金益見

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金 益見
김익견
生誕 김익견
(1979-07-14) 1979年7月14日(37歳)
日本の旗 大阪府大阪市
居住 日本の旗 日本
国籍 韓国の旗 韓国
研究分野 民俗学
研究機関 神戸学院大学
出身校 神戸学院大学人文学部卒業
神戸学院大学大学院
人間科学研究科博士後期課程修了
指導教員 水本浩典
主な業績 ラブホテル研究
女性から見た風俗意匠など
近代日本文化史の変遷の研究
主な受賞歴 橋本峰雄賞2008年
プロジェクト:人物伝
金 益見
各種表記
ハングル 김익견
漢字 金益見
発音: キム・イッキョン
日本語読み: きん・えきけん
ローマ字 Kim Ikkyon
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金 益見(キム・イッキョン、김익견1979年7月14日 - )は、日本民俗学者地域文化ラブホテル研究)。学位博士(人間文化学・2009年)。神戸学院大学人文学部講師コラムなどでは筆名として金 いっきょん(きむ いっきょん)名義を使用する場合もある。音楽活動ではいっきょんゴールド名義を使用する。

来歴[編集]

生い立ち[編集]

在日韓国・朝鮮人三世として大阪府大阪市生野区[1]に生まれる。10代で心筋梗塞で亡くし[2]母子家庭に育つ[3]

神戸学院大学進学後、卒業論文のテーマに悩んでいた際、列車内の中吊り広告に発想を得てラブホテルの研究を開始する。人文学部長(当時)のトイレ研究専門家・水本浩典に卒業論文指導教員となってもらい、大宅壮一文庫国立国会図書館などで雑誌文献調査を中心としたアプローチで研究を進め論文を完成させ卒業した。しかし、神戸学院大学大学院人間文化学研究科に進むと、「卒論の時、自分はすごいことをしていると思ったが、当時は資料を集めているだけだった」[4]との思いから、フィールドワークを中心にしたアプローチで再度ラブホテルに取り組むことにした。出版社に「ただ働きでいいから、取材について行かせて欲しい」[4]電話し、ラブホテル特集雑誌の記者に同行し、ホテル経営者にインタビューを申し入れる手法を採った。5年間で1000室超[4]のラブホテルを訪れ、「本来の目的にこだわるか、付加的なサービスを求めるか」[4]といった視点を交えつつ、日本のラブホテルの変遷を研究成果として纏めあげた。

また、参考文献として『「変態」の時代』[5]を購入する際、店頭で『マンガ嫌韓流[6]や『「在日コリアン」ってなんでんねん?』[7]といった書籍を見かけたことから、在日韓国・朝鮮人と日本人との相互理解に関心を抱くようになった[8]。その後、在日韓国・朝鮮人へのインタビュー記事を掲載するウェブサイトの運営に携わることになり、大阪市立大学大学院経済学研究科教授朴一らに取材を行っている[1]

研究者として[編集]

現場取材を重視するスタイルをとる。2008年、著書『ラブホテル進化論』により橋本峰雄賞を受賞した[9]2009年、神戸学院大学大学院にて人間科学研究科の博士後期課程を修了し、博士(人間文化学)の学位を取得した[10]。博士論文のタイトルは『「消費される女性・消費する女性」に関する風俗史的研究』であった。大学院修了後は、2009年より大手前大学講師を非常勤で務めた[11]。また、2013年より神戸女学院大学においても講師を非常勤で務めている[11]。同年、神戸学院大学の人文学部にて、専任の講師に就任した[11]。学術団体としては、現代風俗研究会、日本出版学会、日本編集者学会などに所属している[12]

研究成果[編集]

回転ベッド
回転ベッドの発展について「ベッド自体を回転させたらどうだろう、とセットにすれば自分たちの性行為も見られて、よりエロティックな雰囲気になるのではないか、とアイディアを出し合い、改良が進んだ」[13]と指摘している。
経営者
在日韓国・朝鮮人が経営者だとする都市伝説があるが、実際には 近畿地方のラブホテルの経営者には石川県出身者が多いことを主張している[要出典]。経営者のスキルパスの一例として、「大変で人がやりたがらない豆腐屋で資本をためて風呂屋をし、それを売ってホテル」[14]との石川県出身のラブホテル経営者の証言を紹介している。
関西人
ラブホテルの利用の仕方には地域差があると指摘している。たとえば、近畿地方在住の女性客について「関西の女の子はかなりの確率で割引クーポンを使います。しかもワリカン。小銭がどうとか男の人とよくモメています」[2]と自身の現場取材体験を元に語っている。

反響[編集]

キムの著書について、『讀賣新聞』紙上では「羞恥心という日本人の性意識を底流に、ホテルの持つ陰と陽を描いた」[4]作品とされ「一つの文化論にまで昇華した」[4]と評されている。国際日本文化研究センター教授の井上章一は、ラブホテル専門設計事務所に対するキムの論考について「現場へ力をそそぐあまり、日本を世界の中で相対化する目がうしなわれた」[15]と指摘しつつ、「主知的で現場取材をおっくうがる若い学徒も多い今日、この健脚ぶりは貴重」[15]であり「かしこげな社会学より、ずっと読みごたえがある」[15]と評している。また、「石川県とラブホテルのつながり」[15]を知り「台湾系、韓国系あたりの人々がかかわっている先入観もこれを読めばぬぐいされる」[15]と評している。著述家の青木るえかは「『はじめに』には蛇足を感じた」[16]と指摘し「こんなのはナシでさっさとラブホテル内部に切り込んでくれたらよかった」[16]と評しているが、「この本は『ラブホテルがいかに不思議な(しかし下世話な本能の求めるままに)工夫と進化をしていったか』を教えてくれる」[16]とも評している。

フィールドワークの際は(在日同胞を含む)経営者側から協力を断られることも多かったが、火災に遭ったホテルの経営者が著書を読んで勇気づけられ「一言お礼が言いたい」[4]と出版社に連絡してくることもあったという。

人物[編集]

好きなミュージシャンとして小沢健二、好きな作家としてよしもとばなな宮本輝[3]、好きなタイプの男性として朴一を挙げている。音楽活動時は「いっきょんゴールド」と名乗っており、インディーズデビュー時もこの名義でCDを発売しているが、これは本名の「金」を「ゴールド」と捩ったものである[17]

研究を通じ「さげすまれる中、企業努力で、理想を形にするホテル作りにロマンを感じる」[4]とする一方、「ラブホテルの持つ卑わいさ」[4]には未だに抵抗を感じている。「(このテーマを続けていたら)嫁にいかれんかもしれん」[13]と心配し「あの人ラブホに行きまくってるらしいよ、なんて学部内で後ろ指さされるし、親にも卒論のテーマは最後まで内緒」[13]にしていた。雑誌記者とラブホテルを訪れた際は、男性2人にキム1人の3人組での取材だったため、廊下ですれ違う利用客のカップルが声を潜めて噂し合い、恥ずかしさで思わず柱の陰に隠れた逸話を持つ。なお、2008年3月現在、研究以外の目的でラブホテルを利用した経験はない[2]

文春新書から初めて自著を出版した際、本に付けられたにキムのバストアップ写真が掲載された[18]。また、『讀賣新聞』紙上にて自著が取り上げられた際には、ラブホテルの客室で撮影されたポートレートが掲載された[4]

略歴[編集]

賞歴[編集]

著作[編集]

単著[編集]

  • 『ラブホテル進化論』文春新書、2008年
  • 『性愛空間の文化史 「連れ込み宿」から「ラブホ」まで』ミネルヴァ書房、2012 
  • 『贈りもの 安野モヨコ永井豪井上雄彦王欣太 漫画家4人からぼくらへ』講談社、2012 

論文[編集]

  • 「『貸間』名称の変遷に関する一考察--連れ込み宿からラブホテルまで」人間文化(神戸学院大学人文学会)22号105頁(2007年)。
  • 「ラブホテルとモーテルの研究」文藝春秋86巻7号342頁(2008年6月)。

寄稿[編集]

連載[編集]

出演[編集]

雑誌[編集]

テレビ[編集]

ラジオ[編集]

脚注[編集]

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  1. ^ a b 「在日著名人インタビューも――漫画で20~30代を視野に」『民団新聞』2007年5月30日
  2. ^ a b c 「金益見――日本一のラブホ研究家」『ZAKZAK』産経デジタル、2008年3月17日
  3. ^ a b 「[筆者が語るツボ]…金益見著『ラブホテル進化論』」『[筆者が語るツボ]…金益見著「ラブホテル進化論」:読書:スポーツ報知報知新聞社2008年3月3日
  4. ^ a b c d e f g h i j 鷲見一郎「著者来店――『ラブホテル進化論』金益見さん――経営者のロマンに光」『讀賣新聞』47413号、読売新聞東京本社2008年3月2日、15面。
  5. ^ 菅野聡美『「変態」の時代』講談社2005年
  6. ^ 山野車輪マンガ嫌韓流晋遊舎2005年
  7. ^ 朴一『「在日コリアン」ってなんでんねん?』講談社2005年
  8. ^ 金いっきょん「ホンとの出会い」『まきずし大作戦2005年12月13日
  9. ^ 「金益見さん(本学大学院人間文化学研究科博士課程)が第18回橋本峰雄賞を受賞!」『金益見さん(本学大学院人間文化学研究科博士課程)が第18回橋本峰雄賞を受賞!神戸学院大学2008年12月24日
  10. ^ 「学歴・取得学位」『金 益見 | 人文学部 | 教員総覧 | 情報の公表 | 大学紹介 | 神戸学院大学神戸学院大学
  11. ^ a b c 「主な職歴」『金 益見 | 人文学部 | 教員総覧 | 情報の公表 | 大学紹介 | 神戸学院大学神戸学院大学
  12. ^ 「所属学会」『金 益見 | 人文学部 | 教員総覧 | 情報の公表 | 大学紹介 | 神戸学院大学神戸学院大学
  13. ^ a b c 「神戸の女子大院生――『ラブホ研究論文』の中身」『J-CASTニュース : 神戸の女子大院生 「ラブホ研究論文」の中身ジェイ・キャスト2007年2月4日
  14. ^ 「ラブホテル300軒取材、成果を出版――神戸学院大学院生」『asahi.com:ラブホテル300軒取材、成果を出版 神戸学院大学院生 - 関西朝日新聞社2008年2月25日
  15. ^ a b c d e 井上章一「ラブホテル業界のウラ話と利用客の生態学」『文藝春秋|本の話より|私はこう読んだ文藝春秋
  16. ^ a b c 青木るえか「ラブホを見るのがわくわくしてくる」『週刊朝日朝日新聞社2008年3月14日
  17. ^ 金益見「遂にCD発売!」『遂にCD発売! - 夢と目が合った!エヌ・ティ・ティレゾナント2013年7月30日
  18. ^ Amazon.co.jp: ラブホテル進化論 (文春新書 620): 金 益見: 本アマゾンジャパン

関連項目[編集]

外部リンク[編集]