長崎造船所タービンローター破裂事故

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長崎湾に落ちたロータ破片(破断面)
長崎湾に落ちたロータ破片(外側)

長崎造船所タービンローター破裂事故(ながさきぞうせんじょタービンローターはれつじこ)は、1970年昭和45年)10月24日三菱重工業長崎造船所で試験中の蒸気タービンローターが破裂した事故である[1]。死者4名、重軽傷者61名が発生した[2]。同事故の原因究明と対策はその後の製鋼、熱処理、検査技術に進展をもたらした[2][3]

事故当日、三菱重工はスペインENDESA社向けの33万kWタービンローター初号機の過速度試験を行った。ローターは胴部外径1778 mm、翼外径3403 mm、胴部長さ3590 mm、全長7698 mm、重量50 t[3]。材料は3.5NiCrMoVを真空造塊したものである。定格3000 rpmの120%である3600 rpmまで回転数を上げる途中、3540 rpmに達した13時42分[3]、ローターが4つに割れて飛散した。原因は、偏析や不純物によるローター素材の欠陥による脆性破壊である[4][5]

最も遠くまで飛んだ破片は1.5 km先の工場西側の山頂付近に落ちた。この破片の重さは11 tあった。9 tの破片は880 m先の長崎湾に落ちた。ひとつは工場内を水平に飛び、多くの死傷者を出した。最後のひとつは工場の床に刺さっていた。長崎湾に落ちた破片は後世への戒めとして[3]長崎造船所史料館に保存されている。

参考文献[編集]

  1. ^ 長崎造船所史料館”. 2019年9月14日閲覧。
  2. ^ a b 失敗知識データベース「長崎のタービンロータの破裂」”. 2019年9月14日閲覧。
  3. ^ a b c d 長崎造船所史料館説明パネル(2017年8月閲覧) 
  4. ^ 菅原玲; 田里誠; 岩田修一; 田辺義一 (2007). “火力用タービン発電機の発展の軸となった技術の推定”. 国立科学博物館研究報告E類: 55-63. NAID 110007342354. 
  5. ^ 吉田宏 (1976). “蒸気タービン用ロータの事故と対策”. ターボ機械 4 (11): 50-56. doi:10.11458/tsj1973.4.728.