飛騨トンネル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索
本来の表記は「トンネル」です。この記事に付けられた題名は、技術的な制限により、記事名の制約から不正確なものとなっています。
飛騨トンネル
Hida Tonnel Kawai pithead.jpg
飛騨トンネル 河合坑口
概要
位置 岐阜県
現況 供用中
所属路線名 E41 東海北陸自動車道
起点 岐阜県飛騨市河合町
終点 岐阜県大野郡白川村
運用
完成 2007年1月13日(本坑貫通)
開通 2008年7月5日
通行対象 自動車(危険物積載車両通行禁止
技術情報
全長 10,710m
道路車線数 2車線(片側1車線)
テンプレートを表示
飛騨河合PAへの分岐
本坑と避難坑(左)

飛驒トンネル(ひだトンネル)は、岐阜県飛騨市河合町大野郡白川村との間にある東海北陸自動車道トンネル

全長は10,710mで道路トンネルとしては山手トンネル関越トンネルに次ぐ日本国内3位、世界でも12位の長さ。

概要[編集]

長大トンネルとしては九州自動車道肥後トンネル同様、トンネル内に県境がない。また本トンネルは暫定2車線[1]で開通しているため対面通行であり、さらに下り線(小矢部・砺波方面)では下り勾配により速度が増すため運転の際は特に注意が必要である。

国道360号天生峠は幅員狭小で急カーブや急勾配が続き、1年の約半分が冬期通行止めであることに加えて夏季であってもがけ崩れなどによる通行規制が絶えない。高山方面から世界的な観光地である白川郷五箇山方面へ向かう観光バスなどは一旦荘川ICへ向かい、そこから国道156号を北上するという大回りなルートの選択を余儀なくされていた。飛騨トンネルは単に高速道路の一部というだけではなく、そういった山岳地方特有の問題を解消する役割も担っている。

トンネルは断面積16m2の先進坑(避難坑)と同130m2の本坑で構成され[1]、ルートについては飛騨河合PA白川郷ICとをほぼ一直線に結ぶ、籾糠山(標高1,744m)を貫くコースとなっている。

またトンネルには換気立抗がなく、車道下(工事上掘った作業坑がある区間ではそれを換気坑として利用[2])に換気坑が設けられている(長大トンネルとしては世界初の選択集中排気式縦流換気システムを採用)。なお、工期に間に合わずまだモルタル吹きつけのみのところが残っており数年後にもう一度施工し直す予定がある。

建設工事[編集]

籾糠山はそれまでトンネルの掘削例がなく[1]ボーリング調査もほとんどうまくいかなかったためまさに「蓋を開けてみるまでわからない」状態で工事が開始された。

最大土被りは1,000mを超え、水圧は5.4MPa(55kgf/cm2)、最大湧水量は毎分70tになるなど青函トンネル以上の数値となり、刻々と変わる地盤と相俟って建設開始当初の予想を超えた難工事となった。その過酷さを証明するかのように投入されたトンネル掘削機(先進坑に直径4.5mの「天生太郎(フルシールド型)」、本坑用に同12.84mの「夢天生2000(改良オープン型)」)のうち「天生太郎」については幾多の水抜坑を設置しカッター部分を改良しながら掘削を進めてきたが、貫通まで残り310m地点で土圧により潰れて停止してしまった。シールド部分が破壊されもはや修復不可能の状態であった。

その後今後の掘削に関する委員会が開かれ、トンネル掘削機が使用できなかった箇所はNATM工法による掘削を行った。なお、天生太郎の側壁部分はトンネルの一部としてそのまま残される事となった。この天生太郎が掘り進んだ避難坑の掘削データにより本坑の夢天生2000も軟弱地盤に埋もれるなどしたが、危険に阻まれながらもなんとか掘り進んだ。その夢天生2000も貫通後に、天生太郎とほぼ同じ場所で土砂に埋もれてしまい、外殻がトンネルの一部分として山中に残されている[3]

本坑の貫通後再び貫通点での崩落など異常事態が発生し、それが付帯工事の遅れにも波及してしまう。その結果、現場の切実な声に中日本高速道路株式会社は2007年度末としていた開通時期を変更せざるを得ない状況になってしまった。

なお、本トンネルは入口間の高低差が約214mあり、白川村側から飛騨市側へ2%の上り勾配である。施工時の排水や、飛騨市側坑口の交通が不便であったことを考慮して当初は白川村側からのみの掘削予定であったが、前述の難工事ゆえ迎え掘りの必要に迫られ飛騨市側から下り勾配での突っ込み施工を急遽行ったため両側での掘削開始時期が異なっている[1]

前述の通り当初の開通予定(当初は2005年に愛知県で開催された愛・地球博前の完成を予定していた)より3年9ヶ月(延期後の開通予定からも更に3か月余り)遅れての開通となった。総事業費は約1,000億円。

これら一連の土木史上稀に見る難工事にもかかわらず、同様に難工事であった青函トンネルや安房トンネルと異なり死亡事故0を達成している[1]

沿革[編集]

  • 1993年11月19日 施工命令
  • 1996年10月 白川村側から先進坑の掘削開始
  • 1998年4月 白川村側から本坑の掘削開始
  • 2001年4月 河合村(現在の飛騨市)側から先進坑・本坑の掘削(迎え掘り)を開始
  • 2006年3月31日 先進避難抗貫通
  • 2007年1月13日午前 本抗が貫通、貫通式を挙行
  • 2008年7月5日 飛騨トンネルを含む飛騨清見IC - 白川郷IC(25.0km)の開通により供用を開始
  • 2008年10月 点検によりトンネル中心部のタイル製内壁パネル約300枚にひび割れが生じていることが判明[4]
  • 2009年4月16日 20時から翌朝6時まで通行止めにしてタイル製内壁パネルの補強を実施[5]

特記事項[編集]

名称[編集]

工事開始時には、上を通る天生峠から名前をとって天生(あもう)トンネルという名称がついていたが、同じ飛騨地方にある安房(あぼう)トンネルと紛らわしいとの指摘が岐阜県知事からあり、工事開始後という異例のタイミングで飛騨トンネルに改名された[6]。トンネル掘削機の「天生太郎」(梶原拓・当時の岐阜県知事が命名)と「夢天生2000」(一般公募により命名)は、旧称の天生トンネルから名づけられたものであり、工事終了までそのままの名称で使われた。

特別料金[編集]

飛騨トンネルを含む飛騨清見IC - 白川郷IC間は、対距離料金が他区間に比べ1.6倍で設定されている(飛騨特別区間)。ETC無線通信による通行車両は、普通区間と同等料金に値下げされる(2024年3月31日まで)。

2011年(平成23年)8月1日から2014年(平成26年)3月31日までの期間、関越自動車道関越トンネル中央自動車道恵那山トンネルを含めた3区間で、全ての車種(現金・ETC問わず)で普通区間と同等の料金に値下げされていた[7]

通行制限[編集]

長大トンネルのため、飛騨トンネルを含む飛騨清見IC - 白川郷IC間では石油薬品などを積載したタンクローリーなどの危険物積載車両の通行が禁止されている。

トンネル設備[編集]

降雪地帯のため、両端のトンネル坑口路面には融雪・凍結防止用のヒーターが埋設されている。

また、トンネル内でのラジオ放送再送信サービスはAMのNHKラジオ第1放送高山792kHz、名古屋729kHz)の2局のみ(その他の放送局やFM局が受信困難であるため)。

携帯電話NTTドコモFOMAauSoftBankSoftBank 3Gが使用可能。

11kmに及ぶ長大トンネルのため、トンネル区間中央部付近やその他数ヶ所にドライバーへの気分転換としてピンクのアクセント照明が設けられている。

また壁面は白色タイル貼りとなっており、タイル面には袴腰トンネル - 城端トンネルのトンネル連続区間と同じく出口までの距離を1kmごとに表示してある他電光掲示板による残距離表示もされており、心理的圧迫感を軽減している。

本トンネルにも他の長大トンネル同様トンネル用信号機が設置されているが、河合側入口[注釈 1]のみならずトンネル内部にも2ヶ所設置されている。また白川側入口は本トンネルではなく隣の大牧トンネル入口への設置となっている。

景観への配慮[編集]

トンネルの施工にあたっては周辺環境、特に世界遺産である合掌集落近辺の景観に配慮して、白川村側坑口の高さを原設計より19メートル低くされている[8]。また、取付道路も集落からの景観を壊さないように橋桁をくすんだ「墨色」に塗装してある。

また、作業坑を合掌集落から尾根を1つ越えた鳩谷ダムの近くまで設け、工事用の車両・機材が合掌集落の風景に入らないような配慮も行っていた[8]

隣のインターチェンジ[編集]

E41 東海北陸自動車道
(13) 飛騨清見IC - 飛騨河合PA - 飛騨トンネル - (14) 白川郷IC

脚注[編集]

[ヘルプ]

注釈[編集]

  1. ^ 飛騨河合PA出口にも小型のものが設置されている。

出典[編集]

  1. ^ a b c d e “日刊建設工業新聞 太平洋と日本海を結ぶ大動脈 東海北陸自動車道全線開通”. 日刊建設工業新聞社. (2008年7月14日) 
  2. ^ 寺田・松浦(2008)、108-110頁
  3. ^ 寺田・松浦(2008)、167-168頁
  4. ^ 47NEWS 内壁パネル300枚にひび 東海北陸道飛騨トンネル 共同通信、2009年4月6日
  5. ^ NEXCO中日本 東海北陸道(飛騨清見IC~福光IC)夜間通行止めにご協力いただきありがとうございました
  6. ^ 寺田・松浦(2008)、88-89頁
  7. ^ 高速道路の割高区間等の料金割引について 国土交通省、2011年7月15日(2011年8月20日閲覧)。
  8. ^ a b 寺田・松浦(2008)、58-61頁

参考文献[編集]

  • 寺田光太郎・松浦隆幸『秘境を貫く 飛騨トンネルの物語』2008年、中日本高速道路 ISBN 978-4-9904517-0-7

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

座標: 北緯36度14分01秒 東経136度57分16秒 / 北緯36.23361度 東経136.95444度 / 36.23361; 136.95444