騙し絵の牙

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騙し絵の牙
著者 塩田武士
発行日 2017年8月31日
発行元 KADOKAWA
ジャンル ミステリ
日本の旗 日本
言語 日本語
形態 四六変形判
ページ数 384
公式サイト kadokawa.co.jp
コード ISBN 978-4-04-068904-3
ウィキポータル 文学
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騙し絵の牙』(だましえのきば)は、塩田武士によるミステリ小説[1]。文芸誌『ダ・ヴィンチ』(KADOKAWA)にて2016年5月号から11月号まで連載され[2][3]、2017年8月31日にKADOKAWAから単行本として刊行された[1]。2019年に角川文庫化。

廃刊の危機に遭いながらも、抜群のコミュニケーション能力を発揮してさまざまな困難に立ち向かっていく編集長の姿を描く[1]。本作品は塩田が俳優大泉洋を主人公として想定し、出版界と大泉を4年間徹底取材した上で書き上げた[4]。そのため、表紙には当て書き[5]された大泉自身が起用されている。塩田によれば元々『大泉エッセイ』も担当する大泉と親しい関係にある編集者の村井有紀子が持ち込んだ企画[6]で、編集者やマネージャーの話を聞きながらどんな大泉洋を観たいのかについて話し合った上で出来上がった作品であるといい、当初より映像化も視野には入っていたという[7]。なお、塩田はモデルとなった大泉とも何度か会って話しており、大泉から「多くの人たちに受け入れられるような形を意識してほしい」というアドバイスを受けた上で、よりエンターテインメント性の強い作品に仕上がったと語っている[7]。2018年の本屋大賞にノミネートされた。

大泉洋の主演で映画化され、2020年6月19日から公開される予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により延期され[8][9][10]、2021年3月26日に公開された[11]

あらすじ[編集]

出版業界の不況の煽りを受ける大手出版社「薫風社」は、社長の急逝によって次期社長争いが勃発し、専務の東松による大改革が始まり、雑誌が次々と廃刊の危機に瀕することになった。

カルチャー誌「トリニティ」も例に洩れず、編集長の速水は雑誌存続のために奔走することとなる。速水は黒字化のために大物作家の連載や映像化、タイアップなど新企画を探るが、どれも成果が振るわず、薫風社を退社する。

退社から半年後、速水は起業家となり、自ら「株式会社トリニティ」を設立した。

登場人物[編集]

速水輝也(はやみ)
大手出版社「薫風社」が出版するカルチャー誌「トリニティ」の編集長。一見頼りなさそうな風貌であるが、笑顔の裏には誰も知らない“牙”を隠している。
高野 恵(たかの)
速水と同じ「薫風社」所属で、文芸雑誌「小説薫風」の新人編集者。のちに不本意ながら速水の部下となる。
東松(とうまつ)
大手出版社「薫風社」専務[12]。次期社長の最有力候補とされており、不要な雑誌を廃刊にしていく大改革を断行する。

書誌情報[編集]

漫画[編集]

『ダ・ヴィンチ』(KADOKAWA)の2017年10月号に、坂ノ睦による小説の1シーンを描いた漫画が掲載されたほか、雑誌掲載用とは別に小説の1シーンの描き下ろし2ページ漫画が公開された[13]

その後、鳩井文による映画版のコミカライズが、『COMIC BRIDGE』(KADOKAWA)にて2021年3月5日[14]から12月17日[15]まで連載された。

  • 鳩井文(漫画)、楠野一郎、吉田大八(映画脚本) 『劇場版 騙し絵の牙』 KADOKAWA〈BRIDGE COMICS〉、全2巻

映画[編集]

騙し絵の牙
監督 吉田大八
脚本 楠野一郎
吉田大八
原作 塩田武士『騙し絵の牙』
製作 新垣弘隆(企画・プロデュース)
池田史嗣
秋田周平
二木大介
製作総指揮 吉田繁暁
栗橋三木也
出演者 大泉洋
松岡茉優
宮沢氷魚
池田エライザ
斎藤工
中村倫也
坪倉由幸
和田聰宏
石橋けい
森優作
後藤剛範
中野英樹
赤間麻里子
山本學
佐野史郎
リリー・フランキー
塚本晋也
國村隼
木村佳乃
小林聡美
佐藤浩市
音楽 LITE
撮影 町田博
編集 小池義幸
制作会社 松竹撮影所
製作会社 「騙し絵の牙」製作委員会
配給 松竹
公開 日本の旗 2021年3月26日
中華民国の旗 2021年11月5日[16]
上映時間 113分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
興行収入 6億6700万円[17]
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監督は吉田大八、主演は大泉洋[18]。当初は2020年6月19日に公開予定だったが、同年4月15日に新型コロナウィルス感染拡大の影響を受けて延期されることが発表され[9]、同年7月22日には2020年内の公開を見送り、2021年での公開が発表され[10]、12月4日に2021年3月26日の公開となることが発表された[11]

製作[編集]

映画脚本として脚色するにあたって原作の構造を一旦解体し、再構築する形が取られている。その結果、大泉演じる速水であれば大泉らしさが排除されており、大泉は「(原作で当て書きされていたのに)私が出た映画の中で一番、私っぽくなかった」と述べている[19][20]

公開日には同日に公式戦の開幕を迎える阪神タイガースとコラボレーションしたポスターが制作された[21]

キャスト[編集]

スタッフ[編集]

受賞[編集]

  • 第45回 日本アカデミー賞[23]
    • 優秀主演女優賞(松岡茉優)
    • 新人俳優賞(宮沢氷魚)

脚注[編集]

  1. ^ a b c 騙し絵の牙 塩田武士”. KADOKAWA. 2019年11月12日閲覧。
  2. ^ 【ダ・ヴィンチ2016年5月号】目次をチェック!”. ダ・ヴィンチWeb. KADOKAWA (2016年4月6日). 2022年12月7日閲覧。
  3. ^ 【ダ・ヴィンチ2016年11月号】目次をチェック!”. ダ・ヴィンチWeb. KADOKAWA (2016年10月6日). 2022年12月7日閲覧。
  4. ^ “大泉洋“主演”小説「騙し絵の牙」、本人主演で映画化始動!”. 映画.com. (2018年4月3日). https://eiga.com/news/20180403/2/ 2019年11月12日閲覧。 
  5. ^ 「当て書き」の意味や使い方 わかりやすく解説”. Weblio辞書. 2023年6月25日閲覧。
  6. ^ 朝世, 瀧井. “大泉洋が小説に“初主演”!? 完全あて書き『騙し絵の牙』の新しさとは──「作家と90分」塩田武士(前篇)”. 文春オンライン. 2023年6月28日閲覧。
  7. ^ a b 吉田大助 (2017年12月7日). “筒井康隆も大ファンの“大泉洋”に騙された!?『罪の声』以上の傑作と絶賛!『大いなる助走』の“それ以後”を描いた 筒井康隆×塩田武士『騙し絵の牙』対談【前編】”. ダ・ヴィンチニュース. KADOKAWA. 2019年11月12日閲覧。
  8. ^ “大泉洋:自身当て書き小説「騙し絵の牙」の主演映画がクランクイン 共演に松岡茉優&佐藤浩市、監督は吉田大八”. MANTANWEB (MANTAN). (2019年10月30日). https://mantan-web.jp/article/20191029dog00m200067000c.html 2020年1月15日閲覧。 
  9. ^ a b “大泉洋主演「騙し絵の牙」公開延期「お客様の健康と安全を第一に考え」”. Sponichi Annex (スポーツニッポン新聞社). (2020年4月15日). https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2020/04/15/kiji/20200415s00041000156000c.html 2020年4月15日閲覧。 
  10. ^ a b 大泉洋『騙し絵の牙』本年中の公開を見送り、2021年公開に”. 映画ランドNEWS (2020年7月22日). 2020年7月22日閲覧。
  11. ^ a b “大泉洋『騙し絵の牙』新公開日決定&新映像到着!監督は「TENETも意識」”. cinemacafe.net (イード). (2020年12月4日). https://www.cinemacafe.net/article/2020/12/04/70284.html 2020年12月4日閲覧。 
  12. ^ “大泉洋主演『騙し絵の牙』強烈なワードが続々登場、超特報解禁”. ドワンゴジェイピーnews (ドワンゴ). (2019年12月27日). https://web.archive.org/web/20191227161646/https://news.dwango.jp/moviestage/44735-1912 2020年12月4日閲覧。 
  13. ^ 大泉洋主役に当て書きした「騙し絵の牙」を坂ノ睦がマンガ化、ダ・ヴィンチ掲載”. 2021年6月11日閲覧。
  14. ^ comicbridgeの2021年3月4日のツイート2021年6月11日閲覧。
  15. ^ comicbridgeの2021年12月17日のツイート2022年1月4日閲覧。
  16. ^ 松竹ホームエンターテインメント [@shochiku_video] (2021年10月15日). "映画『#騙し絵の牙』11/5より台湾公開決定". X(旧Twitter)より2021年10月16日閲覧
  17. ^ キネマ旬報』 2022年3月下旬特別号 p.23
  18. ^ a b c “大泉洋の主演作「騙し絵の牙」監督は吉田大八、共演に松岡茉優、佐藤浩市”. 映画ナタリー (ナターシャ). (2019年10月30日). https://natalie.mu/eiga/news/353359 2019年11月12日閲覧。 
  19. ^ 騙し絵の牙 インタビュー:大泉洋と松岡茉優に「価値観が変わった1冊」を聞いてみて分かったこと”. 映画.com. 2021年3月26日閲覧。
  20. ^ 大泉洋、自身をあてがきの主演作は「一番私っぽくなかった」 “崖っぷち”撮影を振り返る”. クランクイン!- エンタメの「今」がわかる 映画&エンタメニュースサイト. 2021年3月26日閲覧。
  21. ^ 大泉洋主演『騙し絵の牙』×阪神タイガース、コラボポスター登場”. ORICON NEWS. 2021年2月22日閲覧。
  22. ^ a b c “大泉洋主演『騙し絵の牙』追加キャスト 宮沢氷魚、池田エライザ、中村倫也ら12人”. ORICON NEWS (oricon ME). (2020年1月15日). https://www.oricon.co.jp/news/2153125/full/ 2020年1月15日閲覧。 
  23. ^ “『第45回日本アカデミー賞』受賞者・作品発表 司会は羽鳥慎一&長澤まさみ”. oricon news. (2022年1月18日). https://www.oricon.co.jp/news/2221334/full/ 2022年1月18日閲覧。 

外部リンク[編集]