金利スワップ

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金利スワップ(きんりすわっぷ、: Interest Rate Swap)は、取引当事者が一定の想定元本、期間、利息交換日およびその機関を決定し、変動利率と固定利率の支払義務を相互に交換(スワップ)する取引をさす。デリバティブ取引の一種。

起源[編集]

金利は一律ではなく、短期変動金利と長期固定金利がある。短期変動金利とは、中央銀行政策金利に連動し、その時々の経済状況や政策判断により随時変動する。一方で長期固定金利とは、住宅ローンや長期債券など、数十年にもわたる長期間の契約に適用される、固定一律の利率である。

多くの金融機関は、低い変動金利で資金を調達し、それを利率を上乗せした固定利率で貸し出し、その金利差から利益を得ている。しかし変動金利が固定利率を超えて上昇した場合は、逆ザヤが生じて損失を蒙る。1970年代、アメリカではオイルショックニクソンショックなど多くの事件で変動金利が乱高下し、しばしば10%を超えて多くの金融機関が破綻に追い込まれた。そこで金利の変動によるリスクを回避する方法が模索され、投資銀行により考案されたのが金利スワップである。具体的には、例えば以下のような取引である。

初期の形態[編集]

地場の貸付機関のA組合は、顧客から現在3%の変動金利で預金を集め、その資金を6%の長期固定金利で住宅ローンにして貸し出している。しかし変動金利が6%を超えて上昇した場合は損失を蒙る。そこで、以下の操作を行なう。

A組合はJPモルガンなどの投資銀行を相手に、変動金利と固定金利を交換する。具体的には、A組合は投資銀行に、例えば4%の固定利率で計算した利息相当額を支払い、変動金利の支払いを肩代わりしてもらう。変動金利が上昇した場合のリスクは、投資銀行が負う。

この取引により、A組合はいわば4%の固定金利で調達した資金を6%の固定金利で貸し出すことになり、金利の変動に伴うリスクを回避することができる。一方で投資銀行は、次のいずれかにより利益を得る。

1) そのまま保持する。むろんこの場合、変動金利は平均して4%を超えないと分析しているのである。見通しが外れた場合は、損失を被る。

2) 同じように変動金利が上昇しないと考えている他の顧客に取引を仲介し、双方から手数料を得る。

当初は上のように単純なものであったが、取引が増えるにつれ様々なバリエーションが増え、スワップ取引は複雑化していった。

概要[編集]

  • 一般的に、金利スワップは元本同士を交換せず、金利を交換する。そのため、金利算定のための元本、すなわち想定元本を決定する必要がある。
  • 例えば、長期の変動金利型による借入契約(元本:10億円 借入期間:5年 支払変動金利(①):3ヶ月TIBORと連動)締結にあたり、企業にとって利息支払額(キャッシュフロー)の変動が何よりも回避すべきリスクであるとする。この場合、元々の支払変動金利の借入契約とは別に次のような金利スワップ取引を締結することで、金利変動リスクを完全に回避することができる。すなわち、
    • 想定元本:10億円 利息交換期間:5年(借入期間に連動)
    • 受取変動金利(②):3ヶ月TIBOR 支払変動金利(③):固定(1.7%)
      • 金利スワップにより、借入による変動金利が相殺され(①+②)、常に一定の固定金利(設例の場合だと1.7%)を支払っているのと同じ効果になる(③)。この場合、デリバティブ取引することで、元々の借入負債に係る「変動金利」インデックスを「固定金利」インデックスと交換し、支払変動金利を固定化した例といえる。
  • 企業が金利スワップを利用する目的は様々であるが、大まかには以下の2点がある。
    • 金利スワップを利用した利得目的の場合。すなわち、将来の金利動向等をにらみながら、相場観に基づく取引などがこれにあたる。
    • リスクヘッジ目的の場合。すなわち、相場変動やキャッシュフロー変動は、望ましくない方向だけでなく望ましい方向にも変動するが、ヘッジ目的の場合、望ましい方向への変動自体もリスク(不安定要因)であり、このような変動自体はできるだけなくすのが望ましいとされる(なお、損失を回避することだけを目的とする場合は、相場観に基づく取引であり、本来ヘッジ目的とはいえないが、実務上しばしばヘッジ目的と同一視される例が散見される)。
  • リスクヘッジ目的については、相場変動リスクヘッジとキャッシュフロー変動リスクヘッジの2つがあるが、これらのリスクを同時にヘッジさせることは不可能である。キャッシュフロー変動を固定化すれば、相場変動リスクに晒されることになり、反対に市場の相場変動に金利を連動させれば、キャッシュフロー変動リスクを免れないためである。キャッシュフロー変動と相場変動のいずれをリスクとみなし、ヘッジすべきかについては、ヘッジ対象や各企業の規定するリスク管理方針等によって異なる。

金利スワップの特例処理[編集]

金利スワップについては、他のデリバティブ取引と同様、原則、時価評価が必要である。

ただし、「金融商品に関する会計基準」(以下、金融商品会計)及び「金融商品会計に関する実務指針」(以下、実務指針)に定めるヘッジ会計適用要件(ヘッジ会計に係る社内規定整備等)に加え、実務指針#178項の下記要件を満たす取引については、例外的に時価評価を行わず、デリバティブ取引の受払による純額等を当該資産または負債に係る利息に加減する特例処理が認められる。

  • 金利スワップの想定元本と貸借対照表上の対象資産または負債の元本金額がほぼ一致していること(±5%以内であればよい)
  • 金利スワップとヘッジ対象資産または負債の契約期間および満期がほぼ一致していること(±5%以内であればよい。例えば、ヘッジ対象の契約期間が10年の場合、6ヶ月以内の差異であれば、ほぼ一致とみなす)
  • 変動金利の基礎となっているインデックスと対象資産または負債の変動金利の基礎となっているインデックスがほぼ一致していること
  • 金利スワップの金利改定のインターバルおよび金利改定日と、ヘッジ対象の資産または負債の金利改定日がほぼ一致していること(3ヶ月以内の差異であればよい。ただし、プライムレートの場合、TIBOR等とは異なり一定期間変化しないため、特例処理の対象外)
  • 金利スワップの受払条件がスワップ期間を通して一定であること(同一の固定金利及び変動金利のインデックスがスワップ期間を通して使用されていること)
  • 金利スワップに期限前解約オプション、支払金利のフロアーまたは受取金利のキャップが存在する場合には、ヘッジ対象の資産又は負債に含まれた同等の条件を相殺するためのものであること

金利スワップの種類[編集]

  • 最も基本的な金利スワップ(固定対変動で変動と固定の支払日が同じ、想定元本が一定、など)を プレインスワップ(Plain Sawp)と呼ぶことがある。
  • 変動対変動(6ヶ月LIBOR対3ヶ月LIBORや、LIBOR対TIBORなど)の金利スワップをベーシススワップ(Basis Swap)と呼ぶ。
  • 異なる通貨間のスワップをクロスカレンシースワップ(Cross Currency Swap)と呼ぶ。元本の交換があるもの、さらに元本部分を為替レートにより定期的にリバランスするものがある。
  • クロスカレンシースワップのうち、元本の交換がないものをクーポンスワップ(Coupon Swap)と呼ぶ。
  • キャッシュフローが一回だけのものを SPS(Single Payment Swap)と呼ぶことがある。
  • 一方、または両方のキャッシュフローが翌日物コールレートや、FF金利EONIAなどの翌日物の金利と連動するものをOIS(Overnight Indexed Swap)と呼ぶ。通常、OISレッグのキャッシュフローは1日毎の複利で計算される。
  • 想定元本を定期的に減少させていくスワップをアモータイジングスワップ(Amortizing Swap)と呼ぶ。
  • 指標とする短期レートやインデックス(例えばLIBOR)の変動幅により想定元本の減少量を決定するスワップをインデックスアモータイジングスワップ(Index Amortizing Swap)と呼ぶ。これは通常の金利スワップとスワップションを組み合わせたものである。
  • 想定元本を定期的に増加させていくスワップをアクリーティングスワップ(Accreting Swap)とよぶ。
  • 指標とする短期レートやインデックス(例えばLIBOR)の変動幅により想定元本の増加量を決定するスワップをインデックスアクリーティングスワップ(Index Accreting Swap)と呼ぶ。これは通常の金利スワップとスワップションを組み合わせたものである。
  • 想定元本を減少させたり増加させるスワップをローラーコースタースワップ(Rollercoaster Swap)とよぶ。

参考文献[編集]

  • 「金融商品に関する会計基準」
  • 「金融商品会計に関する実務指針」
  • 「金融商品会計に関するQ&A」

関連項目[編集]