遠藤謙

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遠藤 謙
生誕 (1978-07-10) 1978年7月10日(40歳)[1]
日本の旗 日本静岡県沼津市[2]
国籍 日本の旗 日本
教育 マサチューセッツ工科大学
業績
専門分野 バイオメカニクスロボティクス
所属機関 北海道科学大学客員教授[3]
勤務先 ソニーコンピュータサイエンス研究所
株式会社 Xiborg[注釈 1]
プロジェクト D-lab、See-Dコンテスト、D-leg[注釈 2]、ギソクの図書館
設計 ロボット義足、途上国用義足、競技用義足
成果 「Xiborg Genesis」
「Xiborg ν」[注釈 3]
受賞歴 MIT Technical Review「2012年35歳以下のイノベーター35人」[5][8]
世界経済フォーラム「ヤング・グローバル・リーダーズ」[9]

遠藤 謙(えんどう けん、1978年昭和53年)7月10日[1]- )は、日本の義足エンジニア[10][11][12]マサチューセッツ工科大学Ph.D[13]ソニーコンピュータサイエンス研究所アソシエイトリサーチャー、株式会社Xiborg[注釈 1]代表取締役として、ロボット義足途上国用義足[注釈 4]、競技用義足(パラリンピック用)の研究開発に取り組む。D-leg[注釈 2]やSee-Dの代表、北海道科学大学客員教授[3]も歴任し、ギソクの図書館も設立した。2014年には世界経済フォーラムの「ヤング・グローバル・リーダーズ」に選出されている[8][9]

来歴・人物[編集]

日本での学生時代[編集]

静岡県沼津市出身[2]。子供時代はプラモデルミニ四駆などのもの作りが好きで[15]中学校高校ではバスケットボールに打ち込んだ[16][17]2001年慶應義塾大学理工学部機械工学科を卒業、同大学で大学院に進学する[1]

同年、北野宏明がリーダーを務める科学技術振興事業団「ERATO北野共生システムプロジェクト」に参加し[1][18]、ヒューマノイドロボット「PINO」の開発に携わる[18]。二足歩行ロボットの進化的計算に取り組み、特許も出願、取得している[19]

同プロジェクトでは2002年12月から2003年5月まで学生技術員の扱いで、古田貴之が率いるSymbolic Intelligence Groupに所属[20]。同グループは2003年6月に千葉工業大学未来ロボット技術研究センターに移籍し[21]、遠藤も学生ながら同センター研究員となる。2003年に修士課程を修了し、博士課程に進学。大学院では前野隆司の研究室に所属していた[1]

マサチューセッツ工科大学時代[編集]

骨肉腫を患った高校の後輩が足を切断することになったことをきっかけに、遠藤は義足開発の道へ進むことを決意[16][17]2005年に慶應義塾大学の博士課程を中退し、マサチューセッツ工科大学(MIT)メディア・ラボヒュー・ハー英語版教授の元へ留学し、博士候補生としてバイオメカニクス・ロボット義足の研究を開始する[22]

MITには1月に学生自身が授業を開講する制度[注釈 5]があり、遠藤は小型ヒューマノイドロボットを扱う「Robo-one Workshop」を立ち上げたり[23]発展途上国に関する講義「D-lab」の講師を務めたり[24]と、活発に活動する。特にD-labでは発展途上国に出向いて実際に義足を製作する活動を行い[25]、D-labを日本へ紹介する活動にも取り組んだ。また、途上国適正技術開発のコンテストであるSee-Dコンテストにも携わる[26]

留学生活は厳しくストレスによる突発性難聴になることもあったが[16]2012年6月にPh.Dの学位を取得する[16]。なお、この時点で既婚、1児の父であった[27]

義足エンジニアとして[編集]

2012年、学位を取得した遠藤はソニーコンピュータサイエンス研究所の研究員に就任。ロボット義足の実用化に向け、足首のバネを使用して軽量化した義足の開発を続ける。一方、途上国義肢の開発・普及を行うD-leg[注釈 2]の代表[5]も務め、See-Dコンテストでも代表に就任している[16][26][28]

義足の選手が健常者のメダリストを超えることを目指していた遠藤は、2012年9月に元陸上選手の為末大と出会う[29]。チェアスキー開発に携わっていた杉原行里をメンバーに加え、2014年5月に株式会社 Xiborgを起業[29]代表取締役に就任する[30][31][32]2020年東京オリンピックでのメダル獲得を目標にパラリンピック出場者用義足の開発に取り組む[33]豊洲に拠点を構え、カーボンブレードの製作には東レ・カーボンマジックと連携している[4]

2016年には開発した「Xiborg Genesis」の販売を開始し、同年9月のリオデジャネイロパラリンピックでは佐藤圭太が使用[34]。2017年にロンドンで開催された世界パラ陸上競技選手権大会では、佐藤らの4×100mリレーは銅メダルを獲得[35][36]ジャリード・ウォーレス英語版もXiborg製品を使用し、100mで銅メダル、200mで金メダルを取得した[36]。一方で遠藤は2017年クラウドファンディングで約1750万円の資金を集め、同年12月に競技用義足を貸し出す「ギソクの図書館[注釈 6]」を設立した[37][38][40]

さらに東京都立産業技術研究センターの「障害者スポーツ研究開発推進事業」で東レなどとも連携した共同研究に取り組み、2018年8月に「Xiborg ν」[注釈 3]の受注生産を開始[7]。Xiborgの所属義足ランナーの解析結果を基づくアスリート向けで、同年9月の日本パラ陸上競技選手権大会では佐藤圭太が優勝を果たしている(T-64クラスの100m、200m)[7][41]

経歴[編集]

略歴[編集]

受賞歴[編集]

テレビ出演[編集]

招待講演[編集]

主な著作[編集]

学位論文[編集]

論文・解説[編集]

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ a b Xiborgはサイボーグと読む[4]
  2. ^ a b c D-legは遠藤がマサチューセッツ工科大学で取り組んでいたD-labから派生したNPOで、発展途上国への義肢、装具の普及を目的とする。現在は東京工業大学の学生らが中心になって、主にインドで支援を行っている[5][6]
  3. ^ a b Xiborg νはサイボーグ・ニューと読む[7]。「ν」はギリシア文字ニュー(小文字)。
  4. ^ 先進国においても入浴時に使用するなど、安価な義足を使い捨て感覚で使うことも検討されている[14]
  5. ^ IAP(Independent Activity Period)と呼ばれ、学生が学科に関係なく参加できる[23]
  6. ^ 報道では「義足の図書館」であるが[37][38]、公式サイトの表記「ギソクの図書館」[39]に従った。
  7. ^ テーマ「100m走で10秒を切ることができる靴の開発」[43]
  8. ^ TBS「夢の扉+」 (2012年11月4日). TBS「夢の扉+」11月11日 #79「天才エンジニアが義足の概念をくつがえす」 - YouTube
  9. ^ TVTOKYO (2017年3月23日). 義足エンジニア・遠藤謙【みらいのつくりかた】 - YouTube

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j 遠藤ほか 2004, p. 280.
  2. ^ a b スピーカー”. Wearable TECH EXPO. 2015年1月6日閲覧。
  3. ^ a b 父子チャレンジアカデミーに本学義肢装具学科教員及び学生がスタッフとして参加しました”. NEWS TOPICS. 北海道科学大学 (2018年7月12日) 2018年10月5日閲覧。
  4. ^ a b 青山 2018.
  5. ^ a b c d e f g ロボット研究が生んだ、今までにない義足とは?-義足エンジニア・遠藤謙インタビュー(前編)”. Opinions. あしたのコミュニティーラボ (2013年9月26日). 2015年1月6日閲覧。
  6. ^ 中村竜也 (2017年9月26日).“エンジニアとして世界と戦う、終わりなき挑戦。Xiborg代表 遠藤謙×HERO X編集長 杉原行里【サイバスロン】”. HERO X. 2018年10月5日閲覧。
  7. ^ a b c HERO X 編集部 (2018年9月13).“トップアスリートのためのスポーツ用義足「Xiborg ν」、いよいよ受注生産開始”. HERO X. 2018年10月5日閲覧。
  8. ^ a b c 日本MIT会第一回「若手虎の穴」講演会のご案内「すべての人に動く喜びを」~義足研究者のパラリンピックへの挑戦 2014年5月吉日”. MIT ASSOCIATION OF JAPAN. 2015年1月6日閲覧。
  9. ^ a b c “世界経済フォーラムが選出した今年のヤング・グローバル・リーダーズは200人超” (PDF) (プレスリリース), 世界経済フォーラム, http://www3.weforum.org/docs/WEF_NR_YGL_NCA14_JP.pdf 2015年1月10日閲覧。 
  10. ^ a b 遠藤 謙 義足エンジニア”. TEDx TOKYO 2014. 2015年1月6日閲覧。
  11. ^ 2016年5月14日(土)未来人のコトバ 義足エンジニア 遠藤謙さん 「Mens et Manus(知識と実践)」”. 経済フロントライン. NHK. 2016年7月10日。
  12. ^ 義足エンジニア、遠藤謙さん。義足の開発を通して、これからの世界に何を求めているのか?”(2016年4月30日).TOKYO ONGOING. Tokyo FM. 2016年7月10日閲覧。
  13. ^ a b Endo, Ken 2012.
  14. ^ 瀬戸 2013, p. 3.
  15. ^ 米良 2014a, p. 1.
  16. ^ a b c d e 瀬戸 2013, p. 4.
  17. ^ a b 米良 2014a, pp. 1-2.
  18. ^ a b ロボットデザインとOpenPINO”. 科学技術振興機構. 2017年9月17日閲覧。
  19. ^ 特許第3829302号「二足歩行ロボットの設計方法」(特開2003-326482「二足歩行ロボットの設計方法および二足歩行ロボット」、2002年4月30日特許出願。)
  20. ^ a b メンバー”. ERATO北野共生システムプロジェクト. 2017年9月17日閲覧。
  21. ^ 鈴木一義 (2006年6月28日). “江戸時代からの古き技術と現代のロボット研究『からくり人形とロボット』 第4回「人間型ロボットの開発意図は?製作者が語る!」. サイエンスポータル. 科学技術振興機構. 2017年9月17日閲覧。
  22. ^ 湯川鶴章 (2014年3月13日). “ロボット義足こそウエアラブルコンピューター 遠藤謙氏”. Wearable TECH EXPO IN TOKYO 2014 EXPO スピーカー. 2015年1月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年1月6日閲覧。
  23. ^ a b 遠藤謙 2007.
  24. ^ a b c 小野 2014.
  25. ^ 瀬戸 2013, pp. 2-3.
  26. ^ a b スポーツ義足で障がいを”可能性”に変えたい——義足エンジニア・遠藤謙インタビュー(後編)”. Opinions. あしたのコミュニティーラボ (2013年9月26日). 2015年1月6日閲覧。
  27. ^ Endo, Ken 2012, p. 6.
  28. ^ a b [Lab:042a]ソニーCSL 遠藤 謙 ―ふたつの義足で世界を変える! 注目のイノベーター―”. (2013年10月17日). Web文芸誌マトグロッソ. 2015年1月6日閲覧。
  29. ^ a b c 『ロボティクス最前線』、日経産業新聞 編、日本経済新聞出版社、2016年1月5日、第1版第1刷、94-98頁、ISBN 978-4-532-32050-8
  30. ^ a b c 井上和典「五輪記録も夢じゃない "2020年"への道は明るい」『AERA』(2014.12.29-2015.1.5)号、24頁。
  31. ^ 米良 2014b, p. 1.
  32. ^ a b 遠藤ほか 2014, p. 858.
  33. ^ 小野 2014, p. 2.
  34. ^ 遠藤謙 (2016年9月8日).“テクノロジーで高速化するパラ100m走 義足の進化と選手の技量向上がシンクロ、相乗効果を生む”. Sport Innovators Online. 日経BP社. 2016年9月13日閲覧。
  35. ^ London 2017 World Para Athletics Championships 競技結果一覧 大会10日目(7月23日)”日本パラ陸上競技連盟. 2017年9月17日閲覧。
  36. ^ a b 世界パラ陸上競技選手権大会ロンドン2017”. Xiborg. 2017年9月17日閲覧。
  37. ^ a b 遠藤啓生 (2017年10月17日).“「義足の図書館」がOPEN 大人も子供も気軽に試走”. 2018年2月3日閲覧。
  38. ^ a b Makoto SUZUKI (October 16, 2017). “目標を上回る1750万円を達成「義足の図書館」がオープン”. ホウドウキョク. 2018年2月3日閲覧。
  39. ^ ギソクの図書館”. 2018年2月3日閲覧。
  40. ^ 林 2018, p. 3.
  41. ^ アジアパラに向けて弾み 日本パラ陸上競技選手権大会”.カンパラプレス (2018年9月2日) 2018年10月5日閲覧。
  42. ^ 遠藤 謙(えんどう・けん)ソニーコンピューターサイエンス研究所研究員 / 株式会社Xiborg代表取締役”. academyhills. 2015年1月6日閲覧。
  43. ^ a b 最終選考通過者". 平成28年度採択プログラム. 異能(Inno)vation. 2017年3月25日閲覧。
  44. ^ TEDxTokyo 2014”. 2015年1月10日閲覧。
  45. ^ Tokyo 2014 Speakers: Ken Endo”. Events. MIT Media Lab. 2016年9月13日閲覧。(英語) (日本語)
  46. ^ Tokyo 2014: Agenda, Day Two”. Events. MIT Media Lab. 2016年9月13日閲覧。(英語) (日本語)

参考文献[編集]

外部リンク[編集]

(出演動画)