高密度焦点式超音波治療法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

高密度焦点式超音波療法(こうみつどしょうてんしきちょうおんぱりょうほう、High Intensity Focused Ultrasound)とは、超音波を利用し、深部にある組織に高温を発生させるとして治療効果を試みる治療法である[1]HIFU(ハイフ)と呼ばれる。超音波エネルギーを集束して生体局所の組織を焼灼しようとする試みは1950年代から研究されていた[12]。超音波での加熱を期待するハイパーサミアを目的とした物理療法の一種である。

仕組み[編集]

パラボラ形状の発振子から超音波を発生することで、そのエネルギーを一点に集め、焦点領域にエネルギーを収束させて[2]焦点領域を加熱し得るとし温熱マッサージと同等の組織の軟化あるいは[3]内部やけどによる欠損を主張する治療法である。超音波を用いるので放射能治療と違い被曝はなく、外科手術と違い侵襲が少ないというメリットが[1]ある。超音波は物理振動波なので水、海水、アクリル樹脂など非圧縮性の物質でないと発振子のエネルギーは伝達されない。無音室をゴム板や穴開きボードで囲むのは物理振動波である音波そのものを吸収するからである。空気やゴムや人体組織などの圧縮性体あるいは弾性体では超音波エネルギーは発振子との接触表層で速やかに分散消費される。医療診断に用いる超音波トモグラフィー(SAT)は誰でも知っている非破壊検査の手段なのでそれからの類推で局所に音波を送れば効果があると容易に考えることができるためこの種の機器が後を絶たない。卑近なたとえでは電波レーダーは飛行物体までの距離や方向 また、近接レーダーでは姿まで捉えることができるが、では電波を送って空中の飛翔体などを焼損あるいは破壊するといった装置はない。ただしごく近接あるいは接触物では高周波ウエルダーと同様にプラスチックの溶接に用いられる超音波ウエルダーが開発されており同様の技術は後述の皮膚のたるみを改善するためのHIFU装置では、その分散エネルギーにより温熱マッサージと同等の効果を得て実際の治療に使用されて効果も実証されている。[4][5][6]。一般的な懸念としては超音波は物理振動波であり同じ波長域の超音波はホモジナイザーとして古くから細胞破砕・乳化に使用されている[7]。がん組織への強力な微細振動は細胞への物理的励起を与え血流及び体液によりがん細胞の拡散が行われる可能性を否定出来ていないという懸念がある。

適応[編集]

現在 日本国内で薬事承認されている適応は、前立腺肥大症である。

美容[編集]

顔のたるみに対し、切除手術ほどの劇的な効果はないが、中等度までのたるみに効果があり、発振子と皮膚との間に空気層などの弾性体を入れない、過度に出力をあげないなどの手技による使用法が順守されれば発振子の加熱による火傷、瘢痕のリスクは小さくなる[8]。メスなどの侵襲性治療を使わずに即効性の効果が期待でき、ダウンタイムがほとんどない[9]ことから、美容目的での利用に期待がされている。美容医療用HIFU装置でウルセラが、2009年9月にFDA(食品医薬品局 )の承認を受けている[10]。同機はオーストラリア(AFDA)の承認も受けている[8]

切除不能膵癌に対するHIFU治療[11][編集]

祖父尼 糸川による切除不能膵癌に対する HIFU 治療の安全性と有効性を 検証するため,北京源徳生物医学工程有限公司社の FEP―BY02 HIFU System を用いて 臨床試験を 2008 年 12 月より行った.本装置は37cm の球面体に 1.1MHz の 251 個の超音波発信素子が並び,それらを上下垂直に2つ装備して 1 点に集束した固定焦点となっている。またパルス照射を行いエネルギーの集中と発振子保護をコンピューター制御するものである。1 回の照射で焼灼される範囲は 3mm×3mm×10mm と設定されている。結果的に目的箇所にカテーテルを留置した場合にのみ若干の改善がみられたとし報告者の検討では膵癌に対する HIFU 治療は問題点もあり、さらなる検討や症例の蓄積が必要ではあるが切除不能膵癌への低侵襲治療のひとつとなりうる可能性が示唆されたとしている。

HIFUによる前立腺治療機[編集]

インド人発明家サンギビらが特許を持つ約4cm径の縦移動型ポリスチレン・フイルム音響レンズ超音波発振子を用いたHIFU装置SONOBLADE 200が開発された。度々経営者・社名・製品名・住所を変え現在ではノース・カロライナ州シャロットで中国人資本・中国人経営者で事業再出発したが たまたま社名がポルノ・サイトと同一だったり既に商標登録されている他社に重複したため直後に二度も社名・製品名と経営メンバー変更を行っている[12]。米国FDAは本機に薬事承認を行っていない。また本機を前立腺肥大治療に用いることは非推奨としているため保険適用されない。また英国NICEは本機を前立腺治療には不適応としている。当アソシエイツが長期にわたり無認可で市場で宣伝・営業活動を行い施術が行われていることを受けFDAは医療機器として承認を受ける必要があり、それには法に定められた治験計画を提出し臨床データーを得ることが必要である(501K手順)という内容の通知(警告)を行ったが、逆にFDAから通知が有ったことで、一部のインド系医師などがFDAから薬事承認通知が来たとの記事を一般メディアに掲載している。現在FDAは治験計画の受理を行っていない。

前立腺癌治療に対するHIFU[編集]

小路、内田らによるSONABLATEをもちいた“前立腺がん標的局所療法 (focal therapy)”の治療成績 として、血清PSA値が20ng/mL以下で、MRI-TRUS融合画像ガイド下生検[13]により癌局在診断が行われた症例のうち、年齢中央値70歳、血清PSA中央値7.26ng/mL(前立腺癌発見率15~18%)90例を対象として治療を実施し、治療後1カ月目に血清PSA値は中央値1.59ng/mL(前立腺癌発見率8~10%)と軽度低下が認められた。合併症として、尿路     感染症が4.4%、尿道狭窄症が3.3%の症例に認められたが、尿失禁は認められず、このような限局性前立腺癌に対するHIFUの短期成績により[14]、同治療を特定臨床研究として継続実施している。PSA値について加速度、F/T比などのより具体的な指標となる動的臨床データーが期待される。

脚注[編集]

  1. ^ a b 帝京大学泌尿器科
  2. ^ Fry WJ, Barnard JW, Fry EJ, et al (1955). “Ultrasonic lesions in the mammalian central nervous system”. Science 122: 517-8. 
  3. ^ Madersbacher S, Pedevilla M, Vingers L, et al (1995). “Effect of high-intensity focused ultrasound on human prostate cancer in vivo”. Cancer Res 55: 3346-3351. 
  4. ^ ハイパーサーミアの開発
  5. ^ Gelet, A.; Chapelon, J. Y.; Margonari, J.; Theillere, Y.; Gorry, F.; Cathignol, D.; Blanc, E., (1993). “Prostatic tissue destruction by high-intensity focused ultrasound: experimentation on canine prostate.”. J Endourol 7 (3): 249-53. 
  6. ^ Foster, R. S.; Bihrle, R.; Sanghvi, N.; Fry, F.; Kopecky, K.; Regan, J.; Eble, J.; Hennige, C.; Hennige, L. V.; Donohue, J. P. (1993). “Production of prostatic lesions in canines using transrectally administered high-intensity focused ultrasound.”. Eur Urol 23 (2): 330-6. 
  7. ^ 超音波細胞破砕法”. 自律神経雑誌 1971 年 18 巻 5 号 p. 99-105. 1971年閲覧。accessdateの記入に不備があります。
  8. ^ a b Mazzoni, Daniel; Lin, Matthew J; Dubin, Danielle P; et al (2019). “Review of non‐invasive body contouring devices for fat reduction, skin tightening and muscle definition”. Australasian Journal of Dermatology. doi:10.1111/ajd.13090. PMID 31168833. 
  9. ^ 美容鍼とハイフどっちがおすすめ?違いをプロが解説” (日本語). 神戸三宮美容鍼灸salon〜Make a Life〜. 2021年5月9日閲覧。
  10. ^ BioSpace
  11. ^ 切除不能膵癌に対する強力集束超音波治療”. 日本膵臓学会雑誌. 2015 05 15閲覧。
  12. ^ 2022 Sonablate team”. https://www.sonablate.com/.+2022 July閲覧。
  13. ^ 核磁気共鳴画像-経直腸的超音波画像融合画像ガイド下前立腺生検”. 東海大学医学部付属病院泌尿器科. 2021年2月1日閲覧。
  14. ^ Shoji, Sunao; Hiraiwa, Shinichiro; Uemura, Kohei; Nitta, Masahiro; Hasegawa, Masanori; Kawamura, Yoshiaki; Hashida, Kazunobu; Hasebe, Terumitsu et al. (2020-06-17). “Focal therapy with high-intensity focused ultrasound for the localized prostate cancer for Asian based on the localization with MRI-TRUS fusion image-guided transperineal biopsy and 12-cores transperineal systematic biopsy: prospective analysis of oncological and functional outcomes”. International Journal of Clinical Oncology 25 (10): 1844-1853. doi:10.1007/s10147-020-01723-9. ISSN 1341-9625. https://doi.org/10.1007/s10147-020-01723-9. 

文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]