酵母エキス

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酵母エキス加工食品のベジマイト

酵母エキス(こうぼエキス、Yeast extract) とは、酵母の有用な成分を自己消化や酵素、熱水などの処理を行うことにより抽出されたエキスのことである。主成分としてアミノ酸核酸関連物質、ミネラル、ビタミン類を含み調味料や微生物の培地などに用いられる。現在の食品と食品添加物との分類では、酵母エキスは食品添加物ではなく、醤油や昆布エキスなどと同様に食品に分類されている。

原料[編集]

酵母エキスの原材料は、ビールを製造したタンクの底に沈んだビールなど、本来なら廃棄処理費用がかかる廃棄物であった使用済み酵母であった[1]。食用酵母に含まれるたんぱく質をアミノ酸に変えることで多様な風味を持つ調味料のような成分に変質する。ただし、ビール市場では廉価な発泡酒などが増加した結果、酵母の質は低下し栄養不足傾向となっている。そのため現在は酵母エキス用に純粋培養された酵母が使われるようになった[1]

薬食フードライフ研究家の沢木みずほは「週刊金曜日」誌上で、「今の酵母エキスの酵母は、天然の酵母菌などから取り出されたものではなく、人工的に作られた酵母から作られるものが増えている」と述べ、業界では天然酵母を使っていない事実を指摘したうえで[1]、「効率よくタンパク質を分解するため、分解に塩酸を用いる塩酸分解法が取られている。塩酸分解法による分解の際、発がん性物質と懸念されるクロロプロパノールなどの副生成物が少量生成される場合があるとの報告がある。食品添加物専門会議では安全性が発表されているが、健康を懸念する声もある」と述べている[1]

酵母自己消化物[編集]

酵母自己消化物は、酵母の細胞を集めて破砕し、酵母自身に含まれる消化酵素の作用によって自己消化させたものである。これにより、酵母を構成するタンパク質が、うま味を持つアミノ酸や低分子のペプチド鎖に分解される。

酵母の自己消化物はオーストラリアベジマイトを初めとして、マーマイト、プロマイト(Promite)、OxoCenovisなど、各国の加工食品に用いられている。イギリスアイルランドBovril という調味料は、BSE問題に関連して、それまで用いていた牛肉のブイヨンを酵母自己消化物に切り替えた。この措置は2005~2006年に行われたが、それ以降は牛肉に戻っている。自己消化物の他に、酵母の加水分解物も良く使われている。

加工品[編集]

ベジマイトやマーマイトのような市販の加工品は、酵母の培養液に食塩を加えて作る。食塩の添加は浸透圧による細胞の萎縮を引き起こし、死滅させて自己消化を促す。死んだ酵母は加熱によって完全に破砕され、食味を低下させる細胞壁が除去される。

消費[編集]

精製した化学調味料よりも安価で独特の味が出しやすいため、カップ麺など多く加工食品に使われている[1]。2017年の時点で、酵母エキスは食品添加物としての使用頻度が急激に高まっている[1]

脚注[編集]

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  1. ^ a b c d e f 沢木みずほ「新買ってはいけない 231 「から揚げ粉」にだって添加物いっぱい」、『週刊金曜日』第25巻第8号、株式会社金曜日2017年3月3日、 58-59頁、2017年6月4日閲覧。第1126号、通巻1146号

関連項目[編集]