1940年度巡洋戦艦試案

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オランダ海軍1940年巡洋戦艦計画
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艦級概観
艦種 巡洋戦艦
艦名 不明
前級 デ・ゼーヴェン・プロヴィンシェン (海防戦艦)
orゲルマニア 1914年案
次級
性能諸元
排水量 基準:27,950トン
常備:28,065トン
満載:30,960トン
全長 237.1m
235.0m(水線長)
全幅 30.4m
吃水 7.8m
機関 形式不明重油専焼水管缶8基
ギヤード・タービン4基4軸推進
最大
出力
180,000hp
最大
速力
34.0ノット
航続
距離
20ノット/4,500海里
燃料 重油:4,500トン
乗員 1,050名
兵装 クルップ 1940年型 28cm(54.5口径)三連装砲3基
ボフォース 1928年型 12cm(50口径)連装速射砲6基
ボフォース 4cm(56口径)連装機関砲7基
2cm(-口径)単装機銃8基
装甲 クルップ鋼製
舷側:225mm(水線部主装甲、25度傾斜)、15~30~40mm(艦首部)、30mm(艦尾部)、40mm(水線下隔壁)
甲板:30mm(最上甲板)、25+75mm(主甲板)
主砲塔:250mm(前盾)
主砲塔:250mm(前盾)、200mm(側盾)、150mm(天蓋)
主砲バーベット部:250mm(甲板上部)、200mm(甲板下部)、40mm(主甲板下部)
副砲塔:80mm(前盾・側盾)、125mm(天蓋)
副砲バーベット部:75mm(甲板上部)、60mm(甲板下部)
機関砲防盾:40mm
司令塔:300mm(側盾)
150mm(天蓋)
航空兵装 水上機2機
カタパルト1基
同型艦 3隻(未成)

オランダの巡洋戦艦建造計画(おらんだのせんかんけんぞうけいかく)として、オランダが建造を企画したものの実現に至らなかった巡洋戦艦について本項に記述する。

背景[編集]

近代から第二次世界大戦までのオランダ海軍の基本方針は以下のようなものであった。

  • 本国:機雷と水雷艇で要港の防御を固める
  • 植民地:国家の資金源であるため、優先的に主力艦や潜水艦を配備し、きな臭いアジア情勢に備える

オランダは国力の問題から本国と植民地の両方に充分な兵力を配備することは不可能であるため、資源の少ない本国より実入りの良い植民地の防衛に戦力を割くという、欧州の国としては珍しい選択肢を取っていた。海防戦艦等の大型艦や軽巡洋艦駆逐艦の大部分は植民地防護に回され、またオランダ領東インド(蘭印)向けに小国としては有力な艦が計画されていた。

1940年巡洋戦艦案[編集]

第一次世界大戦後、戦艦の建造について再び研究が進められた。だが、ワシントン海軍軍縮条約の結果、新たなる艦種重巡洋艦が登場し、また第一次世界大戦敗戦後の不況にあえいでいたドイツが装甲艦「ドイッチュラント級」を竣工させ、ドイツ海軍の再興が始まると状況は変わった。列強海軍が建造するであろう重巡洋艦の備砲は最大で8インチ=20.3cmであり、オランダの既存軽巡洋艦に広く採用されている15cm砲では射程距離が劣るため、アウトレンジされる可能性が高かった。海防戦艦は主砲が28.3cmであり重巡洋艦に対して火力の面では対抗できるが、速力が遅いので自らの有利な状況で相手と戦闘を行うということは期待できなかった。そしてドイツ海軍の28cm砲を主砲とするドイッチュラント級に対抗可能なオランダ戦闘艦は存在しなかった。それに加えて1930年代に極東における日本の勢力圏が拡大されるにつれて、危機感を抱いたオランダは1939年に巡洋戦艦の建造を計画し、1940年には計画が承認された。これが本案である。

設計は国交関係修復の意味をこめてドイツに依頼した為に外観はシャルンホルスト級に似ていたが、船体構造はアメリカ式とイタリア式の混在で、防御力も傾斜装甲を採用するなどシャルンホルスト級よりも進んでいた。本案が対抗すべき艦として想定されたのは日本海軍の戦艦ではなく、条約型重巡洋艦やポケット戦艦であった。その為、主砲には過去の海防戦艦で実績のある28cm砲を採用することになっていた。1944年までに3隻を建造する計画だったが、オランダがドイツの侵攻を受け占領されたことにより本案も実現することなく終わった。

艦形[編集]

本案の船体形状は平甲板型船体である。強く傾斜したクリッパー・バウから艦首甲板上に主砲の「1940年型 28cm(54.5口径砲」を三連装式砲塔に収めて背負い式に2基、その後方に頂上部に大型の測距儀を配置した近代的な箱型艦橋の後方に簡素な単脚式のマストが1本立ち、船体中央部の2本煙突は機関のシフト配置のため前後に離されて配置しており、その間は水上機運用施設となっており、1番煙突基部に設けられた水上機格納庫には水上機2機が格納でき、船体中央部に首尾線方向に垂直に埋め込まれた固定式カタパルトにより射出される。艦載機の運用は船体中央部に片舷1基ずつ設置されたグース・ネック(鴨の首)型クレーンにより運用され、2番煙突基部に並べられた艦載艇の運用に使用される設計であった。2番煙突の後方に測距儀を配置した後部見張り所が設けられ、後部甲板上に後向きに3番主砲塔が1基配置された。左右の舷側甲板上には副砲の「12cm(50口径)速射砲」が連装式の副砲塔に収められ、1番煙突の側面に前向きに背負い式で2基と3番煙突の側面に後向きに1基で片舷3基の計6基を配置した。対空兵装の「4cm(56口径)機関砲」は連装砲架で艦橋中部の四隅に4基、後部見張り所の前方に並列で2基、後方に後向きに1基の計7基を配置した。この武装配置により艦首方向に最大で28cm砲6門・12cm砲8門・4cm砲4門、舷側方向に最大で28cm砲9門・12cm砲6門・4cm砲8門、艦尾方向に最大で28cm砲3門・12cm砲4門・4cm砲6門が指向できた。

主砲[編集]

本案の主砲は前型に引き続き「1940年型 28cm(54.5口径)砲」を採用した。その性能は315kgの砲弾を仰角45度で42,600mまで届かせることが出来た。この砲を新設計の三連装砲塔に収めた。俯仰能力は仰角45度・俯角5度である。旋回角度は左右150度の旋回角度を持っていた。主砲身の俯仰・砲塔の旋回・砲弾の揚弾・装填は主に電力で行われ、補助に人力を必要とした。発射速度は毎分2.5発である。

副砲、その他備砲[編集]

本案の副砲としてスウェーデンボフォース社の新設計の「1928年型 12cm(50口径)速射砲」を採用した。本案用に開発されたが、後にスウェーデン海軍の駆逐艦エレンスコルド級駆逐艦の主砲として採用された。その性能は24kgの砲弾を仰角30度で19,500mまで届かせることが出来た。この砲を新設計の連装砲塔に収めた。俯仰能力は仰角70度・俯角5度である。旋回角度は左右方向を0度として左右120度の旋回角度を持っていた。主砲身の俯仰・砲塔の旋回・砲弾の揚弾・装填は主に電力で行われ、補助に人力を必要とした。発射速度は毎分10発である。

他に近接対空用としてオランダ海軍の主力巡洋艦に採用されているボフォース社製「1936年型 4cm(56口径)機関砲」を連装砲架で7基、イスパノ・スイサ社の2cm機銃を単装砲架で8基装備した。

機関[編集]

本案においてオランダ軍艦として初の機関のシフト配置を採用した。これは、ボイラー4基とタービン2基を前後二箇所に交互に配置することにより被害時の生存性を確保する工夫である。計画出力は180,000馬力を想定し速力34ノットの俊足を発揮する予定であった。燃料の重油を4,500トン搭載した状態で速力20ノットで4,500海里を航行できる設計であった。

参考図書[編集]

  • 「Conway's All the World's Fighting Ships, 1922-1946」(Conway)
  • 「Battleships: Axis and Neutral Battleships in World War II」

関連項目[編集]

外部リンク[編集]