高密度焦点式超音波治療法

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高密度焦点式超音波療法(こうみつどしょうてんしきちょうおんぱりょうほう、High Intensity Focused Ultrasound)とは、超音波を利用し、深部にある組織を破壊することにより治療効果を得ることを試みようとする治療法である[1]。インド人発明家Narendra SanghviがSonaCare社HIFU装置について12種のパテントを保持しており同社の最高技術責任者である。[2]HIFU(ハイフ)とも呼ばれる。ハイパーサミアを目的とした物理療法の一種であり、日本国内では薬事承認を得たものとして前立腺肥大症、症候性子宮筋腫の治療に使用されている。これらの適用に対して前立腺肥大症(BPH)においては米国FDAは申請を受け付けていない(治療に用いるのは非推奨)。また前立腺癌治療についてはステージII(501K:臨床による安全性の確保試験)の要求をしており未承認であるが一部のインド系医師や業界専門誌などに承認を受けたような書き方がみられる[3]。また企業は何度も売却され、最近ノースカロライナ州のシャーロットで新たな中国系資本及び中国人CEOにより同じブランドを立ち上げている。[4]

仕組み[編集]

パラボラの形状をしたトランスデューサーと呼ばれる機器から超音波を照射して、音波エネルギーを一点に集め、その焦点領域を超音波の物理振動で高速に揺さぶって熱を発生させることに拠るハイパーサーミア(部分やけど)を目的と称する治療法である[5]。超音波を用いるので被曝はない、外科的手術と異なるメリットを主張している[1]

ただし超音波診断で画像を取ることが出来るのは超音波を送って組織からの反射をとらえて映像化しているからで、逆に超音波を組織に送ってもその場所に超音波の焦点を合わせる事ができるかは甚だ疑問である。組織に反射・拡散されその物理振動エネルギーはほとんど組織内で拡散されてしまう。特に使用する5MHzの超音波では数ミリ以上の深度到達は難しくまた実機での構造確認から出力回路がDOS/V機のExpressPCI基板上にありSATA規格から焼灼できるような電流が得られているものではないのではないかという疑問は消えず更に温度上昇の実証データー報告がみあたらない。祖父尼らの知見でも局所にカテーテル留置を行って照射した場合に若干の改善が見られたと報告している。ある医師によると実際に動物赤身肉ブロックで実験したところ照射部位に何の変化も見られなかったという。メーカーや輸入代理店は非常に特殊な技術などを駆使して克服していると主張している[6]。一般的に超音波は物理振動波であり細胞破砕に使用されている[7]。がん組織への微細振動は細胞への物理的励起を与え血流及び体液によりがん細胞の拡散が行われないという懸念は拭いきれていない。米国FDAは501K臨床研究を要求している[8]

適応[編集]

現在日本で薬事承認されている適応は、前立腺肥大症である。前述の通り米国FDAはこの適応について未承認・非推奨である[9]

癌治療に対するHIFU[編集]

国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」において、前立腺癌は2017年の男性癌罹患者数(1年間に診断される癌患者数)で第1位になったことが報告された[10]。そのうち約90%が転移のない、いわゆる“限局性前立腺癌”とされる。限局性前立腺癌の標準治療は、前立腺全体を治療範囲とする外科的手術と放射線治療である。しかし、これらの方法では治療後の尿失禁や性機能障害が生じやすいとされる。

前立腺癌に対するHIFUは、組織を局所的に治療する“がん標的局所療法 (focal therapy)”として尿失禁や性機能障害に影響が少ない治療法として期待されている[11][12]

日本国内におけるHIFUをもちいた“前立腺がん標的局所療法 (focal therapy)”の治療成績

小路直, 内田豊昭らによるソナケア社装置による治験によれば前立腺癌への治療効果が期待されている[13]。HIFUをもちいた“前立腺がん標的局所療法 (focal therapy)”は、血清PSA値が20ng/mL以下で、MRI-TRUS融合画像ガイド下生検[14]により癌局在診断が行われた症例のうち、両葉にGS7以上のsignificant cancerを有する症例を除いた症例を対象に実施された。最低12ヶ月間以上経過観察した90例の臨床成績では、年齢中央値70歳、血清PSA中央値7.26ng/mL、前立腺体積中央値24cc、リスク群別患者数 低リスク群31例、中リスク群44例、高リスク群15例に対して治療を実施し、手術時間は40分間で、全例の尿道カテーテルは術後24時間以内に抜去された。治療後1カ月目に血清PSA値は中央値1.59ng/mLまで低下し、術後6-12ヶ月に実施された生検陰性率は91%、経過観察期間中央値21カ月間(12-42カ月間)で生化学的非再発生存率は92%であった。IPSS、IPSS QOL、OABSS、EPIC urinary domain、最大尿流率、IIEF-5は、治療3カ月以降は治療前と同等であった。合併症として、尿路感染症が4.4%、尿道狭窄症が3.3%の症例に認められたが、尿失禁は認められず、治療前に勃起が認められた症例における、勃起温存率86%、射精温存率70%であった。このような限局性前立腺癌に対するHIFUをもちいたFocal therapyの短期成績は、長期成績を期待させるものと考えられた[15]。現在、同治療は特定臨床研究として実施されており、症例数の蓄積が期待されている。ただし一般的に超音波は物理的振動波であり同様の周波数は細胞破砕などに使用される[7]。同装置によりがん組織への微細な物理振動は細胞への励起を与え血流及び体液により拡散が行われかねないという懸念は拭いきれていない。今後の実証研究が望まれるとの指摘がある[16]

日本国内におけるHIFUをもちいた“膵臓がん標的局所療法 (focal therapy)”

祖父尼 淳、朝井 靖二らによる北京源徳生物医学工程有限公司(http://www.yuande.com:現在URL閉鎖)の製造販売する(輸入代理店 ソニア・セラピューティクス株式会)の「FEP-BY」により試験的治療が行われてい。切除不能膵癌30例に対する安全性評価では,偶発症は導入初期にみられた膵仮性嚢胞2例,遅発性膵炎1例の10%の頻度で重篤なものは認めなかった.切除不能膵癌に対しFEP-BY02 HIFU Therapeutic Systemを用い安全にHIFU治療をおこなうことが可能であった.現在も切除不能膵癌に対してHIFU治療をおこない,治療法の確立と治療効果に関しての検討をおこなっている.疼痛緩和効果,抗腫瘍効果,予後に関してプロミシングな結果が得られており,予後不良な膵癌に対する集学的治療となりうる可能性を示唆しており.今後,多施設共同による臨床試験の検討が望まれると報告してい

美容[編集]

音波は物理振動なので皮膚表面の浅い組織を超音波で高速振動させれば内部脂肪が分散され局所的なマッサージと同じ効果が得られる。超音波振動の問題点として間に空気層が入ると超音波が伝わらないでトランスデューサーが過熱し表皮が火傷する。用法を誤ると火傷を起こす危険がある。施術としては顔のたるみに対し、切除手術ほどの劇的な効果はないが、中等度までのたるみに効果があり、使用法が順守されれば火傷、瘢痕のリスクは最小限になる[17]。メスを使わずに即効性の効果が期待でき、ダウンタイムがほとんどない[18]ことから、美容目的での利用に期待がされている。美容医療用HIFUで特に知名度が高い機種はウルセラで、2009年9月にFDA(食品医薬品局 )の承認を受けている[19]。その他の国ではオーストラリア(AFDA)の承認を受けている[17]

1950年代に超音波エネルギーを集束して生体局所の組織を焼灼する方法は脳腫瘍の超音波温熱治療として臨床応用されていた{要出典}

脚注[編集]

  1. ^ a b 帝京大学泌尿器科
  2. ^ SonaCre 社主席科学役員”. Mar, 3, 2015閲覧。
  3. ^ FDA.gov, USA (2015). “Access data, fda.gov”. DE NOVO CLASSIFICATION REQUEST FOR SONABLATE 450. 
  4. ^ sonacaremedical.com”. Narendra Sanghvi. 2020 Oct 05閲覧。
  5. ^ Madersbacher S, Pedevilla M, Vingers L, et al (1995). “Effect of high-intensity focused ultrasound on human prostate cancer in vivo”. Cancer Res 55: 3346-3351. 
  6. ^ ハイパーサーミアの開発
  7. ^ a b 加藤幹夫「超音波細胞破砕法:第一編 超音波破砕法の基礎的研究」『自律神経雑誌』第18巻第5号、全日本鍼灸学会、1971年、 99-105頁、 doi:10.3777/jjsam1948.18.5_99ISSN 0387-0952NAID 130004049269
    加藤幹夫「超音波細胞破砕法:第二編 超音波酸化とその抑制法に関する実験的研究」『自律神経雑誌』第19巻第1号、全日本鍼灸学会、1972年、 19-23頁、 doi:10.3777/jjsam1948.19.19ISSN 0387-0952NAID 130003846480
  8. ^ 研究
  9. ^ https://www.accessdata.fda.gov/cdrh_docs/reviews/den150011.pdf. FDA USA. (Mar24、2015) 
  10. ^ 最新がん統計”. 国立がんセンター. 2021年2月1日閲覧。
  11. ^ 前立腺癌診療ガイドライン 2016年版”. 日本泌尿器科学会. 2021年2月1日閲覧。
  12. ^ 限局性前立腺癌に対する前立腺部分治療”. 東海大学医学部付属病院泌尿器科. 2021年2月1日閲覧。
  13. ^ 小路直, 内田豊昭, 原野裕司, 村本将俊, 小俣二也, 佐藤威文, 兵藤透, 長田恵弘, 寺地敏郎「OP-264 限局性前立腺癌に対する高密度焦点式超音波療法(HIFU) : 6年間の臨床成績(一般演題口演,第94回日本泌尿器科学会総会)」『日本泌尿器科学会雑誌』第97巻第2号、日本泌尿器科学会、2006年、 346頁、 doi:10.5980/jpnjurol.97.346_4ISSN 0021-5287NAID 110005855201
  14. ^ 核磁気共鳴画像-経直腸的超音波画像融合画像ガイド下前立腺生検”. 東海大学医学部付属病院泌尿器科. 2021年2月1日閲覧。
  15. ^ Shoji, Sunao; Hiraiwa, Shinichiro; Uemura, Kohei; Nitta, Masahiro; Hasegawa, Masanori; Kawamura, Yoshiaki; Hashida, Kazunobu; Hasebe, Terumitsu et al. (2020-06-17). “Focal therapy with high-intensity focused ultrasound for the localized prostate cancer for Asian based on the localization with MRI-TRUS fusion image-guided transperineal biopsy and 12-cores transperineal systematic biopsy: prospective analysis of oncological and functional outcomes”. International Journal of Clinical Oncology 25 (10): 1844-1853. doi:10.1007/s10147-020-01723-9. ISSN 1341-9625. https://doi.org/10.1007/s10147-020-01723-9. 
  16. ^ Product Classification FDA
  17. ^ a b Mazzoni, Daniel; Lin, Matthew J; Dubin, Danielle P; et al (2019). “Review of non‐invasive body contouring devices for fat reduction, skin tightening and muscle definition”. Australasian Journal of Dermatology. doi:10.1111/ajd.13090. PMID 31168833. 
  18. ^ 美容鍼とハイフどっちがおすすめ?違いをプロが解説” (日本語). 神戸三宮美容鍼灸salon〜Make a Life〜. 2021年5月9日閲覧。
  19. ^ BioSpace

文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]