2020年アメリカ合衆国大統領選挙における郵便投票不正疑惑
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2020年アメリカ合衆国大統領選挙における郵便投票不正疑惑(2020ねんアメリカがっしゅうこくだいとうりょうせんきょにおけるゆうびんとうひょうふせいぎわく、英語: Alleged irregularities in the 2020 United States Presidential election)とは、2020年アメリカ合衆国大統領選挙において、第45代米国大統領であるドナルド・トランプとその陣営や支持者らによって主張されている郵便投票不正疑惑である。
トランプとその支持者は選管監視ビデオや宣誓供述書を元に「不正選挙」と主張して訴訟を連発したが、裁判所に棄却されたり、自ら取り下げたりが続き、12月11日に4州結果無効の訴えが連邦最高裁判所に退けられたことで法廷闘争も敗北が決定付けられた[1]。選挙結果を覆す手段は事実上尽きた[2][3]。
背景[編集]
新型コロナウイルス感染症の世界的流行により期日前投票や郵便による投票が解禁されたため、今回の大統領選挙では事前投票制度 (日本でいう期日前投票制度)と郵便投票による投票数が過去最高のものとなった。その影響によりいくつかの州では開票に時間がかかり、各報道機関では当選者を公表するのが11月7日までずれこみ4日ほど遅れる結果となった[4]。大統領選挙の投票日である11月3日の夜、ジョー・バイデンが大統領選における勝利を宣言すると[5][6]、共和党候補者のドナルド・トランプとその周りの官僚らが多数の根拠のない、つまり証拠を用いずに主張を挙げ[注釈 1]、選挙の正当性に疑問を投げかけた[7][8][9][10][11][12][13]。トランプは開票前にも開票後にも投票で不正が行われたと主張をしているがいずれも根拠を示していないものである[6]。FacebookやTwitterではトランプによる申し立てに反対する運動が起きており、Facebookは抗議デモにつながりかねないとしてトランプの主張を支持するグループである「StopTheSteal(投票を奪うのをやめろ)」を削除した[14][15][16]。バイデン陣営はトランプ側の訴えをはねのけ、郵送されたものも含むすべての投票用紙を数え直すべきであると主張した[17]。11月4日から11月8日にかけてトランプ側はいわゆる"第三者による票集め[注釈 2]"や不法な投票、機械エラー、勝手に投票用紙が破り捨てられたり(Vote dumping)、遅配票があったとして訴訟を起した。11月21日までにトランプ陣営が起こした訴訟32の内30は敗訴か取り下げとなった[19]。
トランプ陣営・支持者が主張する不正投票と思しき例[編集]
ウィスコンシン州 [編集]
ウィスコンシン州でトランプの選挙チームの顧問弁護士を務めるJim Troupisが、自身と妻が投票を行った方法である不在者投票に違法性があったとして、同じ方法で行われた投票全てを無効にするようにDane County Board of Canvassersに申し立てた[20][21]。
ジョージア州[編集]
両候補の票差が僅差であったため、全投票を再集計していたジョージア州で[22]、11月20日までに、5800票の未集計の票が発見され、内6割はトランプに投じた票であった[23]。ジョージア州務長官のBrad Raffenspergerはこれは人為的ミスであったと説明した[24]。ワシントン・ポストが報じる所では、2021年1月2日に、トランプが電話でBrad Raffenspergerに対して、ジョージア州の選挙結果を覆すのに十分な票を発見するように圧力をかけた[25]。
ネバダ州[編集]
リチャード・グレネルは、「ここ、ネバダ州で投票した3060人のことなんだが... 彼らはネバダ州在住ではない。これは違法だ("3,060 people here in Nevada that voted … illegally, they are not residents of Nevada.")」と強く主張した[26]。共和党の法律家はクラーク郡で投票した3000人以上の名簿を公表し、彼らが投票した時点でクラーク郡の住人ではなかったと伝えている。しかしネバダ州では、投票日30日前に投票のためにネヴァダ州に移住することや、他の州の大学に在籍する大学生がネバダ州で投票することを容認しているため、グレネルの言う違法性は証明できないものである。またその名簿には郵便投票をした海外駐在の軍人も掲載されていた[27]。
ペンシルベニア州[編集]
11月7日、21000人以上の死者が有権者名簿から削除されておらず、そのうち12000人以上の死者が依然として現役有権者として登録されていることに関して、民間の法律事務所であるPublic Interest Legal Foundationが、その資格差し止めを求め選挙一か月前に連邦裁判所に提訴していたと報道された[28]。
その後その訴訟は2019年に起こされた裁判であり、大統領選前の2020年6月の時点で有権者名簿の誤りが訂正されたことで取り下げられたものであると報道された[29][30]。
ミシガン州[編集]
ミシガン州でも死者の投票した投票用紙が有効となっていたがこれに対し専門家は、ソフトウェアがおかしくなったりヒューマンエラーや秘密保持などといった理由により、有権者名簿に年齢がありえないほど高い有権者 (つまり極端な例えでいえば、150歳や200歳なども含まれる)も記載されることがある、と説明しいわゆる"死者の投票数を有効とした"という主張は不正確なものであると主張した[31]。
投票用紙の一部が処分されたことについては、一つの要因としては開票時にDecision Desk HQのシステムエラーがありその結果バイデンに多くの票が入ってしまったと言われている。しかし当然ながらこのような"システムエラー"に対して疑問が浮上し、後の調査の結果この"エラー"は人為的ミス (タイプミス)に起因していたことが明らかとなった。バイデンへの投票数が実際は15371票だったのに対し、責任者が"誤って"末尾に0を加えてしまったため153710票になってしまったという。なおこの誤った数値はすぐさま修正された[32][33]。
脚注[編集]
注釈[編集]
出典[編集]
- ^ “【米大統領選2020】 連邦最高裁、トランプ氏応援の訴え退け 4州の結果無効を認めず”. BBC. (2020年12月12日) 2020年12月19日閲覧。
- ^ “バイデン氏の選出確実に 大統領選挙人が投票”. 産経新聞. (2020年12月15日) 2020年12月19日閲覧。
- ^ “【米大統領選2020】 バイデン氏、選挙人投票で公式に勝利 米民主主義の強さ称賛”. BBC. (2020年12月15日) 2020年12月19日閲覧。
- ^ “Workers whittle down piles of uncounted ballots in key states”. CNN (2020年11月5日). 2020年11月8日閲覧。
- ^ “Donald Trump Is Lying About The Early Election Results”. BuzzFeed News. 2020年11月4日閲覧。
- ^ a b King, Ledyard (2020年11月7日). “Trump revives baseless claims of election fraud after Biden wins presidential race”. USA Today 2020年11月7日閲覧。
- ^ Young, Ashley (2016年9月23日). “A Complete Guide To Early And Absentee Voting” (英語) 2020年6月15日閲覧。
- ^ Farley, Robert (2020年4月10日). “Trump's Latest Voter Fraud Misinformation” (英語). FactCheck.org. 2020年6月19日閲覧。
- ^ “Donald Trump suggests delay to 2020 US presidential election”. BBC News. (2020年7月30日) 2020年7月31日閲覧。
- ^ Morello, Carol (2020年11月4日). “European election observers decry Trump’s ‘baseless allegations’ of voter fraud” (英語). Washington Post. ISSN 0190-8286 2020年11月6日閲覧。
- ^ Cillizza, Chris (2020年5月26日). “Here's the *real* reason Donald Trump is attacking mail-in ballots”. CNN. 2020年6月29日閲覧。
- ^ Haberman, Maggie; Corasaniti, Nick; Qiu, Linda (2020年6月24日). “Trump's False Attacks on Voting by Mail Stir Broad Concern”. The New York Times. ISSN 0362-4331 2020年6月29日閲覧。
- ^ “Barr OKs investigations of voting irregularities despite lack of evidence of massive fraud”. MSN (2020年10月31日). 2020年11月10日閲覧。
- ^ “「民主党は投票不正をやめろ」と訴えるトランプ大統領支持者らのFacebookグループが削除される”. Gigazine (2020年11月6日). 2020年11月11日閲覧。
- ^ Wong, Julia Carrie (2020年11月5日). “Facebook removes pro-Trump Stop the Steal group over 'calls for violence'”. The Guardian. 2020年11月7日閲覧。
- ^ Perez, Sarah (2020年11月5日). “Facebook blocks hashtags for #sharpiegate, #stopthesteal election conspiracies – TechCrunch”. TechCrunch. 2020年11月9日閲覧。
- ^ Greenwood, Max (2020年11月4日). “Biden says 'every vote must be counted' as Trump campaign challenges vote tallies”. TheHill. 2020年11月10日閲覧。
- ^ Phillips, Amber (2020年5月26日). “What is ballot 'harvesting,' and why is Trump so against it?” (英語). The Washington Post 2020年6月9日閲覧。
- ^ “トランプ陣営が大統領選訴訟で連敗、遅延戦法へ舵切りか”. 東亜日報. 2020年12月2日閲覧。
- ^ “Attorney heading up Trump campaign's Wisconsin recount effort is seeking to throw out his own vote”. Milwaukee Journal Sentinel (2020年11月23日). 2020年11月24日閲覧。
- ^ “Trump's top election lawyer in Wisconsin says he and his wife voted illegally in the campaign's latest legal argument”. BUSINESS INSIDER (2020年11月23日). 2020年11月24日閲覧。
- ^ “ジョージア州、再集計へ 米大統領選 僅差のため手作業で”. 日本経済新聞 (2020年11月12日). 2020年11月20日閲覧。
- ^ “激戦州 迫る勝敗確定期限 トランプ氏、遅延戦術に望み”. 日本経済新聞 (2020年11月20日). 2020年11月20日閲覧。
- ^ “Joe Biden confirmed as Georgia winner after recount”. The Guardian. (2020年11月20日) 2020年11月26日閲覧。
- ^ Amy Gardner (2021年1月4日). “‘I just want to find 11,780 votes’: In extraordinary hour-long call, Trump pressures Georgia secretary of state to recalculate the vote in his favor”. The Washington Post 2021年1月4日閲覧。
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- ^ https://www.factcheck.org/2020/11/clerical-error-prompts-unfounded-claims-about-michigan-results/
- ^ Levin, Josh (2020年11月6日). “Decision Desk HQ Was First to Call the Election for Biden. What Is Decision Desk HQ?”. Slate Magazine. 2020年11月10日閲覧。