2019年沖縄県民投票

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動
2019年沖縄県民投票
普天間飛行場の代替施設として国が名護市辺野古に計画している米軍基地建設のための埋立てに対する賛否についての県民による投票
開催地 沖縄県の旗 沖縄県
開催日 2019年2月24日 (2019-02-24)

 2019年の沖縄県民投票(おきなわけんみんとうひょう)、正式名称普天間飛行場の代替施設として国が名護市辺野古に計画している米軍基地建設のための埋立てに対する賛否についての県民による投票(ふてんまひこうじょうの だいたいしせつとして くにがなごしへのこにけいかくしている べいぐんきちけんせつのための うめたてにたいするさんぴについての けんみんによるとうひょう)は、2019年2月24日竹富町は2月23日[1])に沖縄県が実施した住民投票である[2][3]

 本投票は沖縄県の住民投票条例に基づくものであり、以下、単に「条例」と記した場合は根拠条例である「辺野古米軍基地建設のための埋立ての賛否を問う県民投票条例」(平成30年10月31日条例第62号)を指すものとし、条例の条文については特に断らない限り「辺野古米軍基地建設のための埋立ての賛否を問う県民投票条例の一部を改正する条例」(平成31年1月31日条例第1号)により改正された後の条文を指すものとする。

概要[編集]

 日本国政府在日米軍海兵隊普天間飛行場宜野湾市)の代替施設として名護市辺野古地区に計画している米軍基地建設のための埋め立てに関して、「県民の意思を的確に反映させること」(条例第1条)を目的として実施するものである。一般に海岸部(公有水面)の埋め立てに関しては、公有水面埋立法において国土交通省令に基づいて都道府県知事(本件では沖縄県知事玉城デニー)が免許を行うことと定められており、これの判断材料の一つとされるものである。「普天間飛行場の名護市辺野古への移設に対する是非を問う」と報じるメディアも少なくない[4][5][6]が、正確には「建設のための埋め立てに対する賛否を問う」ものである。

 沖縄県議会議員及び沖縄県知事の選挙権を有する者を投票資格者として(条例第5条)、無記名により埋め立てに『賛成』、『反対』または『どちらでもない』を択一で投票する(条例第6条)。投票結果について『賛成』『反対』『どちらでもない』のいずれかの投票数が投票資格者の総数の4分の1に達したときは、知事はその結果を尊重しなければならない(条例第10条第2項)と定められており、その結果を知事が内閣総理大臣安倍晋三)及びアメリカ合衆国大統領ドナルド・トランプ)に対し通知するもの(条例第10条第3項)とされている。

 なお、この県民投票は日本国憲法第95条に基づき特別法を制定するためのものでも、地方自治法に基づき議会の解散や首長・議員の解職を求めるものでもないことから、総務省は「結果に従う義務を定めた法律は存在せず、法的拘束力はない」との見解を示している[7]。一方で、憲法学者には、同県民投票が憲法95条の趣旨に沿うものであるとの見解も存在する[8]

投票実施までの経緯[編集]

 2018年5月23日、一橋大学大学院社会学研究科を休学した元山仁士郎が代表を務める市民団体「『辺野古』県民投票の会」が、地方自治法に基づき県民投票に向けた署名集めを開始した。この署名は、7月23日に終了し、7月末から8月中旬にかけて各市町村の選挙管理委員会で審査が行われた。9月5日、必要数となる有権者の50分の1(約2万3千筆)の約4倍にあたる92,848筆の署名を集めて沖縄県知事に直接請求を行った[9]

 これを受けて、県政与党である「会派おきなわ」や「社民社大・結連合」と日本共産党らが中心となって沖縄県議会に選択肢を「賛成」「反対」の2択とした条例案を提出。これに対し、県政野党である沖縄・自民党と県政では中立的立場を取る公明党は「賛成」「反対」に加えて「やむを得ない」「どちらとも言えない」を加えた4択とする案を提出したが、10月26日に野党案(4択案)を賛成少数で否決し、与党案(2択案)が賛成多数で可決成立[7][10]、条例は10月31日に公布された[4][5]

 条例では公布の日から起算して6ヶ月以内に実施することが定められており(条例第4条第1項)、2018年11月27日に、「2019年2月14日告示・同年2月24日投開票」のスケジュールが発表された[6]。県民投票の実施に当たっては、沖縄県知事の玉城が直前の県知事選挙オール沖縄勢力の支援を受け、「名護市辺野古に新基地を造らせない」ことを公約に掲げて初当選しており、移設反対の民意を背に移設を阻止したいとの考えがあったと報じられている[11]

 投票に当たっては沖縄県知事が執行すると定められている(条例第3条)一方で、実際の投票事務は地方自治法の規定に基づいて県内の各市町村が実施するものと定められている(条例第13条)。これに伴い、沖縄県下の各市町村では県民投票事務執行のための補正予算が市町村議会に上程されたが、うるま市沖縄市・宜野湾市・糸満市宮古島市本部町金武町与那国町の8市町で補正予算案を否決、沖縄・宜野湾・宮古島の3市は再議でも予算案が否決または投票事務にかかる予算が削除された[12]。また、石垣市でも同様に補正予算案が再議も含めて否決された[13]。地方自治法第177条第2項の規定では議会が投票事務にかかる予算案を否決した場合でも首長の判断で「その経費及びこれに伴う収入を予算に計上してその経費を支出することができる」と定めている(原案執行権)が、最終的に宮古島・宜野湾・沖縄・石垣・うるまの5市の市長が原案執行権を行使せず、県民投票不参加を表明[14]、県民の約3割が投票権を行使できない可能性が高まった[15]。その理由として、各市長は「議会の判断を尊重した」という意見[15]の他、「投票結果によっては普天間飛行場の固定化につながる懸念が極めて強い」(宜野湾市・松川正則市長)[16]、「(1997年の)名護市の住民投票では市民が分断され雰囲気が暗くなった。こういう経験をさせたくない」(沖縄市・桑江朝千夫市長)[17]などの理由を挙げている。これら各市町村での補正予算案の否決の動きに関して、衆議院議員の宮崎政久比例九州ブロック選出)が2018年末に沖縄県内の保守系市議会議員と勉強会を開催し、投票事務関連の予算案を否決するよう促す資料を配布していたことが報じられている(宮崎本人は「圧力をかけたことはない」と述べている)[18]。また、玉城知事は、一部自治体が参加しなくても県民投票を実施する意向を表明していた[11]

 5市長の県民投票への不参加表明を受けて、沖縄県や「辺野古」県民投票の会は各市長や市議会議員に説得を試みていたが、市長らの態度はなかなか変わらなかった。そのような経緯の中で、同県民投票の会の代表を勤めていた元山仁士郎が、1月15日から宜野湾市役所前でハンガーストライキを決行する。このハンガーストライキは計105時間(5日間)に及び、ドクターストップで終了した[19]

 このハンガーストライキを受けて、沖縄県議会議員、公明党沖縄県本部の幹事長を務める金城勉が事態の打開に乗り出す。県当局や県議会議長との協議の結果、妥協案として「賛成」「反対」に「どちらでもない」を追加し3択とする条例改正案を提案。自民党も含む全会派が2019年1月24日にこの改正案に合意し、1月29日の県議会本会議にて可決成立した[20]。ただし、自民党の一部から造反者が出たことから全会一致とはならなかった。その後、党内から造反者が出たことの責任を取り自民党沖縄県連会長の照屋守之が辞任した[21]。3択案成立を受け、不参加を表明していた5市の市長は投票の実施を表明し、2月24日に県内全市町村で投開票が行われることが確定した‪[22]。‬

住民投票データ[編集]

県民投票日程[編集]

県民投票結果[編集]

  反対 (71.74%)
  賛成 (18.99%)
  どちらでもない (8.70%)
  無効票 (0.58%)
  • 当日有権者数:1,153,591人
  • 投票率:52.48%
  • 投票総数:605,385票
  • 有効票数:601,888票(99.42%)
    • 賛成:114,933票(18.99%)
    • 反対:434,273票(71.74%)
    • どちらでもない:52,682票(8.70%)
  • 無効票数:3,497票(0.58%)


三択・棄権者内訳[編集]

琉球新報によると、事前調査で3択では「どちらでもない」が25.8%となり、2択よりも賛成が約10%、反対が15.7%低くなった。事後調査で投票に行かなかったと答えた棄権者の賛否内訳は、賛成が42.6%と「どちらでもない」が36.4%で割合が高く、反対は20. 9%だった[23]

関連項目[編集]

脚注[編集]

[ヘルプ]
  1. ^ “県民投票 竹富町で繰り上げ投票始まる”. 琉球放送. (2019年2月23日). https://www.rbc.co.jp/news_rbc/%E7%9C%8C%E6%B0%91%E6%8A%95%E7%A5%A8%E3%80%80%E7%AB%B9%E5%AF%8C%E7%94%BA%E3%81%A7%E7%B9%B0%E3%82%8A%E4%B8%8A%E3%81%92%E6%8A%95%E7%A5%A8%E5%A7%8B%E3%81%BE%E3%82%8B/ 2019年2月23日閲覧。 
  2. ^ 沖縄県公報 (PDF)”. 沖縄県 (2019年2月14日). 2019年2月23日閲覧。
  3. ^ 平成31年2月24日(日曜日)は県民投票です。”. 沖縄県 (2018年12月7日). 2018年12月30日閲覧。
  4. ^ a b “辺野古移設計画の賛否問う県民投票条例を公布 沖縄県”. 朝日新聞. (2018年10月31日). https://www.asahi.com/articles/ASLB03C6VLB0TPOB001.html 2019年1月19日閲覧。 
  5. ^ a b “沖縄 県民投票条例を公布 辺野古移設計画の賛否問う”. 毎日新聞. (2018年10月31日). https://mainichi.jp/articles/20181101/k00/00m/010/031000c 2019年1月19日閲覧。 
  6. ^ a b “県民投票2月24日、沖縄知事が正式発表 辺野古移設「意思反映を」”. 日本経済新聞. (2018年11月27日). https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38244100X21C18A1PP8000/ 2019年1月19日閲覧。 
  7. ^ a b “条例に基づく住民投票に法的拘束力なし 沖縄で県民投票条例可決”. 産経新聞. (2018年10月26日). https://www.sankei.com/politics/news/181026/plt1810260036-n1.html 2019年1月19日閲覧。 
  8. ^ “住民投票にはわが国の最高法である憲法上の拘束力がある”. (2019年2月7日) 
  9. ^ “辺野古移設問う県民投票条例を請求 署名9万筆集まる”. 朝日新聞. (2018年9月5日). https://www.asahi.com/articles/ASL9534K1L95TIPE004.html 2019年1月19日閲覧。 
  10. ^ “「辺野古」県民投票条例案が可決 沖縄県議会、与党の賛成多数”. 沖縄タイムス. (2018年10月26日). https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/335613 2019年1月19日閲覧。 
  11. ^ a b “辺野古移設、2月に県民投票=保守系首長が協力拒否-沖縄知事の戦略揺らぐ”. 時事通信. (2019年1月2日). https://www.jiji.com/jc/article?k=2019010200226&g=pol 2019年1月19日閲覧。 
  12. ^ “県民投票予算、8市町議会が認めず 全県実施は不透明に”. 沖縄タイムス. (2018年12月25日). https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/363092 2018年12月30日閲覧。 
  13. ^ “石垣市長、判断先送り 県民投票 議会の予算否決受け”. 琉球新報. (2018年12月26日). https://ryukyushimpo.jp/news/entry-853997.html 2019年1月19日閲覧。 
  14. ^ “沖縄県民投票、5市不参加ほぼ確定 県は実施をなお模索 newspaper=朝日新聞”. (2019年1月19日). https://www.asahi.com/articles/ASM1L7G1XM1LTIPE03P.html 2019年1月19日閲覧。 
  15. ^ a b “県民投票、3割強ができず=うるま市も不参加へ-辺野古移設”. 時事通信. (2019年1月14日). https://www.jiji.com/jc/article?k=2019011400284&g=pol 2019年1月19日閲覧。 
  16. ^ “宜野湾市、県民投票不参加 議会の否決は「重い」”. 毎日新聞. (2018年12月26日). https://mainichi.jp/articles/20181226/rky/00m/010/008000c 2019年1月19日閲覧。 
  17. ^ “最初「協力」と答えたが…県民投票、不参加の理由は 沖縄市・桑江市長一問一答”. 沖縄タイムス. (2019年1月8日). https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/368900 2019年1月19日閲覧。 
  18. ^ “自民・宮崎衆院議員、予算否決促す資料配布=辺野古移設の県民投票、地元で勉強会”. 時事通信. (2019年1月16日). https://www.jiji.com/jc/article?k=2019011601350&g=pol 2019年1月19日閲覧。 
  19. ^ “「悔しさあるが…」 元山さん、ハンスト終える 19日午後4時57分、ドクターストップ受け”. (2019年1月19日) 
  20. ^ “辺野古県民投票3択案を可決 沖縄県議会、全会一致ならず”. 時事通信. (2019年1月29日). https://www.sankei.com/smp/politics/news/190129/plt1901290036-s1.html 2019年2月3日閲覧。 
  21. ^ “自民党沖縄県連、照屋守之会長の辞任願受理”. 時事通信. (2019年2月4日). https://www.sankei.com/smp/politics/news/190204/plt1902040029-s1.html 2019年2月4日閲覧。 
  22. ^ “辺野古移設 沖縄県民投票、24日全県で 宜野湾など3市、参加表明”. 時事通信. (2019年2月2日). https://mainichi.jp/articles/20190202/ddp/001/010/003000c 2019年2月3日閲覧。 
  23. ^ 3択化で減ったのは「賛成」?「反対」? 2月の沖縄・辺野古県民投票 棄権者の特徴は?(琉球新報)” (日本語). Yahoo!ニュース. 2019年5月20日閲覧。

外部リンク[編集]