風街ろまん

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風街ろまん
はっぴいえんどスタジオ・アルバム
リリース
録音 1971年5月11日 - 9月12日
モウリ・スタジオ
ジャンル ロック
ポップス
レーベル URC
LP:URG-4009
プロデュース はっぴいえんど
アート音楽出版
はっぴいえんど 年表
はっぴいえんど
1970年
風街ろまん
1971年
HAPPY END
1973年
『風街ろまん』収録のシングル
  1. 「花いちもんめ / 夏なんです」
    リリース: 1971年12月10日
  2. あしたてんきになあれ
    リリース: 1999年11月26日
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風街ろまん』(かぜまちろまん)は、1971年11月20日に発売されたはっぴいえんど通算2作目のスタジオ・アルバム

解説[編集]

1964年東京オリンピック以降の開発・近代化で急激に失われゆく「古きよき日本・東京の姿」を「風街」という架空の街にみる、といったテーマが見て取れる。全体的にけだるい空気感がただよう。前作『はっぴいえんど』とくらべると松本隆による詞の世界観、大瀧詠一細野晴臣鈴木茂ら作曲陣による楽曲の質ともに洗練されており、はっぴいえんどとしての活動はこのアルバムでほぼ完成したと言っても過言ではない。実際、このアルバムの発表後、グループはほぼ解散状態になっている。

雑誌等でこのアルバムを紹介する際に「内容の良さとメンバーの豪華さとは裏腹に当時は全く売れなかった」などと書かれることが多々あるが、後に細野晴臣が「『風街~』は当時としては結構売れたみたいなんです。ただ、周辺の人間がみんな売り上げというものに興味がなかったから、正式な売り上げ枚数とかは残っていないみたい」とコメントしている[要出典]。また、この作品は一連の日本語ロック論争に終止符を打ったとも言われる。

録音は東芝音楽工業を退社した直後の、吉野金次が担当しており、吉野の音作りが少なからずアルバムの作風を決定している。しかし、「春らんまん」を除く大瀧ボーカル曲は吉野ではなく、近藤むさしが録音を担当。この近藤むさしとは、ビクター音楽産業(当時)専属のエンジニアだった梅津達男の事で、ビクター以外での仕事では本名が使えない為、大瀧が近藤勇宮本武蔵から考えた「近藤むさし」としての参加であった。

後に収録曲全曲のマルチテープが残っている事が判明した。

クレジットにある“AQUENT AND FRIEND - 岩井宏, 三浦光輝, GG”との記述は、大瀧がプロデュースとディレクションのクレジットをはっぴいえんどにしようと主張したことと関係があるという。大瀧は「1枚目のアルバムには秦政明という知らない名前がプロデューサーとしてクレジットされてあったの。この人はアート音楽出版の社長で、どれにも“プロデュース=秦政明”と書いていたらしい。だけど、1回もスタジオに来たことがないじゃないか。なんで何もやっていないやつをプロデューサーのクレジットにしてるんだと、俺が頑強に抗議した。もちろんメンバー全員賛同した。向こうは社名を入れることで手を打ったんじゃないのかな、今にして思えば。アート音楽出版の担当・岩井宏さんは、何としても名前を入れたかったはずで、おそらくは“ディレクター”と書きたかった。だから、ディレクターは現場か会社の名前にしたいと彼らは申し出ているはずなんだよ。でも、ディレクションされた覚えがないんでそれもやめてくれ、と。そこでアクエントとかいう名義を誰かが考え出したんだと思う」[注 1]と答えている。また、本作では1曲ごとにプロダクション関係者の名前が書いてあるのは、基本的には大瀧の意向だという[注 1]

アートワーク[編集]

メンバー4人の顔を配したジャケットについて、撮影を担当した野上眞宏によれば、メンバーには大変評判が悪かったという。この時アート・ディレクターは特におらず、『はっぴいえんど』での林静一同様に本作でも人気のある漫画家を起用して表面には精密な路面電車のジャケットを、裏面にはメンバーの写真を入れるつもりだった。1971年9月、野上も松本に同行して三鷹の宮谷一彦のアトリエを訪ねたところ、宮谷は白をバックにメンバーの顔が浮いているようなシンプルなデザインでいこうと言い出し、当初の案だった宮谷による路面電車のイラストは見開きジャケットの内側に入ることになった。元になる写真を野上が撮影することがその場で決まり、さっそく六本木のアート・センター・スタジオで翌10月に撮影が行われた。野上は、当時ニューヨークで活動していた小原ケン制作による『One』という、顔だけの写真集の事を雑誌『カメラ毎日』で知り、素晴らしいアイデアだと思っていたところだったので、それをイメージしながら撮影したという。顔だけをフラットなライティングと、その反対に思い切りサイドから光を当てた2タイプで撮影。前者をハイコントラストの印画紙を使って顔の輪郭をぼかして焼き、そのプリントの上に宮谷が鼻筋などをはっきりさせるために描き込んだ。野上が撮影した元の写真は、1999年リリースのシングル「あしたてんきになあれ」のジャケットに使用された。また、ジャケット裏面の写真は、野上が西海岸のロック・グループのレコード・ジャケットをイメージしながら撮影したもの。撮影は、後に細野晴臣も住むことになる稲荷山公園の“アメリカ村”。はっぴいえんどのメンバーを一日中連れ回して、かなりのカットが撮影された。マネージャー石浦信三の顔をクリップで留めるというアイデアは、やはり宮谷から出されたものだった[1]。また、見開きジャケットの内側には、松本隆書き下ろしによる詩「風狂い」が掲載されている。

収録曲[編集]

A-風[編集]

  1. 抱きしめたい 3'32"
    作詞:松本隆、作曲:大瀧詠一
    この曲が1曲目になったなのは、イントロにあるという。大瀧によればイントロは後付けではなく、最初からついていた。大瀧は「ウラ拍と思わせておいてオモテ拍みたいなのがあるけど、そんな単純な作りじゃない。俺と細野さんのベース、松本のドラム、三人三様でインテンポに戻るところが別なの。だから、えもいえない複雑なイントロになって、1曲目にするにはいいなと思ったね。ただ、練習の時には3人ともうまくいかなくて、皆で“ああっ! ううっ!”なんてうなってた」[注 2]という。
  2. 空いろのくれよん 4'05"
    作詞:松本隆、作曲:大瀧詠一
  3. 風をあつめて 3'50"
    作詞:松本隆、作曲:細野晴臣
  4. 暗闇坂むささび変化 1'51"
    作詞:松本隆、作曲:細野晴臣
    原題は「ももんが」。暗闇坂麻布にある坂であり、松本の東京へのノスタルジアを端的に現した曲である。
  5. はいからはくち 2'58"
    作詞:松本隆、作曲:大瀧詠一
    シングル「12月の雨の日」のB面にも収録されているが、このLPバージョンとは異なるバージョンである。 
  6. はいから・びゅーちふる 38"
    作詞・作曲:多羅尾伴内

B-街[編集]

  1. 夏なんです 3'11"
    作詞:松本隆、作曲:細野晴臣
    後にシングル「花いちもんめ」のB面としてシングル・カット。
  2. 花いちもんめ 4'09"
    作詞:松本隆、作曲:鈴木茂
    細野・大瀧からの作曲要請を受けた鈴木のデビュー作。後にシングル・カット。
  3. あしたてんきになあれ 2'11"
    作詞:松本隆、作曲:細野晴臣
    1999年にシングル・カット。
  4. 颱風 6'26"
    作詞・作曲:大瀧詠一
  5. 春らんまん 2'32"
    作詞:松本隆、作曲:大瀧詠一
  6. 愛餓を 39"
    作詞:松本隆、作曲:大瀧詠一

クレジット[編集]

スタッフ[編集]

PRODUCED by はっぴいえんど  アート音楽出版
DIRECTED by はっぴいえんど
MANAGEMENT and SPIRITUAL GUIDANCE
  by 石浦信三
AQUENT AND FRIEND - 岩井宏, 三浦光輝, GG
RECORDED at MOURI-STUDIO
JACKET DIRECTION and POEM '風狂い'
  by 松本隆
JACKET DESIGN and ILLUSTRATION
  by 宮谷一彦
COVER PHOTO by 野上真宏
THANKS TO 高田渡, 野地義行, 小坂忠
  for GUITARS

カバー[編集]

風をあつめて
はいからはくち
夏なんです
  • 楠瀬誠志郎(1993年、オムニバスアルバム「はっぴいえんどに捧ぐ」)
  • 矢野顕子(1994年、アルバム「出前コンサート」。ライブ録音。)
  • 山弦(1999年、アルバム「INDIGO MUNCH」。インストゥルメンタル。)
  • 加瀬亮(2015年、トリビュートカバーアルバム「風街であひませう」の完全限定生産盤スペシャルディスク(『風街でよむ』)に歌詞朗読が収録[2]
抱きしめたい
空いろのくれよん
  • 渡辺満里奈(1993年、オムニバスアルバム「はっぴいえんどに捧ぐ」)
  • 永山絢斗(2015年、トリビュートカバーアルバム「風街であひませう」の完全限定生産盤スペシャルディスク(『風街でよむ』)に歌詞朗読が収録[2]
颱風
  • 布谷文夫(1972年、シングル「からのベッドのブルース」。1973年、シングル「台風13号」(ココナツ・バンクをバックに再カバー))
愛餓を

タイアップ[編集]

風をあつめて[編集]

映画
テレビ
  • 「ふらり旅 いい酒いい肴」(BS11)テーマソング
CM

あしたてんきになあれ[編集]

CM

関連作品[編集]

関連項目[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ a b 湯浅学「1970-1972」、『大滝詠一 Talks About Niagara Complete Edition』第33巻第7号、株式会社ミュージック・マガジン2014年4月1日、 6-43頁、 ISBN 4910196380441。“三浦光紀さんのベルウッド構想”
  2. ^ 湯浅学「1970-1972」、『大滝詠一 Talks About Niagara Complete Edition』第33巻第7号、株式会社ミュージック・マガジン、2014年4月1日、 6-43頁、 ISBN 4910196380441。“はっぴいえんどの初シングル”

出典[編集]

  1. ^ 野上眞宏「11 はっぴいえんどのジャケット」、『はっぴいな日々』第19巻第10号、株式会社ミュージック・マガジン、2000年7月31日、 44-48頁。ASIN B001FADJZ2
  2. ^ a b c 小泉今日子、広瀬すず、加瀬亮らが松本隆の詞を朗読、ディレクターは是枝裕和”. 音楽ナタリー (2015年5月22日). 2015年5月26日閲覧。
  3. ^ 松本隆トリビュートに細野晴臣、YUKI、マサムネ、小山田壮平ら参加”. 音楽ナタリー (2015年5月4日). 2015年5月26日閲覧。

外部リンク[編集]