高頻度取引

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高頻度取引(こうひんどとりひき、: High frequency trading: HFT)とは、1秒に満たないミリ秒単位のような極めて短い時間の間に、コンピューターでの自動的な株のやり取り戦略を実施するシステムのこと。HFT、超高頻度取引、超高速取引、アルゴリズム取引、アルゴとも呼ばれる。

概要[編集]

どの程度自動化かつ高速化された取引を高頻度取引と呼ぶかについての統一的な定義はないが、 最適化された通信システムを用いて取引執行にかかるレイテンシ(遅延時間)を小さくし、 高い演算能力を持つコンピューター上でコンピューターアルゴリズムを実行することで、 市況を自動的に判断しながら秒単位、ミリ秒単位で自動的に自己のポジションを変更する取引戦略のことを指す場合が多い[1]

米国市場においては2000年代後半以降、取引高の約50%が高頻度取引によるものとなっており[2]、金融市場において大きな存在となっている。日本においても東京証券取引所がミリ秒単位での取引を可能にする取引執行システムarrowheadを導入したことで高頻度取引が盛んになっている。

また1ミリ秒でも取引執行を早くするために、証券取引所の株式売買システムサーバーと同じ建屋内に取引所側が特別に用意したスペースに高頻度取引サーバーを置くことのできるコロケーションと呼ばれるサービスも利用されている[1]

利点[編集]

高頻度取引により極めて高速の売買が大量に実行されることで市場流動性の供給がなされているという利点が指摘されている。さらに高頻度取引により裁定機会が迅速に消化されることから市場価格の適正化に果たす役割もあるという指摘もなされている[3]

問題[編集]

高頻度取引は人間の認知スピードを超えた速度での取引を可能にすることから様々な問題が指摘されている。

2010年5月に起きたダウ工業株30種平均株価指数が極めて短時間の間に乱高下を起こした事象(フラッシュ・クラッシュ)の一因として高頻度取引の存在が指摘されている[2]

またマイケル・ルイス2014年に執筆した『フラッシュ・ボーイズ 10億分の1秒の男たち』(原題:Flash Boys: A Wall Street Revolt)により大きく注目された点としてフロントランニングに近い状況が合法的に生まれているという問題もある。米国では私設取引システム(PTS)と呼ばれる証券取引所を介さない取引が盛んだが、ディーラーが各PTSに出した発注には通信や認知のために秒単位のわずかな時間のラグが発生する。高頻度取引を行う業者は、最も早く到着したオーダーからコンピューターアルゴリズムにより自動的に市況を判断して、そのわずかな時間のラグの間に対抗取引を行うことで利鞘を得ることが出来る。実際にこのような取引が行われているかどうかは定かではないが、高頻度取引を行うためには高い演算能力を持ちレイテンシを極力抑えたコンピューターシステム環境の構築が不可欠で、そのようなシステム環境を構築できるのは一部の市場参加者に限られるため不公平性が生じてしまうという問題がある[4]

高頻度取引を取り巻く環境[編集]

欧州では2014年4月に高頻度取引への規制法案が欧州議会により可決されている[5]。米国でも規制当局による調査が進められている[6]

日本では比較的、規制を求める声は大きくないが、米国のようにPTSの取引が活発ではないために高頻度取引によるフロントランニングの問題が表面化していないだけとの指摘もある。しかし、2013年以降の株価の乱高下の原因を高頻度取引に求める声[7]や、高頻度取引が一般化するにつれ、高頻度取引を行う業者間での競争が激化しそこまで高頻度取引による利益が得られなくなっているという声もある[8]。2016年10月、金融庁は業者の登録制を軸とした規制強化の検討を始めたことが報道された[9]

脚注・出典[編集]

  1. ^ a b アルゴリズムによる高速・高頻度の取引「High Frequency Trade(HFT)」|NTTデータ”. 2015年6月18日閲覧。
  2. ^ a b HFTの何が問題なのか?|2014年7月号|金融ITフォーカス|刊行物|NRI Financial Solutions”. 2015年6月18日閲覧。
  3. ^ HFTを巡る議論の動向 - 大和総研 (PDF)”. 大和総研 (2014年5月12日). 2015年6月18日閲覧。
  4. ^ 福田 徹「HFT(高頻度取引)をどう捉えるか ~米国での議論を再燃させた『フラッシュ・ボーイズ』を踏まえて~」、『月刊資本市場』第345巻、公益財団法人資本市場研究会、2014年
  5. ^ 欧州で初の高頻度取引規制-アルゴリズム検査も義務付けへ”. Bloomberg. 2015年6月18日閲覧。
  6. ^ 高頻度取引業者の規制に乗り出したSEC”. THE WALLSTREET JOURNAL. 2015年6月18日閲覧。
  7. ^ HFT(えいちえふてぃー)とは”. 知恵蔵mini(朝日新聞出版). 2015年6月18日閲覧。
  8. ^ 〔焦点〕超高速取引の厳しい「台所事情」、利幅少なく競争も激化”. Reuters. 2015年6月18日閲覧。
  9. ^ 河元伸吾、Gareth Allan (2016年10月19日). “金融庁:超高速取引の規制強化を検討、業者を登録制へ-欧米も参考に”. Bloomberg. https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-10-19/OF9ZTT6K50XW01 2016年10月19日閲覧。