高梨裕稔

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高梨 裕稔
東京ヤクルトスワローズ #40
2021年10月26日 横浜スタジアム
基本情報
国籍 日本の旗 日本
出身地 千葉県茂原市
生年月日 (1991-06-05) 1991年6月5日(32歳)
身長
体重
187 cm
90 kg
選手情報
投球・打席 右投右打
ポジション 投手
プロ入り 2013年 ドラフト4位
初出場 2015年5月3日
年俸 3500万円(2024年)[1]
経歴(括弧内はプロチーム在籍年度)

高梨 裕稔(たかなし ひろとし、1991年6月5日 - )は、千葉県茂原市出身[2][3]プロ野球選手投手)。右投右打。東京ヤクルトスワローズ所属。

経歴[編集]

プロ入り前[編集]

野球を始めたのは小学2年生の時。内野手だった中学生時代には、公式戦で安打を1本しか放てなかった影響で、下級生にレギュラーの座を奪われかけた時期があった[4]

千葉県立土気高等学校への進学直後には、友人からの誘いでサッカーへの挑戦を考えたものの、結局野球部へ入部。1年時の夏までは三塁手だったが、監督の勧めで、1年時の秋から投手へ転向した[4]。投手転向の直後は122km/hだったストレートの最高球速が、3年時には142km/hを計測[4]。甲子園出場はできなかったが、3年夏に自身の投球を見た高橋一三からの誘い[5]で、当時高橋が硬式野球部の監督を務めていた山梨学院大学へ進学した。3年夏の千葉大会は3回戦で木更津総合に敗れた。

大学時代にはヤクルトスワローズの投手だった伊藤彰コーチや高橋の指導によって、関甲新学生野球のリーグ戦で活躍。3年時の春季リーグ戦には、読売ジャイアンツ (ファーム)との練習試合への登板中に右肘の違和感を訴えたことから、大事を取って登板しなかった[4]。3年時の秋季リーグで実戦に復帰すると、延長15回にまで及んだ平成国際大学との初戦に、先発で168球を投げて完投勝利を達成。この勝利を皮切りに、5勝1敗という成績で、ベストナイン・最多勝利・最優秀防御率のタイトルを手にした[4]。リーグ戦では、通算26勝を記録する[2]とともに、ベストナインと最多勝利を2度ずつ獲得[2][3]。練習試合で主力打者を完璧に抑えたことを機に、NPB球団のスカウトから注目されるようになった[4]。 大学時代の1年後輩に、田中貴也が居る。

2013年のドラフト会議で、北海道日本ハムファイターズから4巡目で指名。契約金4000万円、年俸780万円(金額は推定)という条件で入団した。担当スカウトは川名慎一[4]で、背番号は39

日本ハム時代[編集]

2014年は、イースタン・リーグ公式戦17試合に登板し、1勝8敗1セーブ、防御率4.90で一軍公式戦への登板機会がなく、推定年俸760万円(20万円減)で契約更改する。

2015年は、5月3日の対千葉ロッテマリーンズ戦(QVCマリンフィールド)で先発投手として一軍にデビューした。しかし、3回1/3を投げて4失点を喫した末に敗戦投手になった。

2016年は、救援要員として初めての開幕一軍入りを果たすと、5月までの一軍公式戦23試合の救援登板で2勝2敗1ホールドを記録した。6月8日の対広島東洋カープ戦(札幌ドーム)からは、先発に再び転向。この試合で一軍での先発初勝利を挙げる[6]。先発への転向後は、8月13日の対東北楽天ゴールデンイーグルス戦(楽天Koboスタジアム宮城)で一軍初の完投勝利を完封で挙げる[7]など、14試合の登板ながら8勝無敗という好成績でレギュラーシーズンを終え、10勝2敗1ホールド、防御率2.38を記録。ポストシーズンでは、福岡ソフトバンクホークスとのクライマックスシリーズ第4戦(10月15日)[8]および広島との日本シリーズ第4戦(10月26日、いずれも札幌ドーム)[9]で先発を任された。新人王の受賞資格を有するパ・リーグの投手ではただ1人レギュラーシーズンで2桁勝利(10勝)を挙げたことなどが高く評価されたため、日本シリーズの終了後にはパ・リーグの新人王に選ばれた。NPBの新人王を入団1年目以外の有資格者が受賞した事例は、2010年榊原諒以来5年ぶり12人目。入団3年目以上の有資格者が受賞した事例は、2002年正田樹(いずれも受賞時点では日本ハムに所属)以来14年ぶり5人目であった。ただし、高校以外のアマチュア球界からNPBの球団へ新たに入った選手が有資格者として入団3年目で受賞した事例は史上初めてである[10]

日本ハム時代 (2018年3月14日 マツダスタジアムにて)

2017年は、先発登板した4月11日の対ソフトバンク戦で敗戦投手になり、前年途中から続いていたレギュラーシーズンにおける自身の連勝が10で止まった[11]ものの、5月2日の対ロッテ戦で自身2度目の一軍公式戦完封勝利を挙げた[12]セ・パ交流戦明けから調子を落とし、オールスター前に二軍落ちとなる。8月23日のオリックス・バファローズ戦で、1か月半ぶりに一軍復帰し、4勝目を挙げ、そこから4連勝でシーズンを終える。

2018年は、開幕から先発ローテーションに入り前半戦5勝5敗ながらローテーションを守っていたが、試合序盤に失点してしまう不安定な投球が目立ち、8月登板した2試合では立て続けに大量失点してしまったために二軍落ち。シーズンでは18試合に登板し、5勝7敗、防御率4.50で、被本塁打はリーグワーストの21本を記録。契約更改でも現状維持の3600万円でサインし、不安定なシーズン内容に巻き返しを誓っていた[13]。その僅か6日後の12月11日、秋吉亮谷内亮太との2対2での交換トレードにより、太田賢吾とともに東京ヤクルトスワローズへの移籍が発表された[14]

ヤクルト時代[編集]

2019年は先発投手として期待され、開幕3戦目の対阪神タイガース戦に先発登板し見事移籍初先発初勝利を飾った[15]。その後2連敗したものの、4月28日の対広島5回戦で本拠地初勝利を記録する[16]。その後は安定せず、コントロールなどにも苦しみ防御率は6点台にまで膨れあがった。

2020年は開幕からローテーションに入り、18試合に登板。防御率は4.12と前年より改善されたが、勝ち星は3勝にとどまった[17]

2021年は全て先発で12試合に登板し、防御率3.63で4勝1敗を記録。自身の登板試合のチーム成績は10勝1敗1分だった[18]。優勝マジック2で迎えた10月26日の対横浜DeNAベイスターズ戦は4回1失点と役割を果たした[19]。チームが勝利した後、マジック対象の阪神が敗れて優勝が決定した。オリックスとの日本シリーズはヤクルト3勝2敗で迎えた11月27日の第6戦(神戸)に先発登板し、4回2/3を1失点で降板したが[20]、チームは延長戦の末に勝利し、日本一が決定した[21]。オフに、現状維持となる推定年俸3700万円で契約を更改した[21]

2022年は移籍後最多となる7勝をマークした。6月23日の対中日ドラゴンズ戦で9回を投げ切り、自身5年振りかつヤクルト加入後初の完封勝利を挙げた[22]。しかし、夏場以降不調に陥り、オリックスとの再戦となった日本シリーズはベンチ外に終わった。因みに、レギュラーシーズンでは青柳晃洋とは4度投げ合う形となり、1勝3敗という内容だった。

選手としての特徴・人物[編集]

大学ではピッチングを基本から学ぶ。その結果、ストレートは140km/h台中盤に達し、縦に大きく割れるカーブとのコンビネーションでリーグ戦通算26勝を記録するまでに成長した[5]。その他キレのあるフォークボール[23][3]スライダーを投じる[2]。プロ入り後の最速は151km/h[24]

愛称は「なっしー[25]

詳細情報[編集]

年度別投手成績[編集]





















































W
H
I
P
2015 日本ハム 2 1 0 0 0 0 1 0 0 .000 31 7.1 5 1 3 0 1 7 0 1 5 3 3.68 1.09
2016 37 14 1 1 1 10 2 0 1 .833 439 109.2 79 6 36 0 4 86 0 0 30 29 2.38 1.05
2017 22 18 1 1 0 7 7 0 0 .500 504 117.1 110 13 40 1 3 100 6 1 51 48 3.68 1.28
2018 18 18 1 0 0 5 7 0 0 .417 459 110.0 110 21 28 1 3 78 2 0 61 55 4.50 1.25
2019 ヤクルト 21 14 0 0 0 5 7 0 0 .417 358 78.0 90 13 34 0 4 82 7 0 56 54 6.23 1.59
2020 18 17 0 0 0 3 6 0 0 .333 412 94.0 101 11 38 3 0 84 3 0 43 43 4.12 1.48
2021 12 12 0 0 0 4 1 0 0 .800 264 62.0 62 11 15 1 3 56 1 0 28 25 3.63 1.24
2022 20 19 1 1 0 7 9 0 0 .438 447 102.2 103 11 41 1 6 84 2 0 51 49 4.30 1.40
2023 15 5 0 0 0 0 3 0 1 .000 170 40.1 42 6 10 1 1 30 1 0 23 21 4.69 1.29
通算:9年 165 118 4 3 1 41 43 0 2 .488 3084 721.1 702 93 245 8 25 607 22 2 348 327 4.08 1.31
  • 2023年度シーズン終了時
  • 各年度の太字はリーグ最高

年度別守備成績[編集]



投手












2015 日本ハム 2 2 0 0 0 1.000
2016 37 4 9 1 1 .929
2017 22 3 15 0 0 1.000
2018 18 4 15 1 1 .950
2019 ヤクルト 21 3 12 0 1 1.000
2020 18 4 8 1 1 .923
2021 12 2 3 1 0 .833
2022 20 5 20 0 1 1.000
2023 15 0 5 0 1 1.000
通算 165 27 87 4 6 .966
  • 2023年度シーズン終了時

表彰[編集]

記録[編集]

投手記録
打撃記録

背番号[編集]

  • 39(2014年 - 2018年)
  • 14(2019年 - 2023年)
  • 40(2024年 - )

登場曲[編集]

  • Wherever you areONE OK ROCK(2016年 - 2018年、2020年〈打席時〉)
  • 「キミシダイ列車」ONE OK ROCK(2019年〈打席時〉)
  • 「Yes I am」ONE OK ROCK(2019年〈登板時〉- )
  • 「U R not alone」GReeeeN(2021年〈打席時〉)
  • 「三十路ボンバイエ」ケツメイシ(2021年〈打席時〉)

脚注[編集]

  1. ^ ヤクルト - 契約更改 - プロ野球”. 日刊スポーツ. 2023年12月7日閲覧。
  2. ^ a b c d 小関順二『プロ野球スカウティングレポート2014』廣済堂出版、2014年、242頁。ISBN 978-4-331-51810-6 
  3. ^ a b c 『2014プロ野球オール写真選手名鑑』日本スポーツ企画出版社、2014年、101頁頁。ISBN 978-4-905411-17-8 
  4. ^ a b c d e f g 高梨裕稔・右腕 ~幼少の夢叶う~北海道日本ハムファイターズに入団 「一軍で勝つ」を目標に新たな夢へ”. 山梨学院大学 (2013年12月6日). 2016年12月1日閲覧。
  5. ^ a b 『2014プロ野球カラー名鑑2014』ベースボール・マガジン社、2014年、135頁頁。ISBN 978-4-583-62082-4 
  6. ^ 日本ハム高梨「少しは親孝行できた」両親前で3勝目”. 日刊スポーツ (2016年6月8日). 2016年12月1日閲覧。
  7. ^ 日本ハム・高梨 プロ初完投初完封で7勝目!あるぞ新人王” (2016年8月13日). 2017年6月3日閲覧。
  8. ^ 栗山監督、CS初先発の高梨に「球は悪くなかった」”. 日刊スポーツ (2016年10月15日). 2016年12月1日閲覧。
  9. ^ 【日本シリーズ】日本ハム・高梨 5回1失点も5四球を反省”. 東京スポーツ (2016年10月26日). 2016年12月1日閲覧。
  10. ^ 日本ハム高梨裕稔がパ最優秀新人賞「まさか自分が」”. 日刊スポーツ (2016年11月28日). 2016年12月1日閲覧。
  11. ^ 日本ハム・高梨、連勝10で止まる・・・"転倒ボーク"はかかとが地面に引っかかる”. サンケイスポーツ (2017年4月11日). 2017年6月27日閲覧。
  12. ^ 日本ハム 11得点で大勝 高梨が完封勝利” (2017年5月2日). 2017年6月8日閲覧。
  13. ^ 日本ハム高梨は現状維持「一言で悔しいシーズン」 - 日刊スポーツ、2018年12月5日掲載、同日閲覧
  14. ^ 移籍の高梨「経験生かして」太田「レベルアップを」 - 日刊スポーツ、2018年12月11日掲載、同日閲覧
  15. ^ ヤクルト高梨、移籍後初勝利 6回3安打1失点「強気に攻められた」 - スポニチアネックス、2019年4月1日掲載
  16. ^ ヤクルト高梨本拠初勝利 大学時代から神宮勝利熱望 - 日刊スポーツ、2019年4月28日掲載
  17. ^ ヤクルト・高梨が400万円増「投手陣引っ張っていけたら」”. サンケイスポーツ (2020年12月8日). 2021年4月12日閲覧。
  18. ^ ヤクルト・高梨 “勝率9割男”Vへのバトンつなぐ!26日・DeNA戦先発”. デイリースポーツ (2021年10月26日). 2021年11月30日閲覧。
  19. ^ ヤクルト高梨裕稔4回1失点降板「腹をくくって」初回先制許すも立ち直った”. 日刊スポーツ (2021年10月26日). 2021年11月30日閲覧。
  20. ^ 【日本S】リード守れず、先発・高梨裕稔が5回途中1失点で降板”. スポーツ報知 (2021年11月27日). 2021年12月25日閲覧。
  21. ^ a b 勝ち運の男 ヤクルト高梨 現状維持3700万円”. スポニチ Sponichi Annex (2021年12月6日). 2021年12月25日閲覧。
  22. ^ 高梨投手が9奪三振を奪い、完封!村上選手の二発などで10対0で完勝!”. 東京ヤクルトスワローズ (2022年6月23日). 2022年6月23日閲覧。
  23. ^ 山学大エース高梨がプロ志望届 大学で進化、3球団注目”. 山梨日日新聞WEB版. 2013年10月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年6月19日閲覧。
  24. ^ https://web.archive.org/web/20170911080346/http://www.hochi.co.jp/baseball/npb/20170908-OHT1T50228.html
  25. ^ 札幌テレビ放送, STV. “ファイターズ情報〜ニックネームは?選手の素顔をインタビュー | 特集 | どさんこワイド179 | テレビ | STV札幌テレビ”. STV札幌テレビ 放送(北海道). 2021年9月28日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]