コンテンツにスキップ

門前町

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
坂本
嵯峨鳥居本
産寧坂

門前町(もんぜんまち)とは、有力な寺院神社の周辺に形成された町のこと。特に神社の場合は、鳥居前町(とりいまえまち)という。

概要

[編集]

広義には、神社・寺院の信徒が近隣に集落を形成した社家町や寺内町も含めて門前町という[1]。規模が大きいものを宗教都市境内都市として定義する場合がある。歴史的な市街地の成立場所には、城、湊、市場、相場などがあるが、社寺もその一つである。

大規模で多くの参詣者を集める神社や寺院の前に、社寺関係者および参拝客を相手にする商工業者が集まることによって形成される。 ただし、寺院の成立の背景(例:庶民の出入り禁止)などから、寺院の規模に比して必ず形成されるものでもない[2]

近年の研究では、門前町は参詣客を対象とする商店や旅館が参道沿いに集積し、商業・サービス業に特化した集落として成立する点に特徴があるとされる[3]成田山新勝寺の事例では、寺内での宿泊が基本的に行われなかったため、参詣客や講社の宿泊需要を受けて門前に旅籠が多く立地し、その後は鉄道開業や日帰り参詣の進行に応じて旅館から飲食店・土産物店へと業種構成が変化した[4]。近世成田の土地経営の分析でも、門前町域は旧境内や子院境内を基盤に展開し、土地は新勝寺から町人へ貸し出され、参詣客の受入れを担う旅籠と寺院が土地・建物を通じて密接な経済関係を持っていたことが示されている[5]。このように、門前町は信仰施設の周囲に自然に付随するだけの町ではなく、参詣動線、宿泊需要、土地支配、商業経営が結びついて成立する町場として論じられている[3][5]

また、門前町は固定的な形態ではなく、寺社の盛衰や交通条件の変化に応じて再編される。善光寺門前では、1558年の本尊移転に伴って僧侶・職人・商人も甲府へ移り門前町は衰退したが、1598年に本尊が信濃へ戻ると再び門前町として復興し、北信濃の経済的中心地としての役割を回復した[6]。一方、近現代の成田や出雲大社神門通りの事例では、鉄道開業や駅設置によって参道沿いの商業が拡大したのち、自動車利用の増加、宿泊者の減少、駅の閉鎖などを背景に空き店舗や業種転換が進み、さらに景観整備や新規出店によって門前町が再活性化した過程が報告されている[4][3]。そのため、門前町は地名や名所の列挙だけでなく、参詣の仕組み、交通、宿泊、景観整備の変化まで含めて理解する必要がある[6][4][3]

特に現在も門前町としての歴史的風致をとどめている地区は重要伝統的建造物群保存地区として選定されて保存措置が講じられている。門前町同士の交流も行われており、1998年から毎年全国門前町サミットが開催されている。

重要伝統的建造物群保存地区の門前町・鳥居前町

[編集]

主な門前町

[編集]

北海道・東北地方

[編集]

関東地方

[編集]
浅草

中部地方

[編集]
善光寺仲見世通
大須

近畿地方

[編集]
奈良三条通り - 春日大社東大寺興福寺の門前町・鳥居前町
初瀬 - 長谷寺の門前町
洞川 - 大峯山寺の門前町

中国地方

[編集]

四国地方

[編集]

九州・沖縄地方

[編集]

主な鳥居前町

[編集]

北海道・東北地方

[編集]

関東地方

[編集]

中部地方

[編集]
津島神社の鳥居前町
伊勢神宮おかげ横丁

近畿地方

[編集]
祇園

中国地方

[編集]

四国地方

[編集]

九州・沖縄地方

[編集]

関連項目

[編集]

脚註

[編集]
  1. 門前町”. 世界大百科事典第2版 / コトバンク. 2018年3月7日閲覧。
  2. 70年ぶり茅葺屋根全層修理 国の重要文化財「慈恩寺本堂」/山形県寒河江市”. 世界日報 (2022年11月19日). 2023年5月26日閲覧。[リンク切れ]
  3. 1 2 3 4 乃木, 健太郎、菊池, 慶之「出雲大社神門通りにおける「平成の大遷宮」を契機とした景観の再構成」『日本地理学会発表要旨集』2020s第0号、2020年、50頁、doi:10.14866/ajg.2020s.0_50
  4. 1 2 3 齋藤, 譲司、橋本, 暁子、亀川, 星二、西田, あゆみ、津田, 憲吾、松井, 圭介「成田山新勝寺門前町における街並み整備と商業空間の変容」『人文地理学会大会 研究発表要旨』第0号、2009年、63頁、doi:10.11518/hgeog.2009.0.63.0
  5. 1 2 中村, 駿介「近世成田門前町の土地経営」『日本建築学会計画系論文集』第89巻第815号、2024年、150-161頁、doi:10.3130/aija.89.150
  6. 1 2 笹本, 正治「中世末から近世初頭の善光寺門前町」『国立歴史民俗博物館研究報告』第78号、1999年3月、49-59頁、doi:10.15024/00000865