不法無線局

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不法無線局(ふほうむせんきょく)は、電波法第4条に定める免許を受けずに運用する無線局のことである。 俗語ではアンカバーUCともいう(“足を見せない”意のアンダーカバー英語: Undercovered から)。

なお、無線局免許状を受けていながら、その範囲を逸脱して運用する場合は違法無線局と呼び、区別される[1]

概要[編集]

無線は主に電波を用いて行われる電気通信である。

  • 電波は有限資源であり、その性質上、万人が自由勝手に使用した場合に、お互いに混信や妨害を与え、正常な通信ができなくなるなどのトラブルを招いてしまう。
  • そのため、電波の使用が他者の不利益とならないよう、また、限られた周波数帯を用途別などに整理するため、国際電気通信連合による世界的な管理・監督の仕組みが存在する。

日本の場合、電波法の中で、総務省が使用を規制している。その大要は、

  • 「微弱電波」であれば自由に使用できる。出力ではなく電界強度で規定[2]されており、無線設備から3mの距離において
    • 322MHz以下の周波数では500μV/m以下
    • 322MHzを超え10GHz以下の周波数では35μV/m 以下
  • 無線局を開設しようとする者は、原則として免許または登録を必要とすること
  • 免許または登録に際して、総務大臣が申請書を受理した時には、法令上の技術基準に適合すること、周波数の割当てが可能であること、開設の基準に合致することを審査すること

である。

不法無線局は、これらの行政手続きを行わず、勝手に開設される無線局である。無線局免許状を受けずに送信機アンテナに接続し、電波が発射できる状態にしていれば、実際に電波を出していなくても、不法無線局を開設していることになる。

不法無線局かどうかは、コールサインを言わないなど通信内容から、ある程度判別可能である。

であることが多く、総称して「不法三悪」と言われる。 1992年(平成4年)から、これらの不法無線局に警告するため、電波利用料を使用した『規正用無線局』が開設されている[3]

1994年(平成6年)から[4]、これら三種類の周波数帯の不法無線局は特定不法開設局と、特定不法開設局に使用されるおそれのある無線機は『指定無線設備』とされ、小売業者は「免許を申請する必要があり、免許が無いのに使用した場合は刑事罰に処せられる。」ことを呈示しなければならないことが義務付けられた[5]

特定不法開設局は、通信距離を向上させるため、大出力の送信機用増幅器(ブースター、リニアアンプ)を設けて運送用車両に搭載されることが多く、道路沿線での電波障害や、無線局免許状を受けている正規の無線局に妨害を与えるため大きな社会問題ともなっている。

2013年(平成25年)には、指定無線設備に800MHz帯プラチナバンド)の電気通信事業者以外が設置した、携帯電話PHS中継装置も追加された。

これら以外にも、

などがある。 また、正規に免許を受けた無線局であっても、無線局免許状の有効期限が満了してしまえば「無免許と同じ扱い」となり、不法無線局として罰せられる。アマチュア無線局においては、広域レピータ通信妨害が深刻になっていた。一部レピータ管理団体は、フォックスハンティングの手法を用い、不法無線局の探知を実施する程であった(「CQ ham radio」1991年5月号掲載)。

不法無線局の報告[編集]

不法(違法)無線局を認めた無線局の免許人または登録人は、電波法第80条の規定により、総務大臣に報告しなければならない。具体的には総務省令電波法施行規則第42条の3により、無線局を所轄する総合通信局沖縄総合通信事務所を含む。以下同じ。)に、文書をもって報告する(「80条報告」と呼ぶ。)。この規定は、無線局の免許人または登録人以外の者が、文書以外の方法で報告することを妨げるものではない[6]

必要事項は次の通りであるが、不明なものは記入しなくてよい。

専用の書式[7]もあるが、これにこだわらなくともよい。

開設した者に対する処分[編集]

不法無線局を開設した者に対しては、電波法に次のような罰則が定められている。

  • 人命財産に深くかかわる重要な無線通信(具体的には警察無線消防無線列車無線と、電気通信事業者、気象台電力会社各社の業務無線通信)に妨害を与えた者は、5年以下の懲役または250万円以下の罰金[8]
    • 刑法第234条の威力業務妨害の「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」より重く処罰される可能性がある。
  • 免許を受けずに無線局を開設した者は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金[9]
    • 1982年(昭和57年)までは、上記の条文は運用した者となっていた。この為、通信中の現場を現行犯として押さえられなければ摘発は困難であった。1983年(昭和58年)からは、条文が開設した者と改正され[10]、電波を発射しうる状態の無線機があり、それを操作できる者が居れば、現行犯でなくても逮捕できる様になった。

また総務省の行政処分として、電波法による刑の執行後または執行猶予期間満了後から2年間は、無線局免許状や無線従事者免許証の交付を受けられないことがある[11][12]

無線従事者が、不法無線局または違法無線局を運用した場合は、量刑が「法知識がありながら違法行為を行った」という事で、無資格者に比べて刑罰が重い。また、無線従事者免許証の取消し又は3ヶ月以内の業務停止の行政処分の対象にもなる[13]

不法無線局に対する取締りは、総合通信局が行う。総合通信局は、司法官庁ではなく行政官庁であり、特別司法警察職員では無いため、取締りは日本の警察あるいは海上保安庁の協力を得て、合同取締りの体裁で行われる。

使用に注意が必要な機器[編集]

ここでは、電波の不法使用(不法無線局の開設)につながる可能性のある機器を取り上げる。 周波数の割当ては国によって異なるので、基本的に電波を発する製品はその国でしか使えない。 使用者に悪意がなく、電波法を犯しているという自覚がなくても、罰せられる可能性がある。

トランシーバー
ネットオークションや通信販売で売られている日本国外製のトランシーバー(FRSやGMRSなど、メーカーはミッドランド(Midland Radio)、モトローラ(Talkaboutシリーズ、 TLKRシリーズなどの海外販売品[14]。)などや、27MHz帯ハイパワー市民ラジオ(違法CB)は、電波法令に定められる周波数帯や出力ではないものが多い。
これらのトランシーバーを使用すると、業務無線などに妨害を与える可能性がある。「米国規格(FCC rule)に適合している」などと宣伝している場合があるが、これは米国領内で有効であるという意味(技術基準適合証明機器が使用できるのは日本国内のみであると同じこと。)しかない。
電波法令の技術基準に適合している証明として、玩具を除き技適マーク又は無線機器型式検定規則による検定マークがあるか確認することは最低の条件である。但し、認証の時期によってはこれらのマークがあっても使用できないものがある。
例外として、アマチュア無線は使用する周波数帯や電波型式が一部例外を除き基本的に世界共通である。従って、アマチュア無線用機だけは、アマチュア無線の周波数帯に適合すれば保証認定による免許申請をして使用できる(アマチュア局の開局手続きを参照)。
ラジコン
ラジコン用に割り当てられている周波数帯の内、2.4GHz帯を使用するものは小電力データ通信システムの無線局であり、技適マークの表示を要する。
その他の周波数帯は微弱電波によるもので電波法令上に何らかの表示をする義務は無いが、自主規制として27MHz帯用は日本ラジコン模型工業会(JRM)が、40MHz帯用及び72MHz帯用は日本ラジコン電波安全協会(RCK)が証明シールを貼付しているので確認するのがよい。

FMトランスミッターワイヤレスマイク

外国仕様のFMステレオ・トランスミッターやワイヤレスマイクは、電波法令の技術基準とは異なる場合があり、それを知らずに使用していると近傍周波数の放送の受信に妨害、またスプリアス(高調波)などで他の通信に妨害を与えるなど、気づかぬうちに混信妨害を与える、また電波法で罰せられる可能がある。
任意制度であるが、全国自動車用品工業会(JAAMA)が微弱無線設備を登録し、微弱無線マークELPマーク)を発行している。入手の際はこのマークを確認するのが良い。
コードレス電話
外国仕様のコードレス電話は、国内用と周波数帯が異なっていたり出力が大きい場合もあるので、他の無線に妨害を与えてしまう可能性がある。「海外向け製品はデザインが優れている、通話距離が長い」などと宣伝して、日本国内に古くから出回っている。
1987年(昭和62年)のコードレス電話自由化前後までは、VHF帯以下や380MHz帯を使った物が主流であったが、1990年代末頃からは、1.9GHz帯や2.4GHz帯や5.6GHz帯のデジタル式が主流である。
国内で使用できるものには技適マークが表示されている。
2.4GHz、5.6GHz帯ISMバンド機器
上述の2.4GHz帯ラジコン以外にも無線LANWi-FiBluetooth、ワイヤレスカメラ、ベビーモニター等、2.4GHz、5.6GHz帯ISMバンドを使用する機器は様々なものがあるが、これらは小電力データ通信システムであるものでなければならない。日本国外の規格のISMバンドの無線通信機器は、小電力データ通信システムと比較すると概して出力が大きくこのバンドの使用者に妨害を与えてしまう可能性がある。国内で使用できるものには技適マークが表示されている。5.6GHz帯の利用は室内のみ許可されており、屋外での利用は禁止されている。
なお、2016年(平成28年)に電波法令が改正[15]され、訪日外国人が持ち込んだWi-Fi、Bluetooth等の機器については、入国から90日以内は免許不要局とみなされる。海外から持ち込まれる携帯電話・BWA端末、Wi-Fi端末等の利用[16]を参照。
野生生物生態調査用ビーコンドッグマーカー
動物の生態観察などの目的で外国製のものが使用されていたが、学術研究、有害鳥獣駆除などの為に必要性が高まり2008年(平成20年)に特定小電力無線局の一種として動物検知通報システム用が制度化[17]された。
ドッグマーカーは猟犬マーカーとも称し、これも外国製のものが使用されている。一般には144MHz帯を用いている製品が多いが、これはアマチュア業務(=アマチュア無線)の周波数である。また「周波数を上下に調整可能」と謳う物があるが、アマチュア用周波数の直下の143MHz帯、直上の146MHz帯はともに官公庁の公共業務用、放送事業者の放送事業用、その他民間の各種事業者の一般業務用として割り当てられている[18]
2012年(平成24年)には、動物検知通報システム用の用途緩和としてドッグマーカーにも使用できることとなった。
特定小電力無線局の機器には技適マークが表示されている。
携帯電話・PHS中継装置、通信機能抑止装置
携帯電話・PHS中継装置は、電気通信事業者が免許を取得し設置するもので技適マークが表示されている。その他の者は設置することはできない。
通信機能抑止装置は、劇場コンサートホールなど静粛を必要とする、その他病院ATMなど携帯電話・PHSの使用が望ましくない場所を擁する事業者が実験試験局の免許を取得し、装置を据え付けて使用するもので、総合通信局による予備免許落成検査と第三級陸上特殊無線技士以上の無線従事者の配置を要する。持ち運べる形状のものは、不特定の範囲の携帯電話・PHSの機能を抑止するので免許されない。

無線設備試買テスト[編集]

2013年(平成25年)より総務省は、微弱電波の範囲を超える無線機が市場に多数流通し、他の無線局に障害を与える事例が発生していることから、一般消費者が購入・使用し、障害を与えることがないよう、微弱電波の範囲を超えるおそれがある無線機を試買して測定を行い、結果を公表することを開始 [19] した。測定の結果、微弱電波の範囲を超える無線機については電波利用ホームページで公表するとともに、製造・販売・輸入業者に対し技術基準に適合するよう行政指導する。

不法無線局の出現・措置状況[編集]

年度 平成6年度 平成7年度 平成8年度 平成9年度 平成10年度 平成11年度 平成12年度 平成13年度
合計 31,114 3,879 34,008 7,001 35,995 6,543 36,316 6,727 45,136 6,528 37,422 7,233 34,067 4,986 23,396 5,841
不法パーソナル 9,255 587 11,785 3,019 12,018 2,230 13,162 1,798 19,068 2,113 15,802 2,676 16,660 1,423 11,896 1,906
不法アマチュア 10,754 330 11,589 392 35,995 6,543 36,316 6,727 15,726 1,038 12,173 1,087 9,400 1,270 4,067 252
不法市民ラジオ 8,664 2,295 8,145 2,551 9,287 2,375 10,344 3,327 9,481 2,917 8,317 2,657 6,651 1,689 6,565 2,532
その他 2,441 667 2,489 1,039 1,444 746 1,528 613 861 460 1,130 813 1,356 604 868 1,151
年度 平成14年度 平成15年度 平成16年度 平成17年度 平成18年度 平成19年度 平成20年度 平成21年度
合計 17,670 5,148 20,720 8,344 15,765 7,511 13,966 4,737 12,168 4,301 12,083 4,135 10,232 3,520 9,270 2,918
不法パーソナル 7,594 1,600 9,265 3,138 7,249 2,701 5,995 1,537 5,274 1,352 4,424 1,108 1,617 602 920 260
不法アマチュア 2,126 454 2,911 929 2,487 1,065 1,695 850 2,764 827 2,549 869 3,097 589 2,283 744
不法市民ラジオ 7,096 2,476 6,512 2,872 4,503 2,539 4,398 1,572 2,162 1,065 1,592 618 1,592 558 1,729 205
その他 854 618 2,032 1,405 1,526 1,206 1,878 778 1,968 1,057 3,527 1,540 3,926 1,771 4,338 1,709
年度 平成22年度 平成23年度 平成24年度 平成25年度 平成26年度 平成27年度  
合計 8,538 2,452 8,903 2,496 8,581 3,269 7,101 1,992 7321 1,680      
不法パーソナル 479 228 2,081 322 2,788 712 865 138 784 86      
不法アマチュア 1,525 507 1,367 366 1,803 555 2,225 545 1592 425      
不法市民ラジオ 1,295 177 538 203 342 150 642 177 404 95      
その他 5,239 1,540 4,917 1,605 3,648 1,852 3,369 1,132 4541 1,074      
左欄:出現数、右欄:措置数
  • 電波監視[20]
  • 不法無線局等の出現数・措置数[21]

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 違法局という言葉も聞きますが、違法局と不法局との違いは? 監視FAQのQ14を参照 (関東総合通信局
  2. ^ 電波法施行規則第6条第1項第1号
  3. ^ 平成14年郵政省告示第392号、以後の改正を経て平成23年総務省告示第225号となる。
  4. ^ 平成5年法律第71号による電波法改正および平成5年郵政省令第61号による電波法施行規則改正の施行
  5. ^ 電波法第102条の13から第102条の14の2及び電波法施行規則第51条の2から第51条の3
  6. ^ メールによる相談(関東総合通信局)に見るように、一般的な相談と同様の形式でも受け付ける。
  7. ^ 報告書 各種様式のファイル I1 電波法第80条の報告(東海総合通信局
  8. ^ 電波法第108条の2第1項
  9. ^ 同法第110条第1項第1号
  10. ^ 昭和56年法律第49号による電波法改正の施行
  11. ^ 電波法第5条第3項第1号
  12. ^ 同法第42条第1号
  13. ^ 同法第79条第1項第1号
  14. ^ 海外で販売されているトランシーバーについて 特定小電力トランシーバー製品のサポートを参照(モトローラ・ソリューションズ)(Internet Archiveのアーカイブ:2015年10月17日収集)
  15. ^ 平成27年第26号による電波法改正および平成27年総務省令第105号による電波法施行規則改正の施行
  16. ^ 海外から持ち込まれる携帯電話・BWA端末、Wi-Fi端末等の利用 総務省電波利用ホームページ
  17. ^ 総務省告示周波数割当計画の別表9-14
  18. ^ 周波数割当計画の第2表 27.5MHz-10000MHz
  19. ^ 無線設備試買テストの実施 総務省報道資料 平成25年6月7日(国立国会図書館のアーカイブ:2013年7月1日収集)
  20. ^ 電波監視 総務省情報通信統計データベース
  21. ^ 不法無線局等の出現数・措置数 総務省電波利用ホームページ

外部リンク[編集]