金沢21世紀美術館

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金沢21世紀美術館
21st Century Museum of Contemporary Art, Kanazawa
金沢21世紀美術館(2013年8月)
金沢21世紀美術館
金沢21世紀美術館の位置(金沢市街内)
金沢21世紀美術館
金沢21世紀美術館の位置
金沢21世紀美術館の位置(金沢市内)
金沢21世紀美術館
金沢21世紀美術館 (金沢市)
施設情報
正式名称 金沢21世紀美術館
愛称 まるびぃ、21美
専門分野 現代美術
館長 長谷川祐子[1][2]
学芸員 黒澤浩美
事業主体 金沢市
管理運営 公益財団法人金沢芸術創造財団
開館 2004年平成16年)[1][3][4]10月9日[5]
所在地 920-8509
石川県金沢市広坂一丁目2番1号[3][6]
位置 北緯36度33分39.0秒 東経136度39分29.5秒 / 北緯36.560833度 東経136.658194度 / 36.560833; 136.658194座標: 北緯36度33分39.0秒 東経136度39分29.5秒 / 北緯36.560833度 東経136.658194度 / 36.560833; 136.658194
外部リンク https://www.kanazawa21.jp/
プロジェクト:GLAM
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金沢21世紀美術館
美術館内部
情報
用途 美術館
設計者 SANAA妹島和世西沢立衛[4][6][7]
構造設計者 佐々木睦朗構造計画研究所
設備設計者 イーエスアソシエイツ・森村設計
施工 竹中ハザマ・豊蔵・岡・本陣・日本海特定建設工事企業体
構造形式 鉄骨造鉄筋コンクリート造[8]
敷地面積 26,964.5 m²
延床面積 17,069 m²
高さ 14.9m
着工 2002年(平成14年)
竣工 2004年(平成16年)[4][8]
開館開所 2004年(平成16年)[1][3]10月9日[5]
座標 北緯36度33分39.0秒 東経136度39分29.5秒 / 北緯36.560833度 東経136.658194度 / 36.560833; 136.658194 (金沢21世紀美術館)
備考 2005年度グッドデザイン金賞
日本建築学会賞作品賞(2006年)
2006 International Illumination Design Award of Merit
第4回 環境・設備デザイン賞 2005
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金沢21世紀美術館(かなざわにじゅういっせいきびじゅつかん)は、石川県金沢市広坂にある現代美術を収蔵した金沢市立の美術館である。愛称まるびぃ[3][9](由来は「術館」)。また、略称として21美(にじゅういちび)も使用される[1][10][11]

金沢大学附属中学校小学校幼稚園があった場所に[7]2004年平成14年)10月9日に開館した[5]

建築[編集]

建物は地上2階、地下2階建ての構造[8]。「まちに開かれた公園のような美術館」をコンセプトとしており[10][12][13]芝生の敷地中央に円形直径112.5m)の建物となっている[8]。総ガラス張りで[14]、合計122枚のガラスが使用されている。また、4か所の出入口(本多通り・広坂・柿木畠市役所)が設けられているのが特徴で[15]、誰でもどこからでも気軽に入場できるようになっている[4][7]

建築設計競技で選ばれた設計者の妹島和世西沢立衛(SANAA)は、開館後に実際に展示を行う学芸員より、世界中の美術館の展示室をモデルに正方形長方形、円形などさまざまなタイプの理想的な展示室の提案を受けた。当初は美術ゾーンと交流ゾーンを独立した建物にする計画であったが、SANAAはこれらを一つの建物に集約することを提案した[7]。なお、美術館のロゴマークは、円形となった建物を上部から見たものが使用されている[8]

外壁同様各所にガラスが多用されているため、外側から館内の様子がわかるだけでなく館内からも外側の光景を見ることができる[8]。また、館内のエレベーターはデザインを損なわないようにガラス張りのデザインを採用した油圧方式となっている[16][17][18]

設計者のSANAAは、この建物などによりヴェネツィア・ビエンナーレ第9回国際建築展の最高賞である金獅子賞を受賞している。

収蔵作品[編集]

恒久展示作品、レアンドロ・エルリッヒの『スイミング・プール』
恒久展示作品、オラファー・エリアソンの『カラー・アクティヴィティ・ハウス』

作品収集の方針は、

  • 1900年以降に制作された、歴史的参照点となるような作品
  • 1980年代以降に制作された新しい価値観を提案するような作品
  • 金沢にゆかりのある作家による新たな創造性に富む作品

となっている[19]。(「金沢21世紀美術館収蔵作品図録」より)

所蔵作品には体験型作品や[20]、部屋の空間全体を活かしたインスタレーションが多く、無料入場エリアにはジェームズ・タレルの作品を恒久設置した部屋があるなど[16]、現代美術をいつでも気軽に体験できる環境がある。これらは実際にこの美術館のために作家に依頼して制作されたコミッション・ワークである[1]

そのほか1990年代以降の国際美術展を騒がせた作家の作品など、最新のさまざまな美術潮流を反映して収集されているため開館前から世界的に美術界では話題になっていた。美術館側も、2003年ヴェネツィア・ビエンナーレにて開館告知パーティーを開催するなど知名度の向上に務めていた[要出典]

1980年代より前の時代、例えばポップアート印象派の有名作家の優品はすでにほとんどが各国の美術館やコレクションに納まっており、有名作家の作品を買おうとすれば大コレクションの売却を待つか、もしくは今マーケットに出ている二級品を高値で買うか、いずれにしろ身の丈を大きく超えた大金を使うことになる。そのため市税と基金を源泉にかつそれに上限価格を設けた上で、学芸員がピーク目前の作家の作家を見極めて有識者委員会による審査などを経てその作品を購入している[19]。購入費は基金と積立金を合わせ毎年1億4000万円であり、全国の公立美術館の中では比較的豊富である[19]

なお、収集品は2021年7月時点で4011件で、その内訳は8割以上が寄付となっており、その7割近くはグラフィックデザイナーの粟津潔からの寄贈である[19]

恒久展示作品一覧[編集]

市民に対する活動[編集]

各地で地方公共団体の財政難や公立美術館の赤字が問題になる中、当初金沢でも市立の美術館を新しく作ることに対し厳しい目が注がれていた。企画立案は、こうした市民との討論から始まった。同時代の美術を世界から収集し、金沢の工芸やデザインに刺激を与え活性化し、新しいものを生み出す土壌を育成するという新美術館の方針や効果は徐々に理解を得ていった。また収蔵品は1990年代半ばから収集が始められ、その一部は金沢市民芸術村や市内の学校、商店街などでプレオープン事業として公開され、シンポジウムやワークショップも多数開催された。これらは、市民の間に新しい美術館やその収蔵品、活動に対し理解を得るためのものであった。開館後も児童・学生や団体客に対する鑑賞教育活動はひきつづき盛んに行われている。[要出典]

開館後の第一回展は収蔵品等を一堂に集めた展覧会のほか、無料ゾーンの市民ギャラリーで印象派以降現代に至る名品展が同時開催され、多くの観客を集めることに成功した。また市内の小中学生に対する無料招待は、後日家族連れで再来館するという効果を得た。公立美術館冬の時代と言われ、「ここがコケたら今後50年間は冬の時代が続く」と、各地の美術館から入館者の推移が注目されたが、開館から1年間で地方都市の公立美術館としては驚異的な157万人もの入館者を集めた[要出典]。当初、開業初年度の目標は30万人と定めていた[14]。入場者数は150万人前後を推移し[24]2018年度(平成30年度)で約258万人と対2013年度(平成25年度)で100万人以上の増加となったが[14]2020年度(令和2年度)は新型コロナウイルス感染症の影響に伴い入場者数は過去最低の約87万人となった[21]

2024年は前年12月29日から1月1日の完全休館日を挟み、1月2日から通常の開館時間を大幅短縮して10時から18時までの臨時開館(1月4日は基から臨時休館日、1月5日から通常営業)[25]する予定だったが、令和6年能登半島地震が1月1日に発生したことに伴い、館内メンテナンスが必要なことから、臨時開館を取りやめ、臨時完全休館日を延長することになった[26]

附属施設[編集]

  • シアター21[8] - 演劇、音楽、講演等に使える182人の客席を備えた小ホール。
  • 茶室 - 「松涛庵」、「山宇亭」と命名された二つの茶室[13]

歴代館長[編集]

交通アクセス[編集]

公共交通機関路線バス
  • 北鉄バス西日本JRバス「広坂・21世紀美術館」バス停すぐ。または「香林坊(アトリオ前)」バス停より徒歩約5分。
  • 城下まち金沢周遊バス「広坂・21世紀美術館(石浦神社前)」(右回り)・「広坂・21世紀美術館(石浦神社向い)」(左回り)バス停すぐ。
  • まちバス「金沢21世紀美術館・兼六園(真弓坂口)」バス停すぐ(土日祝日のみ運行)。
自動車
  • E8 北陸自動車道 金沢東IC金沢西ICより約20分。
  • E8 北陸自動車道 金沢森本ICより約25分。

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f “金沢21世紀美術館、ポストコロナ時代へ目指すアップデート 長谷川祐子館長の「未来支度」”. 福井新聞ONLINE. (2021年10月3日). オリジナルの2021年10月2日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20211002234822/https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/1409709 2022年12月31日閲覧。 
  2. ^ a b 「森の芸術祭 晴れの国・岡山」開催決定 2024年秋に県北12市町村で アートディレクターは金沢21世紀美術館館長・長谷川祐子さん”. KSBニュース (2022年10月31日). 2022年12月31日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g 金沢21世紀美術館×寺島しのぶ…現代アートで輝く金沢”. 新美の巨人たち (2020年11月14日). 2022年12月31日閲覧。
  4. ^ a b c d “【学芸万華鏡】「流れ」生み出す建築の美 世界文化賞受賞SANAAの講演詳報”. 産経ニュース. (2022年10月28日). https://www.sankei.com/article/20221028-PEGCC5AUURND7LPRSSYWU6ZPYQ/ 2022年12月31日閲覧。 
  5. ^ a b c 北國新聞で見る平成いしかわの30年』北國新聞社、2019年8月5日、218頁。 
  6. ^ a b 押さえておきたい、金沢の名作建築・美術館10選。”. Casa BRUTUS (2022年3月18日). 2022年12月31日閲覧。
  7. ^ a b c d JTB 2018, p. 49.
  8. ^ a b c d e f g JTB 2018, p. 45.
  9. ^ 能登印刷 2015, p. 88.
  10. ^ a b c “石川)コロナ後の展覧会どう変化 金沢21美館長に聞く”. 朝日新聞デジタル. (2020年5月26日). オリジナルの2020年5月26日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20200526091807/https://www.asahi.com/articles/ASN5T7440N5SPISC004.html 2022年12月31日閲覧。 
  11. ^ a b c “【石川】21美館長に長谷川さん 元学芸課長 4代目で初の女性”. 北陸中日新聞Web. (2021年1月28日). オリジナルの2021年1月28日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20210128104026/https://www.chunichi.co.jp/article/192670 2022年12月31日閲覧。 
  12. ^ a b 能登印刷 2015, p. 90.
  13. ^ a b JTB 2018, p. 44.
  14. ^ a b c d “プールの水底、歩いてる!? 金沢21世紀美術館(金沢市)”. 日経MJ. (2019年6月24日). https://www.nikkei.com/article/DGXKZO46415850R20C19A6H91A00/ 2020年8月10日閲覧。 
  15. ^ JTB 2018, p. 44-45.
  16. ^ a b c d e JTB 2018, p. 46.
  17. ^ テレスコフレームタイプ 展望用油圧エレベーターのシステム - Elevator Journal No.6 2015. 7 日本エレベーター協会
  18. ^ 金沢21世紀美術館|ギャラリー|Glass-paneled×Telescopic - 横浜エレベータ
  19. ^ a b c d 月刊北國アクタス2021年10月号10p-23p『アクタス調査隊 金沢21世紀美術館気になる収蔵品』(2021年9月20日発行、北國新聞社)2022年12月31日閲覧
  20. ^ a b レアンドロ・エルリッヒ「スイミング・プール」”. 美の巨人たち (2018年1月27日). 2020年8月10日閲覧。
  21. ^ a b “21美入館者数 101万人 昨年度 依然コロナ前の半分以下”. 北陸中日新聞Web. (2022年4月9日). https://www.chunichi.co.jp/article/450135 2022年12月31日閲覧。 
  22. ^ a b c JTB 2018, p. 47.
  23. ^ a b c JTB 2018, p. 48.
  24. ^ 能登印刷 2015, p. 89.
  25. ^ 年末年始の完全閉館および臨時開館、WEBチケットご購入のお願い
  26. ^ 2024年1月1日に発生した地震に伴う美術館の休館、当館主催展覧会・プログラムの休止等の対応について(1月2日現在)
  27. ^ a b 金沢21世紀美術館・秋元雄史館長が退任 市民有志主催で感謝・激励の集い”. 金沢経済新聞 (2017年2月21日). 2022年12月31日閲覧。

参考文献[編集]

  • 能登印刷出版部『伝統と革新の町・金沢を歩き解く! 金沢謎解き街歩き』実業之日本社、2015年3月19日。ISBN 978-4-408-00870-7 
  • 『ニッポンを解剖する!金沢 能登図鑑』JTBパブリッシング、2018年3月1日。ISBN 978-4-533-12465-5 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]