行われると考えられている。

収集された生のデータは膨大であり、それらを短時間で中身を分析して保存すべき情報と破棄すべきものとに分けなければならない。コンピューターの発達によって、エシュロンの分析作業も高度に自動化されたが、同時に敵性国家・団体も高度な暗号化が容易に使用できるため、生データの暗号解読からはじめなければならないようになっている。暗号解読が済めば、中身に「爆弾」などのテロ行為を連想させる、あらかじめ登録された単語が含まれていないかが自動認識されて、無害と判断された情報は破棄される。

分類

暗号解読と内容の重要度の自動認識が済めば、次は人間とおそらくコンピューターによる情報の分類作業が行われる。この時点でさらに内容が吟味され不要な情報が破棄される。おそらく、内容によって重要度がランク付けされ、いくつかのキーワードによる索引が与えられる。

蓄積

分類された情報がいよいよデータベースに登録される。インターネットがデータベースで無いとすれば、エシュロンは世界最大規模のデータベースとする意見が多数であると考えられる。

提供

高度に暗号化されたネットワークを通じて、世界中のエシュロン・ターミナルからエシュロン・データベースにアクセスできる。提供される情報内容は閲覧者の保安レベルや国別・部署別にカテゴリー化されていて、例えば米国の不利益となる可能性がある情報は、他国の閲覧者には提供されないなどの重層的なセキュリティが施されていると考えられている。

推測・仮説

無線施設や機器等から発信する情報は暗号化されている場合が多い。その暗号化された情報を解読するには、スーパーコンピューターをフル稼働させて何十年も計算させ続けなければならない。 暗号化された無線、有線等の情報を解読されていると考えるならば、エシュロンが、機器等の内部から発生する微弱な電磁波を受信することよって、暗号化する前の情報を収集している可能性を疑ったほうが良い。

有線やスマートフォン等の電子機器内部から発生する微弱な電磁波を捉えようとする場合、有線の被膜やスマートフォンの筐体等に阻まれて、筐体の外へ電磁波が透過することが困難な波長があると思う。その場合、エシュロンから最適な波長の電磁波を送信し、その反射電磁波を受信して解析している可能性がある。

外交関係のない北朝鮮の情報[5]をいち早く取得して、メディアにリークしていると思われるところから、人による情報収集よりも、高い技術力を用いた偵察衛星やその他の方法が考えられる。偵察衛星は、可視光での光学ズームが3000倍までという制約があるため、高速で低い軌道を通っていると考えられ、静止衛星としての運用が難しいとされている。(静止衛星として観測するため、紫外線帯域で観測したものを、画像処理でカラーにしている可能性も考えられなくはない。) エシュロンが電磁波を送受信して盗聴していると考えた場合、偵察衛星よりシームレスに情報が収集できるため、より正確な情報を得られることができると考えられる。

電磁波の送受信だけで盗聴を可能として考えられる方法は、マイクの原理であるフレミングの左手の法則を用いて、力は音波、電流は電力会社等の電線、磁束密度はエシュロンの電磁波として、エシュロンから送信した電磁波の反射電磁波を受信することによって、音を聞き取ることが可能であると考えられる。 (スピーカーの場合も、同じフレミングの左手の法則を用いるが、マイクと逆で、力を発生させることになる。盗聴がでれば、擬音を発生させることも可能であろう。)

フェーズドアレイ方式は確立した技術なので、フェーズドアレイ方式を用いて、盗聴する相手や場所を特定できる可能性がある。 フェーズドアレイ方式の場合、各アンテナの電磁波の送信の時間差が細かければ細かいほど(位相差が小さいほど)、反射電波から対象物の形状を測定することが、理論上可能である。

以上のことから、エシュロンはフェーズドアレイ方式の電磁波を送受信することによって、広範囲にわたって盗聴できる可能性がある[6]

ドイツのメルケル首相の携帯電話が盗聴された疑惑[7][8][9][10][11][12][13][14][15][16]も、エシュロンの可能性が考えられる。

地上設置型や海上輸送型は知られているが、deciBel researchのホームページから、陸上輸送型のエシュロンの存在が伺える。(2021年2月9日確認。ホームページ改修によって、海上輸送型と陸上輸送型と思われるエシュロンの画像が消えた。「Critical National defense」の文字もなくなり穏便な印象のホームページに改修された。)

参加国・協力国

参加している国は、アメリカ合衆国イギリスカナダオーストラリアニュージーランドであり、英米同盟(UKUSA、ウークサ。United Kingdom & United States of America)とも呼ばれるアングロサクソン諸国とされる。UKUSAは、1948年にアメリカとイギリスとの間でUKUSA協定が結ばれたことに始まり、カナダ・オーストラリア・ニュージーランドは2次メンバーとして後に参加した。アメリカ以外はイギリス連邦国家である。

協力国

ギリシャスペインドイツ日本など、いくつかの同盟国にも、参加は認めないものの傍受局を置いているとされる。これらの国と独自情報を提供する協力国を含めて「サードパーティー」と呼ばれ、エシュロンの閲覧は許可されないものの、UKUSAの国益に反しない限りにおいてエシュロンで得られた情報の提供が行われることがある。日本には、青森県三沢飛行場近くの姉沼通信所に傍受施設が存在し、1,000人単位のNSA要員が詰めていると言われる他、東京都心のいくつかのUKUSA同盟国の公館内(駐日アメリカ合衆国大使館等)、福岡(情報本部大刀洗通信所MALLARD)や沖縄にも傍受施設が存在し、分担して傍受活動を行っているとされている。

略史

1844年にモールス信号による電信通信が実用化され、それ以降、世界各地で電信網が整備されていった。1872年に、大英帝国インド香港などの植民地との電信による通信業務を行なう国有企業「イースタン・テレグラフ社」(現・ケーブル・アンド・ワイヤレス社)を設立した。イースタン・テレグラフ社は、19世紀末には全世界の国際通信網の1/3を保有するまでになった。

40号室

1914年に第一次世界大戦が始まると、イギリス海軍省は直ちに暗号解読専門部署を開設したが、後にホワイトホールの海軍省旧館40号室(Room 40)に移った。これがエシュロンの直接の先祖といえる。ジェームズ・アルフレッド・ユーイングは、官憲による没収を免れた無線受信機でドイツ帝国軍の無線電信文を大量に傍受、海軍情報部に引き渡した。この功績を買われてユーイングは40号室の所長となった。ここには軍民双方から言語学・数学、その他あらゆる分野の専門家が集められた。40号室はマタ・ハリの逮捕、ツィンメルマン電報事件など、多数の秘密通信を解読して、情報戦争の有用性を示した。

しかし、大戦に関するかぎり海軍省は、40号室の開設以前からHVB, SKM, VB などを解読できるようになっていた。

MI8

第一次世界大戦に参戦したアメリカ合衆国は、自国の暗号戦での脆弱性を認識して「MI8」(陸軍諜報部第8課)をワシントンD.C.に開設した。

アメリカ合衆国国務省から転出し、初代課長となったハーバート・O・ヤードリー(当時27歳)は、若いながら暗号解読のエキスパートだった。しかし、当時のアメリカは暗号解読技術の後進国だったので、フランスの情報解読機関「シャンブル・ノワール」(Chambre noir、黒い部屋)と、イギリス陸軍省情報局、イギリス海軍省情報部(40号室)を廻って、これらの進んだ技術を吸収した。

ドイツの暗号を解読していたMI8は、第一次世界大戦の終結と共に閉鎖が検討され、結局、暗号作成などの一部の業務が国務省と陸軍省の機密費で存続した。1917年にはニューヨークに移動し、後に「ブラック・チェンバー 」(Black Chamber、黒い部屋)として知られる場所が誕生した。年間予算は10万ドル程で、人数も10人前後であった。

GCCS

イギリス海軍省40号室も、第一次世界大戦の終結によって、一時閉鎖された。しかし、すぐに陸軍の暗号解読班と統合して、軍隊から転出するという改組によって復活し、新たな名前として「政府暗号学校」(Government Code and Cipher School, GCCS)が与えられた。学校と名乗っていたが、実体はそれまでと変わらず、通信傍受と暗号解読に関する情報機関であった。年間予算は22,000ポンド程で、人数も70人前後であった。

GCCSの発足後、イギリス政府はイギリス国内の全ての電信会社に電文の写しの提出を命令した。イギリスでも営業していたアメリカの通信会社ウエスタンユニオンはこれに強く抗議した。アメリカ合衆国上院委員会の公聴会でのウエスタンユニオン社社長の発言によって、アメリカの電信通信がイギリスで傍受され続けていたことが判明した。アメリカ政府は、友好国であるイギリスが大戦中から継続的に情報を収集していたことに危機感をもち、これ以降、暗号能力の強化に努力を注ぐことになる。MI8(イギリス軍情報部第8課)のブラック・チェンバーとともに、陸軍通信隊のウィリアム・フレデリック・フリードマン英語版という暗号の天才も才能を開花させ、アメリカの暗号能力はこの後、飛躍的に向上する。

米英の協力

ヤードリーが率いるMI8によるアメリカの暗号解読能力は、1921年のワシントン海軍軍縮会議で発揮された。後にネーバル・ホリデー(海軍休日)として知られる軍縮を決める会議において、日本の交渉使節団の本国との暗号通信を傍受・解読し、日本側に不利な条件で条約が締結された。

1941年12月8日未明(日本時間)に始まった真珠湾攻撃の事前情報においても、11月末から日本の太平洋艦隊が無線封止を行い、攻撃態勢に入ったことが予見されていた。

これ以前の1940年11月の段階で、米英の暗号解読を担う部署間の協力体制は完了しており、対独暗号解読機と対日暗号解読機を相互に交換していた[17]。GCCS内にアメリカ陸軍情報部員の立入りが認められ、米国の参戦後は協力して働くまでになった。

第二次世界大戦における米英の暗号解読能力は、戦局を左右するほど強化され、有効に活用された。

エシュロンの誕生

1943年5月17日に「英米通信傍受協定」(ブルサ協定英語版)が結ばれ、この時にエシュロン・システムが誕生したといえる。

1948年には、米、英、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド間の秘密協定としてUKUSA協定が結ばれ、通信傍受の協力体勢が作られた。

1949年には統合参謀本部安全保障局が作られ、1952年には国家安全保障局(NSA)に改編された。この頃から、エシュロン・システムは拡大を始め、現在に至る[2]

関与したとされる事件

エシュロンの情報収集活動に関連があると推定されている事件を示す。ただし両事件とも、エシュロンの関与を実証する証拠はない。これらはいずれも、NSAの情報収集要員がアメリカ海軍アメリカ空軍の部隊に同乗していたとされ、NSA自身は独自の艦艇や航空機を保有してはいない。

プエブロ号事件
1968年に起きた、アメリカ合衆国情報収集艦が国境侵犯を理由に朝鮮人民軍に拿捕されたプエブロ号事件では、乗員1名が死亡し、残る乗員82名が11ヶ月間も拘束されたのち、アメリカの「謝罪」によって乗員のみ送還されるというアメリカにとって屈辱的な結果となった。
海南島事件
2001年4月に海南島付近の南シナ海上空(公海上)で発生したアメリカ合衆国と中華人民共和国の軍用機が空中衝突した事件では、海南島に不時着したアメリカ海軍所属の電子偵察機EP-3Eにはエシュロンに関わる情報収集を行ったNSAの複数要員が乗り込んでいたと噂され、アメリカの「謝罪」によって乗員と機体を送還されるという結果となった。

暴露

1972年の元NSAのペリー・フェルウォック英語版による暴露でNSAの大規模な通信傍受活動は初めて認知されるようになった[18][19]。当時、アメリカではウォーターゲート事件など米国政府による盗聴が問題となっており、フェルウォックはダニエル・エルズバーグによるペンタゴン・ペーパーズに触発されたという[20]。その後、関係者による暴露が相次ぎ、1988年ダンカン・キャンベル英語版によって「エシュロン」と報じられるようになった。

欧州議会による報告書

2001年7月、欧州議会の「エシュロン通信傍受システムに関する特別委員会」は「世界的な私的、または商業通信の傍受システムの存在(エシュロン傍受システム)」という最終報告書を発表した[1][21]

この報告書では、「UKUSAによる全世界的な傍受システムが存在することは疑いない」と断定し、また「重要な点は、軍事通信だけでなく私的、あるいは商業通信の傍受を目的としていることである」としている。

ただし、傍受システムの限界として、どれだけ大規模なリソースと能力を用いてもすべての通信の徹底的で詳細なモニタリングは、実際にはその膨大な通信量から不可能であるとも指摘している。

同報告書によれば、エシュロンの傍受基地とみられる施設は以下の地域に存する[1][22]

※括弧のないものは、同報告書によってエシュロン傍受基地と確定された。括弧があるものは、それ以外の情報により強く推定されるもの。

日本マスコミ

三沢基地 姉沼通信所(1990年代、アメリカ空軍撮影)
奥に見える大きな輪状のアンテナ施設は通称「ゾウの檻」と呼ばれていたが、既に使用が中止され撤去が予定されている[27]
北緯40度43分14.3秒 東経141度19分21.7秒 / 北緯40.720639度 東経141.322694度 / 40.720639; 141.322694

ジャーナリストの池上彰によれば、日本にもエシュロン傍受施設は存在し、青森県の三沢基地に置かれている[28]。また朝日新聞も2001年に、日本を含むアジアオセアニア地域に置かれた傍受基地の存在を報道している[22]

日本政府、日本企業も監視の対象とされており、無線、短波無線、携帯電話インターネット回線など、ありとあらゆる日本国内の通信が常に傍受され、データはニュージーランドの通信所に送られてエシュロンに蓄積されているという。日本に関する情報収集の対象は主に経済分野であり、経済活動を米政財界に更に有利にするための、トップの意思決定についての情報収集を重点的に行っているとされる。

なお、公式には青森県三沢基地姉沼通信所付近にあるレドームは、三沢基地が真冬の降雪や台風・爆弾低気圧の暴風などの悪天候が頻発しやすい場所であり、これらの悪天候からレーダーや通信機器を守るために設置されているものである。複数のレドームが立ち並んでいる理由は、一重にレーダーといっても大型の航空機探知用のレーダーにも複数の種類がある上、地上発射方式のミサイルの誘導を行うための小型レーダーを、ミサイルを誘導するだけ揃えなくてはならないのが理由である。

1980年代から90年代初頭における、アメリカ合衆国連邦政府の度重なるダンピング提訴や、日本企業と米国企業との間の受注合戦や訴訟合戦において、米国の国益を守るために、三沢飛行場ワシントン州ニュージーランドオーストラリア香港(現在は撤去)のエシュロンをフル稼働させた可能性があり、それが日本の企業活動に大きな損害を与えたとされる。

その一方、施設を提供している見返りとして、日本政府の求めに応じて、エシュロンから得られた情報が提供されたと推定される例がいくつかある。朝鮮民主主義人民共和国金正男成田空港で入国拒否された件がそれであり、事前に日本に対して通報があったとされる。また、日本赤軍最高幹部であった重信房子が極秘裏に日本に帰国して潜伏しているという情報もエシュロンによって情報が得られ、日本政府に通報されたと噂されている。

2004年、『週刊ポスト』が日米首脳会談で日本の小泉純一郎が日本のエシュロンへの参加を打診、アメリカ政府がイラク戦争での多国籍軍参加の見返りにエシュロン参加を許可したと報道したが、その真偽は謎のままである。

このように、エシュロンが高い機密性を持つために、多くの事象は疑いがありつつも確証まで至らないのが現状である。

なお、綴りの上からも英語の実際の発音[29]からも「エシロン」の方がカタカナ表記としては近いが、日本語としては「エシロン」が定着している。これは、原語であるフランス語の発音に近い。

2000年1月下旬にエシュロン・システムが全面的に72時間システム・ダウンし、修復作業に150万アメリカ合衆国ドルがかけられた[2]

報告

エシュロンによる調査対象者とその周辺にいる者に対して、電磁波の影響で次のようなことが起きる。

  • ヘルメットを通常と異なる意外な置き場所に置いてしまい、後で気づいたが、何故そのような場所に置いたか理解ができない。思い出そうとすると、高血圧でもないのに、やや思考停止していたような不思議な感覚で置いていたことを思い出した。
  • 何かを喋ろうとしたときに、高血圧でもないのに何故か言葉が出にくくなり、本来喋ろうとしていた言葉と異なる言葉を使った。
  • お盆に食べ物を載せて運んでいたが、何故かよくわからずお盆ごと落としてしまった。後から思い返すと、高血圧でもないのに、やや思考停止していたような不思議な感覚や、身体が何かに引っ張られるような不思議な感覚があった。
  • 接客中、客に渡すはずのものを何故か、渡し忘れた。後から思い返すと、高血圧でもないのに、やや思考停止していたような不思議な感覚があった。
  • 持病等を持っていないのに、突然信じがたいくらいの腹痛に見舞われたが、しばらくすると回復した。

未来予測

網膜ディスプレイ

フェーズドアレイ方式の電磁波で盗聴ができるのであれば、電流が流れている電線を特定できているだろうから、送信電磁波の位相差をより小さくすれば、対象物の形状をより立体的に細かく測定することができるだろう。さらに位相差を小さくできれば、ブラウン管の電子銃が走査するように目の網膜の視細胞に電磁波を当てて、映像を映し出すことも可能であろう。

位相差を小さくすることによって、精度を細胞レベルまで高めることができれば、スマートグラスでなくても、網膜の視細胞に電磁波を当てて映像を映し出すことは不可能ではないだろう。

用途としては、特殊任務の隊員等に対して、映像による情報伝達目的が考えられる。

人体スキャン

位相差を細胞レベルの精度に高めることができれば、現在、医療用で用いられているMRIよりも高い精度で、人体をスキャンすることが可能となるだろう。

用途としては、戦地での衛生隊が、陸上輸送型のエシュロン等で、負傷兵の治療のために用いられることが考えられる。

脳内スキャン

各アンテナの位相差をもっと小さくできれば、脳内を細胞レベル、或いは神経伝達物質レベルでの観測ができるようになれば、生きた人間を開頭術によって、脳を露出させることをせずに、脳の神経細胞の情報ネットワークを解明することができるかもしれない。解明ができれば、電磁波を用いて神経細胞をコントロールすることも可能になるかもしれない。

地質・資源調査

現在行われている電磁波による地質調査に、フェーズドアレイ方式を採用することができれば、より詳しい地質情報を得ることが可能となるであろう。詳細な地質情報を得ることにより、構造物や建築物、地熱発電の開発、資源開発への利用、また、海洋における資源情報を容易に得ることができるであろう。

構造物・建築物の保守

トンネルや橋等の構造物や、その他の建築物の内部劣化等の非破壊検査に用いることも可能かもしれない。陸上輸送型のエシュロンの存在が伺えることからも、エシュロンが必ずしも大型である必要とは限らないと推測される。

脚注

注釈

出典

  1. ^ a b c 「個人的及び商業的通信への世界的傍受システムの存在について((2001/2098(INI))欧州議会報告(英文)
  2. ^ a b c 鍛冶俊樹『エシュロンと情報戦争』(2002年2月20日第1版発行 文春新書)ISBN 4-16-660227-6
  3. ^ 光学的アンプでも、電力の供給をとらえることにより傍受可能である。また、光伝達経路に傍受装置をおけば、より的確な傍受が可能である。
  4. ^ AT&T WHISTLE-BLOWER'S EVIDENCE WIRED 2006年5月17日
  5. ^ 北朝鮮の金正恩氏、手術を受け重篤の情報 CNN 2020年4月21日
  6. ^ 米は今回も盗聴したか 終われない米中摩擦 日経ビジネス 2019年5月17日
  7. ^ メルケル氏の盗聴10年以上…首相就任前から標的 揺らぐ米欧同盟 産経ニュース 2013年10月28日
  8. ^ 外国の情報機関による盗聴に対する安倍晋三内閣の認識等に関する第三回質問主意書 衆議院 平成二十五年十一月二十六日提出質問第八七号
  9. ^ メルケルが激怒「携帯盗聴」の発端(有料記事) ファクタ出版株式会社 2013年12月号
  10. ^ メルケル首相の携帯盗聴事件の波紋 ドイツニュースダイジェスト 2013年11月15日
  11. ^ メルケル携帯盗聴事件の真相 朝日新聞 2013年11月07日
  12. ^ ドイツ、首相の携帯盗聴疑惑めぐり米に説明求める ロイター 2013年10月25日
  13. ^ ドイツのメルケル首相、アメリカ情報機関が通話を盗聴か 「安倍首相は問題ない」菅官房長官 ハフィントンポスト 2013年10月24日
  14. ^ ドイツ連邦検察庁:メルケル首相の携帯盗聴疑惑を正式調査へ(有料記事) ブルームバーグ 2014年6月5日
  15. ^ 携帯盗聴事件――アメリカがメルケルを警戒する理由、メルケルが怒った理由(有料記事 朝日新聞 2013年11月07日
  16. ^ 米のメルケル首相電話盗聴疑惑、独が捜査打ち切り(有料記事) ウォールストリートジャーナル 2015年6月12日
  17. ^ イギリスは協力の見返りを提供しなかったとされる。ハワイの傍受基地に提供されるはずだった暗号解読機を英国に提供したが、その見返りはなかった。そのため、ハワイで暗号解読ができなかった。
  18. ^ David Horowitz (August 1972). "U.S. Electronic Espionage: A Memoir". Ramparts. 11 (2): 35–50.
  19. ^ EX‐CODE ANALYST EXPLAINS HIS AIM”. ニューヨーク・タイムズ. 2019年1月20日閲覧。
  20. ^ Perry Fellwock”. WikiLeaks. 2019年1月20日閲覧。
  21. ^ 小倉利丸『エシュロン―暴かれた全世界盗聴網 欧州議会最終報告書の深層』(2002年、七つ森書館)ISBN 4-8228-0255-8
  22. ^ a b 「見えてきたエシュロン」朝日新聞2001年6月14日、富永格・ブリュッセル特派員
  23. ^ ネット諜報・MALLARDに関する文書の不開示決定(存否応答拒否)に関する件 防衛装備庁長官 2015年6月12日 平成31年2月20日(平成30年度(行情)答申第432号)
  24. ^ ネット諜報・MALLARDに関する文書の不開示決定(存否応答拒否)に関する件 内閣総理大臣 2015年6月12日 平成31年2月20日(平成30年度(行情)答申第430号)
  25. ^ ネット諜報・MALLARDに関する文書の不開示決定(存否応答拒否)に関する件 防衛大臣 平成31年3月13日(平成30年度(行情)答申第488号)
  26. ^ 機密共有「ファイブ・アイズ」と連携意欲 河野防衛相(有料記事) 日本経済新聞 2020年8月14日
  27. ^ 『軍事研究』2008年11月号(ジャパン・ミリタリー・レビュー)
  28. ^ 池上彰スペシャル 世界が変わった日」フジテレビ,2011年9月11日放送。
  29. ^ 英語の実際の発音[リンク切れ]

参考文献

関係機関

英米同盟5ヶ国のシギント機関。

関連項目

エシュロンを取り上げているもの

外部リンク