黒後家蜘蛛の会

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黒後家蜘蛛の会(くろごけぐものかい、the Black Widowers)は、架空の団体。および、その団体の会食を舞台にしたアイザック・アシモフによる短編推理小説シリーズの名称。

概要[ソースを編集]

ニューヨークミラノ・レストランで月1回、「黒後家蜘蛛の会」という名の例会が行われる。メンバーは化学者、数学者、弁護士、画家、作家、暗号専門家である。メンバーの1人がホストを務め、ホスト役のメンバーが呼んだ1名のゲストが参加する。そこでは常に、初老の男ヘンリーが給仕につく。メンバーは、食事をしながら四方山話をする。その過程において、多くの場合はゲストが語る話の中に「謎」が出てくる。メンバーはそれぞれの専門知識を援用してその謎を解くべく考えていくが、結論にはたどりつかない。袋小路に陥る段階の一歩手前で、その会話を聞いていた給仕のヘンリーが真相を言い当てる。

「黒後家蜘蛛の会」は、ニューヨークに実在したSF作家たちの集まりで、アシモフ自身も参加していた Trap Door Spiders をモデルにしている。

メンバー[ソースを編集]

声優は、1981年にNHKでラジオドラマとして放送された際の配役。

ジェフリー・アヴァロン (Geoffrey Avalon) - 作家のL・スプレイグ・ディ・キャンプがモデル
声優 - 納谷悟朗
特許弁護士。身長74インチ(約188センチメートル)の長身。声はバリトン。几帳面な性格で、例会では自らの飲酒量をグラスに一杯半のみと厳格に決めており、それ以上飲む事はまずない。最古参のメンバー。
トーマス・トランブル (Thomas Trumbull) - ジャーナリストのギルバート・キャント英語版がモデル
声優 - 中村正
暗号専門家。政府の情報機関に勤務しているが正確な立場はメンバーの誰も知らない。食前酒の時間に遅刻するのが常習で、その際に大げさな言い回しでヘンリーにスコッチソーダ割りを注文する。いつも顰め面をしている。最古参のメンバー。
イマニュエル・ルービン (Emmanuel Rubin) - 作家・編集者のレスター・デル・リーがモデル
声優 - 小林修
作家。マンハッタン在住。アイザック・アシモフから友人と呼ばれていると自称し、アシモフのエピソードを語ることもある。身長5フィート4インチ(約162.5センチメートル)でメンバーの中では小柄。分厚い眼鏡を掛けている。おしゃべりな人物。
ジェイムズ・ドレイク (James Drake) - 科学者・作家のジョン・D・クラーク英語版がモデル
声優 - 大塚周夫
有機化学者。三文小説好き。かなりの愛煙家であるが、よく自分の煙草にむせている。最古参のメンバー。
マリオ・ゴンザロ (Mario Gonzalo) - 作家・編集者のリン・カーターがモデル
声優 - 野沢那智
画家。メニュー・カードの裏にゲストの似顔絵を描く。描かれた似顔絵は、会食が行われる部屋の壁に飾られる。服装に関しては、メンバー随一の洒落者。
ロジャー・ホルステッド (Roger Halsted) - 作家・編集者のドナルド・R・ベンセン英語版がモデル
声優 - 金内吉男
中学校の数学教師。髪がすっかり禿げ上がっている。5行戯詩に凝っており、複数の話にまたがって、古代ギリシア詩作『イリアス』の各エピソードを5行戯詩に再構成していたこともある。その際には、韻脚を踏んだ言い回しが、他のメンバーにも伝染した。
ヘンリー (Henry)
声優 - 久米明
ミラノ・レストランの給仕。慇懃な人物で、どんな事にも動じない一流のウェイターである。
ラルフ・オッター (Ralph Ottur) - 作家のフレッチャー・プラットがモデル。
黒後家蜘蛛の会の創設時のメンバー。開催案内は送付されているものの、現在は会食に姿を見せることはない。
会の創設から2年間はラルフ・オッターの自宅が会場であった。「不毛なる者へ (To the Barest)」に登場するが、故人であったことが判明する。

推理小説[ソースを編集]

1972年2月号の『EQMM(エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン)』誌に、第一作『会心の笑い』が発表された。その後断続的に、晩年に至るまで発表された。

『黒後家蜘蛛の会』は、ほぼ純粋なパズル・ストーリーであり、殺人事件さえめったに起こらない。題材は、盗まれた物は何かとか、遺産を得るための暗号の解読とか、忘れてしまった地名の推測などの、より日常的な問題である。解決にはヘンリーの(つまりアシモフの)該博な知識が使われる。ヘンリーは代表的な安楽椅子探偵の一人である。

『黒後家蜘蛛の会』は全て短編で、計66作が書かれた。うち60作は5冊の短編集として出版され(邦訳あり)、残りの6作はアシモフの死後、"The Return of the Black Widowers"(2003年)にまとめられた。

短編集[ソースを編集]

黒後家蜘蛛の会1[ソースを編集]

en:Tales of the Black Widowers

以下は、日本語版の情報。

ISBN 4-488-16701-2 翻訳:池央耿、解説:池央耿

  1. まえがき
  2. 会心の笑い (The Acquisitive Chuckle)
  3. 贋物(Phony)のPh (Ph as in Phony)
  4. 実を言えば (Truth to Tell)
  5. 行け、小さき書物よ (Go, Little Book!)
  6. 日曜の朝早く (Early Sunday Morning)
  7. 明白な要素 (The Obvious Factor)
  8. 指し示す指 (The Pointing Finger)
  9. 何国代表? (Miss What?)
  10. ブロードウェーの子守歌 (The Lullaby of Broadway)
  11. ヤンキー・ドゥードゥル都へ行く (Yankee Doodle Went to Town)
  12. 不思議な省略 (The Curious Omission)
  13. 死角 (Out of Sight)

黒後家蜘蛛の会2[ソースを編集]

en:More Tales of the Black Widowers

以下は、日本語版の情報。

ISBN 4-488-16702-0 翻訳:池央耿、解説:池央耿

  1. まえがき
  2. 追われてもいないのに (When No Man Pursueth)
  3. 電光石火 (Quicker Than the Eye)
  4. 鉄の宝玉 (The Iron Gem)
  5. 三つの数字 (The Three Numbers)
  6. 殺しの噂 (Nothing Like Murder)
  7. 禁煙 (No Smoking)
  8. 時候の挨拶 (Season's Greetings!)
  9. 東は東 (The One and Only East)
  10. 地球が沈んで宵の明星が輝く (Earthset and Evening Star)
  11. 十三日金曜日 (Friday the Thirteenth)
  12. 省略なし (The Unabridged)
  13. 終局的犯罪 (The Ultimate Crime)

黒後家蜘蛛の会3[ソースを編集]

en:Casebook of the Black Widowers

以下は、日本語版の情報。

ISBN 4-488-16703-9 翻訳:池央耿、解説:池央耿

  1. まえがき
  2. ロレーヌの十字架 (The Cross of Lorraine)
  3. 家庭人 (The Family Man)
  4. スポーツ欄 (The Sports page)
  5. 史上第二位 (Second Best)
  6. 欠けているもの (The Missing Item)
  7. その翌日 (The Next Day)
  8. 見当違い (Irrelevance!)
  9. よくよく見れば (None So Blind)
  10. かえりみすれば (The Backward Look)
  11. 犯行時刻 (What Time Is Is?)
  12. ミドル・ネーム (Middle Name)
  13. 不毛なる者へ (To the Barest)

黒後家蜘蛛の会4[ソースを編集]

en:Banquets of the Black Widowers

以下は、日本語版の情報。

ISBN 4-488-16705-5 翻訳:池央耿、解説:鮎川哲也

  1. まえがき
  2. 六千四百京の組み合わせ (Sixty Million Trillion Combinations)
  3. バーにいた女 (The Woman in the Bar)
  4. 運転手 (The Driver)
  5. よきサマリア人 (The Good Samaritan)
  6. ミカドの時代 (The Year of the Action)
  7. 証明できますか? (Can You Prove It?)
  8. フェニキアの金杯 (The Phoenician Bauble)
  9. 四月の月曜日 (A Monday in April)
  10. 獣でなく人でなく (Neither Brute Nor Human)
  11. 赤毛 (The Redhead)
  12. 帰ってみれば (The Wrong House)
  13. 飛び入り (The Intrusion)

黒後家蜘蛛の会5[ソースを編集]

en:Puzzles of the Black Widowers

以下は、日本語版の情報。

ISBN 978-4-488-16708-0 翻訳:池央耿、解説:有栖川有栖

  1. まえがき
  2. 同音異義 (The Fourth Homonym)
  3. 目の付けどころ (Unique Is Where You Find It)
  4. 幸運のお守り (The Lucky Piece)
  5. 三重の悪魔 (Triple Devil)
  6. 水上の夕映え (Sunset On the Water)
  7. 待てど暮らせど (Where Is He?)
  8. ひったくり (The Old Purse)
  9. 静かな場所 (The Quiet Place)
  10. 四葉のクローバー (The Four-Leaf Clover)
  11. 封筒 (The Envelope)
  12. アリバイ (The Alibi)
  13. 秘伝 (The Recipe)

(The Return of the Black Widowers)[ソースを編集]

en:The Return of the Black Widowers

日本語訳の書籍は未出版。

短編が推理小説誌に個別に邦訳されている。下記の邦題は、その時のもの。特に記載がないものは、池央耿訳、EQMM誌掲載。

  1. Introduction (ハーラン・エリスン著)
  2. The Acquisitive Chuckle (Tales of the Black Widowersより再録)
  3. Early Sunday Morning (Tales of the Black Widowersより再録)
  4. The Obvious Factor (Tales of the Black Widowersより再録)
  5. The Iron Gem (More Tales of the Black Widowersより再録)
  6. To the Barest (Casebook of the Black Widowersより再録)
  7. Sixty Million Trillion Combinations (Banquets of the Black Widowersより再録)
  8. The Wrong House (Banquets of the Black Widowersより再録)
  9. The Redhead (Banquets of the Black Widowersより再録)
  10. Triple Devil (Puzzles of the Black Widowersより再録)
  11. アイザック・アシモフを読んだ男たち (The Men Who Read Isaac Asimov) ウイリアム・ブルテン森英俊訳『ジョン・ディクスン・カーを読んだ男』(論創社)収録 - 「黒後家ファン・クラブ」池央耿訳、『ミステリマガジン』1978年11月号掲載
  12. 黒後家蜘蛛とバットマン (Northwestward) 佐脇洋平訳 『バットマンの冒険 2』(社会思想社ISBN 978-4390113168 )に収録
  13. さはさりながら (Yes, But Why) 『ミステリマガジン1990年11月号(415号)』(早川書房)掲載
  14. スペースワープ (Lost In a Space Warp)
  15. 警官隊がやってきた (Police at the Door)
  16. 幽霊屋敷 (The Haunted Cabin)
  17. ゲストのゲスト (The Guest's Guest)
  18. The Woman in the Bar (Banquets of the Black Widowersより再録)
  19. 黒後家蜘蛛の会最後の物語 (The Last Story)(チャールズ・アーダイ著)田中一江訳 『ミステリマガジン2007年5月号(615号)』(早川書房)掲載
  20. Afterword

関連[ソースを編集]

  • ユニオン・クラブ奇談 - アイザック・アシモフによる推理パズル・ストーリー。全体的な構成やトリックは『黒後家蜘蛛の会』と似ているため、アイディアを使うという点で2作は競合関係にあり、『ユニオン・クラブ』執筆中は『黒後家』の執筆は進まなかった。