難消化性デキストリン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
Jump to navigation Jump to search

難消化性デキストリン(なんしょうかせいデキストリン、英語: Indigestible dextrin)とは、人の消化酵素によって消化されない、難消化性のでんぷん分解物である。

焙焼デキストリン中に多く存在し、デキストリンの熱分解過程でグルコースの還元末端基が分子内脱水され、更に解離したグルコース残基がランダムに他の水酸基に転移してデンプン本来の結合のほかに 1→2結合や1→3結合などの結合が生じた結果生成される[1]

概要[編集]

難消化性デキストリンは、天然では熟した果物などに含まれている水溶性食物繊維の一種であり、食後の血糖値の急激な上昇の抑制[1][2]が報告されている。食品工業では、とうもろこし澱粉分解物からつくられた難消化性デキストリンが流通している。従来は、消化されず役に立たないものとされてきたが、後に有用性がわかってきたため、食品工業的に生産されるようになった。ヒト消化管は自力では難消化性デキストリンを消化できないが、大腸内の腸内細菌が嫌気発酵することによって、一部が酪酸プロピオン酸のような短鎖脂肪酸に変換されて一部は、エネルギー源として吸収される。エネルギーは1Kcal/gである。

歴史[編集]

1988年松谷化学工業株式会社大隈一裕らによって発見・命名された[3]。同社により『パインファイバー』として製品化され、1990年FDAGRASに承認され、1992年には特定保健用食品(トクホ)素材として認証された[4]

効果[編集]

難消化性デキストリンは、多数の作用が報告されている。

医薬品のような強力な改善効果はなく[5]緩やかな作用で、食後血糖値上昇抑制作用、脂質異常症予防、便秘予防、肥満予防、糖尿病予防、脂質代謝を調節して動脈硬化の予防、大腸癌の予防等が確認された。さらに、免疫強化、腸内感染の防御、腸管運動の促進といった作用のあることがわかった[6]

日本では、食物繊維の強化表示をした加工食品にも使用されている。

食後血糖値上昇抑制
難消化性デキストリンは粘度の高い溶液をつくり、から小腸への食物の移行を緩やかにする。また、拡散阻害作用、吸水・膨潤作用、吸着作用などがあり、摂取した食物は胃で消化され、緩やかに移行し、吸着され、吸収速度が緩慢となる結果、グルコースの吸収を緩慢にして血糖値の上昇を抑える[7]
熟した果物などに含まれている水溶性食物繊維(難消化性デキストリン)は、食後の血糖値の急激な上昇の抑制[8][9]作用が報告されている。
食後中性脂肪上昇抑制作用
肥満防止
難消化性デキストリンは胃で膨潤することで食塊を大きくし、粘性を上げ、胃内の滞留時間を延ばし満腹感を与えることで効果を現す[要出典]
コレステロール上昇抑止
ラットを用いた動物実験で、食物コレステロールの吸収抑制、コレステロールの異化・代謝・排泄の促進、胆汁酸の回腸からの再吸収阻害による代謝・排泄の促進などが報告されている[10]
排便促進
難消化性デキストリンは、体重当たり5 - 10g/日(体重当たり)5日連続で、排便が改善されたとの報告がある[11]
ミネラル吸収促進作用
短鎖脂肪酸を産生させる効果もあるため、体内にミネラルの吸収を促進すると示唆されている[12]
過剰摂取による下痢
下痢発症のED50値は2.4g/kg体重と推定されている[11]

難消化性デキストリンを配合した代表的な食品[編集]

清涼飲料水や健康食品などの加工食品に難消化性デキストリンが多く含まれる。

脚注[編集]

[ヘルプ]
  1. ^ a b 大隈一裕、松田功、勝田康夫、岸本由香、辻啓介「難消化性デキストリンの開発」、『Journal of applied glycoscience』第53巻第1号、日本応用糖質科学会、2006年1月20日、 65-69頁、 doi:10.5458/jag.53.65NAID 10016738765
  2. ^ 中山行穂、食物繊維の構造と機能 生活衛生 Vol.35 (1991) No.1
  3. ^ 大隈一裕、松田功、勝田康夫、半野敬夫、澱粉の熱変性と酵素作用 澱粉科学 1990年 37巻 2号 p.107-114, doi:10.5458/jag1972.37.107
  4. ^ 「健康食品」の安全性・有効性情報独立行政法人 国立健康・栄養研究所
  5. ^ 波多江崇、田中智啓、猪野彩 ほか、日本人を対象とした食後血糖値上昇に対する難消化性デキストリンの効果: 二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験のメタアナリシス 医薬品情報学 2017年 18巻 4号 p.289-294, doi:10.11256/jjdi.18.289
  6. ^ 鷹觜テル「食生活と長寿に関する研究-2-長寿村棡原地区の食物繊維(D.F)の摂取を中心として」、『岩手大学教育学部研究年報』第41巻第1号、岩手大学教育学部、1981年10月、 109-137頁、 NAID 120001123398
  7. ^ 藤田昌子、長屋聡美 「食品の違いによる食後血糖への影響 (PDF) 」『岐阜女子大学紀要』32, 2003-03-30, pp131-136 NAID 80015987150
  8. ^ 大隈一裕、松田功、勝田康夫、岸本由香、辻啓介「難消化性デキストリンの開発」、『Journal of applied glycoscience』第53巻第1号、日本応用糖質科学会、2006年1月20日、 65-69頁、 NAID 10016738765
  9. ^ 中山行穂、食物繊維の構造と機能 (1) 化学構造と分析法、『生活衛生』 Vol.35 (1991) No.1 P32-37
  10. ^ 若林茂、里内美津子、野上義喜 ほか、ラットのコレステロール代謝に及ぼす難消化性デキストリンの影響 日本栄養・食糧学会誌 1991年 44巻 6号 p.471-478, doi:10.4327/jsnfs.44.471
  11. ^ a b 里内美津子、若林茂、大隈一裕 ほか、難消化性デキストリンのヒト便通に及ぼす影響 栄養学雑誌 1993年 51巻 1号 p.31-37, doi:10.5264/eiyogakuzashi.51.31
  12. ^ 森田邦正、飛石和大、ダイオキシン類の排泄促進に関する研究 福岡県保健環境研究所年報 第28号 平成12年度(2000) P.57, ISSN 0918-9173

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]