馬尿酸

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馬尿酸
識別情報
CAS登録番号 495-69-2 チェック
PubChem 464
ChemSpider 451 チェック
UNII TE0865N2ET チェック
KEGG C01586 チェック
ChEBI
ChEMBL CHEMBL461 チェック
特性
化学式 C9H9NO3
モル質量 179.17 g/mol
示性式 C6H5CONHCH2COOH
外観 微臭のある白色結晶
密度 1.371 g/cm3
融点

187 - 188 °C

沸点

240 °C (dec.)

への溶解度 温水によく溶ける
危険性
安全データシート(外部リンク) Material Safety Data Sheet
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

馬尿酸(ばにょうさん、英語: hippuric acid)は、馬などの草食動物の尿から発見された有機酸である。なお、馬尿酸の名前はギリシア語hippos(英 horse)とouron(英 urine)に由来する。

歴史[編集]

合成法[編集]

塩化ベンゾイルとグリシンを反応させる方法のほか、テオドール・クルチウスにより報告されたベンズアルデヒドを加熱しグリシンと反応させる方法[2]や、加熱したベンズアミドクロロ酢酸を反応させる方法が知られている。

塩化ベンゾイルとグリシンを用いた反応

物性[編集]

  • 馬尿酸の結晶斜方晶系に属する。
  • 融点は 191.5 ℃ で、分解温度は 240 ℃。
  • 水酸化ナトリウムあるいは水酸化カリウムにより加水分解を受け、安息香酸とグリシンへと分解される。
  • 亜硝酸と反応させることで、ベンゾイルグリコール酸 (C6H5COOCH2COOH) へと変換される。
  • ヒドラジンを用いたエチルエステル反応により、ヒプリルヒドラジン (C6H5CONHCH2CONHNH2) が生成する。この方法は、テオドール・クルチウスによりアジ化水素酸の合成に利用された。

体内での生成[編集]

馬尿酸は安息香酸トルエンなどの芳香族炭化水素化合物が大量に体内へ取り込まれた際に肝臓で生成され尿中排泄される。 トルエンの場合は、トルエンが肝臓のシトクロムP450 (CYP2E1) によりメチル水酸化を受けてベンジルアルコールが生成(エポキシドも5%程度生成される)→ベンジルアルコールがアルコールデヒドロゲナーゼにより酸化されて安息香酸が生成→安息香酸がグリシン抱合を受けることで馬尿酸が生成、となる。詳しくは下図を参照のこと。

トルエンの代謝経路
トルエンの代謝経路
ベンジルアルコールの代謝経路
ベンジルアルコールの代謝経路

なお抗生物質により排泄量が減少することから腸内細菌叢にてキナ酸より生合成される経路も存在すると考えられている[3]

出典[編集]

  1. ^ "Ueber die Regeneration der Hippursäure" Justus Liebigs Ann. Chem. 1853, 87, 325-327. DOI: 10.1002/jlac.18530870311
  2. ^ T. Curtius "Synthese von Hippursäure und Hippursäureäthern" Ber. Deutsch. Chem. Ges. 1884, 17, 1662-1663. DOI: 10.1002/cber.18840170225
  3. ^ Ronald W. Pero (2010). “Health Consequences of Catabolic Synthesis of Hippuric Acid in Humans”. Current Clinical Pharmacology (Bentham Science Publishers Ltd.) 5 (1): 67-73. 
参考文献
  •  この記事にはアメリカ合衆国内で著作権が消滅した次の百科事典本文を含む: Chisholm, Hugh, ed. (1911). "Hippuric Acid". Encyclopædia Britannica (英語). Vol. 13 (11th ed.). Cambridge University Press. p. 523.

外部リンク[編集]