2020年の台風

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2020年の台風
軌跡の地図
最初の熱帯低気圧発生 5月10日
最初の台風発生 5月12日
最も強かった
台風
台風1号 – 965 hPa,
85 kt (10分間平均)
熱帯低気圧の総数 9
台風の総数 6
タイフーンの総数 2
スーパータイフーンの総数 0
総死亡者数 24
総被害額 4.421 億ドル (2020 USD)
年別台風
2018, 2019, 2020, 2021, 2022

2020年台風(2020ねんのたいふう、太平洋北西部及び南シナ海[注 1]で発生した熱帯低気圧)のデータ。データは基本的に日本気象庁の情報に基づき、気象庁が熱帯低気圧としていない一部のものについては、合同台風警報センター (JTWC) のみに拠る。

2020年は、しばらくの間台風の発生ペースが遅かった[1]台風1号5月12日に発生。台風に関する統計が開始された1951年以降で平均的な台風1号の発生は3月頃であるため、かなり遅めの発生となり[2]、統計史上8番目の遅さとなった[3][4][5]。最初の台風発生から1ヶ月後の6月12日台風2号が発生したが、その後は台風が発生しない期間が7月後半に至るまで続いた[6]。7月は、平年であれば本格的な台風シーズンの始まりの時期で、本来台風の発生数が一年で3番目に多い月であり、平年で3.6個は発生するものの[7]、この年の7月は太平洋赤道域で急速にラニーニャ現象が発生しつつあったため[8]、かなり静かな時期であった[注 2]。当時、フィリピン沖の海水温は30℃以上あり、台風が発生するには十分な海水温であった一方で、インド洋の海水温も平年より高かった(ダイポールモード現象[6][9][10]。インド洋では平年に比べ広く上昇流が強かったものの、太平洋では広範囲の海域で平年に比べて上昇流が弱く、下降流場となっており、上空の大気の流れが対流活動を抑える下降気流が卓越していたため[11]、広範囲に活発な雨雲は発生しづらくなっていたほか[6]、これにより例年よりも西側に太平洋高気圧が強まり、北西太平洋は台風が発生しづらい状態となっていた[12]。これらのことが、台風の発生が少なかった原因であると考えられる。こうして、しばらく台風が発生しないまま7月下旬を迎え、「このまま7月中に1個も台風が発生しないと7月の台風発生がゼロになるのは1951年以降の統計史上初の事例となる。」として、話題となった[13][14][15][16][17][18][19][注 3][注 4]。統計史上、7月末までに台風の発生が2個以下にとどまったのは、この年と1998年の2例のみである[13]。結局、7月中に台風は発生せず、上記の通り統計史上初の事例となった[20][21][22][23]

またこのことは、令和2年7月豪雨の発生やこの年の梅雨明けが遅れたこととも関連がある可能性があるという[10][24][25]。フィリピン海から太平洋高気圧の縁をまわって流れてくる暖かく湿った空気の流れが強まって、これが梅雨前線に沿うように西から流れるインドモンスーンの暖かく湿った空気の流れとぶつかることにより、大量の水蒸気を南西から送り込んだために、雨雲が発達しやすい危険な状況を生み出したと推測される[12]。さらに、前述のように太平洋高気圧が例年より西に張り出し、日本付近に張り出していなかったため、梅雨前線も北に押し上げられず[10]、この年は沖縄を除いて7月下旬になってもなかなか梅雨が明けず、記録的な遅さとなっていた[26][27]

しかし8月になると、それまでの状況から転じて台風の発生ペースが上がり、1日に早くも台風3号が発生。台風3号としては発生日時が過去2番目に遅く、また統計史上、台風3号の発生が8月にまで遅れたのは、1998年と2020年のみとなっている。この台風は、7月31日9時に熱帯低気圧として発生し、気象庁が24時間以内に台風まで発達すると予想したため、過去初めて7月の台風がゼロになるかという予想に反し、7月最終日にギリギリ滑り込みで発生するかという話もあったが[28]、結局月が変わって8月1日になってから台風になったため、統計史上初となる7月の台風発生無しは確実となった。また台風3号の発生から6時間後に台風4号が発生し、1日の間に2つも台風が発生した。また8月9日には5号、翌日には6号も発生するなど、急速に台風の発生ペースが上昇した。

月別の台風発生数[編集]

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 年間
1 1 4 6

各熱帯低気圧の活動時期[編集]

「台風」に分類されている熱帯低気圧[編集]

台風1号(ヴォンフォン)[編集]

202001・01W・アンボ

タイフーン (JMA)
カテゴリー3 タイフーン (SSHWS)
発生期間 5月12日 – 5月17日
ピーク時の強さ 85 kt (10分間平均) 
965 hPa

5月6日頃にカロリン諸島近海で形成が始まった低圧部が、10日9時にフィリピンの東で熱帯低気圧に発達。フィリピン大気地球物理天文局 (PAGASA) は、フィリピン名アンボAmbo)と命名した[29][30][31]。その後合同台風警報センター(JTWC)により、熱帯低気圧番号01Wが与えられた。01Wは12日21時に、フィリピンの東の海上 (北緯10.8度・東経129.2度[32]) で台風となり[33][34][35][36][37][38][39]、アジア名ヴォンフォンVongfong)と命名された[40][41][42][43][44][45]。命名国はマカオで、「スズメバチ」を意味する[46][5]。台風は西に進みながら急速に勢力を強め、発生から21時間後には暴風域も発生し[47][48][49]、発生から24時間後(13日21時)には、中心気圧975hPa・最大風速35m/s・最大瞬間風速50m/sの「強い」勢力となった[50][51]。そして14日15時(現地時間の正午)頃に、中心気圧965hPa・最大風速45m/s・最大瞬間風速60m/sという「非常に強い」勢力で、フィリピン中部のサマール島東部(ビサヤ地方)サンポリカルポ町に上陸[52][53][30][54][55][56][57]。上陸の7時間後には北サマル州カタルマンを通過した[58]。上陸後はフィリピン本土を北西に進み[59]、15日に首都マニラに接近[60]。しかしフィリピンを縦断するうちに勢力は次第に衰え[61][62]、15日18時までには990hPaまで中心気圧が上がっていた[63][64]。その後も北上を続けてルソン島を通過し、16日には中心気圧1,000hPa・最大風速18m/sと弱まって、南シナ海へと抜けた後にバシー海峡へと進んだ[49][65][66][67]台湾中央気象局は16日11時半に海上台風警報を発令し、バシー海峡を航行している船舶に対して注意を呼び掛けた[68]。そして17日3時、台風はバシー海峡(北緯20度・東経121度[32])で熱帯低気圧に変わった[69][70][71]

台風の直撃を受けたフィリピンでは、新型コロナウイルスの流行によって外出制限下にあった数万人もの人々が、台風とウイルスという二重の脅威に直面し、複雑で危険な避難を余儀なくされた[72][30][73]。フィリピン中部の各避難所では、コロナウイルスの感染拡大を防止するために、定員の半分のみの受け入れにとどめ、避難する際はマスクの着用を求めたという[30]。この台風の襲来時までにフィリピン国内で確認されていた感染者数は11,618人、(感染症による)死者数は772人であった[注 5][72]。台風はマニラにも接近したが、マニラでもウイルス流行に伴う厳しい外出制限措置が取られていたため、簡素な家に住む低所得層も含め大半の人々は避難所へ行けず、自宅待機を余儀なくされた[60][74]

台風通過後のアゴス川

マニラ湾沿岸には、木材トタン等でできた粗末な家が密集するスラム街が広がるため、高潮や強風による家屋損壊の恐れがあるとして、災害対策当局は警戒を呼び掛けた[60][75][76]。台風による暴風雨によって、東サマル州ではサンポリカルポ町で土砂崩れが発生したほか、アルテチェ町では教会の屋根が崩壊。またドロレス町やオラス町などを含め各地で建物の倒壊や住宅の全壊などの被害が出た[77]。同州では少なくとも2人が行方不明となり、1人が負傷したほか[78]、フィリピン全体では合計で5人が死亡・25人が負傷し、7,459棟の家屋が被害を受けた[79][80][81][82][83][84][85][86][87]。またビコル地方では少なくとも141,700人が避難を強いられた[54]。なお、東ビサヤ地方の沿岸部は2013年台風30号により壊滅的な被害を受けており、死者・行方不明者の数は7300人以上に達した[57]

また、この台風から変わった熱帯低気圧は沖縄付近を通過し、これを含む暖湿気が本州付近の前線に流れ込んだ影響で、18日には西日本に停滞していた前線の活動が活発化して、沖縄や西日本で大雨となった[88][89]九州四国の一部では1時間に30mm以上の激しい雨が降り、大雨警報土砂災害警戒情報が発表された所もあった[88]。特に九州南部では100~200mmもの大雨になったほか[90]、沖縄県南城市糸数では15時20分までの24時間雨量が113.5mmに達した[89]。さらに19日には、台風から変わった低気圧周辺の湿った空気の影響で関東などでも本降りの雨となり、同日6時までの1時間に、千葉県鴨川市で12.5mm、船橋市で10.0mmの強い雨を観測したほか、東京都心でも9.0mmの雨が降った[91]

台風1号が5月以降に発生するのも、台風1号が「非常に強い勢力」となるのも、台風1号が暴風域を伴うのも、2016年以来4年ぶりとなった[92][34][93][94][95][96][97][98]。そしてこの年の台風1号は、1951年の統計開始来8番目に遅く発生した[2][99][100][101][102]。また、2019年12月28日に台風29号が消滅してから136日間は台風は発生しておらず、空白期間となっていた。これは過去で15番目に長い。

この台風のフィリピン名「アンボ」はこの台風限りで使用中止となった。

発生日時が(一年の中で)遅い台風第1号
順位 台風 国際名 発生日時
1 平成10年台風第1号 Nichole 1998年7月9日 15時
2 平成28年台風第1号 Nepartak 2016年7月3日 9時
3 昭和48年台風第1号 Wilda 1973年7月2日 3時
4 昭和58年台風第1号 Sarah 1983年6月25日 15時
5 昭和27年台風第1号 Charlotte 1952年6月10日 3時
6 昭和59年台風第1号 Vernon 1984年6月9日 15時
7 昭和39年台風第1号 Tess 1964年5月15日 15時
8 令和2年台風第1号 Vongfong 2020年5月12日 21時
9 平成13年台風第1号 Cimaron 2001年5月11日 9時
10 平成18年台風第1号 Chanchu 2006年5月9日 21時


台風2号(ヌーリ)[編集]

202002・02W・ブッチョイ

トロピカル・ストーム (JMA)
トロピカル・ストーム (SSHWS)
発生期間 6月12日 – 6月14日
ピーク時の強さ 40 kt (10分間平均) 
996 hPa

6月10日9時にフィリピンの東の低圧部が熱帯低気圧に発達し[103]、合同台風警報センター(JTWC)により熱帯低気圧番号02Wが与えられた。02Wは11日から12日にかけてルソン島を通過し[104]、12日21時に、フィリピン西方の南シナ海で台風となり[105][106][107][注 6]、アジア名「ヌーリ(Nuri)」と命名された[108][109][110][111][112][113]。命名国はマレーシアで、マレー語で「オウム」を意味する。また、フィリピン大気地球物理天文局は、フィリピン名「ブッチョイ(Butchoy)」と命名。台風は暴風域は伴わずに南シナ海を北西に進み[109]、13日9時には中心気圧996hPa・最大風速20m/sとなって、ほとんど発達はしていないものの最盛期を迎えた[107]。気象庁は、付近を通る船舶などに注意を呼びかけた[106]香港の気象当局は、台風が14日に中国広東省に上陸すると予想し、強風や豪雨、高波への警戒が必要とした[114][115]。台風はその後、14日9時に南シナ海において、中心気圧1,002hPaの熱帯低気圧に変わった[116][117]

この台風により、香港では大雨による洪水で1人が死亡した[118]。この台風の後に1か月半にわたって台風が発生しなかったことにより観測史上初の台風の発生しない7月となった。

台風3号(シンラコウ)[編集]

202003・04W

トロピカル・ストーム (JMA)
トロピカル・ストーム (SSHWS)
発生期間 8月1日 – 8月2日
ピーク時の強さ 35 kt (10分間平均) 
992 hPa

7月31日9時に、南シナ海において低圧部が熱帯低気圧に昇格した[119][120]。熱帯低気圧は8月1日15時にトンキン湾において台風3号となり[121]、アジア名「シンラコウ(Sinlaku)」と命名された。命名国はミクロネシアで、「伝説上の女神」を意味する[121][122]。また、合同台風警報センター(JTWC)により、熱帯低気圧番号04Wが与えられている。発生当初から強風域が大きい「大型」の台風であり[123]、同日の18時には強風域を南東側に1100km、北西側に560km広げ、前年に発生した台風10号以来の「超大型」の台風となった。すなわち、発生後わずか3時間で超大型になったことになる。また、発生時の大きさとしては2007年の台風14号に次ぎ、2015年の台風23号と並んで過去2番目の大きさである。台風は8月2日午後にはベトナムに上陸し[124]、そして2日21時にベトナムで熱帯低気圧に変わった[125]

この台風は、台風3号としては1998年に次いで統計史上2番目に遅い日時に発生した[126]。台風3号の発生が8月以降にまでずれ込んだのは、この年と1998年のみである。前述の通り、この年の7月は台風の発生が統計史上初めてゼロとなったため、これが約1ヶ月半ぶりの台風発生となった[122]

この台風により、合計で6人が死亡した[127][128]

台風4号(ハグピート)[編集]

202004・03W・ディンド

タイフーン (JMA)
カテゴリー1 タイフーン (SSHWS)
発生期間 8月1日 – 8月6日
ピーク時の強さ 70 kt (10分間平均) 
975 hPa

7月31日15時に、フィリピンの東で熱帯低気圧が発生。PAGASAは、この熱帯低気圧をフィリピン名「ディンド(Dindo)」と命名した。気象庁は、この熱帯低気圧が24時間以内に台風になる見込みであると発表した[129]。またJTWCは熱帯低気圧番号03Wを付番した。03Wは8月1日21時に沖縄の南で台風4号となり[130]、アジア名「ハグピート(Hagupit)」と命名された。命名国はフィリピンで、「むち打つこと」を意味する[131]。台風は、3日2時には暴風域が解析され[132][133]、沖縄県の八重山地方を暴風域に巻き込みながら北西に進んだ[134]。その後、中心気圧980hPa・最大風速35m/s・最大瞬間風速50m/sの「強い」勢力となった[135]。そして東シナ海を北北西に進み[136]、勢力を維持したまま4日には中国の華中浙江省磐安県)に上陸した[137][138]。上陸後は次第に勢力が衰えて暴風域は消滅し、4日18時には中心気圧992hPa・最大風速25m/s・最大瞬間風速35m/sにまで弱まった。そのまま中国大陸を北上し、5日には黄海に抜けた。その後朝鮮半島に再上陸した後、6日9時に日本海で温帯低気圧に変わった[139][140][141]。温帯低気圧はその後再発達して日本海を進み、北海道に接近して宗谷海峡付近を通過した[142]

台風により沿岸に押し寄せる大波
台風による中国での被害
台風による風雨の様子

3日朝に台風が接近した八重山地方では暴風警報が発表され、石垣島の伊原間で30.8m/s、石垣島地方気象台で30.5m/s、石垣空港で30.3 m/s、竹富町大原で37.9m/s(6時20分)、石垣市登野城で35.7m/s(5時58分)の最大瞬間風速を観測した[133][143][144][145]。また、1,300世帯以上で停電が発生し、石垣市などで最大1,630世帯が停電したほか[143]、旅客船の多くが欠航した[146]台湾中央気象局によれば、台風周辺の湿った空気が流れ込んだため、3日の台湾は西部全域で雨となった。中央気象局は同日11時前に、台湾西部の16の県や市に豪雨・大雨特報を発表し、雷や強風、河川の増水や低地の浸水などに注意するよう呼びかけた[147]。台風により台湾で1人が死亡・1人が負傷した[148]。 台風が上陸した中国では、台州市温州市の80万戸以上で停電したほか[149]、大雨と強風で多くの河川が氾濫し、家屋が浸水したり、道路や農地が冠水したりした[138]。さらに、山西省では6日、台風から変わった熱帯低気圧によって発生した鉄砲水や土砂崩れで、立ち往生した車両から4人が救助されたもののうち1人の死亡が確認された[150]。またこの台風は、韓国にも大きな影響を及ぼした[151]。北太平洋高気圧の端に沿って朝鮮半島に大量の水蒸気を供給しているためであり、強い停滞前線が同半島に停滞する状況で、台風がもたらす水蒸気がさらに降雨量を増加させた[151]。場所によっては1時間に100mmを超える大雨となって土砂崩れや浸水などの被害が相次いだほか[152]、4日までに死者14人・行方不明者12人の人的被害が確認された[153]。2日には尖閣諸島周辺の領海外側にある接続水域において、中国海警局の船4隻が航行しているのが海上保安庁の巡視船により確認され、4隻とも同日朝には域外へ出た[154]。中国船が尖閣諸島の周辺で確認されるのは111日連続であり、2012年9月に尖閣諸島が国有化されて以降最長の連続日数となった。第十一管区海上保安本部那覇)は、「台風4号の接近に備えて出域したのかもしれない」という見方を示したという[154]。なお、この台風から変わった低気圧や低気圧から延びる前線の影響で、北海道や本州の日本海側では大荒れの天気となり[155]、北海道では宗谷地方などで大雨となった。利尻町利尻富士町稚内市などに「土砂災害警戒情報」がされ、利尻島では50年に1度の記録的大雨となった。6時間降水量の日最大値は、宗谷岬稚内市などで100mmを超え、観測史上1位の記録を更新した[155]奥尻空港で最大瞬間風速32.4m /s(8月の1位の記録を更新)、江差町で最大瞬間風速30.3m /sの暴風となった[155]。このため、避難指示が出された自治体もあった[156]。低気圧から延びる前線は本州の日本海側にも大雨をもたらし、島根県の隠岐空港では1時間に63.0mmの雨となって観測史上1位の記録を更新したほか、3時間降水量の日最大値は、隠岐の島町で146.0mm、隠岐空港で118.5mmで、観測史上1位の記録を更新した[155]。隠岐の島町の島後では、50年に一度の記録的な大雨になった[155]

この台風は、台風4号としては、過去4番目に遅い日時における発生となった[157]

台風5号(チャンミー)[編集]

202005・05W・エンテン

トロピカル・ストーム (JMA)
トロピカル・ストーム (SSHWS)
発生期間 8月9日 – 8月11日
ピーク時の強さ 45 kt (10分間平均) 
996 hPa

8月7日午前9時にフィリピンの東に熱帯低気圧が解析された[158]。PAGASAは、この熱帯低気圧をフィリピン名「エンテン(Enteng)」と命名した。気象庁はこの熱帯低気圧について、24時間以内に台風へと発達する見込みとして観測を開始した。また、JTWCは熱帯低気圧番号05Wを付番した。05Wは9日3時に沖縄の南で中心気圧1,000hPa・最大風速18m/s・最大瞬間風速25m/sの台風となり[159]、アジア名「チャンミー(Jangmi)」と命名された。命名国は韓国で、朝鮮語で「バラ(장미)」を意味する[159][160]。台風は暴風域は伴わずに東シナ海を北上し、沖縄に接近[161][162]。9日午後には沖縄本島先島諸島の間を通過した[163]。その後も北上して九州などを強風域に巻き込んだ[164][165]。そして朝鮮半島付近を通過し[166]、日本海へと進んだ。11日9時、台風は日本海で温帯低気圧に変わった[167][168]

台風が接近した沖縄では雨や風が強まって荒れた天気となった。交通機関への影響が生じ、海の便では沖縄本島離島とを結ぶ多数の便が欠航したほか、空の便でも那覇空港羽田空港を結ぶ便など少なくとも83便が欠航し、予約ベースで3,443人の足に影響が出た[169][170]。9日午後には、うるま市で最大瞬間風速26.6m/sを観測した[171]。また九州でも、台風の影響で各地で断続的に風雨が強まった[172]長崎県長崎市野母崎で、8月としては観測史上最大となる最大瞬間風速30.8m/sを記録した[172]。また、台風から変わった温帯低気圧は北海道に接近し、道北などに大雨をもたらしたほか[173]羽幌町で最大瞬間風速26.6m/s、倶知安町で25.6m/sを観測するなど強風となった[174]

この台風は、台風5号としては、過去6番目に遅い日時に発生した[175]

台風6号(メーカラー)[編集]

202006・07W・フェルディー

シビア・トロピカル・ストーム (JMA)
カテゴリー1 タイフーン (SSHWS)
発生期間 8月10日 – 8月11日
ピーク時の強さ 50 kt (10分間平均) 
992 hPa

8月9日に南シナ海で熱帯低気圧として発生し、JTWCは熱帯低気圧番号07Wを付番した。また、PAGASAはフィリピン名「フェルディー(Ferdie)」と命名した。気象庁はこの熱帯低気圧について、24時間以内に台風へ発達するとして観測を開始した。07Wは10日12時に南シナ海で台風6号となり、アジア名「メーカラー(Mekkhala)」と命名された。命名国はタイで、「天使」を意味する[176]。台風は北上して台湾に接近した後[177]、11日7時半に中国福建省漳浦県に上陸した[178][179]。そして11日21時に華中で熱帯低気圧に変わった[180]

福建省廈門市では、台風により木が根こそぎに倒れ、強風・豪雨により交通や電力設備なども影響を受けた。廈門空港では60便以上が欠航し、高速バスの運行も一時停止となった[179]


気象庁が「台風」に分類しなかった熱帯低気圧[編集]

熱帯低気圧番号(○○W)は、合同台風警報センター(JTWC)が熱帯低気圧と認めたものに付与し、同機関をはじめ海外の各気象機関で用いられる。フィリピン大気地球物理天文局(PAGASA)がフィリピン名を命名している場合、フィリピン名も併記。また、熱帯低気圧番号がない場合も、気象庁が熱帯低気圧としたものを以下、単に「TD」と示す。

TD(カリーナ)[編集]

トロピカル・デプレッション (JMA)
発生期間 7月11日 – 7月15日
ピーク時の強さ <30 kt (10分間平均) 
1004 hPa

7月11日15時にフィリピンの東に低圧部が解析された[181]。低圧部は同日21時に熱帯低気圧に昇格した。PAGASAは、この熱帯低気圧をフィリピン名「カリーナ(Carina)」と命名した。沖縄付近に太平洋高気圧が張り出していたため[182]、熱帯低気圧は西に進んで台湾にかなり接近した。台風の勢力にまでは発達せず、15日に消滅した。

TD[編集]

トロピカル・デプレッション (JMA)
Subtropical depression (SSHWS)
発生期間 7月28日 – 7月30日
ピーク時の強さ <30 kt (10分間平均) 
1010 hPa

7月28日3時に日本のはるか東南東の海上で熱帯低気圧が発生した。ほとんど発達することなく、7月30日6時に消滅した。JTWCはこの低気圧を亜熱帯低気圧(サブトロピカル・デプレッション)と解析した。

TD 06W(ジェナー)[編集]

トロピカル・デプレッション (JMA)
トロピカル・ストーム (SSHWS)
発生期間 8月9日 – 8月13日
ピーク時の強さ 30 kt (10分間平均) 
1012 hPa

8月9日に小笠原諸島近海で熱帯低気圧として発生し、JTWCは熱帯低気圧番号06Wを割り当てた。気象庁はこの熱帯低気圧を、24時間以内に台風になる可能性があるとして 観測を開始した。しかし06Wは、最低気圧が1012hPaと熱帯低気圧にしては異常なほど高かったこともあり、気象庁の予想に反して台風に昇格することはなかった。そのため、気象庁はこの熱帯低気圧の観測を中断した[183]。台風にはならなかったものの、PAGASAの監視エリアに入ったためフィリピン名「ジェナー(Gener)」と命名されている。


各台風・熱帯低気圧名[編集]

PAGASAの熱帯低気圧監視エリア

順番はアジア名ダムレイ」が1とされている[184]。またフィリピン名は、熱帯低気圧が監視エリアに入ったとき、フィリピン大気地球物理天文局(PAGASA)が命名するものである[185]

台風
台風 熱帯低気圧番号 アジア名 フィリピン名
順番 名称 読み 意味・由来 命名国・地域 名称 読み
1号(2001) 01W 63 Vongfong ヴォンフォン スズメバチ マカオ Ambo アンボ
2号(2002) 02W 64 Nuri ヌーリ オウム マレーシア Butchoy ブッチョイ
3号(2003) 04W 65 Sinlaku シンラコウ 伝説上の女神の名前 ミクロネシア
4号(2004) 03W 66 Hagupit ハグピート むち打つこと フィリピン Dindo ディンド
5号(2005) 05W 67 Jangmi チャンミー バラ 韓国 Enteng エンテン
6号(2006) 07W 68 Mekkhala メーカラー 雷の天使 タイ Ferdie フェルディー
熱帯低気圧
熱帯低気圧 フィリピン名
名称 読み
TD Carina カリーナ
TD 06W Gener ジェナー

各熱帯低気圧の影響[編集]

台風・
熱帯低気圧
熱帯低気圧番号 名称 期間 大きさ
強さ
階級 最大風速 最低気圧 影響地域 被害額 死者・行方不明者数(人) 出典
台風1号(2001) 01W Vongfong(Ambo) 5月10日 - 5月18日 非常に強い TY 45m/s(85kt) 965hPa パラオフィリピン台湾 3110万ドル 5 [186][187]
TY 100kt -
台風2号(2002) 02W Nuri(Butchoy) 6月10日 - 6月15日 - TS 20m/s(40kt) 996hPa フィリピン、中国華南 - 1 [118]
TS 35kt -
TD - Carina 7月11日 - 7月15日 - TD 不明 1004hPa フィリピン、台湾 - -
TD - - 7月28日 - 7月30日 - TD 不明 1010hPa - - -
台風3号(2003) 04W Sinlaku 7月31日 - 8月3日 超大型 TS 18m/s(35kt) 992hPa 中国(華南)、ベトナムラオスカンボジアタイ - 6 [127][128]
TS 35kt -
台風4号(2004) 03W Hagupit(Dindo) 7月31日 - 8月6日 強い TY 35m/s(70kt) 975hPa 日本先島諸島)、台湾、中国(華東)、朝鮮半島 - 12
TY 75kt -
台風5号(2005) 05W Jangmi(Enteng) 8月7日 - - TS 23m/s(45kt) 996hPa 日本(琉球諸島)、朝鮮半島 - - -
TS 40kt -
台風6号(2006) 07W Mekkhala(Ferdie) 8月9日 - - STS 25m/s(50kt) 992hPa フィリピン、台湾、中国(華東) - - -
TY 70kt -
TD 06W Gener 8月9日 - - TD 15m/s(30kt) 1012hPa 日本(小笠原諸島琉球諸島 - - -
TS 45kt -
計9個 5月10日 - - - 45m/s(85kt) 965hPa - 3110万ドル 24
100kt -
  • 「期間」は熱帯低気圧として存命した期間を表す。台風が熱帯低気圧に変わった場合、熱低化から消滅までの期間も含む。
  • 「階級」「最大風速」「最低気圧」は、それぞれ上段が気象庁、下段がJTWCの解析によるデータである。ただし、JTWCのデータがない場合、気象庁のデータのみを表示している。
  • 「階級」について、上段は気象庁が示す国際分類で、最大風速(10分間平均)によってTD=トロピカル・デプレッション、TS=トロピカル・ストーム、STS=シビア・トロピカル・ストーム、TY=タイフーンに分類される。下段のJTWCの分類は、TS=トロピカル・ストーム、TY=タイフーン、STY=スーパータイフーンで、最大風速(1分間平均)によって分類される。
  • 「出典」のはそれぞれ気象庁HPで公開されている台風の経路図及び位置表のリンクである。

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ 気象庁の観測対象範囲である東経100度から180度までの北半球。
  2. ^ ウェザーニュースも、6月の段階で、7月までは台風の発生が少ない状態が続くと予想していた。 参考:台風傾向(2020年)
  3. ^ 過去には、「最初の台風発生が7月にまで遅れた年(例:1998年2016年)」や「7月に1個しか台風が発生しなかった年(例:1998年、1985年)」はあったが、「7月中の台風発生がゼロ」は前例がなかった。
  4. ^ ただし、7月下旬にハワイに接近したハリケーン・ダグラス英語版が、日付変更線を越えて気象庁の監視領域に入り、「越境台風」となる可能性もゼロではないとされた。(参考:)しかし、実際は日付変更線を越える前に温帯低気圧に変わった。
  5. ^ 検査数が限られていたため、実際にはさらに多くの感染者がいたと考えられる(参考)。
  6. ^ 台風2号としては過去14番目に遅く発生した(参考

出典[編集]

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外部リンク[編集]