ルイス構造式

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
電子式から転送)
移動先: 案内検索

ルイス構造式(Lewis structure)とは、元素記号の周りに内殻電子を無視して価電子のみを点()で表した化学式の一種で、分子中に存在する原子間の結合と孤立電子対を示す図である。単結合なら一対の点()で表記し、二重結合三重結合はそれぞれ電子対の数を増やして表記する[1]。ルイス構造式は任意の共有結合分子や配位化合物を描くことができる。 ルイス構造式のアイデアは1916年にアメリカの化学者ギルバート・N・ルイスThe Atom and the Moleculeと題した論文で提唱した[2][3]。その他にも電子式(electronic formula)、点電子構造式、点電子表記法といった呼称がある[1]

下の二酸化炭素の炭素原子は真ん中にあるため、中央原子(central atom)といい、両辺にある酸素原子を終端原子(terminal atom)という[要出典]。有機化学で、水素原子が終端原子の代表である。

H2O
H-O-H()のルイス構造式
二酸化炭素CO2
O=C=O(二酸化炭素)のルイス構造式。二重結合は4つの電子を表す点で表現される。
窒素N2
N≡N(窒素)のルイス構造式。三重結合は6つの電子を表す点で表現される。

以下のような表し方をルイス記号(Lewis symbol)という[要出典]

Lewis dot H.svg Carbon Lewis Structure PNG.png Lewis dot O.svg
水素原子の点電子表記 炭素原子の点電子表記 酸素原子の点電子表記

表記規則[編集]

次のような流れで描く。

  1. 価電子の総数を求める。
  2. 原子を配置する。
  3. 原子間に電子対を配置する。
  4. 周辺原子のオクテットを完成させる。

以下に詳細を述べる。

価電子の総数
構成原子おのおのが持つ価電子をすべて足し合わせる。価電子数は族番号の1の位の数に等しく[4]、たいていの場合最外殻電子に等しい。分子電荷をもった構造(アニオンカチオン)をとる場合には、電荷に対応した電子の数を加えたり、引いたりという特別の注意が必要である。
オクテット則(8電子則)
電子のできるだけ多くに、それぞれのまわりに8つの電子を配置するように共有電子を形成する(例外あり後述)。このようにして書いた構造式の電子の総数が上記で数えた価電子数に一致することを確認する(周期表の右側に位置する元素には、孤立電子対と呼ばれる結合に関与しない価電子対をもつものもある)。単結合だけでオクテット則を満たすのは難しいことがよくある。このような場合には、オクテット則を満足させるために二重結合(二組の共有電子対)や三重結合(三組の共有電子対)が必要となる。窒素分子で、両方の窒素原子オクテット則を満たすには、2つの窒素原子間に三重結合を形成することが必要である[1]
各原子の電荷の決定
孤立電子対は二電子、結合形成のために共有されている電子対は一電子として数える。このようにして数えた原子の価電子総数が、結合を作る前の遊離の電子の外殻電子数と異なっている場合には、その電子は分子生成によって電荷を得たことになり、+もしくは-の記号を付け電荷を表す[1]

規則の例外事項[編集]

原子番号の小さい元素
K殻しか持たないため、2電子一対で安定化する水素(H)ベリリウム(Be), ホウ素(B), アルミニウム(Al)といった第2周期前半の元素はオクテット則に従わない[1]。Beは4電子、BとAlは6電子で安定化する[5]。(例:三フッ化ホウ素)
塩化ベリリウムベリリウム原子が4電子となっている例。
ラジカル
総電子数が奇数個であるとき、構成原子のうち電気陰性度の小さい原子が奇数電子状態となる、すなわち不対電子を持つラジカルとなる[1]
一酸化窒素(・N=O)の窒素原子は不対電子を持つ。
超原子価
第3周期元素以降の元素原子番号11より大きい元素)は、オクテット以外の電子配置をとる可能性がある[1]リン硫黄は、それぞれ3価あるいは2価をとり、リン酸硫酸といったありふれた化合物にもオクテット則に従わないものが見られる。六フッ化硫黄のような物質は超配位という。
三ヨウ化物イオンの中心にあるヨウ素原子は、共有電子対2つと非共有電子対3つを持ち、合計10電子持っている。
リン酸リン原子は10電子持っている。
硫酸硫黄原子は12電子もっている。

イオン結合[編集]

イオン結合でできた物質は、上のように書くことはできない。上のようにかけるのは、共有結合でできた化合物だけである。以下に例を示す。

例えば、酸化アルミニウムAl2O3を考えてみる。これは、2つアルミニウムイオンと3つの酸素イオンがイオン結合でできている。アルミニウムは3つの価電子、酸素は6つの価電子があるので、アルミニウムのそれぞれの価電子は酸素のそれぞれの価電子と共有する。その結果、ルイス構造式は次のようになる。

酸化アルミニウムAl2O3 (酸素イオンの上下の点は省略している。)
2[Al]3+ 3[:O:]2-

参考文献[編集]

  1. ^ a b c d e f g K.P.C.Vollhardt, N.E.Schore (2001). ボルハルト・ショアー現代有機化学第3版(上) (第3版、第4刷 ed.). (株)化学同人. p. 16-20. ISBN 4-7598-0836-1. 
  2. ^ Gilbert N. Lewis (1916), “The Atom and the Molecule”, J. Am. Chem. Soc. 38 (4): 762–785, doi:10.1021/ja02261a002 
  3. ^ Dickerson, Richard E; Gray, Harry B; Haight, Gilbert P. (1979年). “Chemical principles, Chapter 11 Lewis Structures and the VSEPR Method”. The Benjamin/Cummings(カリフォルニア州メンロー・パーク. pp. 400. 2016年5月7日閲覧。
  4. ^ Robert J. Ouellette (2009). ウーレット有機化学 (第1版第3刷 ed.). (株)化学同人. p. 4. ISBN 978-4759809145. 
  5. ^ 東京電機大学理工学部生命理工学系生命化学コース生命有機化学研究室. “ルイス構造式”. 2016年5月14日閲覧。