アトリウム
アトリウム(atrium)は、ガラスやアクリルパネルなど光を通す材質の屋根で覆われた大規模な空間のこと。内部公開空地ともいう。
ホテルや大規模商業施設、オフィスビル、マンションのエントランスに設けられる例が多い。
歴史
ギリシャ神話で宮殿の水盤のある中庭をアトリウムと呼んでおり(現代のギリシャ語では「明るい・晴れた」という意味)、そこからラテン語で古代ローマ時代の住居の中庭を意味するようになった。「アトリエ」の語源にあたる。
古代ローマ時代の住居の中庭は玄関奥に配置された広間で、そこには大きな天窓 (compluvium) があり、その下に雨を受ける水盤 (impulvium) が置かれ床には大理石が敷き詰められ、人々が集まる社交場の役割を果たしていた。
20世紀後半以降の現代建築において、エントランスホールに壁面や天井にガラスを使用した吹き抜けがある開放的な空間が設けられるようになり、それをアトリウムと呼ぶようになった。
キリスト教建築
初期キリスト教の建築において、バシリカ式という構成があるが、そのうち入り口前に展開された構造体をアトリウムと呼んだ(日本語では表中庭などと訳される)[1]。吹き抜けのある中庭およびその周囲を囲む回廊で構成される[1][2]、「洗礼志願者のための空間」であった[3]。
現存するアトリウムは、ローマのサン・クレメンテ教会 (ローマ)、ミラノのサンタンブロージョ教会、サレルノのサレルノ大聖堂などである[4]。他にはドイツのマリア・ラーハ修道院や[5]、ローマのサンタ・プラッセーデ聖堂[6]もある。16世紀に改修される前のサン・ピエトロ大聖堂にもアトリウムは存在した[7]。
脚注
参考文献
- 池田健二『カラー版 イタリア・ロマネスクへの旅』中央公論新社、2009年。ISBN 978-4-12-101994-3。
- Gallio, Paola (2009), The Basilica of Saint Praxedes, Edizione d'Arte Marconi
- 辻本敬子; ダーリング益代『ロマネスクの教会堂』河出書房新社、2003年。ISBN 4-309-76027-9。
- 森口多里「ローマネスクの文化と建築」『建築文化叢書』第6巻、洪洋社、1924年 。