(15810) 1994 JR1

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アラウン
15810 Arawn
2015年11月2日にニュー・ホライズンズが撮影したアラウン。
2015年11月2日ニュー・ホライズンズが撮影したアラウン。
仮符号・別名 1994 JR1
分類 太陽系外縁天体[1]
軌道の種類 冥王星準衛星[2][3]
冥王星族[4][5]
天文学上の意義
意義 従来とは異なるタイプの
準衛星の発見
発見
発見日 1994年5月12日[1]
発見者 M. J. Irwin,
A. Zytkow[1]
軌道要素と性質
元期:TDB 2458200.5 (2018年3月23.0日)[1]
軌道長半径 (a) 39.5981953 au[1]
近日点距離 (q) 34.7487171 au[1]
遠日点距離 (Q) 44.4476736 au[1]
離心率 (e) 0.12246715[1]
公転周期 (P) 91014.6948 日[1]
(249.18 年[1])
平均軌道速度 0.00395541 度/日[1]
軌道傾斜角 (i) 003.805041 度[1]
近日点引数 (ω) 102.824503 度[1]
昇交点黄経 (Ω) 144.721316 度[1]
平均近点角 (M) 031.320783 度[1]
前回近日点通過 JED 2450282.02[1]
(1996年7月17日[1])
物理的性質
直径 127 km[4]
絶対等級 (H) 7.7[1]
色指数 (B-R) 1.61[4]
別名称
別名称
15810,
1994 JR1
1994 JR1[1]
Arawn
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アラウン(1994 JR1 Arawn)は、冥王星族に属する小惑星の1つである[4][5]。2012年にこの天体は冥王星準衛星であるという説が提唱されたが[2][3]、後の詳細な観測結果に基づきそれを否定する説もある[6]

軌道の性質[編集]

概要[編集]

1994 JR1は、海王星と2:3の軌道共鳴をしている冥王星族に属する天体である。太陽から平均59億2400万km (39.60au) 離れた位置を約249年かけて公転している。離心率0.12、軌道傾斜角3.8度と、冥王星よりも正常な軌道で公転している。1996年7月17日近日点を通過しており、次回近日点に戻ってくるのは23世紀頃である[1][4]。また、冥王星族としての発見は古いほうであり[7][8]、カイパーベルト天体としては13番目に発見された天体である[6]

冥王星の準衛星とする仮説[編集]

1994 JR1は、発見から18年経った2012年になって、冥王星の準衛星であるという仮説が提唱された[2][3]。すなわち見かけ上は、冥王星から見れば1994 JR1衛星に見える振る舞いをする。しかし他の惑星で発見されている準衛星が、その天体に接近し、天体の重力による1:1の軌道共鳴によって準衛星となっているのに対し、1994 JR1の場合は冥王星ではない他の天体、すなわち海王星の重力による軌道共鳴によって、冥王星と1:1の軌道共鳴をしている[3]。これは2013年現在、1994 JR1のみで見られている性質である。1994 JR1は、約10万年前からこの軌道にあり、あと約25万年間はこの軌道を維持していると考えられている[2][3]。 また、後の観測を元にした計算では、1994 JR1が冥王星の準衛星であるとする仮説で述べられている力学的な状態が確認された[9]

しかし、1994 JR1を冥王星の準衛星とみなすべきかについては、天文学者の間で広く合意が得られているわけではない。これは上述の通り、この天体は冥王星にではなく主に海王星の重力によってその軌道を支配されており、海王星からの影響と比較すると、冥王星から受ける影響は一時的であり小さいものだからである[6][9]。また、後のニュー・ホライズンズの観測により天体の位置と軌道が詳細に決定され、冥王星の準衛星であるという仮説には否定的な結果が得られている[10]

軌道進化[編集]

1994 JR1は普段、冥王星から数億km離れているが、カルロス・デ・ラ・フエンテマルコスの計算によれば、今から約1万3000年後には、冥王星から約1040万kmまで接近すると考えられている。これは冥王星とカロンの公転半径の約530倍である。

1994 JR1の軌道は非常に安定しているため、冥王星と同じくらい古い時代に形成された天体であると考えられている。それは、この軌道に、比較的最近生じた小惑星同士の衝突で生じた破片が入り込む可能性はかなり低いと考えられているためである。

物理的性質[編集]

1994 JR1の絶対等級は7.7[1]であり、推定される直径は約127kmである[4]。これは準衛星としては、海王星の準衛星である(309239) 2007 RW10の約247kmに次いで大きい[4][11]

観測[編集]

1994 JR1は、冥王星に最も近い位置にある天体の1つである。2017年4月10日には、1994 JR1は、冥王星から約4億km (2.7au) 離れた位置にある[12]。これは、2015年7月14日に冥王星にフライバイしたニュー・ホライズンズにより、同年11月2日に遠方より観測された。なお、数億km単位で離れているのは、地球の準衛星が数千万kmであることを考えると極めて遠いと感じるかもしれないが、冥王星は軌道の大きさが地球よりもはるかに大きいため、むしろ近いほうである[3]

2016年4月7日から8日にかけて、ニュー・ホライズンズによってこれまでで最も近い距離である1億1100万kmからの観測が行なわれた。この観測によって、1994 JR1の位置が1000 km以内の精度で決定された。さらにこの時のデータからこの天体の自転周期も観測され、5.47時間であると決定された[10]

発見[編集]

1994 JR1は、1994年5月12日マイケル・アーウィンアンナ・ジツコフによってパロマー天文台で発見された。小惑星番号2000年7月26日に付与された[1]

名称[編集]

2017年1月12日ウェールズの伝承マビノギオンの中でも特に有名なマビノギ四枝の第一枝、『ダヴェドの大公プイス』に登場する黄泉の国アンヌンの王にちなんで、アラウンと命名された[1]

関連項目[編集]

出典[編集]

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  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w 15810 Arawn (1994 JR1)”. JPL Small-Body Database Browser. JPL. 2018年7月24日閲覧。
  2. ^ a b c d de la Fuente Marcos, C.; de la Fuente Marcos, R. (2012). “Plutino (15810) 1994 JR1, an accidental quasi-satellite of Pluto”. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society: Letters: no-no. arXiv:1209.3116. Bibcode2012MNRAS.427L..85D. doi:10.1111/j.1745-3933.2012.01350.x. ISSN 17453925. 
  3. ^ a b c d e f Pluto's Fake Moon Sky & Telescope
  4. ^ a b c d e f g List of Known Trans-Neptunian Objects Johnston's Archive
  5. ^ a b Orbit Fit and Astrometric record for 15810 Southwest Research Institute Planetary Science Directorate
  6. ^ a b c Porter, Simon B. (2016). “The First High-phase Observations of a KBO: New Horizons Imaging of (15810) 1994 JR1 from the Kuiper Belt”. The Astrophysical Journal Letters 828 (2): L15. arXiv:1605.05376. Bibcode2016ApJ...828L..15P. doi:10.3847/2041-8205/828/2/L15. 
  7. ^ 244 objects with orbit type Plutino Minor Planet Center
  8. ^ MPEC 2008-O05 : DISTANT MINOR PLANETS (2008 AUG. 2.0 TT) Minor Planet Center
  9. ^ a b de la Fuente Marcos, Carlos; de la Fuente Marcos, Raúl (2016). “The analemma criterion: accidental quasi-satellites are indeed true quasi-satellites”. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 462 (3): 3344–3349. arXiv:1607.06686. Bibcode2016MNRAS.462.3344D. doi:10.1093/mnras/stw1833. http://mnras.oxfordjournals.org/content/early/2016/07/27/mnras.stw1833.abstract. 
  10. ^ a b New Horizons Collects First Science on a Post-Pluto Object”. New Horizons. NASA/JHUAPL/SwRI (2016年5月17日). 2016年8月26日閲覧。
  11. ^ (309239) 2007 RW10: a large temporary quasi-satellite of Neptune arXiv
  12. ^ 15810 (1994 JR1) distance (AU) from Pluto (plutino ~130km dia) kheider