鉄鼠の檻

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索
鉄鼠の檻
著者 京極夏彦
発行日 1996年1月5日
発行元 講談社
ジャンル 推理小説
日本の旗 日本
言語 日本語
形態 講談社ノベルス新書判
ページ数 826
前作 狂骨の夢
次作 絡新婦の理
コード #書誌情報参照
Portal.svg ウィキポータル 文学
[ Wikidata-logo-en.svg ウィキデータ項目を編集 ]
テンプレートを表示

鉄鼠の檻』(てっそのおり)は、日本小説家推理作家である京極夏彦の長編推理小説妖怪小説百鬼夜行シリーズ第四弾である。第9回山本周五郎賞の候補作となった[1]

あらすじ[編集]

とある商談のため、箱根山中の旅館「仙石楼」に滞在していた骨董商、今川雅澄は『姑獲鳥の夏』の一件以来東京を離れて同旅館に居候していた久遠寺嘉親と出会う。時を同じくして、仙石楼へとやってきた中禅寺敦子と同僚の記者・飯窪、カメラマンとして同行した鳥口守彦。彼女らは科学雑誌「稀譚月報」の取材のため、「明慧寺」を訪れようとしていた。だが、その「明慧寺」は京極堂こと中禅寺秋彦ですらその存在を聞いたことがないという寺でもあった。

そんな中、仙石楼の庭園に忽然と僧侶の死体が現れる。周りに足跡はなく、不可解な現場に旅館は騒然となる。更には、神奈川県警の横暴な捜査に業を煮やした久遠寺老人は榎木津に調査を依頼し、関係者一同で明慧寺に乗り込む。そこには外界と隔絶された閉鎖的で独自の社会が形成されていた。同じ頃、京極堂は友人からの依頼で古書を運び出すため、箱根山を訪れていた。

関口をして「檻」と形容せしむる明慧寺。その中で次々と僧侶たちが殺されてゆく。警察にも手に負えない明慧寺に憑いた闇を京極堂が落とす。

登場人物[編集]

主要登場人物[編集]

中禅寺 秋彦(ちゅうぜんじあきひこ)
安倍晴明の流れを汲む陰陽師にして拝み屋であり、古本屋を営む。屋号である「京極堂(きょうごくどう)」があだ名となっている。非常に博学な人物である。本作では仏教に対する十分な認識を持ちつつも、言葉言霊が容易に通用しない「不立文字」であるため、憑物落としの方法に苦慮する。
関口巽(せきぐち たつみ)
妻・雪絵、京極堂夫妻と共に箱根へ旅行する。そこで久遠寺嘉親と再会する。
中禅寺敦子(ちゅうぜんじ あつこ)
とある取材で、鳥口守彦を伴って明慧寺を訪れる。
榎木津 礼二郎(えのきづ れいじろう)
「薔薇十字探偵社」の破天荒な私立探偵。中禅寺と関口の旧制高等学校の一期先輩。特殊な能力を持っている。

明慧寺[編集]

桑田常信(くわた じょうしん)
48歳。慧寺典座。四知事の一人。慈行ほどではないが了稔を嫌っていた。
大西泰全(おおにし たいぜん)
88歳。明慧寺の僧。明慧寺一番の年長者で、老師と呼ばれる。最初に明慧寺に入山した人物で、明慧寺を発見した僧侶を師に持つ。飄々とした面があり洒脱で、他の僧侶たちと比べると話が通じる。
加賀英生(かが えいしょう)
18歳。明慧寺の僧。祐賢の侍僧。物語の時点で明慧寺に入山した最期の僧。
牧村托雄(まきむら たくゆう)
22歳。明慧寺の僧。常信の侍僧。以前は博行の侍僧をしていた。
杉山哲童(すぎやま てつどう)
28歳。明慧寺の僧。仁秀に拾われ育てられた。非常に大柄だが、少し知能が遅れている。本名・杉山哲夫。
中島祐賢(なかじま ゆうけん)
56歳。明慧寺維那。四知事の一人。了稔とは比較的友好な関係だった。
円覚丹(まどか かくたん)
68歳。明慧寺貫主。明慧寺のトップで、他の僧から猊下と呼ばれている。非常に厳かな雰囲気の人物。
菅野博行(すがの はくぎょう)
70歳。明慧寺の僧。元典座だったが、ある事件をきっかけに発狂して土牢に軟禁されている。実は『姑獲鳥の夏』で戦時中に久遠寺医院を失踪した元小児科医・菅野博行(すがの ひろゆき)。
和田慈行(わだ じあん)
28歳。明慧寺監院。四知事の一人。監院と共に知客も兼任する四知事一番の実力者で、尼僧と見紛うばかりの美僧。厳かで冷徹な精神の持ち主であり、外界と接することを極端に嫌う。了稔を嫌っていた。
小坂了稔(こさか りょうねん)
60歳。明慧寺直歳。四知事の一人。外界と関わりを持つ唯一の僧侶で、他の知事からは破戒僧と言われていた。今川と骨董品の受け渡しを約束していたが、奇妙な形で殺害された。

仙石楼[編集]

久遠寺嘉親(くおんじ よしちか)
医者。『姑獲鳥の夏』での事件で一夜にして妻と娘2人を失って以降、医者を辞めて「仙石楼」で居候をしている。
稲葉治平(いなば じへい)
五代目「仙石楼」主人。体調を崩し療養中。
トキ
仙石楼女中。

その他[編集]

今川雅澄(いまがわ まさすみ)
骨董商「待古庵」を営む駆け出しの骨董屋。戦時中は榎木津の部下だった。
山内銃児(やまうち じゅうじ)
横須賀で「倫敦堂」という古本屋を営む男性。京極堂の友人。曰く「孔明のような人物」。
飯窪季世恵(いいくぼ きよえ)
26歳。稀憚社社員。帝大の脳波測定実験の取材を引き受ける。箱根出身で、松宮兄妹とは旧知の仲だった。
尾島佑平(おしま ゆうへい)
盲目の按摩師。とある山道で、自ら人殺しの僧と名乗る人物と出会う。
仁秀(じんしゅう)
明慧寺のすぐ近くの小屋に住む老人。哲童、鈴を保護し、育てた。明慧寺から食料を恵んでもらっている。明慧寺が廃寺だった頃から住んでおり、戸籍すらないという謎の人物。慈行から疎まれている。
松宮仁(まつみや ひとし)
仁一郎の息子。地元住民との交流を欠かさず、父に反発して家を出ていたため、火災に巻き込まれなかった。一時期放火殺人犯として疑われたが釈放され、その後出家した。法名は仁如(じんにょ)。
松宮鈴子(まつみや すずこ)
仁一郎の娘で仁の妹。飯窪とは友人だった。火災現場から遺体は発見されず、行方不明となる。失踪当時13歳。
鈴(すず)
仁秀が養っている少女。いつも振り袖を着ている。山を訪れる者に「帰れ」と警告する。失踪当時の松宮鈴子と容姿が瓜二つ。
笹原武市(ささはら たけいち)
箱根に住む老人。箱根から外に出ようとしない。
笹原宋吾郎(ささはら そうごろう)
武市の息子。京極堂にある仕事を依頼する。
横山すゑ(よこやま すえ)
笹原家女中。
松宮仁一郎(まつみや じんいちろう)
箱根に住んでいた実業家。村人からは一家共々嫌われていた。十三年前の火災で死亡したが、死因は撲殺だった。

警察[編集]

山下 徳一郎(やました とくいちろう)
国家警察神奈川県本部捜査一課警部補。捜査主任。選良出身でプライドが高いが指揮官としての能力は低い。明慧寺や仙石楼の関係者全員を殺人事件の容疑者として疑い、支離滅裂な捜査に部下たちとの間に軋轢を生んでしまう。しかし、その過程で人として警察としてある矜持に気付くこととなる。
益田龍一(ますだ りゅういち)
国家警察神奈川県本部捜査一課刑事。階級は巡査。山下の部下。「融通の利く警官」を目指しているらしい。民間人に慣れ親しむのは得意だが、不測の事態にはすぐに慌てる小心者。
栗林(くりばやし)
湯本の駐在所の警官。階級は巡査。目覚まし時計のような顔をしている。探偵小説が好き。
石井寛爾(いしいかんじ)
国家警察神奈川県本部捜査一課警部。部下である山下の要請を受け、駆け付けてきた。
菅原剛喜(すがわら たけよし)
国家警察神奈川県箱根署の刑事。階級は巡査部長。自白による事件解決を得意とするが、少しでも怪しいと踏んだ者は徹底的に締め上げるなど強引な面がある。次田曰く「猪のような男」。
亀井(かめい)
国家警察神奈川県本部捜査一課刑事。益田の同僚。
次田(つぎた)
国家警察神奈川県箱根署の刑事。菅原の同僚で益田の上司。十三年前の放火殺人事件にも関与している。愛称は「鉄つぁん」。
阿部宣次(あべ のぶつぐ)
地元の派出所の警官。階級は巡査。牛乳瓶の底のような眼鏡をかけた、定年間際の老警官。かなりの訛りがある。

用語[編集]

箱根山連続僧侶殺害事件(はこねやまれんぞくそうりょさつがいじけん)
箱根のとある山中にある明慧寺の僧侶が次々と殺された事件。
明慧寺(みょうけいじ)
物語の舞台となる寺。由緒ある寺のようだが地図にその存在が記載されていない。入門者もほとんど居ないという。外界との接触を好まない。
四知事(よんちじ)
明慧寺において高い権力を持つ4人の僧侶。
仙石楼(せんごくろう)
明慧寺から少し下った場所にある旅荘。久遠慈老人の居候の場になっている。

書誌情報[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 第九回山本周五郎賞新潮社、2014年7月21日閲覧。

関連項目[編集]